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■INNOCENCE / 恋愛遍歴 (限定受注)■

藤森イズノ
【7433】【白月・蓮】【退魔師】
いやはや、何とも暖かい。
もう、夏はすぐそこだなぁ。
今年も、暑くなるんだろうか。
ほら、何ていうの? あれ。温暖化現象?
まぁ…夏!って感じで、嫌いではないんだけれど。
あんまり暑すぎるのも、どうかなぁ。
適度が一番だよね、何事も。
って言ったところで、どうにもならないんだろうけど。
そんなことを考えつつ、フラフラと中庭へ。
日光浴日和ですから。
(あれ?)
中庭に踏み入って、すぐ気付く。見慣れた後姿。
ベンチで空を見上げている姿、どこから見ても "仲間" な気配。
いいね。どうせなら仲良く並んで日光浴しようか。
昼食の時間まで、のんびりと。ね。
微笑み、歩み寄って声を掛ける。
「良い天気だね」
INNOCENCE // 恋愛遍歴

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 OPENING

 いやはや、何とも暖かい。夏だなぁ。
 今年も、暑くなるんだろうか。
 ほら、何ていうの? あれ。温暖化現象?
 まぁ、夏! って感じで、嫌いではないんだけれど。
 あんまり暑すぎるのも、どうかなぁ。
 適度が一番だよね、何事も。
 って言ったところで、どうにもならないんだろうけど。
 そんなことを考えつつ、フラフラと中庭へ。
 日光浴日和ですから。
 (あれ?)
 中庭に踏み入って、すぐ気付く。見慣れた後姿。
 ベンチで空を見上げている姿、どこから見ても "仲間" な気配。
 いいね。どうせなら仲良く並んで日光浴しようか。
 昼食の時間まで、のんびりと。ね。
 微笑み、歩み寄って声を掛ける。
「良い天気だね」

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 中庭で二人、仲良く紅茶を飲みつつ、まったりと日光浴。
 いいねぇ、いい天気だねぇ、平和だねぇ。
 すっかり夏だね。海とか行きたいなぁ。もちろん、一緒にね?
 他愛ない会話をする中、ふと梨乃が神妙な面持ちになった。
 え、何。違うよ? 水着目当てとか、そんなじゃないよ?
 いや、うん、それも少なからずあるけどね?
 笑って言った蓮に、梨乃はフルフルと首を振った。
 そうじゃなくて。ちょっと聞きたいことがあるんです。
 紅茶を注ぎつつ、梨乃が尋ねてきたこと。
 それは、恋愛遍歴。
 過去、どんな女の子と付き合ってきたのか、それを知りたい。
 出来うることなら、聞きたくない話でもある。
 聞いたら、何か嫌な気持ちになってモヤモヤしてしまいそうだから。
 それは理解ってる。でも、気になる。気になってしまうのは、仕方のないこと。
 聞いても、嫌になったりしませんから教えて下さい。
 微笑み言った梨乃に、蓮はアハハッと笑った。
 恋愛遍歴、ねぇ。何人と付き合ったか? って?
 それ、俺に聞くの?
 でもまぁ、キミが知りたいっていうのなら話すよ。
 でも約束してね。不機嫌になったりしないこと。約束だよ。
「そうだなぁ。何人だろ。……三桁は、いってると思うんだけど」
「…………」
 初っ端から強烈な白状ですこと。
 けれど、そんなところなんじゃないかとも思っていた。
 故に梨乃は至って普通だ。クスクス笑いながら尋ねる。
「全員と本気でお付き合いしてました?」
「あ。痛いとこ突くね」
 テーブルに頬杖をつき、ケラッと笑う蓮。
 梨乃が探ったとおり。その全員と本気で付き合っていたわけじゃない。
 寧ろ、本気で付き合ってた人数となると、かなり限られる。
 蓮が、本気で付き合ったと自信を持って言える女の子。
 それは、梨乃と、彼女の他に二人。三人だけだ。
 梨乃に関しては言うまでもない。
 現在進行形で、一番大切にしている彼女だ。
 他、二人に関しては、ちょっと切ない思い出がある。
 先ず、一人目。彼女は、梨乃も一度接触している。
 とはいえ、生者として接触したわけではない。
 一ヶ月ほど前、対峙した魔物、リビング・デッド。
 言われてみれば、すぐに思い出せるだろう。
 あの子が、本気で付き合った女の子の一人だ。
 名前は理香。ちょっと名前が似てるけれど、そこに深い意味も理由もない。
 彼女と出会ったのは、十八歳の頃。
 行きつけの、ちょっとリッチなカフェで、店員をしてた。
 パッと見て、すぐに思ったよ。可愛いな、って。
 だから、すぐに声をかけた。後々、後悔したくなかったから。
 なかなかガードの固い子でね。
 何度デートに誘っても、応じてくれなくて。
 でも諦めなかったんだ。諦めたら絶対後悔するって思ってたから。
 仕事中ですから、だとか。真面目だったんだよね、根が。
 でも何度も声をかける内、少しずつ俺に興味を持ってくれるようになった。
 彼女の性格を、十分に把握していたが故に、慎重になってたところもあるかな。
 すぐさま一線を越えようとはしないで、ゆっくり歩み寄った。
 でも端から見てれば、スローペースではなかっただろうね。
 何せ、毎日毎日カフェに通ってたから。
 今思えば、あの時の俺って、必死だったなぁ。
 でもさ、努力が実って、彼女が俺の恋人になったとき、すごく嬉しかったんだ。
 努力しただけに、っていうのもあるかもしれないけれど、
 純粋に、心から欲しがってたんだろうね。
 手に入ったときの悦びは、すごかったよ。
 また、彼女が貴族の娘さんだったってことも関係してるかな。
 いや別に、お金目当てだとか、そういうことじゃないよ?
 そんなこんなで付き合えたわけだけれど。
 その後のことは……あの時、キミにも話したよね。
 約束を破って、謝れないまま。彼女は死んでしまって。
 せっかく苦労して自分のものにしたのに。
 あっけなく、零れ落ちてしまった。
 自分の所為だって理解るが故に、そうとうキツかった。応えたよ。
 トラウマってわけじゃないんだけどね、
 彼女との付き合いで、心に決めたことがあるんだ。
 約束は、必ず守る。例え、何が起きても。
 だからさ、梨乃ちゃん。
 キミとの約束は、絶対に守るよ。何があってもね。

