■シンクロ■
藤森イズノ |
【7707】【宵待・クレタ】【無職】 |
「随分と自信があるみたいだね?」
「自信を持つのは、良いことだよね」
「そうだね。でもさ、僕たちに敵うとは思えないな」
「うん。無理だよ。そんなの無理だよ」
「圧勝じゃ、つまんないよね」
「うん。つまんない」
「じゃあ、こういうのは、どうかな」
「何?」
「二人に選ばせてあげるの」
「何で勝負するか、ってことを?」
「そうそう。どうかな?」
「うん。良いんじゃない。楽しそう」
「と、いうわけで。どうする?」
「何して遊ぶ?」
満面の笑みを浮かべて、セラとシラが尋ねた。
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シンクロ
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「随分と自信があるみたいだね?」
「自信を持つのは、良いことだよね」
「そうだね。でもさ、僕たちに敵うとは思えないな」
「うん。無理だよ。そんなの無理だよ」
「圧勝じゃ、つまんないよね」
「うん。つまんない」
「じゃあ、こういうのは、どうかな」
「何?」
「二人に選ばせてあげるの」
「何で勝負するか、ってことを?」
「そうそう。どうかな?」
「うん。良いんじゃない。楽しそう」
「と、いうわけで。どうする?」
「何して遊ぶ?」
満面の笑みを浮かべて、セラとシラが尋ねた。
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「え……と……」
困り笑顔でチラリとオネを見やるクレタ。
どうすれば良いかな? といった、その眼差しにオネはクスクス笑う。
何でも良いんじゃないかな。楽しければ、セラもシラも満足するだろうし。
でも……この二人が『遊ぼう』って言うのは『勝負しよう』ってことだからねぇ……。
うんうん、と頷くオネを見ながら、クレタは必死に考えた。何をして遊ぼうか。
しばらく考えた後、クレタの頭にポンと浮かんだ遊び。
それは、エアホッケーだった。
別に得意というわけではないけれど、幼い頃、研究施設でよく遊んだものだ。
対戦相手は、いつもコンピューターで、遊ぶというよりは調査だったけれど。
エアホッケーで遊ぼう、と呟いたクレタに、セラとシラは「いいよ」と声を揃えて即答した。
そして、すぐさま必要な道具を出現させる。目の前にドーンと現れた黒いエアホッケーの台。
台の上には、白いマレットが4人分と、パックが一つ。
どこから出したんだろう……というか、何であるんだろう……。
不思議そうに首を傾げるクレタに、セラとシラが笑って言った。
「ヒヨリが買ってくれたんだよ」
「ボクらに勝てた試しはないけどね!」
エアホッケーセットは、ヒヨリが購入して二人にプレゼントしたものだそうだ。
勝負の為に、というよりは、遊んでくれとウルサイ双子を大人しくさせる為に買った模様。
ヒヨリやナナセ、他の皆も、こうして二人に捕まって遊んでるんだね……。
マレットを手にしつつ、クレタは淡く微笑んだ。
ゲームは、ダブルスで実施。
セラ・シラのペアと、クレタ・オネのペア。
位置について、オネはニコニコと微笑みながら屈伸運動を始めた。
「よぅし。やるからには勝たなきゃね」
「あっはは! ボクらに勝てると思ってるの!? どーするぅ、シラ」
「良いんじゃない。結果は、すぐに出るよ」
決意を口にした瞬間に、足払いをかけられたような感覚。
オネは、マレットを持って構えながら、逆サイドにいる二人を見やって言い放つ。
「二人の悔しがる顔、早く見たいな。僕」
その言葉は、宣戦布告だ。お前たちは負ける、と言っているようなものだ。
オネが発した言葉に、セラとシラは笑いつつも、揃って眉を寄せた。
雰囲気に気圧されているクレタ。何だろう……この熱いムードは……。
僕は……勝ち負けに執着しないっていうか、出来ないっていうか……。
ちょっとでも楽しく、有意義な時間を過ごせれば良いって思ってるんだけど……。
ちょっと、ビックリ……。オネ、そんなイキイキした顔するんだもん……。
どうして、そんなに盛り上がれるんだろう……。凄いな……ちょっとだけ、尊敬するよ。
ペアを組んで遊ぶっていうか……勝負するからには、僕も引いてちゃ駄目……だよね。
セラとシラにも悪いし……うん、僕も気合を入れて、真剣勝負で……。
「よぅし。頑張ろうね、クレタ」
ポン、と背中を叩いて言ったオネ。
クレタは躊躇いがちに小さな声で言った。
「うん。……が、頑張る、ぞー……」
プシュウと音が鳴り、いざ、プレイ開始。
ジャンケンで決めた結果、初発はセラ・シラペアから。
不敵な笑みを浮かべ、セラがパックを踊らせる。
様子見の用途を兼ねているのだろう。初発は軽めのストレート、真っ直ぐに伸びる。
あっさりとゴールを決めさせるわけにはいかない。
クレタはパックの動きを見極め、ゴールギリギリで弾いた。
打ち返すだけではなく、ちゃんと次の攻撃に繋がるように。
弾かれたパックは、まだクレタ達のエリアにある。
オネは「とぅっ」と妙な声を放ちながら、勢い良くパックを打ち返し放つ。
放たれたパックは、いとも簡単にゴールへと吸い込まれた。
ピロリーンと音がなり、スコアが0−1に。
取り出し口からパックを取って、構えながらセラは笑った。
「ちょっとビックリ〜。意外とやるね、二人」
「最初から本気でいった方が良いかもね」
「だね。ボクも、そう思った。んじゃ、いっくよ〜」
「うん。いつでも」
二人の目付きが変わった。手加減する必要がないと判断したが故に、とても楽しそうだ。
本気になったセラとシラ。二人の動きは、見事なものだ。
パートナーと重なり合うようにして動き、敵を翻弄していく。
その不思議な動きに気を取られ、クレタとオネは戸惑ってしまう。
