■デートの御誘い■
藤森イズノ |
【7182】【白樺・夏穂】【学生・スナイパー】 |
メールでお呼び出し。
指示どおりに、一人で中庭へと向かう。
お呼び出しの理由は理解らない。
中庭へと向かう最中、あれこれと考えてみた。
呼び出される理由に心当たりがないかと。
(……特にない気がするけど)
考えてはみるものの、思い当たる節はない。
一体、何だろう。何の用だろう。首を傾げながら、中庭に到着。
メールで呼び出しを掛けてきた人物と、すぐさまバチリと視線が交わる。
離れた位置から、微笑みながら歩み寄ってくる姿。
何となく、釣られて微笑み返してしまう。
至近距離で互いに瞬きを、ひとつふたつ。
えぇと……? ご用件は、何でしょう?
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デートの御誘い
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メールでお呼び出し。
指示どおりに、一人で中庭へと向かう。
お呼び出しの理由は理解らない。
中庭へと向かう最中、あれこれと考えてみた。
呼び出される理由に心当たりがないかと。
(……特にない気がするけど)
考えてはみるものの、思い当たる節はない。
一体、何だろう。何の用だろう。
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図書室で、いつものように読書を満喫していたところへ、メール着信。
シンと静まり返った図書室に響く、鈴の音のようなメロディ。
夏穂は慌てて懐から携帯を取り出して、メールを確認した。
差出人はクラスメートの海斗だ。
中庭に来い、とだけ記されている。
その後ろには、急ぐことを願うようなダッシュの絵文字も……。
どうしたのかしら……。何か、問題でも起きたのかしら。
メールを確認するやいなや、不安そうな面持ちになってしまった夏穂。
海斗から唐突にメールが来ることは珍しいことではない。
その大半は、怪我をしたから治してくれという内容のものだ。
メールには記されていないが、呼び出されるがままに赴けば、
ほぼ100%の確立で、どこかしらを痛めて笑っている海斗に遭遇する。
今日もまた、無茶なことをして怪我をしたのか。
呼んでいた本を棚へ戻し、夏穂はいそいそと向かった。
時刻は16時半。授業は既に終わっているけれど、
校内には生徒がたくさん残っている。
お喋りを楽しむ生徒もいれば、部活に打ち込む生徒も。
(今日も良い天気。星が良く見えそうね……)
そんなことを考えながら、トテトテと急ぎ足。
中庭に到着して早々、呼びつけた人物とバチッと目が合った。
ダラしない体勢でベンチに寝そべっている海斗。
手には携帯ゲーム機。見た感じ……どこも怪我をしている様子はない。
あれ? おかしいな? 治療の為に呼ばれたのだと思っていたが故に、夏穂はキョトン。
海斗は、ヨッ、と立ち上がると、ベンチの上に立って夏穂を手招いた。
「えぇと……。どうしたの?」
ベンチの上で腕を組んでいる海斗を見上げて尋ねてみれば。
海斗はニッコリと笑って空を指差し……。
「今日さ、めっちゃイイ天気じゃん」
「うん。そうね」
「だからさ、これから―」
何かを言い掛けた、その時だった。
海斗の後頭部に、ガツンとボールが当たる。
小さく丸い、そのボールは、HAL特製ボール。
授業で使う物なのだが、キャッチボールをする為に用具室から持ち出す生徒もいる。
非常に軽いのだが、見た目からは想像できぬほどに硬いボールだ。かなり痛い。もう、死ぬほど痛い。
「ぐぁぁぁぁぁぁ……」
頭を抱えてしゃがみこみ、痛みを堪える海斗。
「ごめんごめん! 大丈夫かー!?」
「大丈夫じゃねーよ! ばーか! ばーか!」
ボールを取りに来た生徒に涙目で文句を言う海斗。
かなり辛そうだけれど、元気に文句を言えるようならば心配ないだろう。
クスクス笑いながら、どこからともなく救急箱を出現させ、
中から道具を取り出して、テキパキと治療する夏穂。
(結局、こうなるのね)
「いっ! 痛い! 痛いって!」
「ごめんなさい。ちょっとだけ我慢して」
「痛いぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「……(元気ね)」
「痛い! マジで痛い! 何やってんの、それ、お前っ」
「少し切れてるから消毒を……」
「嫌だっ、それ嫌だっ。もーいいから! もーいいから!」
「駄目よ。バイ菌入ったら大変なんだから」
「いぃぃぃぃやぁぁぁだぁぁぁってぇぇぇぇぇ」
そんな賑やかな治療を経て。仕切り直し。
コホンと咳払いをして、海斗は言う。
「えーと。遊びに行かね?」
「うん……?」
「どっかテキトーに。お前の行きたいとこでいーから」
「いいけど。頭、大丈夫?」
「それ、どういう意味だ?」
「どういうって……怪我の具合」
「あ。そーいうことね。大丈夫。治療してもらったし!」
「ならいいけど……」
「んじゃ、サッサと行こうぜー」
「うん」
お呼び出しの理由は、デートの御誘い。
とはいえ、何か特別な深い意味、ましてや下心なんてありやしない。
ただ天気が良いから、一緒にどこかへ出掛けようと誘ってみただけ。
そうは言うものの、海斗は気付いていないようだ。
相手が夏穂でなくとも問題なかろうに、彼女を誘った理由について。
*
*
*
デートというには、あまりにも物足りなく子供じみたコース。
海斗は、夏穂の手を引き、好き勝手にウロチョロ。
夏穂の行きたいところでいいからと言ったくせに、
先程から自分の行きたい場所にばかり足を運んでいる。
けれど、そのことについて夏穂は不快感を抱いている様子はない。
海斗の後を付いて行くようにして歩く夏穂は、楽しそうにも見える。
「ほい。んじゃ、次は、お前の番ね」
「うん……。ただ、的に当てれば良いのよね?」
「そだよ」
二人が今いるのは、ゲームセンター。
そこに最近設置されたダーツゲームで二人は勝負している。
普段からやりなれているからか、初発から高得点を叩き出した海斗。
夏穂は初体験となる、ダーツゲーム……。
教えてもらったルールを思い返しながら、的を見据えて……初発。
「…………」
軽快なメロディが鳴り響いた。海斗は呆気に取られている。
あっさりと、ど真ん中を射た夏穂は、首を傾げて微笑む。
「こんな感じ?」
「……ほほう。なかなか挑発的な発言だな」
「あら。そんなつもりじゃなかったんだけど」
「ムカッときた! 次、次は俺の番! どけどけーぃ!」
「ふふ」
ムキになって挑んでくる海斗。だが、点数は開いていくばかり。
絶対に負けない自信があったのに、何だこの惨敗っぷりは。
勝負前に決めておいたルール『負けたらジュースを奢る』に従って、
ジュースを買いながらガックリと肩を落とす海斗。
何でだろーなぁ。絶対負けないと思ってたんだけどなー。
あ、もしかしてスナイパーって……こういうのも得意なのか?
