■INNOCENCE / スベテの始まり -スカウト-■
藤森イズノ |
【7575】【黒咲・夜宵】【呪術師・暗殺者】 |
異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。
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INNOCENCE // スベテの始まり -スカウト-
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OPENING
異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。
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「あー。感じる、感じるよ。あ〜〜〜」
「…変な声、出さないでよ」
「だって。しゃーないだろ。感じるんだから」
「もっとこう…他の言葉で表現できない?」
「できねー。これが一番しっくりくるもん」
「あっそぅ…」
「お前も感じるだろ?ほら、見てみろよ」
「見てるわよ。さっきから…」
茂みに隠れて、ガサゴソガサゴソ。
身を潜めて何をしているのか。
別に、イヤラシイことをしているわけではない。
少年と少女は、ただ、ジッと見やっているだけ。
大樹の下で、読書している女性を。
青白い光に包まれた、不思議な森、魔森。※マモリ
異界の辺境にある此処は、少年と少女にとっては "庭" のようなものだ。
何故なら、この森に彼等の "家" が在るから。
彼等が住まうのは、美しき白亜の館。
そこは、INNOCENCEという組織の本部。
そう、彼等はイノセンスに身を置くエージェントだ。
新たなエージェントを獲得する行為 "スカウト" の為、本部を出て僅か三分。
彼等の目に留まったのは、中性的な顔立ちの凛とした女性。
パッと見ただけで、容易に理解る。能力者だと。
少年が発している "感じる" とは、彼女の潜在能力に対するもの。
まだ曖昧ではあるものの、彼女の能力は何とも魅力的。
惹かれるな、というのは無理な話だ。
「よし。行くぞっ」
「あ。ちょっと…」
ガサッと茂みから飛び出し、女性へと駆け寄る少年。
突如、茂みから現れた少年に、女性は視線を上げた。
こうして間近で見ると、ますます…美しい。
ちょっとキツそうな印象も受けるが、それは、あくまでも外見の話。
この女性の名前は、黒咲・夜宵。十八歳。
"働き蜂" という名前で何でも屋として稼動する彼女の能力は、
魔蟲を操る "魔操" と、毒などを生成する "呪術" が基本。
暗殺者としての顔・名前もあり、かなり名も知れている。
とはいえ少年は、彼女のスベテを知るわけではない。
理解っているのは、彼女が魅力的な逸材だということ。それだけ。
「ねー。ウチに入らない?」
唐突に、早速スカウトする少年。
夜宵は、もちろん何のことやら理解らず、首を傾げた。
少年を追ってきた少女が、パシンと腕を叩いて叱る。
「いきなり過ぎるでしょ。馬鹿っ」
「何だよ。わかりやすくてイイだろ?」
「駄目。ちゃんと順番に、ゆっくり説明していかなきゃ」
「めんどくさー」
息の合った少年と少女の掛け合い。
かなり、長い付き合いなのだろう。
もしかすると、幼馴染だとか…そんなところかもしれないわね。
目の前で言い合う二人に苦笑し、夜宵は読んでいた本をパタンと閉じて言う。
「聞かせてもらえる?もっと詳しく、ね」
少年と少女(というか主に少女)から説明を聞き、理解ったことは大きく三つ。
一つは、彼等がイノセンスのエージェントであること、
もう一つは、彼等が予想通り、幼馴染だということ。
最後に、彼等の名前。少年の名は、黒崎・海斗。少女の名は、白尾・梨乃。
スカウト目的で声を掛けた二人は、一生懸命説明した。
所属すれば、金に困ることはなくなるだとか、
面白い奴ばっかで飽きないよだとか、個室も貰えるよだとか…。
メリットばかりの説明。まぁ、スカウトだから当然なのかもしれないけど。
おそらく、デメリット…面倒なことも沢山あるのだろう。
ないわけがない。そもそも、組織に所属するということ自体、そういうことだ。
けれど、夜宵は微笑み「構わないよ」と返した。
ギャンブルと同じ。
負けるときのことを考えていては、決して勝てない。
それに、面倒かもしれないけど、面白そうだ。
イノセンスは近頃評判の組織だということもあり、
触り程度だが、情報も頭に入っている。
興味深い組織だな、と惹かれていたのも、また事実。
この状況で、断るなんて勿体ないだろう?
