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■時狩 -tokigari-■

藤森イズノ
【7849】【エリー・ナイトメア】【何でも屋、情報屋「幻龍」】
「ちょっと。聞いてるの? ヒヨリ」
「聞いてる聞いてる。聞いてるって」
「じゃあ、今、私が説明したこと。もう一度説明してみて」
「…………」
 ちゃんと聞いてるっつうの。まったく。いちいちウルセェな、お前は。
 あー……と。アレだろ? 要するに、妙な奴らが、この辺りを徘徊してて。
 そいつらの目的が、俺達。時守だっつうんだろ?
 この空間をどうにかしようだとか、その辺りを策略してそうだけど。
 はっきりしたことは言えない、と。ただ、奴等が俺達を狙っているのは間違いない、と。
 とっ捕まりでもすりゃあ、ロクなことになんねぇから、気を付けろ、と。
「そういうことだろ?」
「……だいぶ、ざっくばらんになってるけど。まぁ、そんなところね」
「だーから、聞いてるっつったろ。で? お前は、どうすんだ?」
「勿論、調査するわよ。誰かが捕まりでもしたら、大変だもの」
「捕まったら捕まったで、そいつらの目的がハッキリするだろうから、いいんじゃねぇか?」
「何言ってるのよ。駄目に決まってるでしょ。何されるか、わかったもんじゃないんだから」
「捕まったら助けりゃいい。そんだけだろ」
「……あなたは、危機感というものが欠落しすぎているわ」
「そりゃあ、どうも」
「褒めてないわよ」
 時狩 -tokigari-

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「ちょっと。聞いてるの? ヒヨリ」
「聞いてる聞いてる。聞いてるって」
「じゃあ、今、私が説明したこと。もう一度説明してみて」
「…………」
 ちゃんと聞いてるっつうの。まったく。いちいちウルセェな、お前は。
 あー……と。アレだろ? 要するに、妙な奴らが、この辺りを徘徊してて。
 そいつらの目的が、俺達。時守だっつうんだろ?
 この空間をどうにかしようだとか、その辺りを策略してそうだけど。
 はっきりしたことは言えない、と。ただ、奴等が俺達を狙っているのは間違いない、と。
 とっ捕まりでもすりゃあ、ロクなことになんねぇから、気を付けろ、と。
「そういうことだろ?」
「……だいぶ、ざっくばらんになってるけど。まぁ、そんなところね」
「だーから、聞いてるっつったろ。で? お前は、どうすんだ?」
「勿論、調査するわよ。誰かが捕まりでもしたら、大変だもの」
「捕まったら捕まったで、そいつらの目的がハッキリするだろうから、いいんじゃねぇか?」
「何言ってるのよ。駄目に決まってるでしょ。何されるか、わかったもんじゃないんだから」
「捕まったら助けりゃいい。そんだけだろ」
「……あなたは、危機感というものが欠落しすぎているわ」
「そりゃあ、どうも」
「褒めてないわよ」

