■INNOCENCE / 梨乃の誕生日@2008 (限定受注)■
藤森イズノ |
【7433】【白月・蓮】【退魔師】 |
******************************
AGENT CODE // 000005-RTLeeG
******************************
AGENT NAME // RINO.SHIRAO
******************************
SEX DISTINCTION // WOMAN
******************************
BIRTH DAY // 6.12
******************************
|
INNOCENCE // 梨乃の誕生日
------------------------------------------------------
OPENING
******************************
AGENT CODE // 000005-RTLeeG
******************************
AGENT NAME // RINO.SHIRAO
******************************
SEX DISTINCTION // WOMAN
******************************
BIRTH DAY // 6.10
******************************
------------------------------------------------------
梨乃の誕生日。それを祝う、豪華絢爛なパーティ。
イノセンス本部、レストランにて実施されたパーティ。
各地から取り寄せた、美味しい料理の数々。
蕩けんばかりに美味なるワイン。
並ぶプレゼント。自分の為に用意された全て。
幸福感から、うっかり泣きそうになってしまう。
ありがとう、本当にありがとう。嬉しいです。
こんなに幸せだと思えた誕生日、今日が初めてかもしれません。
皆に祝福され、プレゼントを受け取り、微笑む梨乃。
抱えきれないプレゼントが、ポロリと一つ床に落ちた。
それを拾い上げ、梨乃はキョロキョロと辺りを見回す。
(やっぱり、いない……)
どこを探しても、蓮がいない。
このパーティの発案者だというのに、どこにもいない。
ワイワイと賑やかなレストラン、パーティ会場。
何のことはない。とりあえず梨乃の誕生日パーティだという名目。
海斗や藤二は、いつもの如く、好き勝手にパーティを満喫している。
時刻は、二十三時。あと一時間で、誕生日は終わってしまう。
十分に幸せだ。けれど、もう少しだけ。
もう少しだけ、欲張ることが許されるのなら。
会いたい。声が聞きたい。それ以上は求めない。
何か、して欲しいことがあるわけじゃない。
ただ会いたいだけ。自分が生まれた、特別な日。
そのとき、隣で微笑んでいて欲しいだけなのに。
梨乃の願いは叶わぬまま。蓮が会場に来ることはなかった。
二十三時半。賑やか豪華絢爛なパーティは、あっけなく終了してしまう。
満喫された後の会場は、何とも静かで、切ないものだ。
一人、椅子に座って俯いている梨乃。
別に待っているわけじゃない。待っててなんて言われてないし。
ただ、もう少しだけ。ここにいたいだけ。そう、いたいだけ……。
様々な想いが混じった溜息を落としたときだった。
静まり返ったレストランに、着信音が響き渡る。
ビクッと肩を揺らし、懐から携帯を取り出す梨乃。
ディスプレイに表示されている、メール送信者の名前を見て、梨乃はガタンと席を立った。
ただ一言。メールには、ただ一言。
中庭にいるよ―
そう記されていた。
*
息を切らして向かう中庭。
月灯りの下、ベンチに座る、蓮の後姿。
その姿を見た途端、ホッとして安心して、足がもつれる。
フラフラと歩き、ストンと隣に腰を下ろす梨乃。
蓮は、目を伏せたまま小さな声で言った。
「パーティ。終わっちゃったんだ。 ごめんね」
「あ、いえ……」
その会話から、しばしの静寂。
蓮は目を伏せたまま。何か、考え事をしているようにも見えた。
喋っていないと不安になる、だなんて思ったのは初めてだ。
意味深な静寂に、不安と恐怖を覚え始める梨乃。
もしかしたら。ううん、まさかそんなこと。
でも、ありえない話じゃない。いつだって、ありえる話。
彼女の心を占めている不安は、関係決裂に対するものだ。
付き合いだしたものの、やっぱり嫌になっただとか、そういうこと。
梨乃は、いつでもその不安を抱いている。
蓮の性格が、そうさせるのかもしれない。
どうしよう。もしも、本当にそうだったら。
何て返せばいいんだろう。嫌ですって返していいのだろうか。
でも、そうしたら蓮の気持ちはどうなるんだろう。
自分が嫌だと否定しても、蓮を困らせてしまうだけなら……。
俯き、悶々と考え込んでいる梨乃。
ふと目を開けて彼女を見やった蓮は、クスクス笑った。
すごい顔してるね。まるで、この世の終わりみたいな。
眉寄せて、泣きそうな顔。 何、考えてるのかな。
なんて。わかってるんだけどね。どうせ、妙なこと考えてるんでしょ?
