■SPIRAL EDGE // スパイラル・エッジ■
藤森イズノ |
【7192】【白樺・雪穂】【学生・専門魔術師】 |
噂には聞いていた。
影のような姿形。酷く不気味な存在なのだと。
なるほど、これがエッジ……か。
目の前で、不気味な鳴き声を上げる魔物。
その声は、姿は、狼にウリフタツ。
けれど、真っ黒な影。
かろうじて、狼か? と判断できるくらいだ。
突如、異界各所に発生・出現しだした魔物、エッジ。
あちこちで囁かれている噂から、その存在は把握していた。
けれど、まさか今日。こうして対峙することになるとは。
まぁ、興味がなかったわけではないけれど。
いつかは、接触することになるだろうと思っていたけれど。
そして、それがサダメなのだろうということも把握していたけれど。
こうして目の当たりにすると……アレだな。
不気味。そのものだ。
魔物と呼ぶに相応しい、醜き姿。
躊躇いなんて、生まれるわけもない。
ヤツも、戦る気満々の御様子だ。
準備万端? じゃあ、始めようか。
宵に響く、刃の交錯。
スパイラルエッジ。
全ての、始まり。
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INNOCENCE // スパイラル・エッジ
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OPENING
噂には聞いていた。
影のような姿形。酷く不気味な存在なのだと。
なるほど、これがエッジ……か。
目の前で、不気味な鳴き声を上げる魔物。
その声は、姿は、狼にウリフタツ。
けれど、真っ黒な影。
かろうじて、狼か? と判断できるくらいだ。
突如、異界各所に発生・出現しだした魔物、エッジ。
あちこちで囁かれている噂から、その存在は把握していた。
けれど、まさか今日。こうして対峙することになるとは。
まぁ、興味がなかったわけではないけれど。
いつかは、接触することになるだろうと思っていたけれど。
そして、それがサダメなのだろうということも把握していたけれど。
こうして目の当たりにすると……アレだな。
不気味。そのものだ。
魔物と呼ぶに相応しい、醜き姿。
躊躇いなんて、生まれるわけもない。
ヤツも、戦る気満々の御様子だ。
準備万端? じゃあ、始めようか。
宵に響く、刃の交錯。
スパイラルエッジ。
その先にある真実へ。
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近頃異界を騒がせている存在『エッジ』
影のような不気味なその魔物は、多くの謎に包まれている。
一体なぜ、どこから発生したのか。
突如現れた、その存在は混乱と災いを呼んだ。
学者・研究者は、あれこれと調査を続けている。
けれど、どんなに追求しても、真相は不明のまま。
現段階で理解っているのは、存在そのものが魔力の塊であることと、
絶命した後、蒼い宝珠を残すということだけ。
この宝珠もまた、謎に満ちている。
ぼんやりと淡く光る宝珠は、高魔力が凝縮された代物。
それが判明すれば、無論、悪用しようとする者が出てくる。
だが不思議なことに、一切の加工ができない。
武器に埋め込もうとしても、砕こうとしても、一切が不可能なのだ。
宝珠自体が、それを拒んでいる。 学者達は、そう発表していた。
この妙な存在『エッジ』は、今や異界話題の中心だ。
もちろん、それを聞いてイノセンスが黙っているはずもなく。
組織は精力的に、エッジ討伐と調査に乗り出した。
そして今日、双子の姉妹に、その指令が下る。
「では、よろしく頼んだぞ」
「はい」
「うん」
マスタールームにて、揃って頷いた夏穂と雪穂。
エッジの討伐と調査。二人がマスターから受けた指令。
ただ調査討伐するだけではない。マスターは言った。
絶命後に残る宝珠を、必ず持ち帰るように、と。
エッジ討伐には、暗黙のルールが存在している。
それは、採取した宝珠を、研究家たちに献上するべし、というもの。
けれど、マスターはそれをさせず。ここに持ち帰るように命じた。
マスターもまた、研究家の一人なのだ。
高魔力が凝縮された宝珠と聞いて、黙っていられるはずもない。
夏穂と雪穂は、それも理解した上で頷いた。
異界を歩き回り、エッジを捜索しながら夏穂と雪穂は笑う。
何ていうか、こういうのってワクワクするよね。
しちゃいけないことをするのって、ワクワクするよね。
バレたら、どうなるのかな。 やっぱり、罰せられるのかな?
