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■INNOCENCE -another spiral- // 歓迎の宴■

藤森イズノ
【7433】【白月・蓮】【退魔師】
新たなる仲間を歓迎しようぞ。
今宵は満月。夜空も、そなたを歓迎しておる。
突然の招待に、戸惑ったことじゃろう。
けれど、おぬしは、ここに来た。
導かれるままに、わしらと出会い言葉を交わした。
その瞬間から、歯車は回り始めたのじゃよ。
止める術はない。その権利もない。
勝手な言い分だと文句を言うか?
それもまた、至極当然の成り行き。
じゃがな、おぬしは拒めぬはずじゃ。
求められることに、心から反発など出来ぬはずじゃ。
どうしてか。また、そこで戸惑うのじゃろうな。
簡単なことじゃよ。
おぬしが在る理由。それが、答えじゃて。
INNOCENCE // いつか、また、どこかで

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 OPENING

 誰が言い始めたわけでもない。
 集合がかかったわけでもない。
 それなのに、お馴染みの面子が揃ってしまった。
 本部中庭にて、月見酒。
 いつもの、何気ない時間。
 けれど、何故かな。
 懐かしいと思ったんだ。
 ずっと昔も、こうして皆で。
 月を見ていたような。そんな気がして。

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「蓮、何サボッてんだ。飲め、ほれほれ」
「あはは。ちょっと休憩させてよ」
「駄目。休憩なんて許しませんよ。はい、飲んで」
「マジっすか〜……」
 本部中庭にて、時刻は二十三時半。
 誰が言い出したわけでもないのに、何故かお馴染みの面子が集合してしまった。
 折角集まったんだから、ついでに酒でも飲もうと言い出したのは藤二。
 蓮にザバザバと酌をしている彼は、ほろ酔い状態のようだ。
 短時間で凄まじい量の酒を摂取させられ、正直キツい。
 けれど、嫌だといって通じるわけもなく。
 いきあたりばったりな宴が始まって一時間もしない内に、蓮は少し眩暈を覚えていた。
 まぁ、いいんだけどね。こういう賑やかなのは好きだよ。
 それにしても、本当……キミ達って、宴が好きだよね。
 何でもかんでも、すぐさまお祭り騒ぎになっちゃうんだもんな。
 時間だとか、そういうのなんて、お構いなしに。
 淡く笑いつつ酒を飲んでいる蓮の隣で、不安そうな表情をしているのは梨乃。
「大丈夫ですか? 無理しないで下さいね」
「あぁ、うん。大丈夫。まだイケるよ」
「……二日酔いになったら、苦しいですよ?」
「そうしたら、梨乃ちゃんが看病してくれるでしょ?」
「まぁ、しますけど……」
「じゃあ、いっそのこと潰れちゃおうかなぁ?」
「んもぅ、駄目ですよ。明日も、お仕事入ってるんですからね」
 苦笑しながら言った梨乃。
 あぁ、そうだ。そうだったね。
 明日は、いや。明日も、仕事だ。
 キミと一緒に、ご出勤。もう、何度目かな。数え切れないよね。
 明日は何だっけ。あぁ、そうだ。巨大熊の爪を採取するんだっけ。
 夏だし、現場は山だし。楽しそうだよね。勿論、仕事はきっちり、こなすよ?
 でもさ、それが終わったら。一緒に山を散策しようよ。
 ま、嫌だって言っても連れ回しちゃうんだけど。
 それに、キミは嫌だなんて言わないでしょ、絶対に。ね?

