■《その熱い夏の日に…》浜辺の頂上決戦■
太郎丸コトノハ |
【3167】【氷女杜・天花】【土木設計事務所勤務】 |
じりじり、ミーンミーンミン、ジーワジーワジーワ…と遠くで聞える気がする。
「あ、暑い…のじゃ。」
ばたり。
「ちょっ、大丈夫ですかっ。」
「大丈夫…ではないわぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁっ」
例によって例のごとく、客の居ない占い屋『星詠庵』の一室で、玲瓏が騒ぐ。
無理も無い、此処の所の猛暑は連日30度を越え、夜になっても下がらない熱帯夜が続いているのだ。
「……か、かくなる上は、地の気の宿命を変える術を…」
玲瓏の持つ能力は、突詰めれば運命に干渉するというもの。大地そのものにある運命に干渉し、日照りが続く…という運命を捻じ曲げる事も可能…ではあるのだが。
「だ、駄目ですよっ!幾らなんだってそんな事をすれば、向こう3ヶ月寝込みますよっ」
無論、代償もなくそんな事が出来るわけもなく、日照りを押さえて結局寝込むのでは、快適な夏とは云い難い。
仕方なく、熱く濁った空気をかき回すだけの扇風機の前でせめてもの涼を取る事に専念する。
暑い。
「星乎、なんぞ涼しくする妙案は無いかのぉ」
暑い。
「そんなの、あったらとっくに実践してますよぅ〜」
ただ、ひたすらに、暑い。
「だぁぁぁぁ、もう嫌じゃ! 帰るー妾は、大陸へ帰るぞぉ!!」
「わわわっ、落ち着いてください! 机が倒れ…」
ガタンっ バサバサバサ!!
暑さに耐え切れなくなった玲瓏が、椅子をガタガタと揺らした結果、机…は倒れなかったが、乗っていた本等が散らばった。
流石にばつが悪そうな顔で、すまぬと一言いって、玲瓏が落ちた物を戻す。
「?…これは」
「あぁ、お祭りの案内ですよ。草間さんの所の零ちゃんから貰ったんです」
なんでも、海で水着コンテストや、夜は浴衣コンテストがあったりするらしい。
暑い時こそ、屋外で騒いだ方がいっそ気が紛れるのかもしれない。
「ふむ」
「行きたいんですか?だったら…」
「妾らも、祭をやれば良いのじゃな♪」
「へ?」
一般人が多くいては、参加しにくい輩も居るだろう。ならば、気にせず遊べる祭を開こうではないか。
「なに、幸い先日蓮より面白い物を買うたのじゃ。何でも空間を隔離する結界を起こす玉らしいがの、つまり この店と同じじゃが」
簡易結界とも呼べる物らしい。
大きな祭の隣に、異界に縁ある者の宴を開こうと言うのだ。
「さて、誰に声をかけるとするかの?草間と…蓮も呼べが来るかのぉ?」
楽しげに計画を練る玲瓏を横目に、青くなる少年が一人。
「……お、泳ぐん…ですか?」
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