最悪、牢獄行きとかになるんじゃない? え〜。それは嫌だなぁ。
クスクス笑いながら歩く二人。二人に恐怖という感情はないようだ。
あちこちて報じられている情報からしても、かなり危険な存在だと判断できるのに。
二人の内に芽生えている感情は『ワクワク』ただ、それだけだ。
*
エッジの厄介な点の一つに、気配を消せるという能力がある。
これがまた巧みで、完全に気配を絶つ。
その上で襲い掛かる為、一般人は先ず太刀打ちできない。
捜索していた二人の背後に、ヌッと出現した影。
音もなく出現したその影は、様子を窺うように二人の後を付いて行く。
お菓子を頬張りつつ、他愛ない話で盛り上がっている二人。
傍から見れば、無防備極まりない状態だ。
幼く可憐な姿ということもあってか、確信したのだろう。
エッジは、ニヤリと不気味に笑って、二人を背後から襲おうと飛び掛った。
音無き奇襲。普通の人間ならば、悲鳴を上げる間もなく殺されただろう。
そう、普通の人間ならば。
「やっと来たよ〜」
「待ちくたびれたわね」
ヒョイと攻撃を避け、クスクスと笑った夏穂と雪穂。
鋭い爪でズタズタに引き裂くこと、奇襲成功を確信していたエッジは、
自らの爪がブンッと空を切ったことに、理解できず唸り声を上げた。
グルル……と唸るエッジ。真っ黒な影。
けれど、そのシルエットは、狼と瓜二つだ。
「ふぅん。可愛いかも……」
魔扇子を取り出しつつ、うふふと笑って言った夏穂。
雪穂は、スペルカードを取り出して、そんな夏穂に苦笑した。
可愛くないよ。全然。気持ち悪いってば。
まぁ、確かに変わってるよ。夏ちゃんは、好きそうだよね。
ひょっとして、自分のものに出来ないかとか考えてる?
勘弁してよ〜。こんなの持って帰ったら、大騒ぎになっちゃうよ。
それに問題存在を飼うとか、そんなことしたら、面倒なことになっちゃうよ。
雪穂の言葉に、夏穂は苦笑を返した。
わかってる。そんなことしないわ。面倒だもの。
でも、ちょっとだけ。いろいろと調べてみたいなぁって思うの。
丸ごと持って帰ったりはしないわ。
少しだけ。少しだけなら、いいでしょう?
クスクス笑いながら話す二人に、エッジは翻弄された。
まるで怯えている様子はない。むしろ、余裕?
可愛らしい姿の少女二人に翻弄されている事実。
それは、冷静な判断力を失わせる結果になった。
ただ、がむしゃらに爪を振り回すだけのエッジ。
当然、ヒットしない。それが、翻弄に拍車をかけた。
攻撃を避けながら、夏穂と雪穂はキョトンとした。
何だぁ。この程度なの? 全然大したことないじゃない。
もっと楽しめるかと思ったのに。張り合いないね。
もしかしたら、まだ本気じゃないだけかも、とも思ったけど。
どうやら、それで全力全開みたいね。う〜ん。期待はずれね。
っていうか、あれかな。ただ単に、今回はハズレだっただけかな。
そうであって欲しいなぁ。なんて思うのは、不謹慎かな〜?