夜宵が、あっさりとOKしてくれたことに大喜びの海斗。
梨乃は、本当に良いんですか?と不安気な表情だ。
そんな梨乃の頭に、ぱふっと手を乗せて、夜宵はクスッと笑う。
「あなた、苦労してるでしょ」
「えっ…と。はい…」
「ふふ。まぁ、アイツの相手…楽しそうでもあるけどね」
前方をスキップ気味で行く海斗の背中に微笑む夜宵。
海斗の後を追い、夜宵は向かう。イノセンス本部へ。
*
そのあまりの美しさに眩暈を覚える、白亜の館。
イノセンス本部を行く夜宵は、キョロキョロと辺りを窺う。
魔術…で構成されてるっぽいわね。本部丸ごと。
だいぶ慣れて、あちこち鮮明に見えるようにはなったけれど。
変な感じね、これ。ふわふわしてて…歩いてる感じがしないわ。
僅かな違和感を拭えぬまま、海斗と梨乃に案内されて、
夜宵は、本部一階、最奥へ。
これまた美しい銀色の大きな扉。
扉には 【 -- MASTER ROOM -- 】 と書かれている。
マスター…ということは、組織のトップね。
面接みたいなものかしら。久しぶりね、この感じ。
勢い良く扉を開けて、中へと入っていく海斗。
「マスター!スカウト成功したよー!」
海斗が駆け寄った先には、ソファに座る老人が。
灰色のローブを纏い、膝に紫色の猫を乗せている。
ゆっくりと歩み寄り、老人と向かい合って、スベテを理解する。
何て柔らかく、それでいて鋭い魔力か。
こうして向かい合っているだけで、膝をついてしまいそうだ。
「はじめまして」
スッと頭を下げ、挨拶する夜宵。
老人…マスターは、ジッと夜宵を見つめて "探"る。
潜在能力は勿論、性格、今まで歩んで来た道、果てには未来まで。
それら全てを纏めた結果、夜宵は申し分ない逸材という結論に至る。
まだ少し荒く…危うくもあるが、それがまた魅力じゃな。
この先、どこまで伸びるか…実に楽しみじゃ。
コツンと杖で床を叩き、マスターは贈呈する。
ポン、と夜宵の手元に出現した…不思議な銃。
それは、魔銃と呼ばれる代物で、
イノセンスに正式所属しているエージェントにしか与えられぬ武器。
魔銃の贈呈。それは、すなわち "許可と歓迎" の意。
受け取り、手にした時点で、約束される。
おぬしの心身は、わしが預かろう。
思う存分、笑って楽しんで、働いておくれ。
願ってやまぬよ。おぬしに、大いなる成長をもたらす経験となることを。
晴れて、イノセンスのエージェントとなった夜宵。
マスタールームから出た後は、本部内を一通り案内される。
実に充実した組織だ。生活に、事欠くことはない。
広くて、慣れるまでは色々と大変そうではあるが…。
「はいっ!そして、ここが〜!夜宵の部屋でございます〜!」
ササッと扉を示して言う海斗。
本部四階、夜宵に与えられた個室。
施設だけではなく、個室も充実している。
ベッド、ソファ、テーブル、テレビ、パソコン…一通り揃っている。
身一つで、すぐさま生活が可能だ。
「へぇ…。良いわね」
部屋の雰囲気も、レトロで好み。
満足気に微笑み、室内を歩いて色々と確認。
梨乃に、あれこれ質問しつつ室内を物色していたときだった。
「スカウト、成功したんだって?凄いじゃない」
ヒョコッと開いた扉から顔を出した女性。
スレンダーで、気品のある…この女性も、イノセンスのエージェント。
名前は、青沢・千華。海斗や梨乃にとって、姉のような存在だ。
「あなたが、新人さんね。よろしく。青沢・千華です」
「よろしく」
握手に応じ、微笑み返す夜宵。
千華と手が離れた瞬間、続々と来客者が。
「おじゃまします。あ。あなたが噂の…よろしく御願いします」
「おっ。めっちゃ可愛いじゃねぇか。でかした、海斗!」
遠慮がちに入室し、ペコリと頭を下げた少年と、
入室して早々、夜宵を見やって海斗を褒めた男性。
少年の名前は、黄田・浩太。男性の名前は、赤坂・藤二。
彼等もまた、イノセンスに所属するエージェント。
うまいこと揃ったので、補足しておこう。
海斗・梨乃・藤二・千華・浩太。
この五名は、ただのエージェントではない。
トップエージェントと呼ばれる、重要な存在。
彼等五名こそが、組織イノセンスの核でもある。
あらゆる意味で、欠かすことのできない存在だ。
「噂って…私、ついさっき来たんだけど?」
浩太が発した "噂の" という言葉に苦笑する夜宵。
イノセンスは、実に情報回りが早い。
どんな事柄も、三分後には本部全域に広まっている。
…噂以上に、在籍者が多いみたいね。
全員に挨拶するのは…大変かも。
先々のことを思い苦笑していると、腰に何かが触れる感触。
ん?と見やれば、至近距離に藤二。
夜宵の腰に腕を回し、藤二は言った。
「キミ、俺の彼女にならない?」
柔らかく微笑みつつ、何とも唐突な提案。
藤二の発言に呆れている梨乃と千華を見て、夜宵は悟る。
彼が、節操なき男であることを。
「あなたと付き合って退屈しないのなら、付き合っても良いわ」
「ははっ。そりゃ、勿論。退屈なんて…」
「ただし」
「うん?」
「浮気とかしたら、呪い殺すわ。躊躇なくね。それも良いなら、付き合ってあげる」
「………」
ポリポリと指先で頬を掻いて、黙りこくってしまう藤二。
苦笑を浮かべているその姿に、夜宵はクスクス笑う。
「冗談よ」
「っはは。だよね。えーと?どこからどこまでが冗談なのかな?」
*
しつこく口説いてきた藤二。
いい加減にしなさいと梨乃と千華に叱られ、引き摺られて部屋の外へ。
海斗と浩太は、ケラケラ笑いながら、彼等を追って。
ようやく落ち着いて、一息つける。
与えられた自室、ソファに腰を下ろして、夜宵は見やる。
窓の外、輝く銀月と、踊る星々。
目を伏せ、自然と淡く微笑んだのは、期待の現われ。
(うん…良い感じ。退屈しなさそうね)
イノセンスで過ごす時間が、彼女にとって意味あるものとなりますように。
願ってやまぬよ。おぬしに、大いなる成長をもたらす経験となることを。
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
7575 / 黒咲・夜宵 (くろさき・やよい) / ♀ / 18歳 / 呪術師・暗殺者
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)
■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは! ようこそ、いらっしゃいませ!(*'ー'*)
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
是非。また、ご参加下さいませ^^
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2008.06.06 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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