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■絆――ここにある全て■

水貴透子
【7321】【式野・未織】【高校生】

悪趣味なネオンがちかちかと光る中、そのBARは存在した。

渋谷のはずれに『リゾート』と看板が置かれ、文字の部分がぴかぴかと明滅している。

BAR・リゾート――此処はあまり良い噂を聞かない場所だった。怪しげな薬物が売っていたり、少し強面の人が出入りしたりと悪い噂ばかりが飛び交っていた。

しかしそんな場所にも人は集まる、店内を見渡せば若い少年少女がDJの音楽に合わせて身体をくねらせながら踊っている。

良い噂を聞かない場所だと言う事は彼らも周知のはずなのに、それでも彼らはやってくる。

若いがゆえにスリルを求めて来る者も居るだろう。

いつも人が集まっている為、自らの心を蝕む孤独を誤魔化す為に来ている者も居るだろう。

「さぁ、今日も一夜の夢を楽しんでいってくれよ!」

店長らしき若い男性がマイク越しに叫ぶと、店内の若者達も沸きあがったのだった‥‥。



絆――ここにある全て

 悪趣味なネオンがちかちかと光る中、そのBARは存在した。
 渋谷の外れに『リゾート』と看板が置かれ、文字の部分がぴかぴかと明滅している。
 BAR・リゾート――此処はあまり良い噂を聞かない場所だった。怪しげな薬物を売っていたり、少し強面の人が出入りしたりと悪い噂ばかりが飛び交っていた。
 しかしそんな場所にも人は集まる、店内を見渡せば若い少年少女がDJの音楽に合わせて身体をくねらせながら踊っている。
 良い噂を聞かない場所だと言う事は彼らも周知の筈なのに、それでも彼らはやってくる。
 若いがゆえにスリルを求めて来る者も居るだろう。
 いつも人が集まっている為、自らの心を蝕む孤独を誤魔化す為に来ている者もいるだろう。
「さぁ、今日も一夜の夢を楽しんでいってくれよ!」
 店長らしき若い男性がマイク越しに叫ぶと、店内の若者達も沸きあがったのだった。

