■ラビッツハンター試験■
藤森イズノ |
【7182】【白樺・夏穂】【学生・スナイパー】 |
ラビッツギルドにて実施されている、ハンター試験。
特に日程が決まっているわけでもなく、
試験は唐突に、気まぐれに実施される。
この試験に合格した者は、
晴れて正規のラビッツハンターの称号を得ることとなり、
ギルドの全域に出入りすることが可能になる。
ラビッツギルドの上層には、
あらゆる謎と知識、あるいは富があると噂されており、
ギルドに出入りする者、関与する者の大半は、
皆、この試験に合格し、正規のハンターとなることを望む。
中には、歪みきった目的でハンターの称号を欲する者もいるようだが……。
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ラビッツハンター試験
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ラビッツギルドにて実施されている、ハンター試験。
特に日程が決まっているわけでもなく、
試験は唐突に、気まぐれに実施される。
この試験に合格した者は、
晴れて正規のラビッツハンターの称号を得ることとなり、
ギルドの全域に出入りすることが可能になる。
ラビッツギルドの上層には、
あらゆる謎と知識、あるいは富があると噂されており、
ギルドに出入りする者、関与する者の大半は、
皆、この試験に合格し、正規のハンターとなることを望む。
中には、歪みきった目的でハンターの称号を欲する者もいるようだが……。
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森の中、吸い寄せられるように訪れた、ラビッツギルド。
海斗から、少しだけ……話は聞いている。
このギルドが出来た理由、その目的。
けれど、聞いたその話は、断片でしかなくて。
細かいことは理解らない。理解できないように話していたんだろう。
私が、こうして自らの足で、ここへ来るまでは。
森の中にある大きな湖、その中心にあるラビッツギルド。
名前は変われど、以前……イノセンスの本部と外観は変わらない。
眩暈を覚えてしまいそうなほどに真っ白な、白亜の館。
不思議だな。どうしてかな。
ほんの少し前までは、何度も何度も出入りしていた場所なのに。
懐かしいような、切ないような、不思議な気持ち。
しばらくギルドを眺め、物思いに耽った後、意を決したかのように踏み出す夏穂。
銀色の扉に触れて、中へ。扉が開く、その音も懐かしい気がした。
コツコツと音を立てて、進むエントランス。
内部も、特に大きく変わったところはなさそうだ。
強いて言うなれば、一階ホールの奥に、見慣れぬ……カウンターのようなものが設置されていることくらいか。
シンと静まり返っているセントラルホール。
呼吸の音が、鮮明に聞こえる。
誰も……いないのかしら。まさかね。
キョロキョロと辺りを窺っていた、そのときだ。
「夏穂」
空から降ってきた、聞き覚えのある声。
見上げれば、二階から、海斗が笑顔でヒラヒラと手を振っていた。
いらっしゃいだとか、ようこそだとか、そういう言葉はない。
海斗は階段を軽やかなステップで降りてきて、夏穂の目の前でピタッと止まる。
「ちょーど良いね。ナイスタイミング」
「え?」
「こっち。今、試験やってんだ」
「試験……?」
「そそ。ハンター試験、ってやつ」
「…………」
ラビッツギルドに身を置き、活動する者の総称。
それが、ラビッツハンターだ。海斗から、その名前だけは聞いていた。
また、彼も、一ハンターとなったことも聞いている。
夏穂の手を引き、二階へと連れて行く海斗。
どちらにせよ、ここに出入りすることになるのなら。
より深い追求を望むのなら、尚更。
避けては通れぬ道なのだと思う。
ウン、と頷き理解する夏穂。
心のどこかで、つかえている妙な感覚。
それが何なのか把握する為にも、受け入れてもらわねばならないから。
*
ギルド二階。普段は、ささやかなパーティだとか、そういった祭事に使われているのであろう部屋。
広い部屋に、ズラリと並べられている机と椅子。
既に多くの者が着席し、机上の試験と睨めっこしていた。
海斗に促され、右、一番後ろの席へとつく夏穂。
机に置かれているのは、いわゆるペーパーテストの類。
一般常識を把握しているか否か、その辺りを審査するものだろう。
胸元から、肌身離さず持っている、お気に入りの白い万年筆を出して向かい合う。
ごく普通の計算問題、文章から答えを読み取る、言葉のパズル。
特に頭を捻る必要のない問題ばかりだ。
サラサラと、難なく解いて、答えを記していく。
テストとか……久しぶりね。懐かしいわ。
まぁ、私が過去に受けていたテストは、一般的なそれとは少し異なっていたけれど。
答えが存在する、っていうの、面白いわよね。
逆もまた然りで。間違いがあるっていうのも面白いと思うの。
答えを導く、その過程。この時間、私は好きよ。
落ち着くっていうか、何ていうのかしら。
ある意味、試されているようなものなのだろうけれど。
解いた問題、そのすべてに自信を抱く。
間違っているかもしれない、そう思うことはなかった。
全ての解答欄を埋め、ふぅと息を吐いた夏穂。
彼女の後ろで待っていた海斗は、ニコリと笑うと、
「おっけー。じゃ、次は実技な」
そう言って、また手を引き歩き出す。
解答用紙の回収はしなくていいの?
