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■INNOCENCE / 梨乃の誕生日@2008 (限定受注)■

藤森イズノ
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】

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AGENT CODE // 000005-RTLeeG
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AGENT NAME // RINO.SHIRAO
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SEX DISTINCTION // WOMAN
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BIRTH DAY // 6.12
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INNOCENCE // 梨乃の誕生日

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 OPENING

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  AGENT CODE // 000005-RTLeeG
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  AGENT NAME // RINO.SHIRAO
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  SEX DISTINCTION // WOMAN
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  BIRTH DAY // 6.10
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 あら…。 梨乃ちゃんって、10日が誕生日なんだ。
 知らなかったわ。っていうか、聞いてなかったわね、そういえば。
 廊下で拾った、梨乃のエージェントカード。
 そこに記された誕生日を見て、梨乃の誕生日を知ったシュライン。
 うーん。 知ったからには、何かお祝いしてあげたいわよね。
 どうしようかな。 やっぱり、パーティかしら。定番だけど。
 むぅ〜と首を傾げて考えていると、背後から声が掛かる。
「何、してるんだ?」
「んっ?」
 振り返れば、そこには凍夜。 同じ、イノセンスの仲間だ。
 凍夜は、手に料理本を抱えている。
 彼が料理好きだという噂は、聞いたことがない。
 むむ? と首を傾げて、シュラインは悟る。
 あ、もしかして……凍夜くんも、同じこと考えてる?
「ねぇ、それって。 もしかして、誕生日のお祝い?」
「あ。 あぁ、まぁな」
 ニンマリと笑うシュライン。
 そっかそっか。 やっぱりね。
 っていうか、さすがね。彼女の誕生日、しっかり覚えてるんだ。
 クールだとか色々言われてるけど、可愛いとこあるじゃない。ふふ。
 自分も、お祝いしてあげようと色々考えていたんだ、と伝えるシュライン。
 それならば、皆で賑やかにお祝いしてあげよう。
 そういうことになり、二人は二階テラスで作戦会議。
 サプライズな感じでいきたいから、梨乃にはギリギリまで黙っていよう。
 知り合いが経営してるカフェを貸切にさせてもらおう。
 折角だから、ディテクターにも協力してもらおう。
 プレゼントは、何が良いだろうか?
 あれこれ作戦を立てる内、決定していくパーティの内容。
 定番なサプライズパーティかもしれないけれど、十分。
 賑やかに、皆で楽しく、お祝いしてあげるのが一番だと思う。
 それじゃあ早速、とディテクターに連絡を入れるシュライン。
 向かいに座る凍夜は、真剣な面持ちで料理本を捲っていた。
 さて……何を作ろうか。
 あいつに比べたら、俺の料理なんて全然大したことないだろうけど。
 けど、それでも作ってやりたい。
 普段やらないことをして、驚かせてもみたい。
 プレゼントも考えなきゃな。 何が良いんだろう。
 女に何かを贈るなんて初めてのことだ。
 どういうものが喜ばれるのか、さっぱり理解らない。
 悩みつつ、凍夜は、ふと顔を上げた。
 ディテクターと携帯で会話するシュライン。
 そうだ。 目の前に、こうして梨乃と仲がいい奴がいるんだ。
 相談するべきだろうな。 ……微妙に照れくさいけど。

「梨乃ちゃん。ちょっと良いかな?」
「あ、はい。どうぞ」
 扉をノックし、二人で踏み入る梨乃の部屋。
 シュラインと凍夜が揃って来たことに、梨乃はキョトンとしている。
 珍しい組み合わせだなぁ……などと考えていると、
 シュラインが、拾ったエージェントカードを渡して言った。
「明日ね、IO2との共同任務があるの。パーティ潜入捜査なんだけど」
「あっ。ありがとうございます。……共同任務? え? でも、リクエストボードには……」
「ついさっき緊急で決まったのよ。でね、梨乃ちゃんにも同行してもらいたいんだけど」
「あ、はい。わかりました。 ……凍夜さんも、行くんですよね?」
「あぁ」
 共同任務、パーティ潜入捜査。
 間違ってはいないけれど、それは巧みな嘘だ。
 けれど、真面目な梨乃は疑うことなく承諾。
 仕事ならば、どんな内容でも協力する。 それが梨乃のモットー。
 まったくもって疑っている様子のない梨乃を見て、
 顔を見合わせ、小さく頷くシュラインと凍夜。
 サプライズパーティの準備は、着々と進んでいく。

