■絶対服従■
藤森イズノ |
【7707】【宵待・クレタ】【無職】 |
どうした? 黙ってちゃ理解んないよ。
言わなくても理解ってるくせにって?
勿論、理解ってるよ? 当然でしょう?
だからこそ聞きたいんだよ、俺は。
なぁ、今更、そんなくだらない質問すんなよ。
時間が勿体ない。いいから、ほら、続き。
欲しい時は、どうすれば良いんだっけ?
教えたとおりに、やってごらん。
ここで見ていてあげるから。
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絶対服従
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どうした? 黙ってちゃ理解んないよ。
言わなくても理解ってるくせにって?
勿論、理解ってるよ? 当然でしょう?
だからこそ聞きたいんだよ、俺は。
なぁ、今更、そんなくだらない質問すんなよ。
時間が勿体ない。いいから、ほら、続き。
欲しい時は、どうすれば良いんだっけ?
教えたとおりに、やってごらん。
ここで見ていてあげるから。
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「何度言えば理解る?」
「ご、ごめんなさい……」
「謝る暇があるなら、もう一度」
「はい……」
「だから、違う。そうじゃない。もっと左」
「ごめんなさい……」
「上手にやれって言ってるわけじゃないんだよ。言われたとおりにやれって言ってるだけ」
「はい……」
「うん。じゃあ、もう一度」
「はい……」
怖いと思ってた。あなたの態度を、怖いと思ってた。
でも、逃げようだなんて思ったことは一度もなかったよ。
どうしてって……満たされたから。あなたに叱られる度、成長していくようで嬉しかったから。
上手に出来ない、あなたの望むとおりに出来ないことに覚えたのは、もどかしさ。
あなたを満たすことが出来るように。早く、認めてもらえるようにって思ってた。
そんな風に思えたのは……あなたのおかげ。
あなたが僕を心地良く幸せな気持ちにしてくれるから、
お返しをしてあげたい、してあげなくちゃって思ったんだ。
僕ばかり気持ち良いのは……あんまりだから。
どうすれば、あなたを喜ばせることが出来るだろう。
言われたとおりにやってるつもりでも、どこか微妙に間違っていたみたいで。
毎晩繰り返された、その行為は……愛情表現のようであり、一種の教育のようでもあり。
今でもはっきりと思い出せる、必死だった夜。
あなたが冷たい眼差しを向ける度に脅えて。
でも……ゾクゾクしてた。もっと、もっと見てって……心のどこかで。
震える手指の理由が、恐怖じゃなくて快楽なのだと……気付いたのは、ずっと後のこと。
「クレタ」
「……あ。うん?」
「何ボーッとしてるの」
「ごめん……」
「回想? 随分余裕だね」
「…………」
「図星だな」
「…………」
「ふふ。そんな顔しないで。ほら、続きは?」
「…………」
従うことしか許されなかったのは過去の話。
今は、自分の意思で何もかもを判断しているはずなんだ。
どうしてかな。どうして……今も、僕は、あなたに従っているんだろう。
従うことを不愉快に思ってるわけじゃないんだ。
ただ……嫌なことは嫌だと言えるように成長したはずなのに、言わずにいる自分が不思議。
あぁ、そうか。嫌だなんて思ってないからだ。そんなこと、これっぽっちも思っていないんだ。
じゃあ、何で? 何で、今、意地を張って強がってるの?
それは……多分、無駄なんだろうけれど、ささやかな反抗心。
あなたの望むがままに、今宵も仰せのままに。それが……何となく嫌なの。
今日は、僕に我侭言わせて。僕の我侭を聞いてよ。
そう思うから、やるべきことを理解っていても、やらない。
だって、ここで、あなたの言うとおりにしてしまえば、
今日も、あなたに主導権を握られてしまうから。
ねぇ、J。
昨日も、一昨日も、その前も……。
戻って来てから、ずっと、あなたが主導権を握ってる。
せめて、今日くらいは。その権利を僕に頂戴。
この先もずっとだなんて、そんなこと言わないから。
今日だけで良いんだ。今日だけ……掻き乱す権利を、僕に頂戴。
「…………」
ジッと見つめながら、自分の意思を言葉にして示したクレタ。
けれど、ソファに凭れるJは、聞く耳持たずだ。
「何? 聞こえなかった」
「じゃあ、もう一度言うから……」
「あぁ、いいよ別に。興味ないから」
「…………」
「ほら。くだらないこと話す暇があるなら、続き」
「…………」
興味がないだなんて、酷い。僕は真剣なのに。心から願っているのに。
想いを汲んでくれない意地悪な態度が悔しくて、クレタは唇を噛み締めた。
そんなクレタの首に、そっと触れるJ。
「……!」
何て大袈裟な反応だろう。自分でも呆れてしまう。
ビクリと肩を揺らし、僅かに身を引いたクレタ。
その反応にクスクス笑って、Jは諭す。
どうしたの、クレタ。ちょっと触れただけだよ?
