■INNOCENCE / 恋愛遍歴 (限定受注)■
藤森イズノ |
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】 |
いやはや、何とも暖かい。
もう、夏はすぐそこだなぁ。
今年も、暑くなるんだろうか。
ほら、何ていうの? あれ。温暖化現象?
まぁ…夏!って感じで、嫌いではないんだけれど。
あんまり暑すぎるのも、どうかなぁ。
適度が一番だよね、何事も。
って言ったところで、どうにもならないんだろうけど。
そんなことを考えつつ、フラフラと中庭へ。
日光浴日和ですから。
(あれ?)
中庭に踏み入って、すぐ気付く。見慣れた後姿。
ベンチで空を見上げている姿、どこから見ても "仲間" な気配。
いいね。どうせなら仲良く並んで日光浴しようか。
昼食の時間まで、のんびりと。ね。
微笑み、歩み寄って声を掛ける。
「良い天気だね」
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INNOCENCE // 恋愛遍歴
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OPENING
いやはや、何とも暖かい。夏だな。
今年も、暑くなるんだろうか。
何だっけ? あれ。温暖化現象? それだ。
まぁ、夏! って感じで、嫌いではないんだけれど。
あんまり暑すぎるのも、どうかな。
適度が一番だと思うんだ、何事も。
って言ったところで、どうにもならないんだろうけど。
そんなことを考えつつ、フラフラと中庭へ。日光浴日和だし。
(ん?)
中庭に踏み入って、すぐ気付く。見慣れた後姿。
ベンチで空を見上げている姿、どこから見ても "仲間" な気配。
どうせなら仲良く並んで日光浴しようか。
昼食の時間まで、のんびりと。
微笑み、歩み寄って声を掛ける。
「よぉ」
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「あ、あの。 話したくなければ、無視していいですよ」
わきゃわきゃと両手を振って、無理にとは言わないから、とアピールする梨乃。
そういう必死な姿を見ると、可笑しくて仕方ないな。
テーブルに頬杖をつき、目を伏せて苦笑している凍夜。
梨乃がワテワテしている理由。それは『追求』によるものだ。
仲良く紅茶を飲みながら他愛ない話をして、日光浴を満喫していた二人。
けれど、ふと。 梨乃は気になった。いや、気になってしまったと言うべきか。
別に聞いたところで、何がどうなることもないのだろうけれど。
凍夜が、過去にどんな女性と付き合ってきたのか。気になる。
恋愛に関して、淡白っぽいところがあるが故に、気になる。
ポロリと尋ねてはみたものの、梨乃は、すぐさま慌てた。
よくよく考えたら、ものすごく失礼なことを聞いてるんじゃないだろうか。
いくら付き合ってるからといって、詮索し過ぎではないだろうか。
そう思うが故に、梨乃は無理にとは言わないから、と即座に付け足した。
とはいえ、気になっていることに変わりはない。
話さなくてもいいですよ、と言ってはいるものの、
梨乃は、チラチラと様子を伺うような視線を送ってきている。
お前って不器用だよな。変なとこで抜けてるっていうか。
隠し事だとか、そういうの絶対できないタイプだよ。今更だけど。
まぁ、別に話したくないわけじゃない。
聞きたいってんなら、話してやるよ。
ただ、ちょっとな……。 お前にはキツい話かもしれない。
妙にヘコまれたりしたら、どうしていいかわからなくなるしな。
まぁ、そうなったらそうなったで。その時考えりゃいいか。
紅茶を飲みつつ、凍夜は、自身の恋愛遍歴を話し出した。
過去に付き合ったと言える相手は一人だけ。
それも、正式に、どちらかが付き合おうだとか、そういうこともなかった。
十四歳の頃。相手は、十五歳。一つ上だった。
同じ中学に通う、面倒見の良い女だった。
一緒にいるのが当たり前。いつしか、そんな関係になっていた。
いつからだったんだろう。 もう思い出せないけれど。
いつも傍にいた。あいつは、いつも傍にいたよ。
だからってこともないんだろうけど、自然だった。
周りに茶化されて、何となく恋人っぽくなったときも、
そこに違和感や不満を抱かなかったのも、全て自然の成り行き。
イベントがあれば一緒に満喫したし、誕生日は一緒に過ごして祝った。
