■INNOCENCE / コスプレ・パーティ (限定受注)■
藤森イズノ |
【7192】【白樺・雪穂】【学生・専門魔術師】 |
「二人だけだと、盛り上がりに欠けるよなー」
「そうだね。やっぱ、怪獣とかいないとねぇ」
「よし。藤二にやらせよーぜ。怪獣」
「あははっ。いいかも、それ」
「めんどくせーから、全員でやっちまうか」
「えぇ?」
「強制にすればいーんだよ。よっしゃ、放送すっぞ」
「うーん」
妙な格好をした海斗と浩太が向かうは、本部二階にある放送室。
本来は緊急任務の報告だとか、そういう時に使われるのだが……。
カチリとスイッチを入れ、海斗は叫び発した。
『あーあー! 全エージェントに告ぐ! コスプレパーティをやるぞー!』
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COSPA
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「二人だけだと、盛り上がりに欠けるよなー」
「そうだね。やっぱ、怪獣とかいないとねぇ」
「よし。藤二にやらせよーぜ。怪獣」
「あははっ。いいかも、それ」
「めんどくせーから、手当たり次第、呼ぶか」
「えぇ?」
「強制にすればいーんだよ。よっしゃ、放送すっぞ」
「うーん」
妙な格好をした海斗と浩太が向かったのは、
異界中心部にある特別放送機関。
本来は緊急事態の報告だとか、そういう時に使われるのだが……。
カチリとスイッチを入れ、海斗は叫び発した。
『あーあー! 異界の住人に告ぐ! コスプレパーティをやるぞー!』
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こすぷれ……?
公園で絵本を読んでいた雪穂は、キョトンと首を傾げた。
突如アナウンスされた、パーティの告知。
聞き覚えのありすぎる声だった。
間違いなく、今のは海斗の声だ。
コスプレって、あれだよね。
確か、映画だとか漫画に出てくる人物になりきるっていう……。
どうしてまた、そんなパーティをやることになったのかなあ。
……まぁ、ノリってやつなんだろうね。今回も。
突然ではあるけれど、良いかもね。
近頃、ここ異界では妙に、わだかまりの残る事件が頻発してるから。
不安に思っていたりする人も、多いと思う。
基本的に何でもありな世界だけど、楽しくあれば、それが一番だもんね。
何もかもを払うことは出来ないけれど、
一時だけでも、不安だとか嫌な気持ちを払拭できれば大成功、って感じ?
……まぁ、海斗は、そこまで考えてないと思うけど。
読んでいた絵本をパタリと閉じ、ベンチから立ち上がって淡く微笑む。
全域アナウンスをしたってことは……中心部の、あそこかな。
何ていうかな〜。本当、そそっかしいよね、海斗は。
やるぞーって言われても困っちゃうんだよ?
どこでやるのか、言ってないでしょ〜?
クスクス笑いつつ、雪穂は自宅へと向かう。
海斗のことだから、このままの格好で行ったらブーブー文句言うよね。
何の説明もないんだから仕方ないじゃないって言い返すのが普通なんだろうけど。
キミのことを理解してしまっているからには、お望みどおりにしなくちゃ。
コスプレかぁ……さて、どうしようかな。
初めてなんだよね、僕、こういうの。
雑誌で見たことはあるけど……。
特に決まりはないんだよね、あれって。
自分の思うがまま、好きなように楽しんじゃえば良いんだよね、確か。
よぅし、それじゃあ……。
自宅にある衣裳部屋にて、雪穂が手にとったもの。
それは、アニメ『しにがみのポポ』に登場する主人公、ポポの服。
なぜ、衣裳部屋に用意されているのか。その理由は簡単。
雪穂は、しにがみのポポが大好きで、その度合いが尋常じゃない。
好み愛す、愛ゆえに。うっかり、服を作ってみたのだ。
とはいえ、本当に、ただ作ってみただけ。
大好きなポポが着ている服が、あまりにも可愛くて。
作ってみたいな、と思っただけ。
実際に身に纏い、どこぞへ出掛けるなんてことは考えもしなかった。
まさか、こうして身に纏う日がくるとは……。
ちょっとだけ恥ずかしいような気持ちはあるけれど。
それでもワクワクしてしまう。
心のどこかで、思っていたからかもしれない。
ポポのように、自由奔放に。
この服を纏って、蝶々のように舞ってみたい、と。
纏うのは、シンプルな白いワンピース。
スカートの丈は、膝より少しだけ下。
白い手袋をはめて、足元は、白が映える真っ赤な靴。
三つ編みを解いたら、緩やかなウェービーヘア。
その髪を、ウサギの耳のように高い位置で二つに結い直して。
赤いリボンでカチューシャ風に留めて……。
触れてしまうことを躊躇うような。可憐な少女。
可憐な死神、ポポが完成。
鏡の前でクルリと一回転し、うんと頷く雪穂。
こんな感じ、かな。うん。……何だろ、これ。くすぐったいな。
拭いきれない恥じらいを胸に。
雪穂は、いそいそと海斗の元へと向かう。
*
思ったとおり。
