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■デートの御誘い■

藤森イズノ
【7192】【白樺・雪穂】【学生・専門魔術師】
 メールでお呼び出し。
 指示どおりに、一人で中庭へと向かう。
 お呼び出しの理由は理解らない。
 中庭へと向かう最中、あれこれと考えてみた。
 呼び出される理由に心当たりがないかと。
(……特にない気がするけど)
 考えてはみるものの、思い当たる節はない。
 一体、何だろう。何の用だろう。首を傾げながら、中庭に到着。
 メールで呼び出しを掛けてきた人物と、すぐさまバチリと視線が交わる。
 離れた位置から、微笑みながら歩み寄ってくる姿。
 何となく、釣られて微笑み返してしまう。
 至近距離で互いに瞬きを、ひとつふたつ。
 えぇと……? ご用件は、何でしょう?
 デートの御誘い

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 メールでお呼び出し。
 指示どおりに、一人で中庭へと向かう。
 お呼び出しの理由は理解らない。
 中庭へと向かう最中、あれこれと考えてみた。
 呼び出される理由に心当たりがないかと。
(……特にない気がするけど)
 考えてはみるものの、思い当たる節はない。
 一体、何だろう。何の用だろう。

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 寝起きでポケーッとしながら携帯を見やれば、ピカピカと桃色のランプが点灯していた。
 桃色ランプの点灯は、未読のメールがありますよ、の御知らせ。
 ふわぁ、と欠伸しながら受信ボックスを開いた雪穂。
 届いていたメールは1件。
 ===================================
 突然、申し訳ない。中庭で待ってる。
 N.SAIGA
 ===================================
 とてつもなくシンプルなメールだ。
 少々遠回しではあるものの、中庭に来てくれと書かれたメール。
 むにゅむにゅと口を動かしながら雪穂は首を傾げた。
 この……『N.SAIGA』という表記は、おそらく差出人の名前なのだろうけれど。
 ピンと浮かぶ人物は、雪穂の脳内にない。
 そういえば、雪穂は、HALに入学した翌日、校内のあちこちで名刺を配って歩いていた。
 皆と仲良くなりたいが故に取った行動だけれど、その内の一人だろうか。
 雪穂のアドレス帳に登録されていないことからして、その可能性が高い。
 確かに、いつでもメールしてね! と名刺には書いてあったけれど……。
 まったく見覚えのない名前。サイガ……。
 同じクラスではないことは確かだ。
(誰だろ〜……)
 ゴシゴシと目を擦りながら、教室を後にする雪穂。
 時刻は16時半。授業は既に終了している。
 いつから眠っていたのか、雪穂自身も覚えていないようだ。
 魔術に関しての記憶力は常軌を逸しているが、
 違うクラスの人の名前と顔までは把握できない模様。
 中庭に来て、メールの差出人とこうして向かい合っても、雪穂は首を傾げている。
 ただ、まったくもって覚えがない人物ではなかった。
 もうちょっとなんだけどな……えぇ〜っとね……もうちょっとで思い出せそうなんだけどな。
 えぇ〜と……。えぇ〜と……。あっ!!!!
「麻深姉と、いつも一緒にいる人だぁ!」
 ビシィッとメールの差出人を指差して言った雪穂。
 ようやく思い出すことが出来て、スッキリした表情である。
 目の前で指差されたことに、一瞬は目を丸くしたものの、
 それも彼女らしいかと、クスクス笑う。
 メールの差出人は、Cクラスの生徒、斉賀。
 雪穂が言ったとおり、同じクラスの麻深と行動を共にしていることが多い男だ。
 しかし何でまた、斉賀は雪穂を呼び出したのか?
「何の用なのかな〜?」
 ニコニコと微笑みながら、首を傾げて尋ねた雪穂。
 斉賀は、前髪を整えながら、ポツリポツリと言葉を落としていく。
 特に……これといった用事があるわけじゃないんだけれど。
 あぁ、いや、ごめん、嘘だ。
 君の発明というか能力というか、それに興味があってね。
 あぁ、いや、違う。見せて欲しいとか、そういうことじゃなくて。
 色々と、話を聞かせて貰えないかなと思って。
 迷惑だったら……別にいいんだけど。
「いいよ〜」
「……そうか。じゃ、外に出ようか」
「うん〜」
 あっさりとOKしてくれた。
 雪穂は、とても人懐っこい性格だ。誰とでも、すぐ仲良くなれてしまう。
 人を警戒することなんて滅多にない。特例を除いて。
 それに、相手は部活でお世話になっている麻深の友達だ。
 危険なことなんて、何ひとつないだろう。
 麻深の友達ならば、是非とも仲良くなりたいとも思う。
 というか、それが、御誘いを受けた一番の理由。

