コミュニティトップへ




■ハーモナイズ■

藤森イズノ
【7182】【白樺・夏穂】【学生・スナイパー】
 異なる二つの属性が混ざり合う。
 その成功例は、極端に少ない。
 互いの魔力が同じくらいでないとならぬのに加えて、
 互いのことを誰よりも理解している必要がある。
 とはいえ、親子や兄弟ですら成功するのは稀だ。
 重要なのは、シンクロできる存在か否か。
 非常に難しく、これまでに成功した生徒は一組のみ。
 その変わらぬ事実に、教員たちは焦りを覚え始めていた。
 このままではマズイ。
 必要になってくるのだ、この先。
 ハーモナイズ。
 それを可能とする対なる生徒が。
ハーモナイズ

-----------------------------------------------------------------------------------------

 異なる二つの属性が混ざり合う。
 その成功例は、極端に少ない。
 互いの魔力が同じくらいでないとならぬのに加えて、
 互いのことを誰よりも理解している必要がある。
 とはいえ、親子や兄弟ですら成功するのは稀だ。
 重要なのは、シンクロできる存在か否か。
 非常に難しく、これまでに成功した生徒は一組のみ。
 その変わらぬ事実に、教員たちは焦りを覚え始めていた。
 このままではマズイ。
 必要になってくるのだ、この先。
 ハーモナイズ。
 それを可能とする対なる生徒が。

-----------------------------------------------------------------------------------------

「はい、遅刻ー。ペナルティは、パフェ奢りに決定!」
「……ごめんなさい」
「いやいや、冗談だって」
 ケラケラ笑いながら夏穂の頭をペシペシと叩く海斗。
 遅刻したことを申し訳なく思っている夏穂は、浮かない表情だ。
「んな顔すんなって。行くぞー」
「うん……」
 申し訳なさそうな顔をしている夏穂の手を引き、ズンズンと歩き出す海斗。
 怒っている様子もなく、いつもどおり無邪気な反応。
 手を引かれ歩きながら、夏穂は淡く微笑んだ。
 デートではない。いや、ある意味デートかもしれないけれど。
 現在時刻は23時50分。
 二人はこれから、一緒にハント活動を行う。
 二人きりで討伐にあたるのは、今日が初の事だ。
 先生(藤二)からの指示で、ペアを組むことになった。
 また随分と唐突な指示だったけれど、二人は、すんなりと了承。
 普段から一緒にいることが多い二人にとっては、何のことはない指示だった。
 仲の悪い奴と組まされるわけじゃないのだから、断る理由もゲンナリする事もない。
 それにしても、どうして、こんな指示が飛んできたのか。
 基本的に、ハントは自由だ。生徒任せなところもある。
 先生、学校側が関与してくることは滅多にない。
 何か特別な理由があるのだろうか。だとすれば、一体……?
 現場へと赴く最中、神妙な面持ちで考え込む夏穂。
 その表情に気付いた海斗は、夏穂の頬をぺしっと叩いて笑う。
「だーから、んな顔すんなって」
「あ、ううん。そうじゃなくて……」
「何も深く考えなくていーよ。多分」
「そうかしら……?」
「楽しめばオッケ。いつもどおりでオッケ。多分」
「ふふ……。そうね。うん」
 一緒にいると、気が楽になる。
 あれこれ考え込んでしまう性格だからこそ、余計に。
 無邪気な海斗の笑顔は、いつでも夏穂の背中を押す。
 本人に、そんな気はないのだろうけれど。いつだって、そう。
 二人が今宵討伐するのは、猫タイプのスタッカート。
 先生から渡された資料は、その外見写真のみ。他は一切教えてくれなかった。
 もう、この時点で何かがおかしいというか、十分に怪しいのだけれど。
 とりあえず、倒してこいと言われたならば倒すしかあるまい。
 出現予定現場である、都内の小さな公園に到着した二人。
 ベンチに並んで座り、御話しながら標的の出現を待つ。あと5分。
 その光景は、何ともマッタリしていて……これから討伐だなんて、そんな雰囲気、微塵もない。
 他愛ない話をしながら笑う、そんな二人を、監視している人物がいた。
 HAL本校、3階にある情報室にいる藤二。
 彼は、モニターで二人の動きを監視している。
 闇に紛れて飛ぶ、藤二手製の小型カメラの存在に二人が気付くことはない。
「……深夜のデートだな。まるっきり」
 クックッと笑いながら煙草に火をつけた藤二。
 彼が監視している理由、それは、二人に指示を飛ばした理由とイコールで結ばれる。

