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■INNOCENCE / ディテクター獲得 (限定受注)■

藤森イズノ
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
「やだ。絶対やだ」
「おぬしも、しつこいのぅ」
「やだってばー! 絶対にやだ!」
「必要なことなんじゃ。それは理解るじゃろう?」
「わかんない。全っ然わかんねー!」
「……(話にならんのぅ)」
 イノセンス本部、一階セントラルホールにて。
 海斗とマスターがモメています。
 また何か、海斗がワガママを言っているのかと思いきや。
 どうやら、そうではないようで。
 頑なに『いやだ』と拒む海斗。
 その理由を尋ねてみれば……。
INNOCENCE // 武彦獲得

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 OPENING

「やだ。絶対やだ」
「おぬしも、しつこいのぅ」
「やだってばー! 絶対にやだ!」
「必要なことなんじゃ。それは理解るじゃろう?」
「わかんない。全っ然わかんねー!」
「……(話にならんのぅ)」
 イノセンス本部、一階セントラルホールにて。
 海斗とマスターがモメています。
 また何か、海斗がワガママを言っているのかと思いきや。
 どうやら、そうではないようで。
 頑なに『いやだ』と拒む海斗。
 その理由を尋ねてみれば……。
 
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「へぇ。武彦さんを、ねぇ……」
 事情を聞いて、腕を組みフムフムと頷くシュライン。
 海斗とマスターがモメていた理由。
 それは、武彦をイノセンスに引き抜くことだった。
 人脈(あるのか?)だとか、探偵としての能力だとか、
 それら全てを合わせて、マスターは組織に彼が必要だと判断した。
 何度も共同任務で、うちの面子と顔も合わせていることじゃしな。
 奴を組織に入れることに反対する者はおらんじゃろ。
 ……海斗を除いて、な。
 ハァ、と溜息を落としたマスター。
 当然の如く。武彦をライバル視している海斗は猛反対。
 何であいつを入れるんだ、だとか、必要ないだろ、だとか。
 具体的なことは一切述べず、自分が嫌だからという理由でのみ拒む。
 駄々を捏ねる子供のように、嫌だの一点張りな海斗。
 かれこれ一時間付き纏われて反対され、マスターは御疲れのようだ。
 あらあら。本当、海斗くんって武彦さんを嫌うのねぇ。
 ん〜。でも、嫌ってるっていうのとは、少し違うような気もするかな。
 ものすごい勢いで嫌だって連呼してるけど、
 どこか楽しそうにも見えるもの。気のせいかしら?
 ねぇ、海斗くん。嫌だっていう気持ちは理解るけど。
 こう考えてみるのは、どうかしら?
 武彦さんが組織に加入すれば、何の弊害もなく、いつでも対戦できるじゃない?
 好きなときに好きなだけ、挑んだりできるのよ?
「そう考えたら、悪い話じゃないでしょ?」
 クスクス笑うシュライン。
 海斗はムムムムムム……と眉を寄せて、しばらく黙りこくった。
 確かに一理ある。いつでも挑戦できるってのは、イイ話だ。
 張り付いたりすれば、あいつの弱点も掴めたりするかもしれない。
 それにシュラインと一緒にいるときのアイツは隙だらけだ。
 そこを後ろから、ザクッとやっちゃえば……うん。美味しいかもね。
 短絡思考な脳で思案して一分。
 海斗は「しかたないな」と言って反発するのを止めた。
 微妙にニヤついている辺り、何か企んでいそうだが。
 とりあえず、反対者がゼロになったことは、めでたい。
「すまぬが。シュライン。奴を連れてきてくれんか」
「へっ。私ですか?」
「妻に呼ばれれば、断らんじゃろうて。ふぉっふぉ」
「……意外と手堅いですね」
 笑うシュラインに、マスターは紅い宝石を渡した。
 これを武彦に見せてくれれば、全てを理解するはずじゃ、とマスターは言う。
 へぇ。綺麗な宝石。ルビー……とは少し違うかな?
 これを見せるだけで理解するって……。
 まだ何とも意味深な発言ね。まぁ、いいけど。
「じゃ、行こっか。海斗くん」
「え。俺も?」
「うん。せっかくだし」
「……わかったー(めんどくせ……)」

