■交錯 -譲れぬ想い-■
藤森イズノ |
【7707】【宵待・クレタ】【無職】 |
人のものを奪っておいて、よくもまぁ、そんなことが言えるね?
何回言えば理解るんだ。あいつは、ものじゃねぇ。
綺麗事ばっか並べて……。偽善者って、本当見てて疎ましいよね。
もういい。これ以上話しても時間の無駄だ。
あはは。おかしなことを言うね? ここには時間なんて存在しないじゃないか。
いちいちウルせぇんだよ、お前は。いいから、とっととかかって来いよ。
やれやれ。嫌いなんだけどな、こういう手荒な真似は。
笑えない冗談だな。イラッとした。
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交錯 -譲れぬ想い-
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人のものを奪っておいて、よくもまぁ、そんなことが言えるね?
何回言えば理解るんだ。あいつは、ものじゃねぇ。
綺麗事ばっか並べて……。偽善者って、本当見てて疎ましいよね。
もういい。これ以上話しても時間の無駄だ。
あはは。おかしなことを言うね? ここには時間なんて存在しないじゃないか。
いちいちウルせぇんだよ、お前は。いいから、とっととかかってこいよ。
やれやれ。嫌いなんだけどな、こういう手荒な真似は。
笑えない冗談だな。イラッとした。
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ヒヨリ。お前がムキになるのは焦っているからだろう?
俺が、こうして此処に戻ってきて、クレタに接触したことで、お前は焦ってる。
そりゃあ、そうだよね。仕方ないことだよね?
捨て猫を拾ってさ、可愛がっていたところに飼い主が現れたようなものなんだから。
お前は、手放したくないと思ってる。それは、何故か? 情が芽生えているからさ。
それだけじゃない。お前は、勘違いをしてる。錯覚だよ、それは。
クレタが、お前のものであると。そう錯覚してる。
いや、違うな。そう思い込んでると言ったほうが正しいかな?
そう思い込むことで、お前は自分を保っているんだ。
自分のものではないと、その事実を理解っているからこそ。
思い込んで……。そう、お前は、逃げているんだ。事実から逃げている。
勝手にペラペラ喋んなよ。お前こそ焦っているんじゃないか?
以前のようにクレタが自分を頼ってこないことに、焦っているんじゃないか?
ひとつ言っておくけどな。お前こそ、勘違いしてんだよ。
クレタは人だ。モノじゃない。誰のものだとか、そんなこと関係ねぇんだ。
確かに、かつては、お前の傍にいたよ。あいつは、お前の傍にいた。
でも、それは、あいつが望んでいたことじゃない。お前が縛り付けていただけ。
知ってしまったんだよ、クレタは。お前から離れたことで、世界の広さを。
知って欲しくなかっただろうな。お前は。知ってしまえば、どんどん離れていってしまうから。
とんでもないよ、お前はさ。何て自分勝手な……エゴイストめ。
自分のものだと叫ぶことで、お前は自分を保ってるんだろ?
もう戻ってこないと、その事実を理解っているからこそ。
思い込んで……。そう、お前は、逃げているんだ。事実から逃げている。
ヒヨリとJ。交錯する想い。
双方が持つ黒い鎌の刃が重なり合う度、硝子の割れるような音が響き渡る。
音が聞こえる度、身体に、心に、その音が振動となって響く度、クレタは閉じてしまいそうになる目を必死に堪えた。
銀色の時計台、そこに身を隠して、こっそりと見やる二人の遣り取り。
二人の戦いの理由である自分が、目を瞑るわけにはいかない。
二人の戦いの理由である自分が、耳を塞ぐわけにはいかない。
全域にまで響き渡る二人の交錯音は、きっと全員の耳に届いている。
けれど、誰一人として様子を見に来る者はいない。
皆、理解っているのだろう。
この交錯は、他人にどうこう出来るものではないことを。
躊躇なく闇でぶつかり合う二人を見上げながら、クレタは息を飲んだ。
どちらが間違ってるとか……そういうことは、ないんだ。
どっちも間違ってない。二人とも、譲れぬ想いがあるから……。
少し前までは、還されても良いって思ってた……。
僕が、歪みの塊であるならば……少なからず、この空間に影響を与えているんじゃないかって思ったから……。
歪みは、還すべきもの。還してあげなくちゃ、ならないもの。
時守として、頼りなくても使命を果たしてきたから……それは理解ってる。
理解っているからこそ、還るべきなんじゃないかって。還されるべきなんじゃないかって。
ヒヨリ達に還されるのなら、それはそれで、幸福かもしれないって……そう思っていたんだ。
でも、それが間違いだってことに僕は気付いた。
全身全霊で、自分の身を省みずに僕を救おうとしてくれた人の想いを知ったから。
還されても構わないだなんて。そんなこと、考えちゃいけない。
護ろうとしてくれたんだ。僕を、僕という存在を護ろうとしてくれた。
それなのに、還されても良いだなんて。死んでも構わないって言ってるのと同じこと。
せっかく護ろうとしてくれたのに。僕がいなくなったら……皆、悲しむから。
皆の為にも、もっと頑張ろうって。強くなろうって、そう思えたんだ……。
そんな僕を知っているから、ヒヨリは、ああして躊躇うことなく鎌を振るう。
まるで、僕の背中を押すように。まるで、僕をギュッと抱きしめるように。
お前は、ここにいて良いんだって、そう何度も叫ぶように。
ヒヨリ。俺はね、自分の才能を誇ってる。自分を褒めるのが大好きだ。
実際、成功するだなんて思ってなかったんだよ。歪みを人にするだなんて。
でもね、俺は成功した。成功したからこそ、クレタがいるんだ、在るんだ。
感謝のひとつでも、したらどうだろう? 俺に、ありがとうって言ってみないか?
