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■INNOCENCE / 男性不信 (限定受注)■

藤森イズノ
【7433】【白月・蓮】【退魔師】
イノセンス本部、一階セントラルホール。
何やら人だかりが出来ている。
中心にいるのは、千華と…新入りエージェント。
「お人形さんみたいですねぇ」
「ふふ。でしょ? 梨乃と組ませて、アイドルユニットとかいけるんじゃないかしら?」
「あははっ。何、言ってるんですかぁ。そんなの嫌ですよね〜?」
「え、えっと。は、はい…ちょっと……」
俯き、照れくさそうに笑う女の子。
本日、イノセンスに加入した新入り『ナツミ』
梨乃は笑って回避したが、イケるかもしれない、アイドルユニット。
身の丈も梨乃と同じくらいだし、雰囲気も柔らかくて可愛い。
擦れ違えば、誰もが振り返る。そのくらい、可憐な女の子。
賑わっているセントラルホール。
レストランで、三時のおやつを食べ終えた海斗と藤二はキョトン。
「何だ?何か、賑わってるなー」
「お。めっちゃ可愛いっ」
「んぁっ?あ、おい、ちょっと待てよ。藤二ぃぃ〜」
二階から見やっても、十分に理解る可愛らしさ。
黙っていられるはずもなく、藤二は階段を下りて行く。
INNOCENCE // 男性不信

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 OPENING

 イノセンス本部、一階セントラルホール。
 何やら人だかりが出来ている。
 中心にいるのは、千華と梨乃と……新入りエージェント。
「お人形さんみたいですねぇ」
「ふふ。でしょ? 梨乃と組ませて、アイドルユニットとかいけるんじゃないかしら?」
「あははっ。何、言ってるんですかぁ。そんなの嫌ですよね〜?」
「え、えっと。は、はい……ちょっと……」
 俯き、照れくさそうに笑う女の子。
 本日、イノセンスに加入した新入り『ナツミ』
 梨乃は笑って回避したが、イケるかもしれない、アイドルユニット。
 身の丈も梨乃と同じくらいだし、雰囲気も柔らかくて可愛い。
 擦れ違えば、誰もが振り返る。そのくらい、可憐な女の子。
 賑わっているセントラルホール。
 レストランで、三時のおやつを食べ終えた海斗と藤二はキョトン。
「何だ? 何か、賑わってるなー」
「お。めっちゃ可愛いっ」
「んぁっ?あ、おい、ちょっと待てよ。藤二ぃぃ〜」
 二階から見やっても、十分に理解る可愛らしさ。
 黙っていられるはずもなく、藤二は階段を下りて行く。

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 ほほぅ、なるほど。 あの子がナツミちゃんか。
 二階からホールを見下ろし、ニコニコと微笑んでいる蓮。
 千華から散々聞かされてはいた。明日、新人さんを連れてくるから、と。
 同時に、ちょっかいだしちゃ駄目よ? とも警告された。
 普段は、そんな警告しないのに。おかしいなぁと思っていた蓮。
 千華は、蓮のナンパな性格を理解している数少ない一人なのだ。
 けどまぁ、なるほどね。理解ったよ。どうして警告したのか。
 千華さんの、お気に入り。とか、そんなところなんだろうね。
 凄く嬉しそうだし、凄く自慢気に笑ってるもの。
 まぁ、確かに。かなり可愛いね。そうとうモテるんじゃないかな、あの子。
 賑わうホール、その中心で話す、千華と梨乃とナツミ。
 その光景を微笑ましく見ていたのだが、ふと蓮は首を傾げた。
 (うん?)
 藤二と海斗が中心に踏み入った瞬間、雰囲気がガラリと変わったのだ。
 全体の雰囲気が、ということではなくて。ナツミの様子がおかしい。
「よろしくね〜。って、あらら?」
 手を差し伸べ、握手を求めた藤二。けれどナツミは、ササッと千華の背中に隠れてしまった。
 遠くてよくわからないけど、どうやら怯えているようだ。
 服を掴み、オドオドしているナツミの頭を撫でて、千華は言った。
「ちょっと、やめて。この子、男性不振だから。あんたの出る幕なしよ」
「男性不振? あららら……そうなの?」
 覗きこんで尋ねれど、ナツミは隠れたまま。
 頷くこともなく、ただただ目を泳がせている。
「男が嫌いなのかー。 何か、理由があるのか?」
「ちょっと。デリカシーなさすぎ。いいから、向こう行っててよ」
「何だよ、それっ。感じわるー!」
 梨乃に背中を押されつつ、不満を露わにした海斗。
 一部始終を見ていた蓮は、ふむ……と腕を組み、思案した。
 なるほど。男性不振か。それで警告したってのもあるのかな。
 それにしても、かなり重度だね。完全に怯えてるし。
 ま、藤二だしねぇ。男が苦手なら、キツい相手だとは思うよ。
 うーん。まぁ、初々しくてソソるってのはあるけど、ちょっと問題だよね。
 組織に入った以上は、そこんとこ改善していかないと。
 嫌でも、男と一緒に仕事しなきゃならない時だってあるだろうし。
 何より、そんなに可愛いのに、苦手だからって距離を置いてちゃ勿体ないよ。
 キミなら、嫌ってほどに声が掛かるだろうし。
 うん、俺もね。声かけたいって思うよ。
 出来うることなら、一緒に食事とかもしたいな。
 改善すること。それは、絶対にキミの為になるよ。うん。
 ということで。いっちょ、一肌脱ぎますか。

