■INNOCENCE -another spiral- // ダーク・プラント■
藤森イズノ |
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】 |
引き摺り込むは、その死葉で。
迷わせたもう、廃茎の舞。
黒き根を張る、闇の花。
ヒキズリコムハ ソノシバデ
マヨワセタモウ ハクノマイ
クロキネヲハル ヤミノハナ
リーズの塔2F…
徘徊している魔物 「ダーク・プラント」
その存在、そのものが聖珠なり。
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INNOCENCE // ダーク・プラント
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OPENING
引き摺り込むは、その死葉で。
迷わせたもう、廃茎の舞。
黒き根を張る、闇の花。
ヒキズリコムハ ソノシバデ
マヨワセタモウ ハクノマイ
クロキネヲハル ヤミノハナ
魔森を徘徊する魔物 『ダーク・プラント』
その存在、そのものが聖珠なり。
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マスターから一通りの説明を聞き終え、襟を緩めた凍夜。
もう何度目になるだろうか。マスターから、直々の依頼。
今回の依頼は、イノセンス本部がある森『魔森』を徘徊している魔物の討伐。
植物タイプの魔物らしい。その所為もあってか、森から出ることはないそうだ。
寧ろ、出られないと言った方が正しいかもしれない。
逃げられるという可能性はない、ということになるな。
森の入り口まで追い詰めてしまえば、楽勝なんじゃないか。
じゃあ、行くか。そう告げて、凍夜は梨乃と共に外へ。
二人で仕事をこなすのも、もう、何度目になるだろう。
討伐対象の魔物の名称は『ダーク・プラント』
どういうわけか、突如、出現したらしい。
魔物が出現したのは、今朝早朝。現在時刻は午前八時。
マスターの指示は、非常に迅速なものだ。
急くのには理由がある。
ダーク・プラントは、絶命すると『宝珠』を落とす。
その宝珠を、マスターは欲しているのだそうだ。
何の為に欲するのか。そのあたりは知らされていない。
けれど、無意味な欲求はしない人物だ。
何かしら、意味・目的があってのことだろう。
完遂し、宝珠を持ち帰った際には、
通常の任務と同じ……いや、それより少し高額な報酬が与えられるとのこと。
まぁ、報酬はオマケみたいなものだ。
与えられた仕事を、完璧にこなす。そこに意味があると思う。
「凍夜さん」
クイクイと服裾を引っ張って声を掛けてきた梨乃。
振り返ると、梨乃は前方、大樹を指差した。
示された方向を見やれば、そこには珍妙なものが。
花……っぽいけれど、非常に奇怪だ。
花びら、茎、そこまではいい。普通だ。
けれど、それより下がおかしい。
タコやイカのように、足が無数にあるのだ。
足というよりは、茎が分裂しているような感じか。
カサカサと動く、その様は、夏の風物詩である『虫』を彷彿させる。
それなりに大きい為、余計に不気味だ。
あっさりと見つかったな……。まぁ、楽でいいけど。
そもそも、この森のどこかにいるって理解ってたわけだから、
見つけるのに、さほど時間が要さなかったとは思うが。
それにしても、気持ち悪いな、あれ。
見ていて不快だ。さっさと始末してしまおう。
ザッと駆け出し、魔物に向かいながら、右手親指を噛む。
ジワリと滲み、流れる血液を変換。血剣。
闇の力を纏った、その剣で、魔物を斬り付ける。
「と、凍夜さん! ちょっと待って!」
梨乃が制止したとき、既に血剣は魔物をバラバラに……。
(ん……?)