 *

 翌日―
 本部キッチンにて、黙々と料理を作っている凍夜。
 早朝、静かなキッチン。誰もいない……ということもなく。
 キッチンの入口では、シュラインが待機。
 運び出しの手伝いと、警備を兼ねている。
「ちょっとだけー。ちょっとだけでいーからさー」
「駄目〜」
「ちょっとだけでいーからぁぁぁ」
「駄目です〜」
 早朝だというのに、いち早く美味しそうな匂いを嗅ぎつけてやって来た海斗。
 動物並みの嗅覚ね、本当。
 けど、駄目よ。海斗くんだって理解ってるでしょ。
 凍夜くんが『誰の為に』料理してるか、ってこと。
 めげずに何度も進入を試みる海斗を制止する。
 その繰り返しの中、完成した料理。
 自分で言うのも何だけど、かなり良い出来だと思う。
 あいつが好きなもの、ふんだんに使ったんだ。
 喜んでくれると良いんだが……どうかな。
 貸し切ったカフェに料理を運ぶ最中、ちょっと不安そうな顔をしている凍夜。
 シュラインはクスクス笑い、凍夜の背中をポンと叩いて「大丈夫よ」と自信満々に言った。

「千華さん。 これ、ちょっと気合入りすぎじゃないですか……?」
「そんなことないわよ。 豪華なパーティだからね」
「そ、そうですかぁ?」
 千華コーディネイト。可愛らしいドレスを纏う梨乃。
 確かに、IO2との共同任務というからには、豪華なパーティなんだろうけど。
 それにしても、これはちょっとやり過ぎな気がする。
 浮いちゃうんじゃないだろうか……と不安気な梨乃。
 頭のてっぺんから足の先まで、見事に彩られたのは、
 シュラインから千華への指示によるもの。
 とびっきり可愛くしてあげて。
 シュラインの指示どおり、千華は任務を全うした。
 んー。 確かに、ちょっと、気合入れすぎちゃったかもしれないけど。
 主役だしね、今日は。 このくらいで、丁度いいと思うのよ。うん。
 今だに戸惑いが拭えない様子の梨乃の手を引き、歩き出す千華。
 向かうのは、貸切カフェ。 パーティの舞台へ。

 *

 カフェの入口で合流する一向。
 シュラインも凍夜も、ディテクターも、ちょっと、おめかししている。
 けれど、自分ほどではない。 やっぱり、やり過ぎなんじゃ……。
 違和感を拭えぬまま、一向の後を追う梨乃。
 ディテクターが扉を開けた瞬間、妙な光景。
 どういうことだろう。 カフェの中は真っ暗。
「パーティの筈なのに……おかしいわね」
「何か、あったのかもしれないな」
 異変を悟った『フリ』をするシュラインと凍夜。
 二人に乗っかる形で、ディテクターと千華も銃を構えて神妙な面持ちに。
 一向の表情から、事件の匂いを嗅ぎ取った梨乃。
 慌てて、自分も魔銃を抜いて構える。
 ちょっと出遅れた感は否めないけれど……。
 ディテクターを先頭に、ゆっくりと暗い店内を進む。
 途中、何か躓きながらも後を追う梨乃。
 カフェの中心。 床で光る目印のテープ。
 よし、と頷いて、パチンと指を弾くディテクター。
 すると、パッと店内が明るくなり、
 同時に、クラッカーの音が響き渡った。
「!!」
 眩しさと音に驚き、咄嗟に目を伏せた梨乃。
 次第に慣れてくる目、ゆっくりと目を開けば、
 そこには美味しそうな料理と、プレゼントの山。
「え……?」
 キョトンとしている梨乃に、一向は声を揃えてお祝いの言葉を贈る。
 誕生日、おめでとう。
 その言葉を聞いた瞬間、全てを理解するに至る。
 潜入捜査だなんて、嘘。 共同任務だなんて、嘘。
 全部、自分の為に仕組まれた……素敵なサプライズ。
 驚きはしたものの、やはり嬉しい。
 照れくさそうに笑う梨乃。
 そんな彼女の手を引き、シュラインは言う。
「まずは、梨乃ちゃんにしか倒せない炎と手合わせ願います」
 微笑み言うシュラインが示すもの。
 それは、巨大なチョコレートケーキ。
 皆でデコレーションしたそれは、かなりゴテゴテ。
 海斗や浩太が調子に乗りすぎたことで、
 ケーキというよりは、ただの『甘い塊』と化している。
 苺やクリーム、フルーツ、キャンディ……。
 様々なもので飾られたケーキの上には、蝋燭が立ち並んでいる。
 皆に拍手されつつ、ふぅっと吹き消す、その灯り。
 賑やかなパーティの始まり。
 どうしてかな。 すごく嬉しいのに。 何でだろう。
 泣きそうになっている自分がいた。