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(……う〜ん)
 コツコツと叩いて確認してみる。何だろう、特殊材質な感触だ。
 反響する音は鉄に近いけれど、もっと強度は上……なんじゃないだろうか。
 ウロウロしながら、あちこちを叩いて確認するエリー。
 彼女は今、妙な境遇にある。
 いつもどおり仕事を終えて、居住区へ戻る途中の出来事だった。
 突如、足元からコレが湧いた。コレというのは、檻だ。
 材質は不明だが、かなりの強度を誇るであろう。
 檻とは、捕らえる為にある道具。
 即ち、脱出できるはずもない。させてくれるはずがない。
 一体何事だろう。誰の仕業だろう。考えてみた時、ふっとヒヨリが頭に浮かんだ。
 タチの悪い悪戯を好む彼の仕業かもしれない。その可能性は、ゼロじゃない。
 けれど、ここまで無意味な悪戯をするだろうか。いいや、しないだろう。
 彼の悪戯は、何だかんだで意味があるものばかりだ。
 だからこそタチが悪いのだが。
 さて。ヒヨリじゃないとなると……さっぱり検討がつかない。
 そもそも、この空間には自分達、時を管理する者しかいない。
 必然的に、仲間内の犯行ということになってしまう。
 でも、ヒヨリのほかに、こんなことをしそうな人は……いない、多分。
 さっぱり理解らない。考えたところで、どうにもならない。
 エリーは、諦めた。
 チョコンと隅っこに座り、懐からお菓子を取り出して食べる。
 成長期といわれる年齢だからか否か、ここ最近、小腹が空いて仕方ない。
 車で言うなれば、燃費が悪いというやつだ。食べても食べても足りない。
 まぁ、どれだけ食べても太らないという体質なのは有難いところ。
(こうやって余裕かましてる人に限って、急にボンッと太ったりするんですよね)
 サクサクとチョコレートバーを齧りながら苦笑するエリー。
 監禁されている状態だというのに、何という余裕か。
 そんなエリーの姿に怪訝な顔をしながら、歩み寄ってくる連中がいた。
 見るからに妖しい集団だ。全員が全員、真っ黒な装束を纏っている。
 お菓子を飲み込み、向かってくる連中へ目を向けたエリー。
「あなた達の仕業ですか? これ」
 立ち上がり、檻に手を掛けながら尋ねたエリー。
 装束の連中は、その質問に答えることなく沈黙を続けるばかり。
 無視なのか、それとも聞こえない理由でもあるのか。
 何にせよ、会話が成立しないのは、もどかしいし面倒だ。
 ヤレヤレと肩を竦め、エリーは腕を捲くる。
 強硬手段に出ても文句は言えまい。
 檻の中で飼われるほどの猛獣でもあるまいし。
 檻を破壊しようと身構えるエリー。
 そこで、ようやく装束の連中が口を開いた。
「その命と引き換えに、時を取り戻してやろう」
「……はい?」
「キミには、欲して止まぬ記憶があるだろう」
「…………」
「案ずるな。痛みを伴わぬ手段なら持ち合わせている」
 淡々と言い放つ黒装束の連中。エリーはクスリと笑う。
「お断りします」
「何故?」
「人の助けを借りるのは嫌ですから。自分で何とかします」
「容易いことだと?」
「そうは思いません。思わないからこそ、楽しいんですよ」
 クスクス笑うエリー。その態度にイラついたのか。装束の連中が先手を打つ。
 何のモーションもなく、どこからか黒い剣を出現させ、
 それらを躊躇なく、連中は檻の中へ差し込んでいく。
 だが、剣がエリーを貫くことはなかった。
 その全ては、エリーが即座に張った結界に弾かれ、玩具のようにパキンと折れる。
 試すかのような攻撃。本気で殺そうとは思っていないであろう攻撃。
 妙な感覚に首を傾げるエリー。ほんの僅か、一瞬生じた隙。
 精神統一が僅かに欠けた瞬間、結界の精度が落ちる。
 そこをつくようにして、連中は次々と剣を突き刺した。
 そのうちの数本が、エリーの身体を掠める。
 破けてしまう、お気に入りの服。
 露わになった胸元は、女の証。
 何故か、たまらなく寂しい気持ちにさせる、己の身体。
 エリーは冷たい微笑を浮かべ、ピュウと口笛を鳴らす。
 その音に呼ばれるかのように、エリーの身体を包み込む緑色の風。
 その風は、やがて刃と化し、エリーを拘束する檻を粉々に粉砕した。
 自由の身となり、ゆっくりと連中へと近付いていくエリー。
 その背後には、緑色の竜が、彼女を護るかのように出現していた。
 また、瞳の色にも変化がある。薄紫色の右目だけが、薄い緑色へと変色していた。
 その色は、背後に浮かぶ竜と同一なる色。
「ごめんなさいね。緑風は確か……五龍の中では一、二を争うほど残酷ですから」
 早々に謝罪を済ませ、エリーは躊躇うことなくフルパワーでスキルを発動。
 かまいたちのように、次々と装束の連中を裂いていく緑の竜。
 見えない何かで通じているが故に、その身に感触はダイレクトに伝わる。
 その手ごたえに、エリーは顔をしかめた。
 ない。手ごたえが、ないのだ。
 いや、ないというよりは、なくなると言うべきか。
 裂かれて地に伏せる装束の連中を疑問視で見やれば。
 連中は、次々と煙になって消えていく。
 実体ではない……。幻体? それとも、思念体?
 こうしてダイレクトに感じるまで、まったく気付かなかった。かなりの精度だ。
 こんな芸当が出来る人と言えば―
 手際よく処理してくれた竜へ、感謝の言葉を述べながらも首を傾げるエリー。
 事が済み、竜を消した、その時だった。
 突然、背後からの抱擁。
 それは、抱擁というには少々手荒だったけれど。
 悪意はなかった。荒くはあるものの、確かな抱擁だった。
 誰が自分を抱きしめたのか、誰に自分は抱きしめられているのか。
 どなたですか? だなんて、そんな質問は野暮なこと。
 触れた瞬間、頭の中に流れ込んできた記憶。確かな彷彿。
 エリーは目を伏せ、身動きすることなく呟いた。
「……久しぶりですね」
 その言葉にクスクス笑い、耳元で囁き返す人物。
「おかえり、エリー」
 突き刺さるような綺麗な声。甘美な、その声。
 かつて、自分はその声に、この腕に包まれて生きていた。
 そうすることしか出来なかった。許されなかった。

