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■上手な拗ね方■

藤森イズノ
【7707】【宵待・クレタ】【無職】
 何ていうか……もう、見慣れたところはある。
 Jに言い寄り、いつでも彼の周りをウロチョロしている女の子、フウカ。
 彼女は『人間』ではなく、人間の形をした『時の歪み』
 まぁ、そんなことはどうでもいい。その点には、何の問題もない。
 フウカとJが一緒にいるところは、もう数え切れぬほど目にしている。
 いつでも、Jは適当にあしらって相手にしていない。
 迷惑そうに見えるが故、不憫だなと思うと同時に微妙な心境になる。
 拒絶しきれないのは、優しいからか。
 それとも "都合の良い女" が欲しいからか。
 真相は定かではないけれど……。
 所構わず絡むが故に、見ているこっちは良い気分ではない。
 まぁ……自分に、とやかく言う権利なんてないのかもしれないけれど。
 無意識の内に肩を竦め、扉の前で溜息を落とす。
 Jの部屋、その扉の前。自分の手元には、一枚の書類。
 ヒヨリから、渡して来てくれと頼まれた。
 何となく、会うのが気まずい状況が、しばらく続いているけれど。
 書類を渡すだけだ。何のことはないだろう。
 顔を上げ、扉を二回、コツコツと叩く。
(……。……?)
 返答はない。もしかして、まだ寝ているのだろうか。
 少し考えた後、躊躇いながら扉を開けた。
「……J?」
 そっと覗き込む部屋の中。鼻をくすぐる、いつもの甘い香り。
 ゆっくりと扉を開けつつ、様子を窺う。
 その途中、視線はベッドに釘付けとなった。
「…………」
 言葉を失うとは、まさにこのことなのだと。
 その瞬間、気味が悪いほどに理解した。
 上手な拗ね方

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 何ていうか……もう、見慣れたところはある。
 Jに言い寄り、いつでも彼の周りをウロチョロしている女の子、フウカ。
 彼女は『人間』ではなく、人間の形をした『時の歪み』
 まぁ、そんなことはどうでもいい。その点には、何の問題もない。
 フウカとJが一緒にいるところは、もう数え切れぬほど目にしている。
 いつでも、Jは適当にあしらって相手にしていない。
 迷惑そうに見えるが故、不憫だなと思うと同時に微妙な心境になる。
 拒絶しきれないのは、優しいからか。
 それとも "都合の良い女" が欲しいからか。
 真相は定かではないけれど……。
 所構わず絡むが故に、見ているこっちは良い気分ではない。
 まぁ……自分に、とやかく言う権利なんてないのかもしれないけれど。
 無意識の内に肩を竦め、扉の前で溜息を落とす。
 Jの部屋、その扉の前。自分の手元には、一枚の書類。
 ヒヨリから、渡して来てくれと頼まれた。
 何となく、会うのが気まずい状況が、しばらく続いているけれど。
 書類を渡すだけだ。何のことはないだろう。
 顔を上げ、扉を二回、コツコツと叩く。
(……。……?)
 返答はない。もしかして、まだ寝ているのだろうか。
 少し考えた後、躊躇いながら扉を開けた。
「……J?」
 そっと覗き込む部屋の中。鼻をくすぐる、いつもの甘い香り。
 ゆっくりと扉を開けつつ、様子を窺う。

