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■微妙な関係■

藤森イズノ
【7707】【宵待・クレタ】【無職】
 そんな困った顔しないでよ。
 俺だって、何を言ってるのかなって思うよ。
 こんなことを尋ねられたところで、キミを困らせてしまうだけだってことは理解ってる。
 でも、嫌なんだ。この微妙な関係。曖昧だなって、キミは思ったことないかい?
 こうして触れて、想い合っていることを確認し合うけれど。
 確認する必要なんて、あるかな。確認するような、関係なのかな。
 互いに惹かれ、想いあっていることは理解ってる。
 でも、誰かに訊かれたら、キミは何て答える?
 俺とキミが、どういう関係なのか訊かれたら、キミは何て答える?
 親子のようなもの? 兄弟のようなもの? 仲間? 友達?
 どれも、しっくりこないような気がしない?
 この微妙な感じが嫌なんだ。
 だから、ハッキリさせてみないか。
 俺とキミの関係を、今、ここで。
 どうやって?
 そうだな、例えば……。
 微妙な関係

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 そんな困った顔しないでよ。
 俺だって、何を言ってるのかなって思うよ。
 こんなことを尋ねられたところで、キミを困らせてしまうだけだってことは理解ってる。
 でも、嫌なんだ。この微妙な関係。曖昧だなって、キミは思ったことないかい?
 こうして触れて、想い合っていることを確認し合うけれど。
 確認する必要なんて、あるかな。確認するような、関係なのかな。
 互いに惹かれ、想いあっていることは理解ってる。
 でも、誰かに訊かれたら、キミは何て答える?
 俺とキミが、どういう関係なのか訊かれたら、キミは何て答える?
 親子のようなもの? 兄弟のようなもの? 仲間? 友達?
 どれも、しっくりこないような気がしない?
 この微妙な感じが嫌なんだ。
 だから、ハッキリさせてみないか。
 俺とキミの関係を、今、ここで。

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「…………」
「どうしたい?」
「…………」
 唐突な問いかけに、沈黙することしか出来ずにいるクレタ。
 この関係を、どう思うか。曖昧だと思わないか。ハッキリさせないか。
 そう言われても、すぐに返事を返すことは出来ない。
 確かに……誰かに尋ねられたら何て答えるべきなのかは、迷う……かな。
 きっと『仲間です』としか答えられないんじゃないかと思う。
 でも、そうだね……。違う気がする。
 恋人のようなものかなとも思ってたけれど、それも何か違うような気がする。
 ううん、違うんじゃなくて。何ていうのかな……そう、物足りないんだ。
 何がどう物足りないのか……今まで深く考えることはしなかったけれど。
 あなたが、その答えを求めるのなら。
 ハッキリさせたいと言うのなら、僕も向き合うよ。
 どうしたいか……。えぇと……そうだな……。
 このまま、ずっと一緒にいたい。
 これは、いつでも思ってることだけれど……。
 僕の今の気持ちを、恥ずかしがらずに曝け出すとするなら……。
 ずっと一緒にいる、その『縛り』が欲しいかな……。
 それがあれば、もっともっと……距離が縮まるような気がする。
 想いを確かめ合ったり、ドキドキしたり、時には喧嘩したり、色々あるけれど。
 縛りがあれば、何があっても心が揺らいだり寂しくなったりしないんじゃないかって思うんだ。
 え……とね、具体的に『縛り』っていうのが何なのかっていうとね、
 何て言えばいいのかな……伴侶、とか……夫婦……とか。
 最期まで一緒にいられる、たった一人のパートナーっていうか……。
 最近ね、ふと思うんだ。
 あなたが死んでしまったら……って考えて。
 勿論、悲しいとか寂しいとか、そういう気持ちはあるよ。
 でもね、そんなの嫌だ! とか、そんなことは思わない。
 どんな生き物も、いつかは呼吸が止まって還るから。
 それは自然なことだから、それを嫌だなんて言えない。
 だからこそ、傍にいたいって思うんだ。
 だからこそ、傍にいてほしいって思うんだ。
 あなたが死してしまう瞬間、一番近くで看取れるのが僕でありますように。
 僕が死してしまう瞬間、一番近くで見取ってくれるのが、あなたでありますように。
 最期の瞬間まで、ずっと傍に。
 例え、どちらかが先に還っても、ずっと傍に。
 そういう関係でいたいと思う。永遠の伴侶でありたいと思う。
 代えのきかない、パートナーでありたいと思うよ。

