■想いをカタチに -コーダ斉唱-■
藤森イズノ |
【7707】【宵待・クレタ】【無職】 |
キミも、もう知ってると思うけれど。
コーダという存在は、想いがカタチになったもの。
その時、一番強く想っていることが核になって、コーダは生成される。
本来はね、コーダ斉唱っていうのは禁忌なんだ。
要は部外者を生んでしまうわけだから。
でもね、俺達は……この世界に生きる限り、誘惑に勝てない。
俺達にしか出来ないことだから、尚更ね。
だから、黙認しているところもあるんだ。
ただし、それには条件があって。
何が起きても、生んだ本人が責任を持つこと。
その条件を飲めるのならば、斉唱は黙認される。
まぁ、だからといって、そう容易く斉唱は成功しない。
だからこそ黙認されているっていうのもあると思う。
それにね、こんな話もあるんだ。
コーダ斉唱の成功は、成長の証ってね。
深く考えなくて良いよ。チカラ試しの要領でさ。
やってみて。ここで、見ていてあげるから。
大丈夫だよ、怖くない。
深呼吸して、やってごらん。
大丈夫、キミになら出来るよ。
だからこそ、こうして提案するんだ。
|
想いをカタチに -コーダ斉唱-
-----------------------------------------------------------------------------------------
キミも、もう知ってると思うけれど。
コーダという存在は、想いがカタチになったもの。
その時、一番強く想っていることが核になって、コーダは生成される。
本来はね、コーダ斉唱っていうのは禁忌なんだ。
要は部外者を生んでしまうわけだから。
でもね、俺達は……この世界に生きる限り、誘惑に勝てない。
俺達にしか出来ないことだから、尚更ね。
だから、黙認しているところもあるんだ。
ただし、それには条件があって。
何が起きても、生んだ本人が責任を持つこと。
その条件を飲めるのならば、斉唱は黙認される。
まぁ、だからといって、そう容易く斉唱は成功しない。
だからこそ黙認されているっていうのもあると思う。
それにね、こんな話もあるんだ。
コーダ斉唱の成功は、成長の証ってね。
深く考えなくて良いよ。チカラ試しの要領でさ。
やってみて。ここで、見ていてあげるから。
大丈夫だよ、怖くない。
深呼吸して、やってごらん。
大丈夫、キミになら出来るよ。
だからこそ、こうして提案するんだ。
-----------------------------------------------------------------------------------------
正直な気持ちを、言っても良い?
あのね、僕、戸惑ってる。怖いっていう感覚とは少し違うかな……。
だってね、考えたこともなかったから。
僕がコーダを唱うだなんて、そんなこと、考えたこともなかったから。
だって、僕がね……僕自身がコーダそのものだし。
難しいことだっていうのも理解ってるから、余計に。
僕の成長を喜んでくれることは嬉しいよ。
キミになら出来るって、そう言われて嬉しくないはずがないよ。
でもね、積極的にやってみようとは……思わないんだ。思えないんだ。
だって、どうすれば良いか理解らないから。
もしも成功して、生み出せたとして。
その後は?
それから、どうすればいいの?
