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■絆――ここにある全て■

水貴透子
【7879】【高科・真雪】【高校生】

悪趣味なネオンがちかちかと光る中、そのBARは存在した。

渋谷のはずれに『リゾート』と看板が置かれ、文字の部分がぴかぴかと明滅している。

BAR・リゾート――此処はあまり良い噂を聞かない場所だった。怪しげな薬物が売っていたり、少し強面の人が出入りしたりと悪い噂ばかりが飛び交っていた。

しかしそんな場所にも人は集まる、店内を見渡せば若い少年少女がDJの音楽に合わせて身体をくねらせながら踊っている。

良い噂を聞かない場所だと言う事は彼らも周知のはずなのに、それでも彼らはやってくる。

若いがゆえにスリルを求めて来る者も居るだろう。

いつも人が集まっている為、自らの心を蝕む孤独を誤魔化す為に来ている者も居るだろう。

「さぁ、今日も一夜の夢を楽しんでいってくれよ!」

店長らしき若い男性がマイク越しに叫ぶと、店内の若者達も沸きあがったのだった‥‥。



 絆――ここにあるすべて

 悪趣味なネオンがちかちかと光る中、そのBARは存在した。
 渋谷のはずれに『リゾート』と看板が置かれ、文字の部分がぴかぴかと明滅している。
 BAR・リゾート――此処はあまり良い噂を聞かない場所だった。怪しげな薬物を売っていたり、少し強面の人が出入りしたりと悪い噂ばかりが飛び交っていた。
 しかしそんな場所にも人は集まる、店内を見渡せば若い少年少女がDJの音楽に合わせて身体をくねらせながら踊っている。
 良い噂を聞かない場所だと言う事は彼らも周知の筈なのに、それでも彼らはやってくる。
 若いがゆえにスリルを求めて来る者も居るだろう。
 いつも人が集まっている為、自らの心を蝕む孤独を誤魔化す為に来ている者もいるだろう。
「さぁ、今日も一夜の夢を楽しんでいってくれよ!」
 店長らしき若い男性がマイク越しに叫ぶと、店内の若者達も沸きあがったのだった‥‥。

視点→高科・真雪

 その場所へ来たのは、きっと嫌な事を忘れたかったから‥‥。
 自分は一人だ、伯父夫婦は可愛がってくれるけれど私は彼らの『娘』ではない。
 きっと私を哀れんでいるだけ‥‥人はいつも孤独だ。そんな孤独から解放されたかったのかもしれない。そう思っていた。

「‥‥うわぁ‥‥」
 大して仲は良くないけれど、クラスメイト達が噂している場所・リゾート。あまり良い噂は聞かないみたいだけど、高科は行く事にした。
 何故? と問われても彼女自身でもよく分からない。何故かふらふらとこの場所へやってきていたのだ。
「‥‥制服で、来る所じゃなかったかな‥‥」
 店内に入れば、明らかに自分が浮いている事に気づいて、高科は少しだけ恥ずかしくなって顔を俯かせる。
「ねぇ、初めて見る顔だけど〜ここは初めて?」
 きょろきょろと周りを見渡していると、いきなり男の人に肩を組まれて話しかけられる。
「え、あ、あの‥‥」
「はは、何か初々しくてイイじゃん。こういう場所に制服で来るって事は真面目ちゃんなんだ?」
 男の人は少し酔っているのか、口から吐き出される息が酒臭く、慣れない高科は「あの、や、止めて下さい」と小さな声で男の人に言葉を返すが「え〜? 聞こえませ〜ん」とけらけら笑いながら高階をからかう。
「な〜に? そんな純真そうな子がタイプだったけぇ?」
 周りにいた若い男女達がからかうように話しかけてきて、高科は余計に言葉を出せなくなってしまう。
「あ、あの‥‥」
 来るんじゃなかった、高科はそう心の中で呟きながら必死に訴えようとするが酒の入った人間に何を言っても無駄だった。
「やめ――「止めろって言ってんだろ」――え‥‥?」
 機嫌の悪そうな声が聞こえたかと思うと『ばき』という鈍い音が響き、今まで高科の肩を抱いていた男の人が殴り飛ばされていた。
「ってぇ‥‥何すんだよ、リク!!」
 男の人は口元を手で拭いながらジロリと金髪の少年を睨む。リクと呼ばれたその少年は「モテねぇ奴が女引っ掛ける姿ってみっともないんだよ」と言葉を吐き捨てる。
 その言葉に周りの人間達はけらけらと笑い始め、殴られた男の人は「覚えてろよ!」とまるで漫画のような台詞を吐いて何処かへと行ってしまった。
「‥あ、あの‥‥だ、大丈夫ですか‥‥?」
 リクの右手が少し赤くなっているのを見て、高科は「ごめんなさい」と頭を下げる。
「ひ、冷やした方がいいですよね、おしぼり貰ってきます」
 高科が呟き「いらねぇよ」とリクは言葉を返すが、既に高科は人混みの中へと消えていた。