海斗は、異界中心部にある放送機関にいた。
腕を組み、参加者が集まるのを待っている。
海斗を見つけた雪穂は、遠くからクスッと笑った。
海斗だけじゃなく、隣に浩太もいたのも意外だけれど。
それよりも何よりも、二人の格好がおかしくて。
あの格好は……『リアルサウンダー』の主人公と、その親友の格好だね〜。
海斗、大好きだもんねぇ……あの作品。
リアルサウンダーは、大人気の戦隊モノ。
小さな男の子だけじゃなく、それなりの歳でも熱狂的ファンがいるほどだ。
敵を倒して一件落着! という展開ではなく、
ほんのりと難しい『心の遣り取り』があったりするのが、魅力らしい。
まぁ、リアルサウンダーの説明は、この辺で。というか、置いておいて……。
トテトテと歩み寄り、二人の前で立ち止まる雪穂。
顔を上げた海斗と浩太は、口を揃えて言った。
「「ポポだ!!」」
見事なハモりにもそうだが、二人がポポを知っていたことにビックリ。
あまりメジャーな作品ではないのに。知ってるんだ。
自分が好きな作品を、知っていて、すぐに反応してくれる。
コスプレには、こういう楽しみもあるのかな……と雪穂は笑った。
海斗が発した突然のアナウンスから一時間が経過したとき。
異界中心部は、妙なことになっていた。
唐突かつ意味不明なアナウンスだったのにも関わらず、
あらゆる衣装を纏った人で溢れかえっている。
何だかんだで、異界の住人は、お祭りごとが大好きなようで。
中にはアッと声を出してしまうほど有名な作品に関与しているキャラクターがいたり。
逆に、キャラクターは勿論のこと、作品すらもわからないような格好の人もいた。
けれど、理解らなくても問題はない。
この楽しげな雰囲気で、十分だと思えた。
パーティというからには、集まった皆で何かをするのかと思いきや。
特に何をするわけでもなく、会話を楽しむだけ。
ふぅん。こんな感じなんだ。
もっとこう、ワイワイ大騒ぎするのかと思ったよ。
でも、あれだね。皆、とっても楽しそう。
海斗の目的とは違うんだろうけれど、大成功なんじゃないかな、うん。
うんうん、と頷きつつ、雪穂は持ってきたスケッチブックに、水色のクレヨンで言葉を綴った。
トントン、と肩を叩かれて振り返る海斗。
雪穂が持つスケッチブックには『写真撮ってもいい?』と、可愛らしい丸い字で書かれていた。
何で喋らないんだ? と尋ねようとしたが、海斗はハッと気付く。
そう。ポポは、喋れないのだ。
声を持たない、死神なのだ。
フラッと来た割に、物凄い、なりきりっぷり。
そんな雪穂に、海斗はケラケラ笑いつつ、
どうぞ〜と言って、浩太と一緒にポーズを決めた。
笑わせにかかっているとしか思えないポーズだが、二人は大真面目だ。
雪穂はクスクス笑いつつ、持ってきたカメラでパシャリと写真を撮った。
ピンクのデジタルカメラ。これもまた、ポポが作中で持っているものだ。
そっくりそのまま、というわけではなく、似たもの、という感じだが。
撮った写真を確認し、満足そうにニコリと笑うと、
雪穂はスケッチブックを抱え、またトテトテと歩いて行く。
会場(?)にいる人物に次々と、同じ行動をとっていく雪穂。
雪穂のほかにも数名、ポポのコスプレをしている女の子がいるが、
雰囲気やら何やら、どこを取っても、雪穂がピカイチだ。
写真撮っていい? と書かれたスケッチブックを見せられ、
可愛らしく微笑まれては、断ることなんて出来やしない。
いつしか、雪穂が主役のようになってしまい。
彼女を囲うように、大きな輪が出来る。
輪の中心で楽しそうに笑う雪穂を見て、海斗と浩太はケラケラと笑った。
*
唐突に開催されたコスプレパーティにて。
雪穂が、あらゆる人物に声を掛けて御願いし、完成させたアルバム。
古今東西、様々なキャラクターが収められたそのアルバムを、
雪穂はポポの格好をして、全員に配り歩いていた。
可愛らしいその姿を、あちこちで見かけ。
その度、海斗と浩太は顔を見合わせて笑う。
これを期に、コスプレにハマッたり……は、しないか。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7192 / 白樺・雪穂 (しらかば・ゆきほ) / ♀ / 12歳 / 学生・専門魔術師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / ラビッツギルド・メンバー
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / ラビッツギルド・メンバー
シナリオ参加、ありがとうございます。
遅くなってしまい、大変申し訳ございません。
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2008.09.10 / 櫻井くろ (Kuro Sakurai)
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