コーダって存在は、人間じゃないけれど、呼吸するし感情もある。
意思を持って、その上で成長もする。僕だって、そうだ。
この世界に生を受ける。確かな存在なんだよ。
軽い気持ちでは出来ないよ。凄いことだと思うんだ。
あなたに認められたいだとか、腕試しだとか。
そういう気持ちでは、やりたくないし出来ない。
存在を生むってことが、どんなに凄いことか。
僕は知ってる。あなたが生んでくれたからこそ。
とか……。そんな風に考えちゃうんだけど。
難しく考えすぎなのかな、僕……。
でも、責任っていうか……そういうのが必要になってくることだし。
あなたが見守っていてくれるなら、挑戦はしてみるけれど……。
そうだなぁ……。気持ち的に、落ち着かせる意味で……。
あなたとの間に子供が出来た。
そう考えてみるのは、どうだろう。
まったく無縁の存在を生み出すわけじゃなく。
あなたとも繋がるような。そんな存在を生み出すのは、どうだろう。
チラリとJを見やりながら言ったクレタ。
Jはクスクス笑いながら、クレタの頭を撫でた。
「欲しいの?」
「い、いや……。仮にだよ。そう想えば……良いような気がしたんだ……」
「うん。いいよ? キミが、良いと思えたなら。やってごらん」
微笑みながら頷いたJ。
何もかもを理解っているかのような、いつもの表情。
結局、これも、あなたの掌の上で転がされているようなものなのだろうか。
こんなにもあれこれ、難しく考えて……。あなたの思うがままなのだろうか。
もしも、そうなら。逆に困らせてやれやしないかと……僕は思う。
その余裕の表情を、その微笑みを、驚きに変えられやしないかと思う。
思い通りになってしまうことに不満を抱いているわけじゃない。
ただ、たまには……。あなたの、びっくりした顔が見てみたい。
スッと目を伏せ、意識を集中させるクレタ。
僕よりも……。そうだな、ちょっとだけ年下。
女の子が良いな……。小柄で、守ってあげたくなるような女の子。
そこにいるだけで光が満ちるような、太陽みたいな女の子。
闇夜の世界を、この空間を灯す……光のように。
生まれてくることの幸せを、生きることの喜びを。
こんなにも満ち足りている。今の僕の気持ちを、そのまま伝えるよ。
怖くないよ。怖くなんてないよ。
生まれるって、素敵なことなんだ。
教えてあげる。笑顔も、涙も。
聞かせてあげる。何度も何度も、きみが理解できるまで。
ずっと傍にいるよ。離れたりしない。ずっと一緒。
だって、きみは僕の幸せな気持ちから生まれる。
僕の幸せな気持ち、そのものなんだから。
暖かい光、ずっと包まれていたいと思えるくらいの。
その中に、腕を、手を伸ばすから。
掴んでくれるかな。掴んで、顔を上げて。
微笑んでくれるかな……?
耳の奥、ざわめきが消えて頭の中が真っ白になる。
クレタは、ゆっくりと目を開けた。
「…………」
目の前には、お人形さんのように可愛らしい女の子の姿。
クレタの手をキュッと握って、不安そうな面持ちで見上げている。
その表情を捉えた瞬間、クレタは女の子を抱きしめた。
いてもたってもいられなくなった、その感覚に近い。
柔らかな髪の感触、甘いお菓子のような香り。
女の子は、確かに存在している。ここにいる。
自分の腕の中、世界に不安を抱きながら。
女の子をギュッと抱きしめながら、クレタは思い出していた。
自分もこうして、抱きしめられた。
苦しいくらいに、強く強く。
何が何なのか理解らなかった。
この人は、どうして僕を抱きしめているんだろうって。
でも……。今、はっきりと理解ったよ。
Jも、こんな気持ちだったんだ。
幸せだなんて、そんな言葉じゃ足りないくらい満ち足りる気持ち。
ありがとうって言葉は、この時のために存在していたんじゃないだろうか。
生まれてくれて、ありがとう。って……。
声を震わせながら、女の子に何度も何度も告げるクレタ。
クレタにそっくりな可愛い女の子。
あどけない、その表情を目にして、Jは苦笑した。
参った。降参だ。可愛いにも程がある。
Jを驚かせ、降参までさせたわけだけれど、そんなことはどうでもいい。
微笑むクレタの胸を占めるのは、何ともいえぬ幸福感だけ。
幸せでありますように。この子も、僕と同じく幸せでありますように。
いつまでも、いつまでも笑顔でいられますように。
その為の努力は惜しまない。この手は、絶対に離さない。
教えてあげなくちゃ。幸せって、どんな気持ちなのか。
僕にしか出来ないことだから。僕の役目だから。
あぁ、そうだ。名前をつけてあげなくちゃ。
愛しいこの子に、名前をつけてあげなくちゃ。
-----------------------------------------------------------------------------------------
■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7707 / 宵待・クレタ / 16歳 / 無職
NPC / J / ??歳 / 時狩
シナリオ参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
-----------------------------------------------------------------------------------------
櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
-----------------------------------------------------------------------------------------
|
|