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■SPIRAL EDGE // 招待状■

藤森イズノ
【7420】【猫目・アリス】【クラッカー+何でも屋+学生】
 エッジを初討伐した翌朝のことだ。
 自宅に、妙なものが届いた。
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 I'M WAITING FOR YOU.
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 ただ一言、そう記されたカード。
 あからさまに怪しい。
 そう思うものの、捨てられなかった。
 その理由は、ただ一つ。
 クルリと引っくり返せば、
 カードの裏に『VS.EDGE!』と記されていたから。
 そのメッセージの下には、ご丁寧に追記されている。
 各チームの住所が、わかりやすく地図付きで。
 エッジ討伐チーム。
 その存在も、把握している。
 エッジを討伐したことで、
 各チームからお誘いの声が掛かったと……そういうことらしい。
 チーム加入、か……。
 エッジを野放しにしておくわけにはいかない。
 そうは思う。 だから討伐活動に参加しようとも思った。
 けれど、チーム加入となると……。
 適当に決めるわけにもいかないよな。
 後々、後悔したくないし。
 さて、どうしたものか。
INNOCENCE // 対なる組織 PRIDE

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 OPENING

 エッジを初討伐した翌朝のことだ。
 自室に、妙なものが届いた。
 ========================
 I'M WAITING FOR YOU.
 ========================
 ただ一言、そう記されたカード。
 あからさまに怪しい。
 そう思うものの、捨てられなかった。
 その理由は、ただ一つ。
 クルリと引っくり返せば、
 カードの裏に『VS.EDGE!』と記されていたから。
 そのメッセージの下には、わかりやすい地図。
 ここに来い、そういうことだろう。
 さて、どうしたものか。

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 何だ、これ。招待状……にしては強引だよなぁ。
 っつうか、どっから置いたんだ、これ?
 自室に届いた謎のカードを手に取り、首を傾げるアリス。
 一体どこから。彼女が首を傾げるのも無理はない。
 アリスの部屋は、本部の五階にある。
 カードは、窓の外。立てかけられるようにして置かれていた。
 ご丁寧に、一輪の花をストッパー代わりに置いて……。
 風で飛んできた、ということでもあるまい。
 誰かが、ここに置いた。それは明らかだ。
 でも、どうやって置いたんだ?
 上ってこれねぇだろ、これ。
 窓から顔を出し、外を見回しつつ、はて? と首を傾げる。
 って、こんなことしてる場合じゃねぇや。急がねぇと遅刻しちまう。
 ハッと我に帰ったアリスは、カードを鞄にしまい、いそいそと外へ。
 眼鏡をかけて、キュッとリボンを締めて……彼女が向かうのは、学校。
 能力者であると同時に、彼女は女子中学生でもあるのだ。
 何だかよくわかんねぇけど……とりあえず行かねぇと。
 今日、日直だし。色々とやんなきゃなんねぇことあるからな。
 優等生(仮)ってのも、めんどくさいぜ。
 学校帰りにでも……チラッと顔出してみるかな。
 かな〜り怪しいけど。どうだかなぁ。

「夏ちゃん。これ」
「うん。どうしようか」
「ん〜。怪しいよねぇ」
「そうね……」
 アリスがバタバタと自室を出たのと時同じくして。
 隣の部屋で、雪穂と夏穂もまた、首を傾げていた。
 二人が首を傾げているいる理由。それも、アリスと同じだ。
 彼女等の元にも、謎のカードが届いた。
 あなたを待っている。ただ一言、そう書かれたカード。
 真っ白なカードに、赤いインクで書かれたそれは、ちょっと不気味。
「エッジ……に関わることなのかなぁ、やっぱり」
「多分、そうよね」
「タイミングがピッタリすぎるよね〜」
「昨日だものね。討伐したの」
「どっかで見てたのかなぁ。だとしたら気持ち悪くない?」
「うん……う〜ん……」
 確かにタイミングが良すぎる。
 夏穂と雪穂も、そしてアリスも。
 三人がエッジと対峙し、初討伐したのは昨日のことだ。
 雪穂が言うように、どこかで様子を窺っていたのかもしれない。
 だとすると余計に怪しく危険な匂いがプンプンするが……。
 放って置いてもいいけれど、それもまた気分的に微妙。
 何の目的で呼び出しているのか、そこだけでも聞いてみよう。
 二人は顔を見合わせ頷き、カードに記されている場所へ赴くことにした。
 洗濯やら掃除やら、片付けねばならないことがあるので、向かうのは夕方になるだろう。
 海斗や梨乃に相談してみようかとも一瞬思ったが、二人はそれを何故か躊躇い、実行することはなかった。
 何故か、どうしてか。理解らないけれど、言うべきではない。
 そう思った。その理由を、そして、その決断が正しかったことを、
 彼女等は、すぐに知ることになる。