 ニコニコと微笑みながら、人だかりの中心へ踏み入った蓮。
 ちょっと、蓮くん。 と、千華が止めたのにも関わらず、ナツミに近寄る。
「ひっ……」
 凄まじく怯え、泣きそうな顔をしてしまうナツミ。
 蓮が言ったとおり、これはかなり重度だ。
 彼女が男性不振に陥ってしまった、その理由。それは義兄にある。
 幼い頃から、悪戯を繰り返されてきたらしい。
 そこから救い出すべく、千華がスカウト。半ば強引に連れてきたらしい。
 何度も繰り返された悪戯。忘れることの出来ぬ、消えない傷。
 心に負ったそれは、そう容易く払拭できるものではない。
 ナツミの男性不振を克服する。それは、かなり難しい任務と言える。
 そこで蓮がとった行動。それは、何とも珍妙なものだった。
「はは。ナツミちゃん。そんなに怖がらないで。私ね、こんな姿だけど……女だから」
 何を言い出すのか。蓮は、自分が女なのだと白状した。もちろん嘘だ。
 どこから見ても男性にしか見えない。ナツミは、チラチラと蓮を見つつ首を傾げる。
 白状(嘘)から始まる、白月・蓮の巧みなトリックプレイ。
 絶滅した魔物に呪いをかけられて男の姿に変えられてしまった。
 元に戻る為、その方法を探す為、私はイノセンスに所属している。
 いつになるか、まったくわからないけれど。絶対に、もとの姿に戻る。戻ってみせる。
 神妙な面持ちで言う蓮に、苦笑するしかない千華たち。
 藤二に至っては、よくもまぁ、そうポンポンと思いつくもんだな、と感心しているほどだ。
 演技派な蓮の言葉を、すんなりと信じてしまったナツミ。
 そ、そうなんですか……小さな声で呟いたナツミは、不安気な表情だった。
 そんなナツミの手を引き、ニコリと微笑んで歩きだす蓮。
 戸惑うナツミを他所に、蓮は彼女を連れて、本部内を歩き回る。
 男と手を繋ぐ、だなんて出来るはずのない行為だ。
 だが、嘘を本当だと信じ込んでいるがゆえに、大して抵抗がない。
 それどころか、可哀相……と、蓮に同情しているほどだ。
 案内がてら、あちこちを回って説明してあげた蓮。
 二人はそのまま、レストランへ入り、お茶を飲んだ。
 この辺りは、蓮の策略混じり。一緒に食事したい、その辺。
 満面の笑みで、詳しく色々と説明してくれた蓮に、ナツミは確かな感動を覚えた。
 どうなるのか、すごく不安だった。やっていけるのかなって不安だった。
 千華や梨乃は優しくて頼りになる。でも、いつまでも頼るわけにもいかない。
 そう気負っていた矢先に、そういう不安を払うかのように、蓮が連れ回してくれた。
 男性に対する恐怖は拭えないままだけど、ワクワクしてる。
 あなたとも、仲良くなりたい。そして、一緒に探したい。
 あなたが、もとの姿に戻る、その方法を一緒に探したいな。
 気さくで優しい。そんな蓮に、信頼を寄せたナツミ。
 向かいで紅茶を飲むナツミは、何とも嬉しそうだ。
 うわぁ。可愛いね。笑うと、より一層可愛いね、キミ。
 俺でさえ、こんなにメロメロになっちゃうんだもの。
 他の男なんて、瞬殺だよ。あっという間に夢中になっちゃうよ、絶対にね。
 テーブルに頬杖をつき、微笑みながらナツミを見やっていた蓮。
 もう少し、様子を見ていたいなぁとも思うけど、ダラダラ続けるのもね。
 そろそろボロが出てきそうだし。それでバレたら失敗しそうだから。
 クスッと笑い、蓮はポツリと呟いた。
「どうだった? 俺のエスコート」
「えっ……?」
「改めて、はじめまして。白月・蓮、二十一歳、男です。よろしくね」
「……!!」
 カチャン、とカップをテーブルに置き、硬直してしまうナツミ。
 いやいや、そんな、まさか。冗談ですか? からかってるんですか?
 怯えつつ言ったナツミに、蓮は言った。
「何なら、確かめてみる?」

 どうなることやらと、こっそりと身を潜めて様子を伺っていた千華たち。
 けれどまぁ、何とも見事なもので。
 向かい合って話す蓮とナツミは、さながらカップルのようだ。
 若干怯えてはいるものの、まだ疑問が晴れないのだろう。ナツミは必死に探っている。
 男と二人、向かい合って御茶を飲んでいる。一生できないことだと思っていたけれど。
 実際、今、ナツミは、紛れもなき『男』と言葉を交わしている。
 さっきまでとは大違いだ。ぎこちなくはあるものの、話せてるではないか。
 何だかな。こうも、あっさり改善されると、俺、すげぇ惨めなんだけど。
 物凄い勢いで拒絶されたんだよ? 俺は。何か……負けた気分だ。
 妙な敗北感に苦笑している藤二。その隣で、海斗はケラケラと笑う。
 蓮の方が、藤二よりも上手(うわて)なんじゃないのか、と。
 まだ少し、時間は掛かるだろうけど、キッカケは得た。
 これからゆっくりと、改善していけばいい。
 大丈夫だよ。ここには、酷い男なんて一人もいないから。皆、優しいから。
 うん? まぁ、ある意味、酷い男っていうなら、二人くらいいるかもだけどね?
 ナツミと楽しそうに話す蓮を見つつ、複雑そうな顔をしている梨乃。
 いや、気にすることはない。あれは、カウンセリングのようなものだから。
 そうよ、あれは蓮さんの優しさなの。放っておけない、そういう性格だから。
 一人、何かを納得しようと頷いている梨乃を見て、千華はクスクスと笑う。
 あなたも、色々と大変ねぇ。 悩みのタネ、また一つ増やしちゃったかしら。ごめんね?

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.29 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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