向かってくるパックを、必死に追いかけるばかり。攻めれない。
「ちょ、待っ……。わぁ、ど、どうする、クレタ」
スコアは相変わらず0−1のままだが、いつ引っくり返ってもおかしくない。
いや、引っくり返ったら最期。そのまま、次々とキメられてしまうだろう。
ゴールを死守しながら、どうしようとたじろぐオネ。
隣で、同じようにゴールを守りながら、クレタはジッと観察していた。
そして、二人の見事な動きに、欠点を見つける。
確かに素晴らしい動きだ。重なり合うようにして、同じ方向へシンクロしている。
だが、それこそが欠点になりうるのではないか。
あまりにも動きが同じ。重なり合い過ぎている。
それは即ち、攻撃時には攻撃に専念、防御時には防御に専念。
そうならざるを得ないスタイルなのだ。
二人でチカラを合わせる。呼吸を重ねる。
見事なシンクロだけれど……それを、乱してしまえば良いのではないか。
一つの行為を二人で行えば、当然威力は増す。
けれど、その分、おろそかになってしまうのだ。
攻撃時ならば、防御が。防御時ならば、攻撃が。
二人でチカラを合わせて戦うことも素敵だけれど、
役割をきっちりと分担して戦うのも、また素敵なシンクロといえる。
クレタはオネを見やり、小さく頷くと、向かってくるパックを妙な方向へ弾いた。
外壁に当たり、ジグザグと生き物のように活発に動くパック。
単調な動きから変わったことで、少し焦ったのだろう。
セラとシラは、違う方向に動いてしまった。
「あっ。ちょ、何してんのシラ。そっちじゃないって」
「違うのはセラだよ。こっちだってば」
互いに文句を言い合いながらも、パックを打ち返す。
生じた隙。今だ。一気に畳み掛けてしまえ。
クレタは、返ってきたパックを、また妙な方向へと弾く。
ジグザグに動くパック、その読めない動きにセラとシラは翻弄されてしまう。
落ち着いて、ちゃんとパックの動きを読めば慌てることもないだろうに。
立て続けに、慌てて違う方向に動いてしまうことが重なり、戸惑いは増すばかりだ。
ただ二人を翻弄することを目的として、クレタはパックを踊らせているわけではない。
二人が打ち返す、その軌道を計算しながら、冷静に放っている。
ラリーが続く中、オネはクレタの作戦を理解して、ニコリと微笑んだ。
クレタの読みどおりに返ってくるパック。
そこで、オネが、渾身のチカラを込めて、ショット。
乱れたままのシンクロでは、その攻撃を阻むことが出来ない。
スコアは、0−2になった。
二人の作戦は、そのまま見事に持続した。
大した作戦でも攻撃でもないのに、どうして対処出来ないのか。
理解出来ぬままのセラとシラは、ハァハァと息を切らす。
思い通りにいかないがゆえに、体力の消耗も倍増していたのだろう。
動きの予測、打ち方の工夫。トリッキーかつ計算されたプレイで、クレタとオネは、敵を翻弄し続けた。
結果、勝者はクレタ・オネペア。圧倒的な点差で見事な勝利を収めた。
セラ・シラペアのスコアは、ずっと変わらず『0』のままだった。
「やったぁ。勝ったぁ」
ピョンと飛び跳ねて喜びを露わにするオネ。
いつもと少し違う、元気いっぱいのオネに、クレタはクスクス笑う。
頑張るぞって言ったものの、どうするべきかって悩んでたんだ……。
頑張るっていう、そういう気持ちが、僕は未だに理解出来ずにいたから。
でも、何となく……どういうことなのか、理解ったような気がする。
オネと一緒に、チカラを、息を合わせて勝ってみせる。
負けるもんか、って……。いつしか、そう思いながらプレイしてたよ。
勝ち負けなんか、どうでも良くて。拘る必要ないんだって思ってたけれど……。
負けたくないなって思ってた。負けたら、悔しいだろうから。
悔しい思いはしたくないなって、そう思うようになってたんだ。
これ、負けず嫌いとは少し違うよね……?
勝ちたいって思うのは、きっと当然のことなんだよね……?
面白いかも……。勝負って……こういう気持ちで望むことなんだ……。
勝利したクレタとオネは、とても嬉しそうに微笑んでいるが、
負けたセラとシラは、ガックリと肩を落としている。
「負けた……。ボクらが負けるなんて、おかしいよ」
「セラが悪いんだよ。変な方向にばっか動くから」
「何言ってんのっ? ボクじゃないよ、シラの動きが変だったんだよ」
言い合い衝突する双子。その姿を見て、クレタとオネは微笑んだ。
大切なことに気付くこと、負けた原因を理解すること。
それが出来ないうちは、負ける気がしない。
クレタとオネは顔を見合わせて頷き、言い合う双子に声を揃えて提案した。
「もう一回、勝負する……?」
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7707 / 宵待・クレタ / ♂ / 16歳 / 無職
NPC / オネ / ♂ / 13歳 / 時守 -トキモリ-
NPC / セラ / ♂ / 16歳 / 時守 -トキモリ-
NPC / シラ / ♂ / 16歳 / 時守 -トキモリ-
シナリオ『 シンクロ 』への御参加、ありがとうございます。
「が、頑張る、ぞー…」が可愛すぎです。
確信犯ですよね? コラッ!(笑) 参りました。降参です。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。 参加、ありがとうございました^^
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2008.12.11 / 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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