 大騒ぎの中、頬いっぱいにクッキーを詰めて、海斗が尋ねた。
「なぁ、そーいえばさ。蓮って、どーなってんの?」
「うん? 何が?」
「家柄とか。何となーくだけどさ、良家っぽくね?」
「うーん。まぁ、それなりに有名な家ではあるね」
「ほんとの親では、ないんだよな?」
「そうだね。でも、そう思ったことはないなぁ」
「どゆこと? ほんとの親だと思ってるとか?」
「うん、まぁ、そんなところかな。二人とも、立派な人だよ」
「ふーん。なぁ、今度さ、遊びに行きたい!」
「俺の実家に?」
「そーそー! 屋敷とかさ、そんな感じなんだろ?」
「うん。それなりに。そこまで大きくはないけどね」
「畳! 畳あるのか!? たたみっ!」
「はは。あるよ? っていうか全室がそうだよ」
「うほー! いいなー!」
 ふふ。海斗くんは、好きだよね。そういうの。
 異文化……なのかな。和風だとか、そういうのに、やたらと食いつくよね。
 まぁ、畳もそうだけどさ。それよりもオススメなのは、和美女だよ。
 何ていうかな、エキゾチックっていうか。セクシーでね。
 それだけじゃなくて、そこはかとなく可憐な感じもあって。
 ガールフレンドとして、一人は確保しておきたいタイプだね。
 って、こんなこと言っても無駄かな。キミは、そういうのに無頓着だからなぁ。
 女の子の話をするなら、やっぱり藤二が一番向いてるよね。
 大好物なタイプは違うけど、そこそこ趣味も合うし。
 まぁ、藤二は例によってナンパ中だから、話せないんだけど。
 俺も混ざりたいところだけどねぇ……混ざると怖いからな。
 誰がって、ほら。俺の隣で、欠伸をしてるコがね。
 眠いのかな? そういえば、梨乃ちゃん、今日は何かと忙しそうだったね。
 夕食当番とか、書類整理だとか。少し手伝ったけど、それでも凄い量だったからなぁ。
 眠いなら、無理しないで部屋に戻って休んだら?
 部屋に戻るのが面倒なら、連れてってあげるよ。抱っこして。
 蓮と梨乃が笑いながらイチャついているのを見つつ、千華は一人、物思い。
 考えているのは、蓮のこと。だが、恋煩いだとか、そういうことは断じてない。
 千華が考えているのは、蓮の身体について。
 いやいや、これもまた誤解を招きそうだが。そういうことじゃなくて。
 蓮くんって……一度、蘇生してるのよね、確か。
 海難事故で、実のご両親と共に命を失ったはずなのに。
 どういうわけか、再び蘇生して、この世に戻ってきた。
 超絶な生命力だとか、そういう不思議な可能性もないとは言い切れないけれど、
 それだけで蘇生したとは考えにくいのよね。
 確かに、生きたいっていう気持ちは、凄まじいパワーを発揮したりするけど。
 それに加えて、何らかの要素が付加されたんだと思うのよね。
 そう、例えば、蓮くんを生き返らせた人物が存在する、とか。
 人外かもしれないわよね。そうなってくると。
 でもなぁ、そう考えると、また疑問が湧いてくるのよね。
 一体、何の為に? 何が目的で蓮くんを蘇生させたのか。その辺りがね。
 一昨日、梨乃が蓮くんを、あの塔に連れてったらしいけど。
 その結果も、気になるところなのよね。
 蓮くんが見たっていう、黒い影のようなもの。
 もしかすると、それが……。
 神妙な面持ちで考え込んでいた千華。
 だがそこへ、突如サッカーボールが飛んできた。
 犯人は、言うまでもないだろう。
 はぁ、と大きな溜息を落とし、サッカーボールを持ち、大きく振りかぶる千華。
 サッカーボールなのに、遠投チックな。まぁ、全然、飛んでないけど。
 何ていうか、千華さんって可愛いとこあるよなぁ。
 年上なんだけど、そんな感じがしないんだよな。
 見た目もそうだけど、中身がね。若いって言うか、うん。可愛いよ。
 ニコニコと微笑みつつ、何気なくバトルを展開している海斗&浩太 VS 千華&梨乃を見やっていると、
 紫色の猫、シャトゥを抱いたマスターが歩み寄ってきた。
 珍しいことに、少し酔っているようだ。ほんのりと頬が赤い。
「ははっ。珍しいですね。マスターが酔うなんて」
「まぁ、たまにはのぅ」
「ふふ。ですね。そういうの、大切だと思いますよ」
「うむ……」
 ストンと蓮の隣に腰を下ろし、空を見上げるマスター。
 今宵も、月が星が綺麗だと言うマスターに、蓮は目を伏せ微笑み頷いた。
 笑い声が響く、賑やかな中庭。その一角に、静かな時間と空間。
 おおはしゃぎしている仲間を微笑ましく思いつつ笑んでいれば。
 ふと、感じる、刺さるような視線。
 パッと見やれば、マスターがジッと見つめていた。
 酔っている所為もあってか、何となく威圧感がある。
 その眼差しから目を逸らすことなく、蓮は微笑んで尋ねた。
「何か、言いたげですね?」
「うむ……。のぅ、蓮よ」
「はい?」
「おぬし、後悔はしておらぬか?」
「え? 何にです?」
「この組織に入ったことに」
「あっははっ! 何ですか、今更」
「むぅ。いや、何となく、な」
「してませんよ。まるで。寧ろ、良かったなって思ってます」
「そうか?」
「えぇ。というか、不思議なんですが。俺、ここにいると……」
「うむ?」
「懐かしいような。そんな気持ちにさせられるんですよね」
「……ほぅ?」
「まぁ、これも、何となくなんですけど。ははっ」
 目を伏せたまま笑う蓮。笑って、はぐらかしたのは何故かな。
 何ていうかさ、こういうこと言うのって照れくさいんだよね。
 いや、実際、本当にそう感じてるよ。事実だよ。
 でも、だからこそ照れくさいっていうか。何ていうか。
 不思議な空間だな、と思うよ。本当に。
 こんな風に思うようになったのはさ、つい最近だとか、そういうんじゃないんだ。
 ここに連れて来られた、そう、あの日から。
 うっすらと、同じような感覚は覚えてた。
 その感覚はね、時間が経つに連れて、確かなものへと変わったんだ。
 ただ単純に、この組織に身を置いて、それなりの時間が経ったから、
 慣れて、そう感じているだけなんじゃないかって、そう考えたこともあった。
 でもね、違うんだよ。もっと、こう、本当に深いような……。
 まぁ、何て言えばいいのか、その辺は、未だにサッパリわからないんだけど。
 って、何言ってるんでしょうね、俺は。
 何を言おうとしてるのか、それもわからなくなってしまいましたよ。
「俺も、混ざってきますね」
 立ち上がり、リフティング対決をしているメンバーのもとへと駆け出して行く蓮。
 蓮の背中を見やりつつ、マスターは淡く微笑んだ。
 紫色の猫、シャトゥの背中を撫でつつ、彼が小さく呟いた言葉。
「わしの魔法も、時の流れには敵わぬようじゃのぅ」
 その言葉を、意味を、追求すれば或いは。
 感じている、懐かしいような感覚の 『理由』 を知ることが出来るのかもしれないけれど。
 皆と一緒に、はしゃいでいる蓮に、その言葉は聞こえるはずもなく。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)

 シナリオ参加、ありがとうございます^^
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 2008.07.20 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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