 深夜0時―

「出たっ!」
「うん」
 時刻が0時になった瞬間、二人の表情がキリッとしたものに変わる。
 目の前にヌッと出現した黒猫。可愛い……とは言い難い。なぜなら……。
「つか、デカっ!」
「……そうね」
「メタボだ、メタボ。メタボ猫!」
「それ、最近人気よね。雑誌とかでよく見るわ」
「だなー。可愛いよなー。あれ」
 キャッキャとはしゃぎながらも、臨戦態勢。
 海斗は、自慢の武器【魔銃】の銃口にボッと炎を灯した。
 夏穂は、装填中の海斗の身体全体を、氷の結界で包み込む。
 流れるような、見事なコンビネーション。事前に打ち合わせしたわけでもないのに、
 二人の息はピッタリと重なり合っている。仲良しだからこそ、だ。
 海斗は、いついかなる時も前線でガツガツ攻撃するタイプ。
 夏穂は、逆に後衛として支援するタイプ。
 突っ走る海斗と気配り上手な夏穂の相性は二重丸だ。
「猫……。ちょっと心苦しーけど、仕方ない! 割り切り上手な俺って天才っ!」
 ケラケラ笑いながら引き金を引き、スタッカートに向けて真っ赤な炎を放つ海斗。
 動物タイプだということもあり、炎は効果抜群だ。
 だが、だからこそいきり立つ。
 猫とは思えない不気味な鳴き声をあげながら巨体で飛び掛ってくるスタッカート。
 飛び掛るというよりは、押し潰しにかかってくるような感じだ。
 潰されてしまえば、ひとたまりもない。
 攻撃を避けながらケラケラ笑う海斗。
 だが、その余裕の表情がすぐさま神妙なものへと変わる。
 わずかに掠った箇所、夏穂に張ってもらった氷の結界が削られている。
 そればかりか、そこからヒビが入って、ピキピキと不安な音を立てるではないか。
「あれっ……。ちょ、夏穂。もっかい!」
「……。うん」
 言われるがまま、氷の結界を張りなおした夏穂。
 抑制したつもりはないのだけれど……と不思議に思いながら、
 夏穂は魔力を上げ、さきほどよりも分厚い結界で海斗の身体を包んだ。
 しかし―
「ちょっ。待っ……。うおおおおおお!」
「…………」
 どういうことか。分厚い結界さえも、いとも容易く割られてしまう。
 夏穂の結界は、かなり精度が高い。割られるだなんて、滅多にないことだ。
 追い掛け回されながら、海斗は大声で叫んだ。
「夏穂ー! 手加減ナシでいこー!」
「……うん。了解」
 いつもと違う展開でも二人が焦ることはない。寧ろ、その逆だ。
 抑制することなく、全力で戦うことが出来る。それが嬉しくて堪らない。
 逃げ回ることを止め、急ブレーキをかけた海斗。
 ザザッと砂埃を舞い上がらせながら、海斗はニヤリと笑って振り返る。
 さきほどまでと表情が違う。気付いたスタッカートも、追い掛け回すのを止めた。
 そこらにいるスタッカートと異なり、闇雲に突っ込んでこない。頭が良い。
 それもそのはず。実は、このスタッカートはレベル【S】だ。
 上から数えて2番目に討伐難易度が高い。
 夏穂と海斗も、何となくそのあたりは把握できたようだ。
 だからこそ全力で。手加減していては勝てぬ相手だからこそ。
 ニッと笑い、魔銃の銃口に炎を灯し直した海斗。
 それまでの色と異なり、灯った炎は白く輝いている。
 闇を照らす魔力全開の炎。まるで昼間のような明るさだ。
 灯した炎を、躊躇うことなく海斗は放った。
 白い炎に包まれて炎上するスタッカート。
 ジタバタ暴れる、その暇も与えない。
 すぐさま夏穂が追攻。
 魔扇子を揺らして舞えば、燃え上がる炎ごと、スタッカートは瞬時に凍りつく。
 あっという間の出来事。静寂平和な公園に元通り。
 あまりにも早すぎて、全てが夢かと曖昧にすら思えるほど。
 だが、凍りついたスタッカートは、確かに二人の目の前に在る。
 夏穂と海斗は顔を見合わせて笑った。
「んじゃ、トドメ刺しちゃってー」
「うん」
 頷き、パチンと指を鳴らした夏穂。
 次の瞬間、凍りついたスタッカートは、ガシャンと音をたてながら粉々に砕け散った。


