■INNOCENCE / おめでとう (限定受注)■
藤森イズノ |
【7433】【白月・蓮】【退魔師】 |
べりっと剥がした、日めくりカレンダー。
いよいよ、明日…。大切な人の誕生日。
大したことは、出来ないかもしれないけれど。
気持ちを込めて、精一杯、お祝いしてあげたいなと思う。
ただ「おめでとう」って言うだけじゃ物足りない。
だから、色々考えた。素敵なお祝いになるように。
忘れない、大切な思い出になるように。
心を込めて、祝福するんだ。
喜んでくれますように。
微笑んでくれますように。
あなたが生まれた、特別な日だから。
|
INNOCENCE // おめでとう
------------------------------------------------------
OPENING
べりっと剥がした、日めくりカレンダー。
いよいよ、明日。大切な人の誕生日。
大したことは、出来ないかもしれないけれど。
気持ちを込めて、精一杯、お祝いしてあげたいなと思う。
ただ「おめでとう」って言うだけじゃ物足りない。
だから、色々考えた。素敵なお祝いになるように。
忘れない、大切な思い出になるように。
心を込めて、祝福するんだ。
喜んでくれますように。
微笑んでくれますように。
あなたが生まれた、特別な日だから。
------------------------------------------------------
「蓮さん。ちょっといいですか?」
「ん? 開いてるよ? どうぞ?」
そう返答したものの、反応がない。
何やら、ガサゾソと物音はするけれど、扉が開く様子はない。
(……?)
何だ? と思い、ソファに寝そべり本を読んでいた蓮は、立ち上がって扉に向かう。
妙な物音はするんだけどな? 首を傾げつつ扉を開けると、そこには無論、梨乃がいた。
いたのだが……溢れんばかりの荷物を抱えている。
まさに、両手が塞がっている状態だった。
廊下には、いくつか荷物が置かれている。
少しだけ手空きにして、扉を開けようとしたのだろう。
「うわぁ。どうしたの、これ。何事?」
荷物を持ってやりつつ、苦笑して尋ねた蓮。
数ある荷物の中でも、一番大きな箱を梨乃が持っている。
それ、持つよ? と言ったのだが、梨乃は即座にそれを拒んだ。
物凄いスピードで拒絶されたことに、違和感を覚えた蓮。
おかしいな? いつもなら、何だかんだで、すみませんって言いつつ預けるのに。
よっぽど大事なものが入ってるのかな?
必要ないのなら、無理に奪うことはしない。
蓮はクスリと笑い、廊下に置かれた荷物のみを手に取った。
そこで、ハッと気付く。
手に取った荷物……箱やら袋やら。
それら全てに『蓮へ』と記されているではないか。
俺宛て……の荷物、を梨乃ちゃんが運んでるの?
っていうか、凄い数だよ? 何だってまた、こんなに……って。
「あ」
首を傾げて十秒後。
贈り物の山の理由に、蓮は気付いた。
そうか。今日、俺、誕生日だ。
梨乃が運んできた荷物は全て、仲間からの贈り物。
自分で渡せば良いのに、と梨乃は言ったが、ついでに渡して来てよ、と頼まれた。
誕生日は、彼女と一緒に過ごしたいだろう。そう思うが故の、粋な計らい……?
皆に頼まれて、届けに来たはいいが、あまりの数に、扉を開けることが出来なかった。
一番大きな箱を手放せば、すぐにでも開けられたんだろうけど、それは出来ず。
出来なかった理由は、至って簡素なものだ。
「あはは。みんな、好き勝手だなぁ」
贈り物を確認し、ケラケラと笑う蓮。
海斗からのプレゼントは、プラモデル(完成品)で、
千華からのプレゼントは、この夏限定のフレグランス。
浩太からのプレゼントは、シルバーアクセサリーで、
藤二からのプレゼントは、まぁ……何ていうか、玩具。
それぞれ、自分が好きなものを贈りつけてきたという感じが否めない。
まぁ、やっぱりプレゼントされると嬉しいんだけど。
クスクス笑って、蓮はチラリと梨乃を見やった。
「で?」
少し首を傾げて尋ねた蓮。
その言葉の後に続くのは、おそらく、こういうことだ。
梨乃ちゃんからの、プレゼントは?
