■スキー合宿で迷子■
藤森イズノ |
【7192】【白樺・雪穂】【学生・専門魔術師】 |
名簿と照らし合わせて、生徒の数を確認する千華。
何度確認しても、数が合わない。1人、足りない。
生徒達を不安にさせてはマズイと思い、
千華は、とりあえず、現地にいる生徒達へロッジに戻るよう指示した。
冬の恒例行事、スキー合宿。三泊三日の大イベント。
その最中、事件は起きた。
行方不明になった生徒がいることを、教員仲間と校長に知らせる千華。
悪天候になりつつある現状。吹雪いてしまえば、捜索は一層困難になってしまう。
何としても、その前に、見つけださねば。
現地に居合わせていた教員達は手分けして、行方不明になった生徒の捜索を開始する。
中には、様子がおかしいことに気付き始めている生徒もいるようだが……。
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スキー合宿で迷子
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名簿と照らし合わせて、生徒の数を確認する千華。
何度確認しても、数が合わない。1人、足りない。
生徒達を不安にさせてはマズイと思い、
千華は、とりあえず、現地にいる生徒達へロッジに戻るよう指示した。
冬の恒例行事、スキー合宿。三泊三日の大イベント。
その最中、事件は起きた。
行方不明になった生徒がいることを、教員仲間と校長に知らせる千華。
悪天候になりつつある現状。吹雪いてしまえば、捜索は一層困難になってしまう。
何としても、その前に、見つけださねば。
現地に居合わせていた教員達は手分けして、行方不明になった生徒の捜索を開始する。
中には、様子がおかしいことに気付き始めている生徒もいるようだが……。
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あう〜……困ったねぇ。
寒いのもそうなんだけど、一番マイったのはこれだよね。
「足、捻っちゃった」
ペロリと舌を出して笑って見せる雪穂。
スペルカードから呼び出し、実体化させて傍に置いている【炎犬】は、
その、雪穂の何とも呑気な言葉に大きな溜息を落とした。
スケートは得意だけれど、スキーは苦手なほう。
それなのに、ちょっと冒険しすぎたのが、この状況を生んだ。
洞穴に丸くなって座り、真っ白な息を吐き落とす雪穂。
ほんの数分前までは、何とか出来ないかと足掻いていた。
けれど、どんどん強くなる吹雪の前に立ち往生。
右も左も前も後ろも理解らない状況になっては、どうしようもない。
氷や水の属性や性質を把握している双子の姉ならば、
難なく戻ることが出来るだろうけれど、雪穂には不可能。
今度、氷の魔法も教えてもらおうかなぁ。あと治癒魔法も……。
ほとんど一緒にいるけど、ごく稀に、こういうこともあるもんね〜。
黙って待つしかないっていう状況がね〜。何とも、もどかしいよ〜。
足も痛いし〜。キミがいるから、寒すぎるってことはないけどね。
はふぅと溜息を落としながら、炎犬をギュッと抱きしめた雪穂。
心配してるだろうなぁ、みんな……。
っていうか、僕も心配だよ。
ロッジに置いてきちゃったからね。白桜と正影。
そろそろ、おやつの時間だし……大丈夫かなぁ。
お腹が空くと、あの子達って途端に機嫌が悪くなっちゃうんだよね。
みんなに八つ当たりとかしてなきゃいいんだけど。
あ〜あ。失敗したなぁ。連れてくれば良かったよ。
遊ぶことに夢中になりすぎちゃった。僕の悪い癖だね〜……。
クスクス笑いながら目を伏せる雪穂。
炎犬は、やれやれと肩を竦めながら雪穂の傍に伏せた。
何よりもまず、自分の心配をすべきではないのか。
この状況が危険だということに、気付いていないわけでもなかろうに。
まぁ、可能な限りお前を護るつもりではいるが。
「えへへ。ありがと〜。もふもふ〜。あったかい〜」
テレパシーで頭の中に流れ込んできた言葉と想いに、
嬉しそうに微笑みながら、雪穂は炎犬の揺れる炎に顔を埋めた。
穴の外、吹雪は強くなっていくばかり。
さて、どうしたものか……。
「あ、そうだ。アレ使ってみようっと」
ハッと思い付き、背中に背負っていたリュックを下ろす雪穂。
普段持ち歩いている鞄の形が変わっただけ。
中には、雪穂が作った魔法具がたくさん詰め込まれている。
取り出したのは、つい先日完成したばかりの連絡機。
携帯と異なり、どんな場所でも電波を要することなく使える代物。
「……がーん!」
なのだが……残念な事態。
連絡機が、雪と寒さにやられて誤作動を起こしている。
ビヨンビヨンと勝手に動き回るメーターからして、
正常な動きと働きを成しそうにもない。
でも、何もしないよりはマシなはず。
そう思った雪穂は、駄目もとで連絡機に付いているボタンを押した。
ここにいる。
そう知らせる合図は、吹雪を掻い潜って『誰か』へと届く。
本来ならば。問題なく動作する状態ならば……。
「……。おい、海斗どこ行った?」
神妙な面持ちで、待機している生徒を見やりながら言った藤二。