 忘れるはずもない。J、あなたの名前。
 疑問に思うことは、いくつもある。
 どうして、あなたのことを忘れていたのか。
 あなたとの記憶を、どこかへ置き去りにしてきてしまったのか。
 怖かったのだろうか、僕は、怖かったのだろうか。
 あなたの記憶を、あなたに愛されてきた事実を、怖いと思ってしまったのだろうか。
 それとも、何か。自分は人間であると、ヒトであると言い貫きたかったとでも。
 馬鹿げていますね。虚偽を貫こうなどと、愚の骨頂ではありませんか。
 J、あなたは……。相変わらずのようですね。
 その声も、この腕の温度も、何一つ変わっていない。
 僕ですか? 僕は、変わりましたよ。変わったと思いますよ。
 あなたの手を離れ、いろいろな経験をしたんです。
 少し癖のある仕事をしてみたり、異名なんぞも貰ったりして。
 そんな様々な経験を経て、この世界へ。この空間へ戻ってきて、今日で一週間。
 あなたは、ずっと僕を探していたのですね。探してくれていたのですね。
 当の僕は、あなたのことを忘却していたというのに。
 目を伏せたまま、口元にうっすらと笑みを浮かべて思いに耽るエリー。
 その全て理解し、把握し、抱擁し、Jは言った。
 ベッドの上ですら胸元が露わになることを嫌っていたエリーへ。
 黒いコートを羽織らせて、囁くようにJは言った。
「エリー。お返事は?」
 その言葉にクスクス笑って、エリーは伏せていた目を開き、
 クルリと身体を反転させ、Jの瞳をジッと見つめた。
 先ず何よりも、一番に謝罪を述べるべきなのではないかと思っていました。
 けれど、違うんですね。あなたが求めるのは、謝罪ではないのですね。
 少々気恥ずかしくはあるのですが。あなたが望むのならば。
 恋人のように甘く、親子のように深く、けれど実際は、そのどれでもない。
 不思議な関係。断ち切ることは叶わぬ、妙な関係。
 ただひとつ、確かなことは。あなたが、大切な存在であるということ。
 ニコリと微笑み、エリーは告げた。仰せのままに、お返事を。
「ただいま」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7849 / エリー・ナイトメア / 15歳 / 何でも屋、情報屋「幻龍」
 NPC / J / ??歳 / 時狩 -トキガリ-

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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