 *

「あれ? 何だ。お前らんとこにも届いたのか? あのカード」
「うん。ってことは、猫さんにも届いたんだねぇ」
「おぅ。何か気味が悪いよなぁ」
 苦笑しながら猫背でしゃがみ、ゴソゴソと大きな袋を漁るアリス。
 学校帰りで制服姿のアリスは、袋からダボダボの赤いフードコートを取り出し、
 眼鏡を外して、結った髪を解いて『いつもの』姿へと変身した。
 その変身が済んだことを確認し、夏穂は前方を見やって言う。
「じゃあ、行きましょ」
 カードに記された場所。そこは、イノセンス本部がある魔森と真逆、異界北にある森の中。
 うっすらと赤い木々、茂みを横目に進んでいけば、真っ黒な屋敷へと辿り着く。
「何つぅか、これ……」
「変な感じするね」
「そっくりだわ……」
 屋敷を前に、揃って見上げて苦笑を浮かべた三人。
 違和感とは少し違う、微妙な感覚。
 屋敷の外観、雰囲気。反する色ではあるものの、それはとても似ていた。
 彼女等が帰る場所、イノセンス本部に。
 何となく嫌な予感は感じ取ったものの……。
 ここまで来て、引き返すというのもどうかと思う。
 答えてくれるかは不明だけど、直接聞きたいこともあるし。
 三人は顔を見合わせ頷き、大きな扉を開けて屋敷の中へ。
 ふと思い出す、懐かしい感覚。
 彼女等は、全員同じことを思い返していた。
 イノセンスにスカウトされ、初めて本部に踏み入った日のことを。
 本部を構築しているものがマスターの魔力、魔法だということを理解していなかった故に、
 あのとき、踏み入った本部内は、真っ白な空間だった。
 あの時と一緒。違うのは、これまた色だ。
 踏み入った屋敷の中は、漆黒の闇が覆っていた。
 けれど、すぐに理解する。この屋敷もまた、魔法で構築されているのだと。
 理解すれば容易いこと。闇は晴れ、視界良好になる。
 何つぅか、本当……面倒くせぇことになりそうだなぁ。
 何から何まで一緒ってわけじゃねぇけど、ここまで似通ってちゃなぁ。
 先頭を歩きつつ、キョロキョロと屋敷内を見回すアリス。
 置かれ、飾られているインテリアは、おそらく全てアンティーク品だろう。
 趣味が良いとは言えない、ちょっと気色悪いデザインのものばかりだ。
 イノセンス本部を光と例えるなら、この屋敷は闇と例えるに相応しい。
「怪しい魔術師とかが出てきそうな雰囲気だよな」
「あ〜。わかる〜。真っ黒いローブとか着てね〜」
 どこへ行けばよいのか理解らない故に、三人はホールで待ちぼうけ。
 呼び出したんだ。来たとわかれば、迎えにでも来るだろう。
 屋敷の妙な雰囲気に笑うアリスと雪穂を横目に、チラチラと周囲を窺う夏穂。
 何かしら、この感じ。寒いような……嫌な感じ。
 警戒を続ける夏穂。その背中に、刺さるような眼差し。
 すぐさまそれを感じ取り、バッと振り返る夏穂。
 アリスと雪穂もつられるようにして、揃って振り返った。
 すると、予想しケラケラと笑っていたとおり。
 そこには、真っ黒な装束を纏った、怪しい男が立っていた。
 一人じゃなく、五人というところがまた怪しさに拍車をかけている。
 黒装束の男達は、これまた妖しく微笑んで、アリス達を歓迎する。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。ようこそ、PRIDEへ……」
 