視点→式野・未織

 全ての始まりは式野の持つペンデュラムが何かに反応して明滅を繰り返した事からだった。
「‥‥此処、あんまり良い噂を聞かない場所だ‥‥どうしよう」
 式野は中から聞こえる若者たちの声と明滅を繰り返すペンデュラムを交互に見て、店の中に入ろうか入るまいかを悩んでいた。
「でも、何に反応してるのか気になるし、確かめないといけないし‥‥入っちゃえ」
 ミオは結城を振り絞って中に入ると、明らかに自分が場違いな事に気がつく。
 周りは好奇の目で式野を見ており「何か場違いな子が来たわね」とか「この店にはいないタイプで可愛いじゃん」などと言う言葉が式野の耳に入ってくる。
「あ、近いんだ‥‥」
 ペンデュラムを見ると、反応しているモノが近い事を知らせてくれている。
「どこだろ‥‥何に反応してるのかな」
 式野は周りをきょろきょろとしながら反応の持ち主を探す、すると行き着いた先はカウンターで赤い髪のバーテンがシェイカーを振りながら若い女の子と話している所だった。
 そしてペンデュラムは明らかに赤い髪の男性に反応している。
「あれー? もしかして注文? ちょい待ってな、こっちが先だからさ」
 バーテンの男性は式野にウインクをして、シェイカーの中身の液体を可愛いグラスに注ぎ、カウンター越しに待っていた女性達に渡した。
 そして女性達に手を振りながら見送り「お待たせ、何にする?」と式野に話しかけてくる。
(「‥‥ペンデュラムはこの人に反応してる、何でこんな明るそうな人に反応してるんだろ‥‥」)
 式野の持つペンデュラム、それは『式野が何かを探している時』や『近くに怪異が発生している時』や『助けを求めている人がいる時』に反応をするようになっている。
 明らかに目の前の赤い髪の男性はどれにも当てはまる要素は見られず、式野はペンデュラムを見ながら首を傾げた。
「へぇ〜変わったペンダントだね。最近そういうの流行ってんの? ちなみにあんたは何チャン? 俺は桜井サクマってーの」
 にぱっと明るく笑顔を見せる桜井に「ミ、ミオは式野・未織です」と戸惑いがちに言葉を返す。
「ミオちゃんね♪ どーぞよろしく」
「あ、桜井さん‥‥もしかして疲れてます?」
「は?」
 突然の式野の言葉に桜井は間抜けな声で言葉を返した。
「ミオ、お菓子持ってるんで、良ければどうぞ」
 式野はそう言ってバッグに入っていたクッキーを桜井に渡す。
「疲れた時には甘い物を食べるといいんですよ、だから遠慮なく食べてください」
 我ながら名案、と言わんばかりに式野が呟くと、桜井はいきなり「あはは」と声を大きくして笑い始める。
「ははっ、こんな所に来てお菓子進める女なんて初めて見た」
 よほど式野の行動が面白かったのか、桜井は腹を抱えて笑い続ける。
「このクッキー、うちのお店のなので美味しいですよ?」
 うちの店、と言う言葉に「お菓子屋さんなんだ?」と桜井は目に溜まった涙を指で拭いながら言葉を返してくる。
「はい、ケーキ屋さんなんです」
 式野の言葉に「へぇ、奇遇だね。俺ン家もケーキ屋なんだ」と桜井は顔を近づけながら呟く。
「――――嘘だけどね」
 本当に? と言いたげな式野の言葉に桜井は再び距離を取ってからかい口調で言う。
「もう、からかったんですか‥‥ってこれ何ですか?」
 桜井が差し出してきたオレンジ色の液体が入ったグラスを見て「サービス」と彼はウインクしながら言葉を返してきた。
「み、ミオは未成年だからお酒は飲めませんっ」
 慌てて式野がグラスを返すと「ただのオレンジジュースだから飲みなって」と桜井は一緒に食べるつまみも差し出しながら言葉を付け足す。
「だってミオちゃんが未成年ってのは直ぐに分かるし。しかも中学生かな?」
 桜井の言葉に「高校一年です」と頬を膨らませながら言葉を返した。
「え、マジ? 全然見えねぇ‥‥」
 本気で驚いたのか桜井はクッキーを食べるのを途中で止めて、目を丸くしながら驚いた表情を見せた。
「ん。美味い、今度ケーキ買いに行こっかな」
 その時、式野は見てしまった。桜井は表情こそ笑っているけれど目が笑っていない。
「‥‥ん? どうかした?」
「何か‥‥桜井さんって少し気になります‥‥嘘が上手いからかな?」
 でも、と式野は言葉を付け足して俯いていた顔をあげながら「ミオも嘘を吐くのが上手いんですよ」と笑いながら話す。
「ミオちゃんも? そーは見えないケド?」
 くっくっと桜井が笑いをかみ殺しながら言うと「だって‥‥そうじゃないと両親や友達に心配かけちゃうから‥‥」と寂しそうに笑いながら言葉を返した。
「ミオの能力を嫌うお祖母様にどんな事をされても、笑ってるんです。何もなかったように振舞わないと心配かけちゃうから」
 ミオ、心配サレルの苦手なんですよね――式野の言葉に桜井は笑う事を止めてジッと式野を見る。
「あんまり無理すんな、子供なんだから」
 桜井はくしゃっと式野の頭を撫でながら呆れたような表情で呟く。
「嘘を吐くのってのはどんな事にしろツライんだよ、俺だって――――‥‥」
 そこで桜井は言葉を止めて、式野が顔をあげるとにっこりと桜井は笑顔を見せてくれる。
 その笑顔は先ほど見た作り物の笑顔ではなく、本当に笑っている顔だった。
「とりあえず飲め。今日は俺のおごりだから」
 桜井がそう言ってグラスを式野の前まで持っていくと「ありがとうございます」と式野はお礼を言ってオレンジジュースを口に運んだ。
「美味しい」
 式野が呟くと「業務用ジュースだけどな」とぶっきらぼうに呟く。
「そういえばさ、さっき『ミオの能力』とか言ってたけど――普通じゃない力があるワケ?」
 桜井が問いかけると、式野は素直に首を縦に振って自分の能力の事を説明した。そしてペンデュラムの反応があってリゾートへやってきたという事も。
「桜井さん、近くで何かおかしい事に巻き込まれたりとかないですか?」
 ペンディラムが反応する時の事を教えると『助けを求めている』と言う式野の言葉を聞いた時に桜井の表情が明らかに変わるのを式野は気づいていた。
「‥‥おかしな事、ね。別にないけど? 俺にもそういう特別なチカラがあったらよかったのになー。凡人な俺としてはすこ〜し羨ましい気もするよ」
 さっきまで桜井の嘘は完璧だったはずなのに、動揺しているのか完璧さが失われて『嘘』だと言う事がバレバレである。
「こうして出会ったのも縁だし、ミオ達は友達になろうよ」
 式野は敬語をやめて桜井に話しかけると「ん、そーだな♪」と桜井は紙に黒ペンでさらさらと書いてそれを式野に差し出す。
「俺の電話番号&メルアドGETおめでとう♪ ついでにミオちゃんのも教えてくれると俺は凄く喜んじゃうけど?」
 桜井がおどけながら呟いた時、彼の胸元に光るネックレスに目が行く。ピンクの石が散りばめられた明らかに女性用のネックレス。
「え、もしかして教えてくんねーの?」
 ショックを表情で表現する桜井に慌てて式野も自分の連絡先を教える。
(「何だろ‥‥あのネックレス、桜井さんのイメージと違うけど‥‥」)
 その時はそのネックレスこそが式野のペンデュラムを反応させている原因、桜井を苦しめている原因になっているとは思いもしなかった‥‥。
「また遊びに来いよ、今度は俺に連絡してくれてから来れば裏の従業員用入口開けてやるからさ♪ ウソツキ仲間として」
 桜井はそう言って式野を出口まで見送った。
「ここは気を使う相手もいないですし、何となく落ち着きます」
 式野が変える間際に桜井に言葉を返して、帰路へとついたのだった。

 彼女の持つペンデュラム、それはまだ静かに反応を見せていた。



――出演者――

7321/式野・未織/15歳/女性/高校生
NPC /桜井サクマ/18歳/男性/フリーター(現在バーテン)

―――――――

式野・未織様>
初めまして、水貴透子です。
今回は『絆――ここにある全て』にご発注頂き、ありがとうございました!
桜井をご希望のノベルでしたが、内容の方はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思って下さったら嬉しいです。
何かご意見・ご感想などありましたらお聞かせ下さると嬉しいです。
それでは、シナリオへのご参加ありがとうございました。

2009/2/23