だって、そうだろう? 俺のお陰で、クレタは在るんだ。俺のお陰なんだよ? すべて。
お前が、お前たちが愛しいと思うクレタは、俺が作ったものなんだよ?
生みの親に感謝するのは、当然のことだろう? そう思わないか?
親? ふざけんな。お前のような頭のイカれた親、あってたまるか。
憶測で、イメージでモノを言うんじゃねぇよ。親ってのはな、子に愛情を注ぐんだ。
どんなときも護ってやろうとする。何があっても、見放さない。見返りなんて求めずに。
お前は確かに、愛していたかもしれない。惜しみない愛を注いだかもしれない。
でも、間違ってたんだ。愛情の注ぎ方を、お前は間違ってた。
間違ってなんかいないさ。離れて欲しくないから、ずっと傍にいてほしいから。
だから、足枷をつけた。手錠をかけた。自分の傍に置いて、何度も愛を囁いた。
これ以上の愛情表現があるかい? 愛故の拘束。これ以上の愛情表現があるかい?
もう無駄だな。イカれきったお前と話していると、こっちまでおかしくなりそうだ。
いつか手を離れ、巣立っていくもんだ。子供は。そうして成長していくんだ。
愛故の拘束だ? ふざけんな。成長させたくない、ただのワガママじゃねぇか。
いつまでも自分の傍に。自分がいないと、何も出来ない。
そんな、どうしようもない育て方をする奴を、親とは呼ばない。
人のものを奪っておいて、よくもまぁ、そんなことが言えるね?
何回言えば理解るんだ。あいつは、ものじゃねぇ。
綺麗事ばっか並べて……。偽善者って、本当見てて疎ましいよね。
もういい。これ以上話しても時間の無駄だ。
あはは。おかしなことを言うね? ここには時間なんて存在しないじゃないか。
いちいちウルせぇんだよ、お前は。いいから、とっととかかって来いよ。全力で。
だからね、俺は嫌いなんだよ。手荒な真似は。でもまぁ、お前がそうしろって言うのなら。
笑えねぇんだよ。イライラさせんな。手加減できなくなるぜ?
構わないよ。お前の愛情なんて、俺の足元にも及ばないんだから。
及ばないかどうか、確かめてみろよ。その腐った目で。
交錯する想い。互いに一歩も引かないのは、譲れぬ想いがあるから。
どちらの愛情も確かなもの。だからこそ、決着はつかない。
いつまでも、いつまでも。闇の中、交錯音が響き渡るだけ。
幸せだよ……。僕は、何て幸せなんだろう。こんなにも想われて……。
Jが僕を作ったのなら、僕はJに近い存在でもあるのに。一番、近い存在なのに。
仲間を傷付けないでくれって、立ちはだかることが出来ないんだ……。
手が震える、足が竦む、頬を伝うものは、とめどなく。
どうしたらいい……? 知って、事実を知って、それから。
それから僕は、どうすればいい……?
その交錯を、阻むことが出来ないのなら。どうすればいい……?
痛い。痛いんだ。心が痛い。
二人の想いが、頭に直接打ち込まれるようで。
その想いに、何て応えれば良いのか理解らなくて。
ありがとうって、もう止めてって。そう言いたい気持ちはあるのに。
出来ないんだ……。 僕には、二人を止めることなんて、出来ないんだ。
ただ愛されるだけ。惜しみない愛情を注がれるだけ。それから? それから、どうするの?
わからないんだよ。見えないから。二人の交錯する愛情が、あまりにも大きくて。あまりにも深くて。
僕には、わからないんだよ。そんなに愛されても……どうすればいいか、わからなくなるんだよ。
想われる幸せ。確かな幸せだけれど、それは、時に、こんなにも重く圧し掛かるのか。
幸せを感じさせるだけじゃなく、こんなにもキツく心を締め付けてしまうものなのか。
愛されるって、こんなにも……痛いものなの……?
その場に崩れるようにして座り込み、クレタは俯いたまま。
ぶつかりあう想い、その音を聞いていた。
誰が何と言おうと。俺は、お前を想ってる。誰よりも。
俺ほどまでにキミを思える奴なんて、存在しないよ。
心を込めて。何度でも叫んでみせよう。喉が潰れて枯れるまで。
Can't live without you.
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7707 / 宵待・クレタ / ♂ / 16歳 / 無職
NPC / ヒヨリ / ♂ / 26歳 / 時守 -トキモリ-
NPC / J(ジェイ) / ♂ / ??歳 / 時狩 -トキガリ-
シナリオ『交錯 -譲れぬ想い-』への御参加、ありがとうございます。
お前がいないと生きていけない。お前がいないのなら、生きてる意味もない。
ヒヨリもJも、同じ想いを胸に。いつまでも交錯、相容れず。
幸せや歓びだけでなく、苦しみも覚えて。 あなたは、もっと愛を知る。
以上です。不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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2008.11.23 / 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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