 武彦を探し、異界をウロウロすること三十分。
 どこにいるのか、おおよその見当がついていたが故に、すぐに発見できた。
 小さな公園。ブランコで揺れながら、煙草をふかしている武彦。
 リストラされたサラリーマンのような姿に、ぷっと吹き出すシュライン。
 あぁ、いけない。つい笑っちゃった。
 武彦さん、ここ好きよねぇ、ほんと。
 素朴な感じなのが落ち着くのかしら?
 テクテクと歩み寄るシュライン。
 その後ろを、ガムを噛みながら海斗が付いてくる。
「ちょっと、よろしいですか?」
 小首を傾げ、微笑んで尋ねたシュライン。
 武彦はクックと肩を揺らして笑う。
「何ですか。こんなところで逆ナンですか?」
「えぇと。そうかもしれませんね」
「ほぉ〜。物好きですねぇ」
「ふふ。武彦さん。はい、これ。マスターから」
 マスターから預かっていた紅い宝石を取り出し、武彦に差し出す。
 すると武彦は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、煙草を踏み消して言った。
「応じるか否か。その前に、質問してもいいか?」
「どうぞ」
 微笑んでシュラインが返すと、武彦はジッと見つめ返した。
 その眼差しに、すぐさま感じ取る予感。
 宝石を見ただけで、スカウトに来たって理解したってことは。
 もう既に、話は纏まってる状態なのね?
 これは、そう。一種の儀式みたいなもの。
 そう考えて、間違いないわね?
 そう尋ねるように見やると、武彦は目を伏せて淡い微笑みを返した。
 十分だ。そう考えて間違いない。正解、ということだ。
「じゃ、質問。任務の報酬は、だいだい、どのくらいだ?」
「そうねぇ。内容にもよるけど。危険度が高ければ高いほど、報酬も跳ね上がるわ」
「ほぅ。危険度ってのは、どうやって判断するんだ?」
「依頼板に掲載されてるわ。危険手当がオプションで付く依頼もあるわね」
「ふぅん。じゃあ、活動拠点は?」
「森の中にある本部ね。必要であれば、個室も与えられるわ」
「食事は? あ、違う。ちょっと質問変える。 ……三食昼寝付きか?」
「ふふ。ご自由に。基本的に奔放主義だわ」
「なるほどな。じゃあ、最後の質問」
 ニヤリと笑い、海斗を指差して武彦は尋ねる。
「あの生意気そうなガキが持ってる変な銃は何だ?」
「あれは、魔銃っていう代物ね。私は持ってないけど……組織員の証よ」
「なるほど。オーケー。理解した」
 ぱふっ、とシュラインの頭に手を乗せ、
 ごくろうさんと呟いて笑った武彦。
 何だか、これ。テストみたいな感じだったわね。
 もしかして、これが狙いだったのかしら。
 だとすると、マスター……やっぱり曲者ね。
 質問を終え、シュラインのわかりやすい回答で全てを理解した武彦は、
 受け取った紅い宝石を懐にしまい、フゥと息を吐いて一言。
「いいよ。加入しよう」
 武彦がその言葉を吐いた瞬間。
 待ってましたとばかりに、武彦に飛び掛る海斗。
「生意気なのは、てめーだろ、このやろ!」
「痛い痛い痛い……」
 いつもの二人の遣り取りに笑うシュライン。
 晴れて(?)武彦も正式にイノセンスの一員となった。
 忘れないように、覚えておきましょうか。記念日の一つだものね。
 えぇと。七月二十九日。午後四時二十分頃。
 武彦さん、イノセンスに加入。天気は快晴でした……っと。

 *

 そのまま、イノセンス本部へと連れて来られた武彦。
 ここでもまた、テストのような武彦の質問がいくつも飛んできた。
 各施設の場所や概要、その他色々と細かい諸注意など。
 知りえている事柄を、シュラインは出し惜しむことなく放出した。
「カラオケルームもあるのよ〜。毎晩の宴会場ね、あそこは」
「ほぅ。で、食事の種類は?」
「数え切れないほどありますわよ。制覇するのは大変かも」
「ふ。腕がなるな。いや、腹か? いや、喉か? 舌か?」
「どーでもいー」
 ケッと舌打ちして言った海斗。
 ぽてぽてと本部を歩き、各施設の説明を一通り終えて。
 シュラインは海斗を見やって尋ねた。
「海斗くん」
「んー?」
「武彦さんの個室って、もう準備されてるの?」
「あるよー。こっち。つか、シュラインの隣だよー」
「あら。そうなの」
「夫婦だからな。同じ部屋の方が良かったですかねぇぇぇ〜?」
「……黙れ。マセガキが」
「ふふ。そうかもね?」
「って、おい。乗っかるなよ、お前……」
 武彦のイノセンス加入。果たして、この先どうなることやら。
 より一層賑やかに、騒々しくなることは間違いないだろうけど。
 紅い宝石の謎っていうか、意味っていうか。
 あれ、ハッキリしないままだけど……ま、いっか。
 そのうち、理解るわよね。教えてくれるわよね。ね?

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 草間・武彦 / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント(草間興信所の所長)
 NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)

 シナリオ参加、ありがとうございます^^
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 2008.07.29 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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