蓮の言葉に微笑み、梨乃は、おずおずと、遠慮がちに大きな箱を差し出した。
なるほどね? やっぱり、それがキミからのプレゼントだったんだ。
渡す前に、俺が手にするのが嫌だったんだね?
ふふ。本当、可愛いよね。そういうところ。
さてさて。何が入っているのかな?
微笑みつつ箱を開けていくものの、既に中身は丸わかりだ。
蓋を少し取った瞬間、ふわりと甘い香りが部屋に充満したから。
箱の中には、巨大なクランベリータルト。
梨乃の手作りスイーツだ。
ケーキよりもタルトが好きな蓮の為、朝早くから作ったもの。
「おぉ〜。美味しそうだね。食べてもいいかな?」
「あっ、は、はい。でも、あの……」
「ん?」
首を傾げると、梨乃は照れ臭そうにフォークを手に取り、タルトにサクリ。
掬った一欠けらのタルトが乗ったフォークを、蓮の口元に運んだ。
運ぶだけならまだしも? 梨乃は言う。
「はい。あーん」
「…………」
「あ、あーん。して下さい……」
「あははははっ!」
誕生日だから? 誕生日だから、特別サービスみたいな感じ? それ?
ちょっとビックリしちゃったけど、いいね、こういうの。
うんうん、可愛いよ。いつにもまして、可愛いよ。
言われるまま口を開け、手作りタルトを食べさせてもらう蓮。
どうですか? の問いに、蓮は言った。
「もちろん、美味しいよ」
大切な人、大好きな人の為、梨乃が用意したプレゼントは、タルトだけじゃない。
むしろ、タルトは、おまけのようなものだ。メインは、こっち……。
「うわぁ……。マジで?」
懐から出した、小さな箱を差し出した梨乃。
蓋を開けて、蓮は先ず驚いて。次いで、悦びを露わにした。
箱の中で輝いていたのは、ブラッククリスタルのピアス。
かなり珍しい黒水晶の加工品ということで、高価な代物だ。
一週間ほど前か。梨乃と一緒に買い物に、街へ行った際、蓮は、このピアスに一目惚れした。
すぐにでも買って、自分のものにしてしまいたい。
そうは思ったけれど、手持ちが少なかったこともあり、渋々断念。
貯金を崩してでも買いたいな、とも思ったが、さすがに、それはどうかと思い。
一旦諦めたものの、ずっと気になっていたブラッククリスタルのピアス。
それが今、自分のものになった。喜ばないはずがない。
あの日の買い物は、確かに、夕飯の材料調達という目的もあったけれど。
実は、こっそりとリサーチも兼ねていた。
蓮は、何を欲しているのだろう。
それを知りたかった梨乃にとって、このピアスに蓮が向ける眼差しは確固たる答えとなった。
正直、贈り物にしては高価すぎるものかもしれない。
けれど、幼い頃からイノセンスで働き、蓄えている梨乃にとっては、微々たるものだ。
蓮が喜んでくれるなら、何だってしよう。そう思っているから。
「やっぱり、似合いますね」
「そう?」
「はい。とっても、かっこいいです」
蓮の耳へ、ピアスをつけてやり、ニコリと微笑んだ梨乃。
かっこいいよ、という言葉もまた、普段はそうそう聞けない言葉だ。
贈り物と一緒に、梨乃のサービス。
このまま、今日は一緒に眠ってくれたらなぁ? なんて、それは強請りすぎ?
冗談っぽくも本気で言った蓮に、梨乃はクスクス笑った。
今日は特別。あなたが生まれた、特別な日。
主役は、主人公は、あなただから。
何でも全て、あなたの、仰せのままに。
「いいですよ」
少し恥ずかしそうに笑って言った梨乃。
蓮は少し驚いたものの、すぐさま笑って、彼女をギュッと抱きしめた。
誕生日、万歳。
毎日が誕生日だったら、最高なんだけどな。
はいはい、ここまで。
これ以上、部屋の中を覗くのは野暮ってものです。
どうしてって? そのくらい、理解るでしょ?
理解ってて訊いてる? いやはや。あなたもまた、野暮ですね。
------------------------------------------------------
■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
シナリオ参加、ありがとうございます^^
-----------------------------------------------------
2008.07.15 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------
|