「……そんな、感じ」
 思うがままにポツポツと気持ちを吐き落とし、クレタは俯いた。
 紛れもなく、心からの気持ちを口にしたけれど、何だか照れ臭い。
 ハッキリさせたいと愛しい人が言うのなら、恥ずかしがっちゃ駄目だろうに。
 理解ってはいるけれど、照れ臭い。
 何か、おかしなことを言ったのではないかと不安になってくる。
 言葉を選ぶだとか、そういうことは一切しないで、思うが侭に口にしたが故の、不安。
 何を言ったのか、自分でも思い出せない状況故に、不安。
 素直な気持ち、こうありたいと思う、要望。
 Jから返ってくるのは、それに対する答え。
 どんな答えが返ってくるか理解らないが故に、また不安。
 俯いたまま、あさっての方向を見やっているクレタを呼ぶJ。
「クレタ」
「……うん」
 目を泳がせながら返事をすれば、Jは後ろへ回り、
 包み込むようにギュッと抱きしめてクスクス笑う。
「それって、プロポーズ?」
「……え。いや……そういう……。……」
 そうじゃないよと言おうとしたけれど、言えずじまい。
 何故なら、その通りだと思ったから。気付いたから。
 何も考えずに口にしたけれど、紛れもなく今のはプロポーズの類。
 自覚がなかったからこそ、余計に恥ずかしい。
 どうしたい? と尋ねられて、結婚したい。と返したようなものなのだから。
 何てダイレクトな返答だ。わかりやすいけど、恥ずかしい。
 顔を上げることが出来ずにいるクレタの耳元で、Jは目を伏せて囁いた。
 わかったよ。クレタ。じゃあ、そうしよう。
 あぁ、キミに従うってわけじゃないんだよ?
 この曖昧な関係を、ハッキリさせることができる手段。
 キミが提案した、その手段に俺も賛同するってだけ。
 適当じゃないよ。面倒だから、それで良いって言ってるわけじゃない。
 正直、先に言われたのは意外だったっていうか、悔しいところ。
 ……まぁ、そこんところは言わないけど。
 何でって? 先を越されて負けたような気がするから。
 口にしてしまえば、負けを認めてしまうことになるから。
 こんな時でも、負けず嫌い。
 こんな俺でも、良いのかな?
 クスクス笑いながら尋ねたJ。
「こんなって……どんな?」
 そう尋ね返しても、Jは微笑むだけで教えてくれない。
 いつもと何ら変わりない、意地悪な態度にクレタは微笑み、
 包み込む腕にモフッと顔を埋め、小さく二、三度頷いた。

 誰も介入することの出来ぬ二人だけの時間。
 緩やかに、優しく流れる時に酔いしれる二人。
 鳴り響く時計台の鐘の音は、まるで二人を祝福するかのように。

 今更かもしれないけれど、聞いて。
 お互いに……お互いを……支え合える関係でありたいんだ。
 悲しいときも嬉しいときも寄り添って、時間を共有していく。
 口や言葉にしなくても、わかりあえるほどに心が重なり合って。
 互いが互いを思いやり、互いの幸せを願い生きていく。
 あなたが幸福になるには、僕がいなくちゃ。
 キミが幸福になるには、俺がいなくちゃ。
 お互いに、そう自信を持って笑って自慢気に言えるように。
 恋人よりも、ひとつ上の関係に。
 でも、恋人のようなドキドキがなくなるわけじゃない。
 あなたは刺激と変化を求める人だから、努力するよ。
 退屈だなんて言わせないから。
 もっともっと、あなたに尽くします。
 だから、帰ってきてね。
 いつでも、帰ってきてね。
 Jの『帰る場所』が、永遠に僕でありますように。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7707 / 宵待・クレタ / 16歳 / 無職
 NPC / J / ??歳 / 時狩(トキガリ)

 シナリオ『 微妙な関係 』への御参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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