「梨乃ちゃん。はい、これ」
「あ、ありがとうございます。開けても……いいですか?」
 受け取ったプレゼントに微笑み尋ねる梨乃。
 シュラインは、もちろんと微笑み返した。
 梨乃に、シュラインが贈ったプレゼント。
 それは、二種類のルーペ。
 ペーパーウェイト型とペンダント型。
「本を読むときに、使ってね」
「わぁ……。 可愛い。ありがとうございます」
「ふふ。 どういたしまして」
 会場の真ん中で微笑み合うシュラインと梨乃。
 既に、会場は大宴会場と化している。
 海斗は、いつもの如く、料理にがっついて。
 千華は、その隣で笑いながらワインを楽しみ。
 藤二は例によって、ナンパ三昧。
 で、浩太はレイレイと仲良く御話。
 ディテクターは、それを監視。
 何だかな。 こうなるだろうとは思ってたけど。
 まぁ、賑やかなのは良いことだ。
 楽しい雰囲気であれば、問題ない。よな? 多分。
 会場の一角、ソファに座って苦笑している凍夜。
 キョロキョロと辺りを伺い、凍夜を発見するシュライン。
 (あ、いたいた……)
 淡く微笑み、梨乃を御案内。
 お姫様を、王子様の元へ。
 (ごゆっくり)
 パチリとウィンクを飛ばして去っていくシュライン。
 何だよ、それ……。 苦笑しながらも、凍夜は立ち上がった。
 梨乃を連れて、会場の隅っこへ。
 死角に入り込んだ二人を確認することは出来ない。
「梨乃。えーと。おめでとう」
「ありがとうございます」
 照れくさそうに頭を掻きつつ、心からお祝いの言葉。
 述べた後は、プレゼントを贈る。
 シュラインに相談し、選んだプレゼント。
 ふわふわ、桃色うさぎのぬいぐるみ。
 首に巻かれたリボンが、何とも可愛らしい。
 これを、凍夜が買いに行ったのか。
 恥ずかしかったんじゃないだろうか。かなり。
 ぬいぐるみを買っているときの凍夜を想像して、クスクス笑う梨乃。
「…………」
 何故、彼女が笑っているのか。
 それを理解している凍夜は、ほんのりと耳が赤い。
「ありがとう。嬉しい。すごく、嬉しいです」
 目を伏せ、キュッと凍夜に抱きつく梨乃。
 笑う梨乃の頭を撫でやる凍夜は、幸福を覚えていた。
 誰かの喜ぶ顔に、こんなに満たされるものなのか。
 お前だからだな。きっと、いや、絶対。

「あれー? 凍夜と梨乃はー?」
 料理を頬張りつつ、辺りを見回す海斗。
 ソファに並んで座り、ワイングラスを合わせるシュラインとディテクター。
 二人は知っている。彼等が、どこにいるか。
 でも、教えてあげない。
 察してあげなさい。無粋なこと言わないの。
 顔を見合わせてクスクス笑う二人。
 彼等もまた、幸福を覚えていた。
 賑やかなパーティ会場。
 気の知れた仲間同士で祝う、誕生日。
 忘れられない思い出の一つに、なりますように。 

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
 NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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