そう尋ねようとしたときだ。
フッと、解答用紙が消える瞬間を目の当たりにする。
説明されたわけじゃないけれど、把握した。
解答用紙は、マスターの手元へ誘われたのだろう。
手を引かれ、連れて来られたのは……ギルドを囲っている森。
パッと手を離し、海斗は言った。
「んじゃ、頑張って。俺は、ここで待ってるから」
「……何をすればいいの?」
「あ、そーか。えとね、えーと……夏穂さ、もうウサギは見たよな?」
「水色のウサギね」
「そそ。そいつを探してきて」
「……森の中にいるの?」
「マスターが作ったダミーだけどな。んで、見つけたら、その証拠を持ってきて」
「わかったわ」
「いってらっしゃい」
海斗に見送られ、森の中へと入っていく夏穂。
探せ、見つけろと言われても、とても広く大きな森だ。
どうやって探すのが一番良いだろうか……。
テクテクと歩きつつ、辺りを見回していく。
推測でしかないけれど、見つけようとしちゃ駄目な気がするのよね。
数時間前に遭遇したときも、そうだったじゃない?
見つけようとなんて、してなかった。
ふっと姿を現したのよ。
交わった視線もまた、不思議な感覚だった。
何ていうのかな……見つかっちゃった、とか、そんな感じ。
(あぁ、そうか)
唐突に理解した夏穂。理解すると同時に歩みを止める。
探す必要は、ないのよね。なぜなら、向こうが探しているから。
私は動かなくていいの。見つけてくれるはずだから。
木の葉が揺れる様を眺めつつ、数十秒。
身動きせずに、その場で立ち尽くしていた。
把握した、その推測は正しくて。
ヒョコリと、茂みから水色のウサギが姿を見せる。
まるで、かくれんぼ。見つけて欲しいと願う、かくれんぼ。
交わる視線に、ニコリと微笑む夏穂。
すると水色のウサギは、パタパタと耳を揺らし……姿を変えた。
愛らしいウサギから一変。何て不気味な魔物だろうか。
一応、猫のような姿形はしているけれど……。
牙を向く魔物を前に、肩を竦めて溜息を落とす。
どうして、こう……動物型の魔物が多いのかしら。
いつも、心苦しいのよ。愛でるべき、可愛い存在を痛めつけるのは。
魔物と対峙しているのに、この凄まじいまでの安堵感。
それもそのはず。これは、マスターが作ったダミーなのだから。
身の危険を覚えることはない。心は、とても落ち着いている。
溜息交じりに魔扇子を躍らせ、灼熱の炎で魔物を焼き払う。
キラキラと光を放ちながら、ドサリと地に伏せた魔物。
何ていうか……意図が丸見えね。
牙を剥き出してはいたものの、襲い掛かってくる気配はなかった。
おそらく、心に問題がある人物じゃなければ、全員が合格するシステムなんじゃないかしら。
スヤスヤと心地よさそうに眠っているような魔物の前にしゃがみ、首を傾げる夏穂。
証拠を持って来いって言ってたわね。証拠か……どうしようかな。
*
見送って、一時間ほどが経過したとき。
森の中から、夏穂がテクテクと歩き出てくる。
夏穂の手には、魔物の体を覆っていた黒い毛と、指先で輝いていた爪。
持ち帰った、それらの証拠を受け取り、海斗は満足そうに微笑んだ。
「この試験の結果は、いつわかるのかしら?」
首を傾げて尋ねた夏穂。海斗は受け取った証拠を魔法で消して笑う。
「結果発表は今だよ」
「そうなの?」
「うん。ま、とーぜんだけど、合格な」
「そう」
「いらっしゃい。よろしくな。って、今更だけど」
ケラケラと笑いつつ、そこでようやく口にした歓迎の言葉。
初めて海斗と出会い、強引に勧誘された、あの日を思い出した。
あれから一年。色んな経験を経て、あなたのことを知って。
そして今、一緒に、新しい道を歩んでいくんだね。
この道の先には何があるのかな。ゴールなんて存在するのかな。
わからないけれど、そんなこと、わからないけれど。
追いかけていこうと思うの。遥か彼方に見える、自分の背中を。
触れることが出来るのか否か。それも、わからないけれど。
追いかけなくちゃ、捕まえることなんて出来ないから。
遥か彼方、先を行く、私へ。
あなたが伝えたいこと、それを耳にする為に。
私は、あなたを追いかけるよ。私は、私を追いかけるよ。
「じゃ、中に戻ろっか」
「うん」
「案内は……いらねーよな。ははっ」
「うん。でも折角だし……また、案内してもらおうかな」
「おっけー。へたくそな説明で良ければ!」
「ふふっ」
「んじゃー、まず一階な。このカウンターで仕事を貰って〜それから〜……」
「うんうん」
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7182 / 白樺・夏穂 (しらかば・なつほ) / ♀ / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / ラビッツギルド・メンバー
クロノラビッツ:オープニング派生シナリオ参加、ありがとうございます。
オープニング -message- から繋げた冒頭となりました。
クロノラビッツと初めて遭遇した日と、同日な設定となっております。
自分探しの永い旅。名前は変われど賑やかで忙しないのは不変。
ラビッツギルド拠点での生活、お楽しみいただけますように。
また、新たな経験が、より一層の成長と変化をもたらしますように。
私からも、心を込めて。宜しく御願い致します。
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2008.09.19 / 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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