何の変哲もない、普通のカップルだったよ。
まぁ、校内では、ちょっとした噂になってたみたいだけど。
どんな噂かって? まぁ、その、何だ。
よくあるだろ? 公認カップルだとか。あんな感じだよ。
何となく付き合いだしたのは確かだけど、そこに妥協とかはなかった。
お互いに必要としていたし、想いあってもいた。
人前でイチャついたりだとか、そういうことは一切なかったけど。
幸せだったかって? そうだな。幸せ……だったんじゃないか。
いつも傍にいるってことに、すごく安心感を覚えていたのは確かだな。
順調に交際を続けた二人。噂の相思相愛カップル。
凍夜は淡白に話しているけれど、実際、とても幸せだった。
充実していたし、このままずっと、この関係が続けばいいとも思っていた。
けれど、運命というものは実に残酷で過酷なものだ。
二人が付き合いだして、ちょうど一年。
その日、忘れられぬ事件が起きた。
どうしてだろう。何故、彼等が悲劇の中心に置かれたのだろう。
まだ、あどけなさの残る彼には、過酷すぎた。あまりにも酷い仕打ちだ。
あっという間。あっという間に、手から零れ落ちた幸せ。
失った、最愛の妹。唯一の家族。
妹は、彼女によく懐いていた。彼女もまた、妹を可愛がっていた。
三人で食事するのが、何よりの楽しみだったのに。
もう二度と、三人で仲良く笑い合うことは出来ない。
妹を失ってからの凍夜は、塞ぎ込むというよりは、少しイカれていた状態で。
一人でブツブツ何かを呟いたり、突然、壁を叩いたり。
崩壊していく心。それは理解っていた。けれど、止まらない。
胸の内に芽生えた憎しみは、大きくなるばかりだ。
壊れて我を失いがちになってからも、彼女は傍にいてくれた。
不安や怒り、悲しみ。それらを全て包み込もうとしてくれた。
喪失感を埋めようと、必死になってくれる姿。
ありがたかった。心から、愛しいと思った。
でも、だからこそ。一緒にはいられない。そう判断した。
復讐に身を焦がす。仇を討ったところで、妹は戻ってきやしない。
それは理解ってる。でも、このまま壊れていくだけなんて御免だ。
その決意が固まったとき、凍夜は彼女に別れを告げた。
嫌だなんて言わず、すんなりと受け入れてくれたのもまた、彼女の優しさだった。
彼女とは、それっきり。
今、どこで何をしているのか、まったくわからない。
想いを零すかのように話した凍夜。
すべてを語り終えた後、彼は遠い目をしていた。
戻りたいだとか、そういう想いはないけれど。
他に、何か手段はあったんじゃないだろうか。
あそこまで尽くしてくれた女に対して、あの行為は酷いんじゃないだろうか。
周りが見えていなかっただなんて、ただの言い訳だ。
何か、返したか? 恩返しってわけじゃないけれど。
別れようと告げる前に、ただ一言。
ありがとう、と言うべきだったんじゃないのか?
空を見上げ、眉を寄せている凍夜を見つめ、梨乃は、そっと彼の手を握った。
ただ、触れたかっただけ。触れていないと、消えてしまいそうで。
ふと視線を落とせば、そこには不安気な顔の梨乃。
あぁ、ほらな。 やっぱり、そういう顔、するんだ。
お前の辛そうな顔なんて見たくないんだ、俺は。
だから、ちょっと躊躇った。話すことを。
でも、不思議だな。お前の、その目を見てると、気持ちが軽くなる。
話して良かった……いや、もっと、聞いてくれて助かった? あぁ、そんな気持ちだ。
悲しい顔しないでくれ。おかしくなりそうだ。
なぁ、梨乃。 代わりってわけじゃない。これは先に言っておく。
ただ一言、お前に今、伝えたいことが、伝えるべきことがあるんだ。
「ありがとう」
その言葉一つで。全てから解き放たれたような気がした。
淡く微笑み返す、その笑顔に、改めて誓おう。
もう二度と、愛しい人を失うことがないように。
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7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
シナリオ参加、ありがとうございます。
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2008.06.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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