 *
 *

「すみませ〜ん。紅茶とタルト、おかわりく〜ださいっ!」
「はい、かしこまりましたぁ」
「…………」
「斉賀兄も、おかわりするよね? 二人分頼んじゃったけど」
「……あぁ、うん」
「へへへ。美味しいね、ここのケーキ! 紅茶も僕好みだよ〜」
「……そっか。それは良かった」
「あ、きたきた! わ〜い、美味しそう〜! はい、斉賀兄!」
「……ん?」
「あーん!」
「…………」
「美味しい? 美味しい? 美味しいよね〜!」
「……ん。まぁ、ね」
 放課後、いつも斉賀が通い詰めているカフェ。
 お気に入りの、その場所へ、斉賀は雪穂を連れて来た。
 何というか、先程から主導権を握られっぱなしのような気がするけれど。
 一緒に御茶をするだけっていうのも、まぁ、良いけれど。
 俺が君を誘ったのには、立派な理由があるわけで。
「その鞄も、魔法具の一種かい?」
 雪穂の膝上にある鞄を見やりながら尋ねた斉賀。
「ん? うん、そ〜だよ〜」
「異常なまでに物が入るんだろ? それって」
「うん。マナゲートを取り入れて作ったからね〜。大っきい象さんとか、キリンさんも入るよ〜」
「マナゲートって……?」
 マナゲートっていうのはねぇ、ん〜。
 わかりやすく言うなら、魔法の空間って感じかなぁ。
 異世界って言うのが正しいのかもしれないねぇ。
 そこと繋がるように設計してるから、たっくさん物が入るんだよ。
 でもね、でもね、あんまりたくさん入れちゃうと、取り出すのが面倒になっちゃうから、
 適度に抑えながら使わないと駄目なんだ〜。
 何でもかんでも入れちゃうとね、
 手を入れても、掴むことが出来なくなっちゃうんだよ。
 異世界は広いからね。どこにいったかわからなくなったらオシマイなんだよ〜あははは。
 ケラケラと笑いながら、あれこれと説明していく雪穂。
 さらっと、あっけらかんと語ってはいるが、実に難しいことを語っている。
 魔法を応用した道具に関して興味を持っている斉賀にとっては、
 どれだけ聞いても飽きのこない話ばかりだ。
 自分が不器用だからというのもあり、
 あれこれと器用に作り出す雪穂を普通に凄いな、と感心しているところもある。
 紅茶とケーキのおかわりを続けながら、魔法具について語ること、約3時間。
 長時間話していた気がしないのは、互いに夢中になっていたからか。
 会計は全て斉賀が負担。
 いいよ、僕も出すよと雪穂は言ったが、御礼だから、と押し切られてしまった。
 申し訳ないような気もしたが、雪穂は気持ちの切り替えが早い。
 美味しいものをたくさん食べられて、楽しい御話もたくさんできて、
 おまけに、会計も済ませてもらえるだなんて、とてつもなく嬉しいことだと雪穂は微笑んだ。


「あっ! 待って、待って、斉賀兄」
「うん?」
「あの店、寄りたいの〜」
「あぁ、いいよ」
 買い物ついでにヒョコッと何度か入ったことのあるアンティークショップ。
 路地裏にひっそりとある、その店は明らかに妖しい雰囲気を醸し出していたが。
 店内に入ってみれば、何のことはない。品揃えが豊富な店だ。
 店主らしき女性が、ジーッとこちらを見ている、その視線が気になるところはあるけれど。
 並ぶ品物を手に取り見やりながら、ポツリと小さな声で斉賀は言った。
「へぇ。色々あるんだな。よく来るの?」
「ん〜。そ〜でもないかなぁ。たま〜にかなぁ」
「へぇ……。うわ、何だこれ」
「あ、それはね、蛇の抜け殻だよ!」
「いや、それは見ればわかるけど。何でこんなものが……」
「残念でした〜。それはね、売り物じゃないんだって! 僕も欲しいな〜って思ったんだけどね〜!」
「……(いや、欲しいなんて一言も)」
 店内をウロウロしながら、あれこれと言葉を交わした二人。
 ここで判明したというか、新たに理解ったことが一つ。
 雪穂のセンスは、ちょっとおかしい。
 まぁ、噂は耳にしていた。
 雪穂には双子の姉がいて、彼女も同様に変わった趣味らしきことを。
 妙なセンスを馬鹿にしたり呆れたりすることはない。
 楽しそうに嬉しそうに話す雪穂を見ながら、
 相槌を打ちつつ、斉賀はクスクスと笑った。

 *

「今日はありがと〜! 楽しかったよ〜!」
「そっか。じゃあ、また遊びに来ようか」
「勿論だよ〜。あっ、そうだ!」
「?」
 ゴソゴソと鞄を漁り、何かを取り出して斉賀に差し出した雪穂。
 小さな鈴がついた、可愛いストラップだ。
 どうやら、彼女が作った簡素な魔法具らしい。
 遊んでくれた御礼に、どうぞ♪ と微笑む雪穂。
 雪穂が作る魔法具に興味津々の斉賀だ。ありがたいプレゼントではないか。
 だが、斉賀は苦笑を浮かべて、微妙な表情。
 ありがたいけれど……柄じゃないような気がするんだよな。
 こういうの持ってたら、あいつらにツッこまれそうだし。
 どこで買ったんだとか、誰かに貰ったんだろとか色々と。
 あれこれ考えて、受け取ることをしない斉賀。
 そんな斉賀を見上げて、雪穂はしょんぼり。
 御礼だから、受け取って欲しいんだけどな、僕……。
 寂しそうに俯いて雪穂が言ったことで、斉賀は慌てた。
「あ、ごめん。うん、ありがとう。貰うよ」
「へへへ。それね、僕のお気に入りなんだ〜。ほらほら、僕のと一緒だよ〜」
「……(お揃いですか)」
 何の気なしの言葉と贈り物なのだろうけれど、 
 だからこそ照れ臭いというか、反応に困るというか。
「……じゃ、帰ろうか」
「うん♪」
 ポリポリと頭を掻きながら、先を歩いていく斉賀。
 その後ろを、雪穂は、ちょこちょことついて行く。
 何だか、ご主人様とペットのように見えるような気がしなくもないけれど。
 こういうのも、デートと言って間違いではないですよね?
「斉賀兄! 歩くの早いよぅ!」
「……え。あぁ、ごめん」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7192 / 白樺・雪穂 / 12歳 / 学生・専門魔術師
 NPC / 斎賀・尚 / 16歳 / HAL在籍:生徒

 シナリオ『 デートの御誘い 』への御参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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