俺が別れたいって言うんじゃないかとか、そしたらどうしようとか。
まぁ、不安にさせてしまうのも当然のことかもしれないね。
パーティ、結局、顔出せずじまいだったし。
でもね、勘違いしないで。 面倒だったとか、そういうんじゃないんだ。
考え込んじゃってね。 いつの間にか、こんな時間になってたんだよ。
ふと取り出し、見やる懐中時計。時刻は、二十三時五十分。
あぁ、まずい。本当に、終わっちゃうね。
まさか、これを言わずに終わりだなんて、俺のプライドが許さないよ。
「梨乃ちゃん。 誕生日、おめでとう」
放たれた言葉に、パッと顔を上げる梨乃。
自分を見やる蓮は、いつもどおり、優しい笑みを浮かべていた。
「ありがとう、ございます……」
それでも俯いてしまったのは、不安を拭い去れないが故。
こうなってしまうと、とことんマイナス思考になってしまう。
その笑顔も、最期だとしたら。 最期の言葉が、おめでとうだとしたら。
考えたくないことばかり、ポンポンと頭に浮かぶ。
そんな梨乃を見かねて、グィッと肩を寄せる蓮。
「ねぇ。何か変なこと考えてない?」
「えっ」
「梨乃ちゃんって、妄想壁あるんだね」
「あ、あの……」
「勝手に妄想してヘコまないで?」
クスクス笑って、月を見上げる蓮。
その言葉が、いとも容易く不安を払った。
何、考えてたんだろう、私。 蓮さんに失礼じゃないか。
反省し、小さな声で「ごめんなさい」と呟いた梨乃。
ごめんね、って謝るべきなのは俺の方だよ。
キミを不安にさせてしまったんだから。
でもね、これだけは理解っていて欲しい。
キミと同じように、俺だって不安なんだ。
いつも笑って、余裕しゃくしゃくだって思われてるだろうけど、
実際はね、怖くて仕方ないんだよ。俺も、妄想壁持ちなのかもね。
キミがいなくなったら。 そういうことを考えて、怖くなったりするんだ。
そんな自分が可笑しくて、一人で考えてた。
俺は、どうしたいんだろう。この先、どうするつもりなんだろう。
考えた結果、見つけた答えはね、すごく簡単なものだった。
すぐ傍にあったんだよ。考える必要なんてなかったんだ。
その見つけた答えを、今から伝えるから。 受け止めて。
「ずっとさ、一緒にいようね。……っていうか、一緒にいてね」
「蓮さん……?」
「守ってあげる。俺が、幸せにしてあげる。だから、ね?」
目を伏せたまま、取り出す、とっておきのプレゼント。
細く白い指、左手の薬指に渡す、誓いの言葉と指輪。
六月十日、二十三時五十七分。
想いを受け取り、梨乃はポロポロと涙を零しつつ微笑んだ。
「何か、プロポーズみたいですね……ふふ」
「あぁ、うん。そのつもり」
「え?」
「かもしれないね」
「……もぅ」
この先も、俺は俺のまま。何ていうかな、ほら、ナンパとかさ。
そういうのは続けてしまうんだろうけれど。こればかりは、どうしようもなくて。
でも、理解ってて欲しいんだ。 一番はキミ。
それは、ずっと変わらない。自信を持って言えるよ。
ん? ナンパもついでに止めてくれれば最高だって?
うん、まぁ、その気持ちは理解るよ。
……前向きに善処してみるよ。あまり期待はしないでね。
って、そんな即答で、してませんとか言わないでよ。
それはそれで、ちょっと切ないような気がするからさ。
月灯りの下、肩を寄せ合い、言葉を交わす二人。
誰にも邪魔されない、誰にも邪魔できない、二人だけの時間。
風に揺れる、梨乃の前髪に触れつつ、蓮はクスリと笑った。
おめでとう。キミが生まれて、キミと出会って。
その全てに、心から感謝するよ。
------------------------------------------------------
■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
シナリオ参加、ありがとうございます。
-----------------------------------------------------
2008.06.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------
|