■食券1年分!争奪バトル■
藤森イズノ |
【7192】【白樺・雪穂】【学生・専門魔術師】 |
何だろう……。食堂が騒がしい。
ヒョコッと覗き込んで見れば、そこは人混み。
今日は、やたらと校内に人がいないなと思っていた。……皆、ここにいたのか。
何をしているのか確かめようと、人混みの中に紛れてみる。丁度良いタイミングだったらしい。
生徒達に囲まれ、その中心部で教員のヒヨリがタクトを振りながら熱い説明を始めた。
オッケー。じゃ、今、現地にいる面子で参加を締め切るよ。
さて。この中には、最近入学した新入生もいるでしょ。
何をやってるのかなぁって不思議に思いながら、今ここにいるんだろうね。ふふ。
えぇとね。今から始めるのは、月イチ恒例のイベント。題して『食券争奪バトル』
何ていうか……タイトルで内容が丸わかりなのがイマイチだけど。
お察しのとおり、この食券を賭けて、ここにいる全員でゲームをするよ。
どんなゲームかっていうとね、これもまたイマイチっていうか定番。
鬼ごっこ。
あぁ、でもね。普通に鬼ごっこしたんじゃ、足の速い子が有利になっちゃうから。
特別ルールとして、スキルの発動を許可してます。
ん? 今は昼間だからスキル使えないじゃないかって?
大丈夫。今日は特別に、全員発動できるようになってるよ。
ただし、発動できるのは校内のみ。外に出たら使えないからね。
というわけで、校内全域がフィールド。頑張って頂戴な。
あぁ、そうだ。イベントに参加してない生徒に迷惑かけないようにね。
んじゃ、準備はOK? あ、ちなみに鬼は俺ね。
最後まで捕まらなかった子が優勝。
それじゃあ、いきますよ。頑張って逃げるんだよ〜?
よーい……スタート!
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食券1年分!争奪バトル
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何だろう……。食堂が騒がしい。
ヒョコッと覗き込んで見れば、そこは人混み。
今日は、やたらと校内に人がいないなと思っていた。……皆、ここにいたのか。
何をしているのか確かめようと、人混みの中に紛れてみる。丁度良いタイミングだったらしい。
生徒達に囲まれ、その中心部で教員のヒヨリがタクトを振りながら熱い説明を始めた。
オッケー。じゃ、今、現地にいる面子で参加を締め切るよ。
さて。この中には、最近入学した新入生もいるでしょ。
何をやってるのかなぁって不思議に思いながら、今ここにいるんだろうね。ふふ。
えぇとね。今から始めるのは、月イチ恒例のイベント。題して『食券争奪バトル』
何ていうか……タイトルで内容が丸わかりなのがイマイチだけど。
お察しのとおり、この食券を賭けて、ここにいる全員でゲームをするよ。
どんなゲームかっていうとね、これもまたイマイチっていうか定番。
鬼ごっこ。
あぁ、でもね。普通に鬼ごっこしたんじゃ、足の速い子が有利になっちゃうから。
特別ルールとして、スキルの発動を許可してます。
ん? 今は昼間だからスキル使えないじゃないかって?
大丈夫。今日は特別に、全員発動できるようになってるよ。
ただし、発動できるのは校内のみ。外に出たら使えないからね。
というわけで、校内全域がフィールド。頑張って頂戴な。
あぁ、そうだ。イベントに参加してない生徒に迷惑かけないようにね。
んじゃ、準備はOK? あ、ちなみに鬼は俺ね。
最後まで捕まらなかった子が優勝。
それじゃあ、いきますよ。頑張って逃げるんだよ〜?
よーい……スタート!