だったら明らかに無理じゃんか。勝てるわけねーじゃんか……。
負けず嫌いな海斗は、いつまでも悔しそうな顔。
そんな海斗を見ながら、コクコクとジュースを飲み、夏穂は笑う。
年上って感じがしないのは……こういうのが原因なのかもしれないわね。
あなたといると楽しいし、自然と笑顔になるから……。
あなたと一緒にいる時間は好きよ。充実してるわ。
「もう一度、勝負する?」
クスクス笑いながら再戦を提案してみた夏穂。
ジュースを飲み干した海斗は、腕まくりをして、もちろん再戦を希望……のはずだったのだが。
「あ」
「うん……? どうしたの?」
「いや。お前の行きたいとこ、行ってないなと思って」
「ふふ。今更ね」
「ごめんな。よし、今から行こう。どこ行きたい?」
「勝負は? いいの?」
「いーよ。いつでもできるし。つか、修行しないと勝てねーし」
「ふふ。修行……?」
「いーから、いーから! ほい、どこ行きたいの」
勝負はまたの機会に。
どこでも付き合ってやるからという海斗の言葉に応じて、夏穂が所望した場所は……。
「うーわー。何かゴチャゴチャしてるなー」
「ふふ。色々あって楽しいのよ」
「まーわかる気はするけど。何か臭いな、ここ。何の匂いだ、これ」
「これね。アロマキャンドル」
「おーーー。すげー。色々あるんだな。目がチカチカする」
夏穂が希望した場所は、街の片隅にひっそりとある雑貨屋。
二人入店しただけでギュウギュウ詰めな感じになってしまうほど狭く小さな店だけれど、
店内には、数え切れぬほどの様々な雑貨が置かれている。
雑貨屋なんぞ、滅多に来ない海斗にとっては新鮮な場所だ。
目移りするほどの品揃えに、目をキラキラと輝かせている。
アロマキャンドルというものに興味津々の様子の海斗。
夏穂は一つ一つを手にとり、説明しながらオススメした。
元気いっぱいな海斗の部屋に似合いそうな香りをチョイスして。
林檎のような香りがするアロマキャンドルを気に入った海斗は、購入を決意。
雑貨屋で物を買うなんて、いつ以来だろうか。
何となくソワソワしながらレジへ向かい、カウンターに品物を置く。
レジを打ちながら値段を告げる店員。海斗は尻ポケットから財布を取り出す。
「いらっしゃい、夏穂ちゃん。この子は……彼氏かい?」
ポツリと言った店員。
夏穂はクスクス笑い、動揺する様子もなく返す。
「ううん。お友達」
「はっはっはっ。随分とハッキリ言うねぇ」
「だって、お友達だもの。ね?」
ニコッと微笑んで確認するかのように言った夏穂。
海斗はコインを取り出し、トレイに乗せながら苦笑して小声で言った。
「今は、まだね」
「え?」
「つか、そこまでハッキリ言わなくてもいーじゃんか」
「え? 何?」
「何でもない」
*
帰り道、夏穂は海斗の背中を見ながら考えていた。
先程、カウンターで彼は、何と言ったのだろう。
聞き取れなかったからこそ、余計に気になる。
怒ってしまうかもしれないから、しつこく聞くことは出来ない。
別に気にする必要もないんだろうけど、何となく気になるの……。
ん〜……と神妙な面持ちで考え込んでいる夏穂。
そこへ、パッと振り返って海斗が尋ねる。
「なー。夏穂」
「あ、うん。何?」
「楽しかった?」
「え? うん。楽しかったわよ」
「また遊ぶ?」
「うん」
「そか。よしよし」
「……?」
「とりあえず、今日は……」
またもや、ポソポソと何かを呟いた海斗。
チャンスだとばかりに、夏穂はタタッと駆け寄って問い詰める。
「何? さっきも聞こえなかった……。何て言ったの?」
「何でもないって。ほい、帰るぞー。家、どっちだっけ。送る〜」
「……(気になる)」
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7182 / 白樺・夏穂 / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / 海斗 / 19歳 / HAL在籍:生徒
シナリオ『 デートの御誘い 』への御参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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