していなかった。
どういうわけか、傷一つ付いていない。
だが、衝撃は感じているようで、魔物は不気味な声を上げて威嚇した。
バッと距離を取り、首を傾げる凍夜。
何だ。どういうことだ? まるで効いていない。ノーダメージだ。
数多の魔物を討伐してきた彼にとって、
まったくダメージを与えられないという状況は初めてのことだ。
それ故に理解に苦しむ。
首を傾げている凍夜に駆け寄り、梨乃は魔銃を腰元から抜いて苦笑した。
「あの魔物は、完全闇属性です。吸収されちゃいますよ」
「……そうなのか」
闇なる存在と契約し、その力を身に宿す凍夜。
彼の攻撃は、その殆どが闇の属性を纏っている。
こればかりは、どうしようもない。仕様といえよう。
ってことは、俺がいくら攻撃しても無駄なわけだ。
じゃあ、お前に任せるしかないな。
たまには、お前を真似て。サポートにでも徹してみようか。
攻撃の一切を梨乃に任せ、サポートに専念。
直接関与することなく、間接的に援護を図る。
出現させた闇の茨で拘束。そこを、梨乃が叩く。そんな進行だ。
だが、ダーク・プラントも黙って拘束されてはいない。
ブルブルと身体を揺らし、己を飾り立てている葉を飛ばしてくる。
ただ単に葉っぱが飛んでくるだとか、そんなレベルじゃない。
物凄く鋭利なナイフ……いや、手裏剣の如しだ。
飛んでくる葉を器用に避けつつ、少しずつダメージを与えていく。
一発でノせる相手じゃない。時間をかけていかねば。
加えて、ダーク・プラントの数は二体。
さすがに、二匹同時に始末することは難しい。
というわけで、一匹ずつ。
梨乃が、一匹に蹴りやパンチ、水の魔法を浴びさせている中、
もう一匹を茨で拘束し、身動き出来ない状態にしておく。
梨乃が集中できるように。そんな意味合いも込めて。
だが、この作業が実に地味だ。
元々、前線でガシガシと魔物を狩るタイプである凍夜にとって、
サポートというものは退屈で仕方がない。
はぁ……マスターのジィさんも、意地が悪いよな。
事前に言っとけってんだ。闇属性は無効だからな、って。
ふぁぁ、と大きな欠伸をしつつ、指を弾く凍夜。
その音に併せて、闇の茨が踊る。
拘束されている一方のダーク・プラントは、されるがまま。
何度も何度も、ベチベチと地面に叩きつけられてしまう。
直接攻撃ではない故に、それなりに効いているようだ。
何度も頭を地に打ち付けられたダーク・プラントは、フラフラしている。
魔物を玩具のように扱う凍夜に笑いつつ、
強烈な飛び蹴りでシめ、一匹目を倒した梨乃。
転がる宝珠の採取は後回しで、もう一匹の討伐へ向かう。
脳天打撃を何度もくらった所為か、かなり衰弱している。
これならば、数発で昇天させられるのではないだろうか。
身構え、技を繰り出そうとした矢先。
ダーク・プラントが、妙な動きをしだした。
蹲るような体勢になり、プルプルと震えているのだ。
どこまでも気持ち悪いなぁ、と凍夜が呆れていると、梨乃が大声で叫んだ。
「凍夜さん! クロノソウルです!」
マスターから事前に聞かされていた、厄介な能力。
ダーク・プラントの必殺技でもあるそれは、
そこらを漂っている悪霊を吸収し、魔力アップを図るというもの。
なるほど。これが、発動前のモーションか。
何にせよ、気持ち悪いことに変わりはないな。
苦笑し、指を弾いた凍夜。
すると、茨に拘束されたダーク・プラントは、クルリと一回転。
ひっくり返され、体勢が崩れたことで、クロノソウル発動が阻止された。
まるで動じず、冷静に、それでいて的確に阻止した凍夜。
彼が『焦る』ことは、あるのだろうか。
梨乃は苦笑しつつ、地を蹴り、高く飛び上がった。
上空から放たれる、強烈な飛び蹴り。
これをくらっては、無事では済まない。
*
「お疲れさん」
「はい。凍夜さんも」
「いや、俺は大して働いてねぇし」
「……楽しそうでしたね」
「はは。まぁな。少しだけな」
討伐を追え、地に転がった宝珠二つを採取して笑いあう凍夜と梨乃。
不気味極まりない魔物から出たものとは思えぬほど、
入手した宝珠は、とても美しいものだった。
なるほど。確かに、立派なもんだ。
僅かに温かいのは、魔力が漏れているからだろうな。
さてさて。この宝珠で、あのジィさんは何をしようとしてるんだか。
大事なところは、決まって、はぐらかすからな。あのジィさんは。
問い詰めても答えてはくれないんだろうけど。
こうして働いたんだ。聞く権利くらいは、あると思うんだけどな。
任務を終え、本部へと戻る最中。
他愛ない話をしつつ帰る二人。
その二人の背中を、ジッと見つめる銀色の瞳があった。
彼等が、その存在に気付くのは、まだ、もう少し先の話。
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7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)
シナリオ参加、ありがとうございます^^
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2008.07.24 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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