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ワッと一斉に逃げ出した生徒達。その中に、とても可愛い女の子が1人……。
「鬼ごっこ〜♪ 鬼ごっこ〜♪」
スキップしながら逃げているのは……雪穂だ。所属クラスは、A。
ごちゃっと集まって、一体何をしているのか。
気になった雪穂は、近くにいた背の高い男の人に肩車してもらって騒ぎの中心を見やった。
ワイワイガヤガヤと騒がしかった為、聞き取れなかった箇所もあるけれど、
今から始まることが『楽しいこと』であることを理解した雪穂は満面の笑みで参加。
楽しいかどうか、それは理解らないけれど、楽しそうな予感がするだけで十分だ。
雪穂は鼻歌しながら、軽快なステップで逃げていく。
HAL校内限定ではあるが、大規模な鬼ごっこ。
参加者の目的は、勿論、優勝商品の『食券1年分』である。
このイベントの発起人であり、また、生徒達を追いかける鬼を担当している教員のヒヨリ。
彼は、こうして、生徒と一緒に楽しく遊ぶようなイベントばかり考えている。
普段から、そういうことしか考えていないのではないかと、他の教員にツッこまれることもあるようだ。
しかも、それに対して彼は笑うだけで否定しない。図星なのだろう。
(さ〜て。今回は、最初から全力な感じでいこうかな)
クスリと笑って腕を捲くったヒヨリ。
今回は、優秀な子がたくさん参加してるみたいだからね。
全力でいかないと、あっさり優勝が決まっちゃうだろうから。よし……。
うん、と頷いて目を伏せたヒヨリ。
パチンと指を鳴らせば―
ボッ―
「ぎゃあああ!」
「きゃー! いきなりー!?」
「先生、酷い!」
ヒヨリが弾いた指から、真っ赤な炎が上がり、
その炎は逃げる生徒達めがけて、ゴーッと飛んでいった。
炎に当たってしまった生徒は、ガックリと項垂れて、その場に座り込む。
鬼による妨害ありの鬼ごっこ。しかも、妨害に引っかかったら、その時点で失格。
怪我諸々を心配する必要はない。ヒヨリが放っている炎は、ほんの少しだけ熱い程度の威力。
いきなり妨害してきたヒヨリと、脱落した生徒を振り返りながら見やって、生徒達は更に全力疾走。
急展開にパニック状態となっている生徒達。その人混みに飲まれるようにして逃げている男の子が一人……。
(あんな妨害もアリなんですか〜。派手ですね〜。色々と)
苦笑しながら、人波に乗っかるようにして逃げているのは……霊祠だ。所属クラスは、A。
霊祠も、雪穂同様に、偶然、賑やかな食堂に足を運んだ。
何をやっているのか、何をしようとしているのか、理解らなかったけれど。
一斉に生徒達が逃げ出したことで、鬼ごっこなのかな? と何となく把握。
懐かしいですね〜。鬼ごっこ。昔は、よくやりましたよ〜。
最後にやったのは、いつだったかなぁ……。
すぐに捕まって、鬼ばっかりやってたんですけども。僕は。
でも最近は、結構鍛えてるつもりですから。どうかな〜?