「うん。もういいや。十分だよ、ね? 夏ちゃん?」
「そうね。もう飽きたわ」
「んじゃ、テストテスト♪ 先にやっちゃっていい?」
「うん。いいよ」
「よぉ〜し」
ニマリと不敵に笑い、スペルカード『槍』を高速詠唱。
ブワッと風を纏って出現した巨大な槍を空中でキャッチし、着地と同時に構える。
「いいデータ、たくさん頂戴ねぇ〜」
キャハハと笑いつつ、飛び跳ねるように動いて、四方八方から槍で突く雪穂。
槍での攻撃と併せて、合間に炎の攻撃魔法も放つ。
余裕なんて、隙なんて、ありゃしない。
エッジは、ただ攻撃を避け、間合いを取るので精一杯だ。
ふむふむ。動きは、まずまずだね。けど、荒いなぁ。
隙ありすぎだよ? そこを突いちゃえば瞬殺できちゃうけど。
まだ色々と途中だからねぇ。いつでもトドメを刺せる状態っていうのも、つまんないね。
ハァ、と溜息を落とし、ゴォッと放つ灼熱の炎。
だがそこで、ちょっとしたハプニング。
飽き飽きしていて、気持ちが緩んだのだろう。
炎の威力、サジ加減を間違えてしまった。
現場は森の中。木々に灯った炎は、あっという間に燃え広がってしまう。
「あやややや……」
ペロリと舌を出して笑い、すぐさまスペルカード『水竜』を詠唱召還。
水竜が吐き出す清き水は、あっという間に炎を沈めた。
危ない危ない。うっかりしちゃった。気を引き締めていかないとね。
つまんないけど、油断は禁物だよねぇ。
ピッと気持ちを切り替え、真剣な眼差しになった雪穂。
だが、その直後。予想外の展開に。
エッジがクルリと方向転換し、猛ダッシュ。
逃げるのか、と思いきや。
エッジは、真っ直ぐに、夏穂へと突進していくではないか。
嘘ぉ。何でいきなりターゲット変更しちゃうのさぁ。
慌てて追いかけるものの、間に合わない。
エッジは、ブンッと爪を振り下ろした。
ただボーッと観戦していたわけじゃない故に、対処は出来る。
ヒョイと攻撃を避け、クルリと一回転して構える夏穂。
魔法で退けてから、身皮を採取しましょうか。
そう思い、魔扇子を揺らした時だ。
夏穂の目に、とても可愛らしい、小さな竜が映る。首長竜の子供だ。
あのままでは、巻き添えをくらってしまう。
夏穂はダッと駆け寄り、小竜を抱きかかえた。
敵の間合い・懐に無防備に飛び込んでしまったことで、夏穂は傷を負う。
振り下ろされた爪が、首を掠めた。
白い肌に、ツーッと赤い血が滲む。
「夏ちゃん!」
大声で叫ぶと同時に、怒りのメーターが振り切れた雪穂。
プツンと何かが切れた彼女は、槍に溢れんばかりの魔力を込めつつエッジに突進していく。
首を伝う血を指で拭い、淡い笑みを浮かべるのは夏穂。
彼女もまた、どこかで何かがプツンと切れてしまったようだ。
こうなってしまっては、どうしようもない。
間近に迫る死。それを感じ取ったのだろう。
エッジはピタリと動きを停止し、目を伏せた。
踊る魔扇子。放たれた氷は、エッジを丸ごと包み込み拘束。
身動きの取れぬ状態となったところへ、強烈な一突き。
ガシャァッ―
夏穂に凍らされ、雪穂に砕かれ。エッジは、煙となって消えた。
*
「へぇ〜。綺麗だねぇ。ふふっ」
エッジが残した蒼い宝珠を拾い上げ、光に透かして満足そうに微笑む雪穂。
首に負った傷を治癒魔法で完全に除去し、夏穂も微笑む。
うん。確かに、すごく綺麗。吸い込まれそうになるわね。
それに、ものすごい魔力反応。普通の人は、持つことも出来ないんじゃないかしら。
張り合いはなかったけど、実に面白い存在ね、エッジ。
身皮も採取したことだし(いつの間に?)、うん、楽しみね。
得たデータと、宝珠を手に、本部へと戻る二人。
マスターもきっと、満足するに違いない。
たまにはオネダリとかしてみる? 頑張った御褒美下さいな、って。
クスクス笑って歩く二人。その後ろを、ピョコピョコと付いて来ている小竜。
どうやらまた、夏穂は懐かれてしまったようだ。
「夏ちゃん……。 ほんと、好かれるよね」
「ふふ。嬉しいわ」
「連れて帰るの?」
「もちろん。駄目?」
「ううん。魔物じゃないから、問題ないよ〜。多分ね?」
「ふふふっ」
小竜を抱き上げ、キュッと抱きしめて微笑む夏穂。
新しいお友達も増えて、大収穫ね。
名前、つけてあげなくちゃ。どんなのが良いかしら。
ねぇ、雪ちゃん。一緒に考えて?
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7192 / 白樺・雪穂 (しらかば・ゆきほ) / ♀ / 12歳 / 学生・専門魔術師
7182 / 白樺・夏穂 (しらかば・なつほ) / ♀ / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)
シナリオ参加、ありがとうございます。
懐いた小竜は、実は魔物だったとか。アリですか?^^
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2008.07.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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