「‥‥えっと、おしぼりって‥‥何処で貰えばいいんでしょうか‥‥」
 人の波をかきわけながら進み、高科はポツリと呟く。とりあえず店員らしき人物を探そうとカウンターの方へと向かっていく。
「あの――おしぼりをもらえますか?」
 カウンターの中でグラスを磨いている女性に話しかけると「そこにあるから適当に持って行って」と素っ気無く言葉を返してきた。
「そ、それじゃ二つお借りしていきますね」
 籠の中から二つおしぼりを握って、高科はリクが座っているテーブルへと向かう――が、初めて来た場所なので元の場所が何処だか分からなくなってしまった。
「え、と‥‥あれ? このテーブルがあった場所が‥‥こっちだから、えと‥‥」
 きょろきょろと見渡しながら呟く姿の高科を、周りの人間達はくすくすと笑って見ている。
「‥‥だからいらねぇて言っただろうが」
 ノリの良い音楽に似合わないため息が聞こえ、高科が後ろを見ると眉を顰めたリクの姿があった。
「あ、おしぼり貰ってきましたから冷やしてください」
 持っていた二つのおしぼりを渡すと「‥‥とりあえず、さんきゅ」とリクはおしぼりを受け取って赤くなった場所を冷やした。
「‥‥ほら、飲めよ。色々あって疲れたろ」
 リクがオレンジジュースの入ったグラスを差し出しながら「何でこんな所に来たんだ?」と問いかけてくる。
「え?」
 オレンジジュースを飲みながら高科が呟くと「お前みたいな奴が来る所じゃねぇだろ、ここは」とリクが言葉を返してくる。
 少しの間、高科は黙りこくったあと「嫌な事があったから」と短く呟いた。
「寂しいの、嫌なんです‥‥」
 ぎゅ、とグラスを握り締めながら呟くと「そ」とリクは短く言葉を返した。
「とりあえず、帰れば? 此処に居てもまた絡まれるだけだろうしさ」
 リクの言葉で「あ」と高科は呟き「さっきは助けてくれてありがとうございました」と深く頭を下げながら先ほどの礼を言う。
「別に。俺がお前助けたのは単なる気まぐれ。さっきの奴が気に入らなかっただけだから、礼を言われても困る」
 きっと、とリクは言葉を付け足しながら「別の奴に絡まれてたら助けなかったしな」と呟いた。
 その言葉に何処かちくりと痛む心が高科の中にはあった。
「あ‥‥そ、うですよね、ご、ごめんなさい‥‥勘違いしちゃって‥‥その‥‥」
 高科が呟くと『ガン』と持っていたグラスを勢いよく置く。その音にビクリと肩を震わせながら目を少し丸く見開いて高科はリクを見る。
「お前のさ、その人の顔色伺うような態度が気にいらねぇんだよ。人にあわせようとしてんじゃねぇよ」
「ご、ごめんなさい‥‥本当に、ごめんなさい」
 今にも泣きそうな表情で高科が呟くと「ちっ」と椅子を蹴りながら立ち上がる。
「あのっ‥‥」
「もう此処には来るなよ、次は助けねぇよ」
 リクが呟いてホールの方へ向かうと「あなた‥‥私と同じ目をしてますね」と小さな声で呟く。小さな声だったけれど、高科の言葉は確かにリクに届いていた。
「‥‥同じ目?」
 顔だけを後ろに向けてリクが問いかけると「私と同じ‥‥寂しい目」と高科は言葉を返した。
「‥‥意味、わかんねぇよ」
 リクはそれだけ言葉を残してホールへと行き、派手な女性と踊り始める。
「‥‥帰ろう」
 高科が呟き、グラスを店員に渡して入り口までとぼとぼと歩いていく。
「お〜い、これ忘れてるよ」
 若い男性店員が小走りで駆けて来てハンカチを渡してくる。
「‥‥あの、ありがとうございます‥‥」
 ぺこりと頭を下げて高科が礼を言うと「アイツに怒鳴られてたけど、大丈夫?」と高科に話しかけてくる。
「え、あ‥‥大丈夫です」
「アイツも色々あるみたいでさ、家に居場所が無いとか言ってたよ。だから毎日此処に来てるんだってさ‥‥っと、俺もう行かなくちゃ。また気が向いたら来てやってよ」
 男性店員は軽く手を挙げて店内へと戻っていった。
『家に居場所が無いとか言ってたよ』
 その言葉が高科の頭に残り、自分と同じ目をしていた事を納得する自分がいた。
(「また‥‥来てみようかな――‥‥」)
 高科は心の中で呟き、帰路へとついたのだった。



――出演者――

7879/高科・真雪/17歳/女性/高校生
NPC /高崎・リク/17歳/男性/高校生

―――――――

高科・真雪様>
初めまして、水貴透子です。
今回は「絆――ここにあるすべて」にご発注頂き、ありがとうございます。
リクをご希望でのノベルでしたが、内容の方はいかがでしたでしょうか?
何かご意見、ご感想などありましたらお聞かせ下さると嬉しいです。
それではシナリオへのご参加、ありがとうございました。

2009/2/5/ 水貴透子