どうして、こんなに身体が火照ってるのかな。
震えてるね。悔しいの? それとも、嬉しいの?
耳まで真っ赤に染めて……どうしたの? 大丈夫?
笑いながら、耳朶を甘く噛まれてしまえば、全てを認めざるを得ない。
震えているのは、悔しいからじゃない。あの日と同じ。
あなたに従うことに快楽を覚えていた、あの日と同じ現象。
どうしたの、なんて。理解ってるくせに。
全部理解ってるくせに、あなたは囁く。
意地悪な人。意地悪で残酷で……甘美な時間。
認めてしまえば楽だけど、それでも僕は意地を張る。
悔しいんだ。あなたの思うがままに反応してしまうことが。
こんな、大そうな自尊心。僕に、あっただろうか。
あなたの掌で転がされることから逃れてみようと試みる気力なんて……。
「ん?」
少し首を傾げて微笑んだJ。
クレタは目を逸らすことが出来ない。
悔しいはずなのに。苦痛であるはずなのに。
あなたに見つめられてしまうと、別のものに置き換わってしまう。
口にすれば、この胸が締め付けられるような感覚から逃れることは容易い。
でも……声にしてしまったら、もう後戻りは出来ない。
「クレタ。無理は良くないよ?」
「…………」
引き寄せ、微笑みながらのアドバイス。
促される、甘い自白。要求は、甘い自白。
蕩けるような痺れが全身を襲う頃には、もう手の施しようなんて。
それでも懸命にクレタは堪えた。今日は、従ってたまるものかと。
どうして、そこまで意地を張るのかな。ご機嫌斜めなのかな?
いや、そんなはずないよね。だって、キミは、こうして俺の部屋に来てるんだから。
気分が乗らない時は、断っても構わないからって約束してる。
まぁ、キミが断った試しはないけれど。
身体を強張らせて、必死に堪えている姿。
キミの、その姿を見ているのも気持ち良いけれど……。
もっと気持ち良くなる方法を、俺は知ってる。キミも知ってる。
そろそろ素直になってくれないと、俺が限界だよ?
クスリと笑って、とどめの一撃。
首に覚える、吸い付く唇の感触。
吸われた部分から巡るのは、まるで猛毒。
ビリビリと全身を走る強烈な痺れに、ようやく観念。
正常な呼吸もままならぬ状態で、クレタはゆっくりとJから離れると、
ソファの上で両膝を揃えて正座。背筋を正し、愛しい人を見つめて。
少しずつ頭を垂れながら、三つ指添えて伝えるのは、本音。
「……あなたが欲しいです」
「ふふ。うん、それで?」
「……あなたの望むがままに」
「ふふ。うん」
「……下さい」
「何を?」
「……あなたの全てと快楽を」
ようやく聞けた、キミの本音。
そうやって最初から素直に言えば、キミも俺も楽になれたのに。
散々じらしてくれたんだ。楽しませてくれるんだろうね?
ヒョイとクレタを抱きかかえ、ステージへと運んでいくJ。
何度上がったか覚えていない、御馴染みの柔らかなステージで。
奏でるのは、唯一無二のハーモニー。
僕は、あなたを満たすことが出来ているのかな。
いつも不安なんだ。精一杯、尽くしはするけれど。
「上手に……なった……?」
「喋って良いだなんて、俺、言った?」
「ごめんなさい……」
「何、笑ってんの?」
「ううん、何でもない……。ねぇ、J……」
「うるさい。ちょっと黙れ」
「ふふ……。ごめんなさい……」
服従の枷。それは、僕が望んで着けるもの。
今宵もまた、僕は、あなたに絶対服従。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7707 / 宵待・クレタ / 16歳 / 無職
NPC / J / ??歳 / 時狩 -トキガリ-
シナリオ『 絶対服従 』への御参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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