「…………」
 情報室にて二人を監視していた藤二は、煙草を咥えたまま苦笑。
 おいおい、監視もクソもねぇじゃねぇか。早すぎだって。
 でもまぁ、採取できたデータは十分すぎる内容だな。
 短時間だけど、ギュッと凝縮されてる感じだろ。
 しっかしまぁ、喉が焼けるくらい濃いのが出たなぁ。
 予想外っつうか何つうか……。嬉しい誤算ってのは、このことだな。
 あいや、俺の目に狂いはなかったってことで。美味しいとこは、根こそぎ俺に。
 よし……。んじゃ、データを焼いてっと……。これを校長に渡して終了だ。
 びっくりするだろうなぁ。給料アップとかイケるかも。
 ニヤニヤと嬉しそうに笑いながら、監視カメラを消して手元に戻した藤二。
 完成したデータCDRを片手に、煙草を灰皿に押しやって消す。
 煙草1本吸い終わる前に、候補人材が確定人材に昇格。
 御見事でしたよ二人共。お疲れさん。と、協力感謝。

 *

「そのガシャーンって、カッコいいよなー」
「ふふ……。ありがとう」
「うん。俺もやりたい。でもなー。氷だからカッコいいんだよな、それ」
「そうかしら?」
「絶対そーだって」
 討伐を終えた証となるスタッカートの残骸を採取しながら笑う二人。
 成した偉業。けれど、二人にその自覚はなく、ただ愉しかったという満足感が心を占める。
 出来うることならば、またこんな愉しいハントをしたい。 
 というか、常にハント活動はこうであって欲しい。
 先生に聞かれたら怒られてしまうだろうけれど、思わずにはいられない。
 言葉を交わすことなく微笑みあう二人の心には、同一の不謹慎な好奇心があった。

 ヤメラレナイ? トマラナイ? モット? モット?

「……んぁ? 今、何か言ったか?」
「え? ううん。何も」
「あれ。おっかしーな。空耳?」
「女の子の声……?」
「そう。何だ、お前も聞こえたのか」
「うん。綺麗な声だったわね」
「…………」
「…………」
「ま、いっか。よっしゃ、パフェ食いに行こーぜ!」
「あら……? 冗談じゃなかったの?」
「あっははは! 意地悪なこと言うなよー」
「ふふ。ごめんなさい」

-----------------------------------------------------------------------------------------

 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7182 / 白樺・夏穂 / 12歳 / 学生・スナイパー
 NPC / 海斗 / 19歳 / HAL:生徒
 NPC / 藤二 / 28歳 / HAL:教師

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
-----------------------------------------------------------------------------------------
 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
-----------------------------------------------------------------------------------------