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 Jの部屋に踏み入るのに、遠慮はいらない。
 でも、状況が状況なだけに入り難い。
 フウカの所為で、ここ数日、クレタとJは、ロクに会話できていない。
 一時は治まったのに……最近になって、フウカのアプローチが再発している。
 以前よりも堂々としているのは、開き直ったからなのか。
 それとも、勝てる自信に繋がる『何か』を得たからなのか。
 何にせよ、JもJだ。好きなようにさせすぎる感がある。
 放任主義というか……ほったらかすと厄介なことになる場合もあるのに。
 まぁ、らしいといえばらしい対応だとは思うけれど……。
 ヒヨリから預かってきた書類を机の上に置き、フゥと息を吐き落とす。
 視線はベッドへ。どうやら、ぐっすりと眠っている御様子。
 いつもなら、すぐに目を覚ますのに……ピクリとも動かない。
 疲れてるのかな……。大丈夫かな……。
 不安に思ったクレタは、そーっとベッドへ近寄る。
 もしかしたら、僕が来たことに気付いていて、タヌキ寝入りしてるかもしれない。
 覗き込んだら、パチッと目を開けて……笑ってくれるかもしれない。
 頭の中で描いたのは、そんな『願望』
 だが、その願望が現実になることはなかった。
 そればかりか、逆に『絶望』を味わうことになる。
 クレタの視線はベッドに釘付けとなった。
「…………」
 言葉を失うとは、まさにこのことなのだと。
 その瞬間、気味が悪いほどに理解した。
 ベッドで眠るJの隣。寄り添うように眠る……フウカ。
 しかも、二人は生まれたままの姿。一糸纏わぬ姿で眠っている。
 そんな姿を目の当たりにして『落ち着け』だなんて無理な話。
 クレタは無意識の内に、ボスボスと布団を叩いた。
 その衝撃に、ふっとJとフウカが目を覚ます。
「あぁ……クレタ。おはよう」
「…………」
「ん……。どうした……?」
「……それは、こっちの台詞だよ」
 チラリとフウカを見やり、淡々と冷たい口調で言ったクレタ。
 言い訳するのか、素直に謝罪するのか、そのどちらかだろうと思いきや。
「何が?」
 Jはクスクス笑って、そう言った。
 何がって……。ふざけてるの? もしもそうなら、あなたの性格を疑うよ。
 いくら信じてたって、二人が裸で寝てたらムッとするんだよ……?
 何か理由があるにしても、ムカムカするのは当然なんだよ……?
 言い訳しても、謝っても、そうなんだってすぐに認めることはしないけど……。
 そんな、あっけらかんと「何が?」なんて言われたら……余計にイライラするよ。
「……ねぇ、J」
「ん?」
「これから先、どうするの……」
「何を?」
「フウカを。この子を、ずっと傍に、はべらせておくつもり……?」
「はべらせるって―」
「ちょっと何よ、その言い方。失礼じゃない」
 Jの言葉を遮って、フウカが不快を露わにした。
 まぁ、いつものパターンだ。フウカの言い分というか。
 Jは、自分のことを大切に想っていて、だからこそ傍に置いてくれている。
 Jに愛されているのが、自分だけだなんて思わないで。
 私だって、あなたと同じ。Jが生んだ、想いの塊なんだから。
 あなたばかり愛されるだなんて不公平じゃない。独り占めしないでよ。
「…………」
 フウカの言い分を聞いて、クレタはひとつ、溜息を落とした。
 言いたいことは理解る。そして、それが間違いではないことも理解る。
 フウカの気持ちは、すごく理解る。好きな人とは、いつでも一緒にいたい。
 でも、それなら仕方ないね。僕が悪かった、怒ってゴメン。だなんて言えない。
 欲張りかもしれないけれど、独り占めしたいんだ。
 きみの気持ちを理解することが出来るからこそ、傍にいて欲しくない。
 ねぇ、J。こんな遣り取りも、もう何度目になるかな……。
 正直なところ、ゲンナリしてきてる。同じことの繰り返しで。
 僕の気持ち、わかってる? わかっててやってる……?
 ねぇ、もしも。僕が他の誰かの隣に寝ていたら、どう思う?
 ……あれ。あ、そうか。
 一緒に寝てるだけなら、触れ合ったりしてるわけじゃないのか。
 それなら、別に気にすることもないのかな。
 もしかして、それを理解らせる為に、こうやってフウカと一緒に寝て……。
 って、いやいや。違うよ。違うよね……。それは、違う。
 一緒に寝てるってだけで、おかしなことを想像するものだよ、普通は。
 二人で一緒に、裸で寝てる。それって、十分に、おかしなことなんじゃないのかな。
 ただでさえ、最近、あなたと御話することが出来ていないのに。こんなの見せられちゃ……。
「僕にも……限界ってあるよ……」
 Jを、じーっと睨みつけながら小さな声で言ったクレタ。
 限界すなわち、我慢の限界。
 もしもこのまま、構ってくれずにいるのなら、どうなるか理解らない。
 もしかしたら、他に安らげる腕を求めて、あなたの傍から離れてしまうかもしれない。
 例え、そうなったとしても。あなたには、文句を言う権利なんてないはずだ。
 寂しい想いをさせた。それだけで……あなたの罪は確定するから。
 ポツリポツリと呟くクレタの声には、どこか……迫力のようなものがあった。
 脅迫まがいの拗ねっぷり。
 クレタの横顔を暫し見つめ、Jはクスクス笑う。
 脅してるつもりなんだろうけど。演技、下手だね。
 唇が震えてる。怖いの? それなら、そんなこと言わなきゃいいのに。
 他の誰かを求めるだなんて。そんなこと、出来るの?
 やってごらんよ。文句なんて言わないから。
 出来るもんなら、やってごらん。
 返ってきたのは、そんな冷たい言葉。
 いいよ、もう。そんなこと言うなら、本当にもう知らないから。
 そう言って、部屋を飛び出すことが出来たら……良いのに。
 クレタはキュッと下唇を噛み締めた。瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
 想ってもいないことを口にしてまで拗ねてみせたのに、僅かな動揺すらしてくれない。
 そればかりか、出来るもんならやってみろとまで言われた。
 悔しいけれど、今、ここで部屋を飛び出すわけにはいかない。
 だって、そうしてしまったら、拗ねた意味さえなくなってしまうから。
「おいで、クレタ。一緒に寝よ」
 ニコリと微笑んで言ったJ。
 クレタは小さな声で「ばか」と言いながらも、Jの右サイドにコロンと寝転んだ。
 左腕にフウカ。右腕にクレタを抱いて、Jは満足そうに微笑む。


 思うが侭。何をどうしても、あなたの思うが侭にしかならない。
 独り占めしたいって思ってるのに。それを許してくれない、意地悪な人。
 それでも、こうして傍にいることが出来れば安心できてしまうんだから。
 僕も、フウカも、どうしようもない……。
 いつまでも、フウカを傍においておくのは、楽しいから。
 そうやって、キミ達が争ったり、自分の気持ちをぶつけあう様を見るのが楽しいから。
 もっともっと、我侭になればいい。どうしたいのか、口にすればいい。
 遠慮なんていらない。抑制もいらない。もっともっと、貪欲になれ。
 俺から生まれた存在なら、謙虚さなんて持ち合わせないで欲しいな。
 気が狂うくらい、貪欲になって欲しいな。
 そんなキミ達を見て、俺は楽しむから。
 もっともっと、楽しませて。
 思うが侭。何をどうしても、この人の思うが侭にしかならない。
 満足そうに微笑むJを見つめ、クレタとフウカは両サイドで同時に溜息を落とした。
 どうしようもないと呆れる。その対象は、Jではなくて。自分自身だ。
 僕達は、いつまでも。
 我侭な王様の腕を求め、我侭な王様の腕に安らぎ、我侭な王様の腕で眠る。
 いつまでも、いつまでも、いつまでも。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7707 / 宵待・クレタ / 16歳 / 無職
 NPC / J / ??歳 / 時狩(トキガリ)
 NPC / フウカ / 18歳 / 人型歪曲体(コーダ)

 シナリオ『 上手な拗ね方 』への御参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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