Aクラスの生徒は、基本的に皆、おりこうさんだ。
動くなと言われれば、ちゃんと動かずに待っている。
けれど一人だけ、おとなしくしていられない奴がいる。
そいつは本当に困った奴で、落ち着きがなさすぎる。
おとなしくしている、ということがまず出来ない。
加えて、何でもかんでも思いつきで行動する。
後先? 一切考えない。
重要なのは、その時どうしたいか、どうすべきか。
そいつは、自分の考えだけに忠実。協調性? ないない。
「……すみません。捕まえようとはしたんですけど」
申し訳なさそうに俯いて言った梨乃。
藤二は大きな溜息を落とし、ガシガシと頭を掻きながら報告へ向かう。
ウチの問題児が、また勝手なことをしている。申し訳ございませんね、と。
「捜索対象が増えたってことよね……」
「マジで申し訳ない」
「でも、この吹雪じゃ探すのはキツいよね」
「……。千華、校長に連絡して許可もらって」
「ちょっと。まさか……」
「しょうがないだろ。状況が状況なんだから」
「まぁ、そうだね。それしかないと思うよ」
「他の生徒を、これ以上不安がらせるわけにもいかねぇしな」
「……わかったわ。ちょっと待ってて」
「よろしく」
目を伏せ、煙草を消しながら言った藤二。
目立たぬ場所へ移動して携帯で連絡を試みる千華の背中を見やりながら、ヒヨリは、ンッと伸びた。
「ん〜……。にしても、久しぶりだよね」
「だな。あんま使いたくねぇんだけど」
「それは、俺も千華も一緒だよ」
「リスク・反動の問題じゃねぇんだよなぁ……。もはや」
「トラウマだからね。ある意味」
「だな……」
ロッジにて教員達が『何か』を仕掛けようと試みていた頃。
洞穴で待機していた雪穂は、意外な人物の出現に驚いていた。
「あれ〜! 何でいるの〜。もしかして、キミも迷子〜?」
目を丸くして驚く雪穂。その言葉は、雪ダルマ状態の海斗へ放たれている。
あっけらかんとした雪穂の態度に、ガックリと肩を落とす海斗。
何だ、お前。何だ、それ。慌てて来てやったのに、何でそんなに呑気なの?
頭ン中に「ここにいるよー!」って、お前の声がガンガン響くような感じがしてさ、
その声が聞こえてくる方に向かって、ひたすら歩いてきたんだけど。
何つーか……チカラ抜けるなー。久しぶりに焦ったのによー。
「……つか、そのワンコ。引っ込めてくんね?」
身体に纏った雪を叩き落としながら苦笑して訴えた海斗。
まるで雪男の如く、ヌッと現れた海斗を警戒して、炎犬は唸り声を上げている。
「あ〜。ごめんね。もう、大丈夫だよ〜」
「おー。っつか、何。お前、足ケガしてんじゃん」
「ほぇ。よくわかったね?」
「めっちゃ腫れてるし。すぐわかるっつーの。ちょい見してみ」
「痛くしないでね」
「失敬だな。意外とやるのよ? 俺だって」
クスクス笑いながら、腫れた雪穂の右足首に触れる海斗。
治癒魔法も、それなりに使える。完治させるまではいかないけれど、
痛みを取り除いて、安定させることくらいならば容易い。
「あ〜。すごいね〜。痛くなくなった〜」
「だーから言ってるだろ。よし、んじゃ、外出るぞ。歩けるだろ?」
「うん。あれ? でも、どうやって帰るのさ〜」
「だいじょぶ。外に出れば理解る。ほれ、掴まれ」
「……? うん」
首を傾げながらも海斗の肩を借り、ヒョコヒョコと歩く雪穂。
どうやって帰るのか。この猛吹雪の中を。
外に出れば理解ると、海斗は言った。
どういうことなのか、当然理解できずにいた雪穂だったが、その言葉は本当だった。
一歩外に出た、その瞬間に理解する。
猛吹雪の中、真っ直ぐに難なき道が伸びている。
トンネルの中を進むような感覚だ。その道は温かな光に満ちていた。
長く、真っ直ぐに伸びる光の道。
ひたすら進めば、やがて見えてくるロッジと手を振るクラスメートの姿。
その傍では、先生達がグッタリしている。
海斗が自信満々に大丈夫だと言い放った、その理由と繋がるであろう先生達の怠慢感。
無事で良かったと、クラスメートに囲まれる雪穂は、先生達の表情に釘付けだった。
勝手なことをした海斗の頭をスパーンと躊躇なく叩くだとか、
一見、いつもと何ら変わりないように思えるんだけど……。
(何だろ〜……この感じ〜……)
切ないような、胸がギュッと締め付けられるような……。
先生達の笑顔が、無理に作られているもののような気がして仕方なかった。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7192 / 白樺・雪穂 / 12歳 / 学生・専門魔術師
NPC / 海斗 / 19歳 / HAL在籍:生徒
NPC / 梨乃 / 19歳 / HAL在籍:生徒
NPC / 藤二 / 28歳 / HAL在籍:教師
NPC / 千華 / 27歳 / HAL在籍:教師
NPC / ヒヨリ / 26歳 / HAL在籍:教師
シナリオ参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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