 案内され、三人は応接室のようなところへ。
 部屋の四隅には、黒い蝋燭と蒼い炎が灯り、中心には妙な魔方陣のようなもの。
 妖しいことこの上ないが、この部屋は、そう。
 イノセンスのマスタールームにそっくりだ。
「さて……。では、早速。何か、ご質問はありますか?」
 三人に紅茶を振る舞い、黒装束の男の中で、唯一眼鏡を掛けている男が言った。
 身を覆い隠すような装束の所為でハッキリとはしないが、まだ若い。
 藤二や千華と同じくらいか、少し上か……その辺りだろう。
 この男だけ、雰囲気が違う。纏っているオーラというか、魔力がズバ抜けて高い。
 おそらく、この男が『核』であり、最高責任者なのだろう。
「質問ねぇ。ありすぎて、どれから聞けばいいか、わかんねぇな」
 ソファにダラッと座ってズズズと紅茶を飲み、苦笑して言ったアリス。
 そんなアリスの両サイドに座る夏穂と雪穂。
 二人は、アリスをフォローするかのように質問を飛ばして行く。
「とりあえず、PRIDEって何なのかなぁ?」
「ここ……イノセンスの本部に、とても似ているわ。その理由は?」
 二人の質問に眼鏡の男は淡く微笑み、柔らかい声と口調で説明した。
 突然の呼び出しと、それに応じてくれたこと、感謝します。
 そうですね。まずは、その辺りから説明せねばなりませんね。
 お察しのとおり、このPRIDE(プライド)も一組織です。
 イノセンスとは、相容れぬ兄弟のような仲……といったところでしょうか。
 あぁ、別に一触即発だとか、そういう間柄ではないのですよ。
 ただ、理念が異なるといいますか、真逆なので。
「兄弟……ねぇ。濁すなぁ。それで目一杯か?」
 鼻で笑い、目を伏せて言ったアリス。
 眼鏡の男は、紅茶を飲みながらクスクスと笑うだけ。
 どうやら、これ以上は言えない。その理由も言えない。そういうことらしい。
 イノセンスと相容れぬ関係。ライバル組織……と考えて良いだろう。
 だが、何でまた、そんなところから呼び出されたのか。
 三人は口を揃えて尋ねた。私達を呼んだ理由は?
 すると眼鏡の男は、後ろに並ぶ別の黒装束の男に目配せした。
 合図を受け、黒装束の男の一人が、どこからともなくファイルを出現させる。
 テーブルに置かれた黒いファイルを三人に見せながら開いていく眼鏡の男。
 ファイルの中には、無数の写真と書類が保管されていた。
 どれもこれも、エッジに関するものばかりだ。
 数ある写真の中には、昨日、エッジを討伐していたときの三人の写真も確認できる。
 やっぱり、見られてたか。ったく、悪趣味だよなぁ。
「で? うちらにどうして欲しいんだ?」
 コキコキと首を鳴らしながら言ったアリス。
 すると眼鏡の男は、クィッと眼鏡を指で押し上げ、肩を揺らして笑った。
 なるほど。噂どおりの御方ですね。まどろっこしいことは御嫌いのようだ。
 まぁ、遠回しに説明しても無意味なのは確かです。では、本題へ移りましょうか。
「僕達に、力を貸しては頂けないでしょうか」
 ニコリと微笑んで言った眼鏡の男。
 この男、いや、この組織の目的。
 三人を呼びつけた、その理由。
 それは『引き抜き』行為にあった。
 エッジ討伐の際の三人の迅速かつ的確な判断。そして、能力の高さと可能性。
 それらを踏まえた上で、プライドは、彼女等の力を自分のものに出来ないかと考えた。
 公にはなっていないが、プライドはエッジに関する事件の責任組織でもある。
 あれこれと研究している学者達も、皆、この組織に属する者だ。
 未だに謎の多い魔物、エッジ。その真相を明らかに。
 異界の平和と安寧の為、我々は努力と追求を惜しまない。
 そうは言われるものの、アリス達は苦笑を返すことしか出来ずにいた。
 言ってることは確かに立派なもんだ。けれど、OKすることは出来ない。
 イノセンスを裏切るような真似は出来ないし、そもそも興味もない。
 あなた達が、怪しげな調査と追求をしていることは十分に理解したわ。
 だからこそ、私達は頷けない。それに、まだ隠していることがあるでしょう?
 違うと思うの。私はね。あなた達の目的は、安寧なんかじゃない。
 こう言っては何だけど、悪意を感じるの。あなた達が隠している真意に。
 夏穂の目配せに応じるかのように、アリスと雪穂は頷いた。
「残念でもねぇけど。そりゃあ、できねぇ相談だな」
「交渉決裂だね〜」
 はっきりと断り、立ち上がって部屋を去って行く三人。
 要望に答えられず申し訳ない。いつもなら、そう言ってペコリと頭を下げる。
 けれど今回、夏穂は至ってクールだった。 
 謝罪の言葉なんて一つも吐かず、フィッと顔を逸らし、アリスと雪穂の後を追う。
 直感と確信。プライド。この組織は『闇』を抱えている。
 言葉では説明できぬほど、醜く淀んだ闇が。
 その闇に、捕らわれ染まることはない。万が一にも。
 何故なら、私達は限りなく白い。
 イノセンスのメンバーなのだから。

 *

 アリス達が去り、静寂なる応接室にて、眼鏡の男はクックッと肩を揺らして笑った。
 フラれてしまいましたね。まぁ、こうなるだろうとは思っていましたよ。
 応じてくれるはずがないと。理解っていましたよ。
 今回、あなた達を呼んだ本当の理由は、そこじゃない。
 ゆっくりと進めていきましょう。闇の祭事を。
 拒むことは不可能なんですよ。
 あなた達は、僕が用意した舞台に上がるんです。
 それは、絶対なんですよ。今はまだ、理解できないでしょうけど。ね……。
 不敵に笑う眼鏡の男。不気味な組織『PRIDE』
 この組織との関わりは、ここで断てたわけではない。
 この先も、執拗に関与してくるだろう。
 どんなに拒んでも、纏わりついてくるのだろう。
 イノセンス本部へと戻る三人は、揃って抱いた予感に苦笑を漏らした。
 
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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7192 / 白樺・雪穂 (しらかば・ゆきほ) / ♀ / 12歳 / 学生・専門魔術師
 7182 / 白樺・夏穂 (しらかば・なつほ) / ♀ / 12歳 / 学生・スナイパー
 7420 / 猫目・アリス (ねこめ・ありす) / ♀ / 13歳 / クラッカー+何でも屋+学生
 NPC / プライド・マスター (ぷらいどますたー) / ♂ / ??歳 / PRIDE:マスター(最高責任者)

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.07.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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