霊祠は……逃げているというよりは、完全に波に飲まれて移動している状態である。
最初の予想外に早い妨害によって、参加者は一気にゴソッと削られてしまった。
だが、これで終わるような鬼じゃない。
ヒヨリはクスクス笑い、生徒達を追いかけながら、再び指を弾いた。
しかも、間隔を開けることなく、連発で指を弾いてくる。
次々と飛んでくる炎。足の速い生徒は一足先を行き、物陰に隠れるなどの対応が出来ているが、
足の遅い生徒や、躓いて転んでしまう不運な生徒達は、炎にやられて脱落。
鬼ごっこの会場はHAL全域だ。
全員で同じ方向へ逃げていては、揃って妨害の餌食になってしまう。
そう判断した生徒達は、それぞれ別々の方向へと逃げていく。
プレイホール方面へ逃げる生徒……中庭へ逃げる生徒……。
教室へ逃げていく生徒もいれば、トイレに逃げ込む生徒も。
中には、どこかへ隠れて最後までやりすごそうという、
かくれんぼの要素を含んだ逃げ方をする生徒もいる。
一見、それは賢い作戦に見えるが……。
ヒヨリが放つ炎は『参加者』へ向かうようだ。
そのように放っているらしい。
故に、隠れても意味はないのだ。
ギャーギャーと生徒達の悲鳴が響き渡る中。
ドンッ―
「わっ」
「あっ、ごめんなさい」
曲がり角にて、衝突してしまった雪穂と霊祠。
互いに、鬼とぶつかってしまったのではないかと一瞬焦ったようだ。
「結構ハードな鬼ごっこですね、これ」
苦笑しながら言った霊祠。雪穂は「そうだね〜」と笑いながら返すが……。
何気ない会話をしている最中、雪穂は、とあることに気付き、そして思いつく。
鬼ごっこ開始から、まだそんなに時間は経過していないけれど、かなりハードだ。
スタミナが切れて、逃げることを諦めた生徒も何人か目にしている。
けれど……目の前にいる霊祠には、まるで疲労の気配がない。
あまり話したことはないが、実は二人は同じクラスに在籍しているクラスメートである。
お互いがどんな能力を使うか、宿しているかは、それなりに把握しているつもりだ。
雪穂は、何故、霊祠が疲れを知らぬ身体なのかを何となく把握している。
ハッキリと絶対にそうだと言い切れるわけではないが、同じ魔術師。把握できるのは、当然のことかもしれない。
うんうん、と頷きながら、何やら不敵な笑みを浮かべている雪穂。
「……? どうしたんですか?」
首を傾げて霊祠が尋ねると、雪穂はコソコソと耳打った。
レッツ、共同戦線。
鬼ごっこ開始から1時間程が経過。
捕まえた生徒の数を確認して、ヒヨリはクスクス笑った。
残り10人か。う〜ん。どうかな。一気に捕まえるのは無理かな?
大勢いた参加者も、残り10名となってしまった。
脱落した生徒達は、一丸となって残りの参加者を応援している。
鬼ごっこイベントも、いよいよ佳境。
ずっと微笑んでいたヒヨリも、真剣な顔つきになる。
それまで放っていたものとは比べ物にならぬほどに速く赤い炎を指先から飛ばしたヒヨリ。
放たれた炎は、途中でバシッと分裂し、それぞれ、残り参加者10名の元へと飛んでいく。
渾身の妨害は、勿論、雪穂と霊祠のところにも届く。
「―! 雪穂さん、後ろ、後ろ! わ〜凄い。真っ赤ですよ〜」
「ん〜? おお〜! ほんとだぁ! ヒヨリっちも本気だねっ♪」
驚くことも焦ることもなく楽しそうに笑っている二人。
二人は、一心同体と化している。
どういうことかって? 簡単なこと。
霊祠が、雪穂を、おんぶしながら走っているのだ。
疲れを知らないが故に、途中でバテることはない。
だが、霊祠は足が遅い。そこをカバーしているのが、雪穂が作った魔道具である。
一見は、何の変哲もない普通のブーツ。
だが、このブーツを着用すると、驚異的に足が速くなる。
ブーツの踵部分から、風の魔法が噴出されているのだ。
ドーピング? いやいや、そんなことはない。
炎を飛ばす妨害がアリならば、当然、これもアリである。
逃げるだけではない。向かってくる炎への対処もバッチリ。
どこからか矢を取り出し、その先端に炎を灯して、キャッキャと笑いながら投げ放つ雪穂。
「とりゃぁ〜♪」
ぶつかりあう二つの炎。まるで、風船が割れるかのように弾けて消える。
パァンッ―
手加減しているとはいえ、ヒヨリは教員である。彼の魔力は、相当なものだ。
それを打ち消してしまうだなんて……そうそう出来ることじゃない。
