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■SPIRAL EDGE // トワイライト・ミルキーウェイ■

藤森イズノ
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
貴方に逢える。この日を、待ちわびた。
逢えたなら。先ず、どうしようか。
ちょっと余所余所しく、挨拶でもしようか。
いつもそうだけど、緊張してしまうね。
逢いたくて、逢いたくて。たまらなかった筈なのに。
いざ顔を合わせると、どうすれば良いのか、わからなくなってしまう。
難しく考える必要なんてないのに。可笑しいよね。
ただ、ギュッと強く抱きしめて。
朝まで、ずっと寄り添っていれば良いだけ。
その笑顔を、独り占めできる一年に一度の夜。
声を聞かせて。隣で笑って。

話したいこと、たくさんあるんだ。

七夕神話 "トワイライト・ミルキーウェイ" ――
INNOCENCE // トワイライト・ミルキーウェイ

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 OPENING

 貴方に逢える。この日を、待ちわびた。
 逢えたなら。先ず、どうしようか。
 ちょっと余所余所しく、挨拶でもしようか。
 いつもそうだけど、緊張してしまうね。
 逢いたくて、逢いたくて。たまらなかった筈なのに。
 いざ顔を合わせると、どうすれば良いのか、わからなくなってしまう。
 難しく考える必要なんてないのに。可笑しいよね。
 ただ、ギュッと強く抱きしめて。
 朝まで、ずっと寄り添っていれば良いだけ。
 その笑顔を、独り占めできる一年に一度の夜。
 声を聞かせて。隣で笑って。

 話したいこと、たくさんあるんだ。

 七夕神話 "トワイライト・ミルキーウェイ" ――
 
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 こうして三人で七夕を向かえるのも、もう何度目かしら。
 メンバーは同じだけど、毎年どこかが違うのよね。
 小さな変化だったり、大きな変化だったり。
 今年一番の変化といえば、やっぱり……私と武彦さんの関係よね。
 関係っていうか間柄っていうか続柄っていうか。
 まぁ、夫婦になったからといって何かが大きく変わるわけじゃないんだけど。
 至って普通だしね。前と何も変わっていないような。
 ん〜。でも、気持ち的に違うかな。安心してるっていうか。
「シュラインさん、見て下さい、これっ」
「ん? わぁ。可愛い。猫?」
「そうです。えへへ」
「ふふ。食べるの可哀相ね」
「あ。しまった。そうでした……」
「あははっ」
 興信所にて、七夕の準備をしているシュラインと零。
 とはいえ、何か特別なことをするわけでもない。
 ただ三人で肩を並べ、夜空を見上げながら、酒を飲む。
 他愛ない話を、疲れて眠くなるまでする。それだけのこと。
 些細な行事かもしれないけれど、恒例行事。
 いつしか、欠かすことの出来ないイベントになっていた。
 溶き玉子を流し込んだ寒天を作り、ガラスの器へ入れるシュライン。
 隣で零が一生懸命に猫形にしているのは、手作り蓬饅頭だ。
 酒は武彦が調達してきた日本酒。
 シュラインと零が準備しているのを見やりつつ、
 武彦は既に庭で、ちびちびと飲み始めていた。
 軽いんだけど、喉に落とすと途端に重くズッシリと存在感があって。
 美味いな、これ。適当に選んできたんだけど。当たりだわ。
 準備が終わるまでの間、武彦は美味さに何度も酒をつまんだ。
 その結果。
「ちょっ……。た、武彦さん……」
「うわぁぁ……」
 庭に大の字で寝転がっている武彦を発見し、揃って苦笑するシュラインと零。
 眠っているわけではなく、きちんと意識はあるらしい。
「お〜。遅いぞ、お前ら」
 寝転がったままヒラヒラと手を振って武彦は言った。
 随分と気持ちよさそうね……。ホカホカしてそう。
 うん。いいかも。寝転んで見ると、もっと綺麗かもね、夜空。
 トコトコと歩み寄り、武彦の隣に座り。
 彼の頭を自分の膝の上に置いて淡く微笑むシュライン。
 見ているだけで涼しくなれる綺麗な寒天と、
 零が一生懸命に猫形にした蓬饅頭。
 準備が整い、役者も揃い。
 だれが開始を告げたわけでもないけれど、七夕の宴……スタート。

「お〜。綺麗だな、今年も」
「そうね。見えないけどね」
「お前、そういうこと言うなよ」
「ふふ。だってぇ……」
「ここは、ノッかるところだろ。見えてる演技をしなさい」
 毎年のことだが。興信所の庭から空を見上げても、天の川は見えない。
 うっすらと見えるような気がしなくもないけれど……。
 このやり取りもまた、毎年恒例のものだ。
 シュラインと武彦が笑っている隣で、零はハムハムと饅頭を食べつつ空を見上げる。
 色々な説があるけれど、一般的に七夕といえば、
 離れ離れになってしまった恋人同士が、一年に一度だけ会える日。
 そう考えると、とても切なく儚い一夜のように思える。
 好きな人と逢うことを抑制されるなんて、可哀相です。
 惹かれあっているのに、それを止めるなんて、あんまりです。
 大好きな人とは、いつでも一緒にいたい。
 そう思うのが普通なのに。それを理解できないはずがないのに。
 どうして、そんな意地悪なことをするんでしょうか。
 どうして、二人はそれに従っているんでしょうか……。
 蓬饅頭を食べながら、しんみりと呟いた零。
 七夕の悲恋に感情移入し、うっかり切なくなってしまったようだ。
 そんな零の頭を撫で、シュラインはクスクス笑う。
「大丈夫よ。織姫と彦星は、年がら年中ラブラブなんだから」
「そうなんですか……?」
 星の寿命から換算するとね、一年って瞬き一つにも満たない時間らしいの。
 その観点から考えると、いつでも一緒。そういうことになるでしょう? 
 それにね、逢えない時間っていうのも必要だったりするのよ。
 ラブソングなんかでも、あるでしょ?
 逢えない時間が愛を育むだとか、そういう感じの。
 昔はねぇ、私、そういうのに苦笑してたんだけど。
 何クサいこと言ってるんだか……ってね。
 でも今は、すごく理解るの。その意味が。
 今はまだ難しいかもしれないけど、
 きっと零ちゃんにも理解る日がくるわ。
 本当に、心から愛しいと思える人に巡り合えればね。
 シュラインの言葉に、零は夜空を見上げ、照れ臭そうに笑った。
 何だか、そう言われると、私も織姫になった気分です。
 どこかにいる、彦星さんを探してみるのも楽しいかもしれませんね。

 *

「ちょっと。武彦さん、飲みすぎ……って、きゃー!」
「うげげげげ」
「いやぁぁぁ! お兄さん、汚いですっ!」
 しんみりと、しっとりと。そんな七夕の夜は長くは続かず。
 飲みすぎた武彦は、もはやベロンベロン。
 既に意識はないのではなかろうか、と思わされるが、
 それでも武彦は飲むことを止めない。
 今年も、何だかんで、汚……いえ、騒々しくなってしまうのね。
 まぁ、賑やかなほうが、私達らしいような気もするけど。
 それにしても飲みすぎよ、本当。
 明日は、お仕事……お休みかしらねぇ。
 クスクス笑いつつ、武彦の額に濡れタオルをペシッと貼り付けたシュライン。
 愛し惹かれる織姫と彦星。そのバリエーション。
 中には、こんな織姫と彦星がいても、いいかもしれない。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 NPC / 草間・武彦 / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント(草間興信所の所長)
 NPC / 草間・零 / ♀ / ??歳 / INNOCENCE:エージェント(武彦の妹)

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.07.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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