「もう一人は……?」
 紅茶を飲みつつ、首を傾げて尋ねる梨乃。
 蓮は目を伏せて微笑み、ポツリポツリと話し出す。
 もう一人も、似たような結末かな。
 十五歳のとき、付き合ってたコがいてね。
 うち……白月家と親交の深い家があってさ。
 そこの一人娘さんと付き合ってたんだ。
 一応、ほら、親が決めた相手っていうか。
 許婚みたいなものだったんだよ。
 でもね、俺達は心から愛し合った。
 映画やドラマなんかだとさ、親の決めた相手となんて! とかよく言うでしょ?
 俺達には、そういうのはなかったんだよね。
 普通に惹かれ合ったし、愛しいと想ったし。
 あのまま付き合っていたら、今頃は俺、父親になってたりしたのかもね。
 うん。付き合いはね、長くは続かなかった。
 うちと親交が深いってことはさ、彼女も退魔師だったわけだ。
 もう、この辺りから想像は出来るよね。
 元々、体の弱いコだったっていうのもあるけど。
 俺とつりあうように、って無茶したりするコだったから。
 彼女が亡くなった後、一年半くらい引きこもったよ、俺。
 想像できないでしょ? ふふ。でもね、そのくらい愛してたってことだよ。
 蓮の口から放たれる、彼の恋愛遍歴。
 普段から軽い感じで、何事にも動じない蓮の、切ない恋愛遍歴。
 こともあろうに、二人とも死別してしまっているなんて。
 あんまりだ。そんな終わり方。
 俯く梨乃は、同時に悟る。
 蓮は、怖くて仕方ないんじゃないだろうか。
 過去を忘れるなんて、そうそう出来やしない。
 大切な人を失った経験があるが故に、自ら一線を引いてきたのではないだろうか。
 気さくに声をかけるのも、手が早いのも、その所為だとしたら。
 深い付き合いをしたがらないのも、欲されることを避すのも、その所為だとしたら。
 (そんなの、悲しすぎます……)
 思わず、蓮の手をキュッと握って切なげな表情を浮かべた梨乃。
 そんな梨乃を見つつ、蓮はクスクスと笑った。
 ま〜た、何か変なこと考えてるね?
 まぁ、俺のことなんだろうけど。光栄だよ。
 そんな風に想ってくれるなんて、恋人として嬉しいよね。
 でも大丈夫。もう怖いだとか不安だとか、そういう感情はないよ。
 キミが払ってくれたんだ。キミのお陰だよ。
 私、何もしてないですよ? ってキョトンとするんだろうね。
 存在だよ。存在、そのものが救いになってるんだ。
 ちょっと、スケール大きすぎるかなぁ。でも事実だしね。
 だからさ、そんな顔しないで。
「紅茶、おかわり貰えますか?」
「……あっ。は、はい」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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