もしも、それが可能ならば、こんなにも多く脱落者が出ているはずがないのだ。
「……。やるねぇ」
それまでは、ゆったりと歩いていたのに、駆け足になるヒヨリ。
チラリと振り返ってヒヨリの姿を確認した雪穂と霊祠はニヤリ。
残っている参加者は、雪穂と霊祠の二人だけだ。
残念ながら食券は1人ぶんしかないから、どちらかに脱落してもらわねばならない。
(どっちをオトそう……。やっぱり、足になってる子のほうかな。うまくいけば二人いっぺんに捕まえられるかも)
霊祠の服を掴もうと、グンと腕を伸ばしたヒヨリ。
捕まえた、と言おうとした瞬間、ガクリと身体が沈む。
「ぬぁっ! って、えぇぇぇ〜〜……?」
逃げながら、霊祠が仕掛けていたトラップである。
その性質は『底なし沼』のようなもの。もがけばもがくほど、ズブズブと埋まっていく。
「ちょ、あ〜。わかった、降参、降参〜」
埋まりながら、バタバタと腕を振って観念したヒヨリ。
その言葉を聞いた途端、霊祠は急ブレーキをかけて停止。
何気にドリフトっぽくキマって、カッコ良かったような気もする……。
「やった〜。やりましたね〜」
「いぇーい♪ ヒヨリっちの負け〜♪」
霊祠の背中から降り、嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ雪穂。
そんな雪穂とハイタッチしながら、霊祠も満面の笑みを浮かべている。
あ〜。完全にやられた。まさか、逆にハメられるとは思わなかった。
捕まえることに夢中になっちゃったなぁ……。
炎を掻き消されたもんだから、ムキになっちゃったところもあるかも。
何だかなぁ。俺も、ガキっぽいよねぇ。まぁ、その辺を改めるつもりはないんだけども。
それにしても……嬉しそうな顔だなぁ、二人とも。
確か、二人とも藤二のクラスだったな。
こんな二人をいっぺんに面倒見なきゃならないわけか。大変だなぁ、あいつも。
まぁ、女のケツばっか追っかけてるからね。たまには先生らしく頑張った方がいいさ、あいつは。うん。
帽子についた泥のようなものをパンパンと叩いて落としながら、ヒヨリは懐から例のブツを取り出した。
早々に脱落した参加者たちの、恨めしそうな眼差しときたら、もう、何とも……。
「んじゃ、これ、賞品ね。1人分しかないから……どうするかは、君達が決めなよ」
二人にピッと食券を差し出したヒヨリ。
だが、雪穂も霊祠もキョトンとしている。
差し出された、札束のような食券……。
そもそも、賞品という言葉が、まず理解らない。
「これ、鬼ごっこ大会じゃなかったんだぁ〜?」
「僕も……てっきり、そんな感じかと思ってました」
賞品目当てで参加していなかった二人が、賞品をゲットするという結末。
脱落者達は、そればあんまりだ……と、やり直しを要求したのだが。
「ま、貰えるんなら、ありがたく頂くよ♪ ね♪」
「そうですね。わぁ、凄いですね。たくさん……」
「半分こしよっか♪ はい、霊くんこっち〜」
「ありがとう〜」
やりなおしコールが響き渡る中、あっさりと終わってしまった『半分この儀式』
御満悦な様子で去って行く雪穂と霊祠の背中に、脱落者達はションボリ。
実力でもぎ取った優勝なのだろうけれど、無欲の勝利という言葉が脱落者全員の頭に浮かんだ。
「せっかくだから、早速使おうかな〜♪ 一緒に食べる〜?」
「あ、はい。いいですね〜」
「あ、そうだ。僕の双子の姉ちゃんわかるぅ〜?」
「えぇ、もちろん」
「誘ってもいいかな〜?」
「いいですよ。あ、僕も御友達呼びたいです」
「いいよ〜。何食べようかな〜♪ 僕、ワクワクしてきたっ」
「デザートのアップルパイが美味しいらしいですよ。僕も、まだ食べたことないんですけど」
「んじゃ、それだっ♪」
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7086 / 千石・霊祠 /13歳 / 中学生
7192 / 白樺・雪穂 / 12歳 / 学生・専門魔術師
NPC / ヒヨリ / 26歳 / HAL在籍:教員
シナリオ『 食券1年分!争奪バトル 』への御参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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