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■生きる意味■

藤森イズノ
【7707】【宵待・クレタ】【無職】
 訊いても良い?
 どうして、あなたは生きてるの?
 どうして、あなたは生きたいと思えるの?
 何が楽しいの? 何がそう思わせるの?
 教えてよ。説明できるのなら、教えてよ。
 納得させることが出来たなら、考え直してあげても良いよ。
 出来ないっていうのなら、止めないから。
 このまま、時の彼方へ。僕は消える。
 どうする? ねぇ、どうするの?
 説明してくれる? 納得させてくれる?
 出来るの? そんな大層なこと。
 あなたに、出来るの?
生きる意味

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 訊いても良い?
 どうして、あなたは生きてるの?
 どうして、あなたは生きたいと思えるの?
 何が楽しいの? 何がそう思わせるの?
 教えてよ。説明できるのなら、教えてよ。
 納得させることが出来たなら、考え直してあげても良いよ。
 出来ないっていうのなら、止めないから。
 このまま、時の彼方へ。僕は消える。
 どうする? ねぇ、どうするの?
 説明してくれる? 納得させてくれる?
 出来るの? そんな大層なこと。
 あなたに、出来るの?

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「…………」
 少年の問い掛けに、クレタは沈黙した。
 けれど、我慢できなくなって、弾けてしまう。
「……あはっ、あはははははははっ!」
 お腹を抱えて笑い、その場に蹲ってしまうクレタ。
 その姿を目の当たりにして、少年は眉を顰めた。
 面白いことなんて言ってない。どうして笑われる?
 理解に苦しむ少年は、見るからに不機嫌そうな顔だ。
 呼吸を整えながらクレタは立ち上がり、少年の目を見た。
 笑うななんて無理な話。だって、可笑しいじゃないか。
 可笑しいったらありゃしないよ。どうしてって?
 人の生きる意味を聞いてどうするの、って話だよ。
 そんなの、人それぞれなんだし、何の参考にもならないよ。
 きみは、納得させてくれるのかって言ったけどね。
 僕は、きみを納得させようだなんて、これっぽっちも思ってない。
 死ぬなんて駄目だよ、そんなの駄目だよ、なんて。そんなことも言わない。
 だって、言ったところで意味がないから。
 きみが、この世を去りたいと思っている以上、何を言っても無意味だから。
 だからといって、このまま何もせずに、きみが消え行く様を見ているわけにもいかない。
 その辺りはね、割り切って考えるんだ。そう、お仕事だから。
 消えたところで、きみは満たされない。満足なんてするもんか。
 でもねぇ、僕には、きみを感動させるような話は出来ないんだよ。
 生きることの素晴らしさだとか、そんなイイ話、僕には出来ないからね。
 ねぇ、きみは……自分の発言に気付かされたことってないのかな。
 きみは、納得させてくれる? って言った。覚えてるよね?
 それが、どういう意味か。きみ、理解ってる?
 納得したいんだ。きみはね。納得したいんだよ。
 でも、ひとりじゃ納得できないから、誰かに縋る。
 他人に説いてもらうようなものじゃないのに。
 大丈夫。きみは、弱い子だから。
 そのまま、時の彼方へ消えるなんてこと出来ないよ。
 ほら、手。震えてるじゃないか。小刻みに。
 臆病者には、死ぬことなんて出来ないんだよ。
 一緒。僕も一緒だよ。怖がりだし、臆病だし。
 だから、お話しよう。似た者同士。
 そんな嫌そうな顔しないで。
 確かに、笑ったのは失礼だったと思う。
 でも、可笑しくてね。我慢できなくなったんだ。
 ちょっと前の自分を見ているようで。可笑しくて。
 笑われたままなんて嫌でしょう? 悔しいでしょう?
 じゃあ、ほら。手を取って。
 笑ったことを謝らせてやる、って。そんな気持ちで手を取ってごらんよ。
 淡く微笑んで手を差し伸べたクレタ。
 少年は不愉快そうにしながらも、そっとクレタの手を取った。

 少年の名はリック。
 外界から、自ら望んで、この空間に迷い込んできた。
 目的は死す為。生きる意味を見出せず、生きることに疲れたがゆえ。
 自分よりも幼い、本当に子供。そんなリックを、ここまで追い詰めた理由。
 何の理由もなしに死にたいだなんて、まず思わない。
 特に意味もなく、つまらないからってイノチを絶つ人はいるけれど。
 それは嘘。意味はある。理由もある。絶対にあるんだ。
 例えば……何か、心に深い傷を負っただとか。
 環境の変化についていけなくなって、心が悲鳴をあげたとか。
 弱く脆い生き物だ。人間なんて。感情があるからこそ、脆くなる。
 消えてしまおう、死んでしまおうと思う、その気持ちも感情そのもの。
 時の回廊にて、膝を抱えて座るクレタとリック。
 クレタは執拗に嫌味を吐いた。
 意地悪しているわけじゃない。
 リックの神経を逆撫でして、ムキにさせるのが目的。
 何だかんだで子供だ。ちょっとカラかうだけで、やたらと食いつく。
 元々、負けず嫌いな性格なのだろうか。何となく、そんな気もする。
 クレタの作戦は成功した。
 消えたいと思う、その理由を直接リックに聞くことはせずに、
 クレタが勝手に想像して、それを一方的に告げていった。
 誰かにお菓子や玩具を横取りされてムカついたから? とか、
 オネショして、お母さんに叱られたから? とか。
 その度にリックはムキになって違うと言った。
 要するに誘導尋問だ。
 じゃあ、何? そう問い返せば、核心が見えてくる。
 何のことはない。身分が成す贅沢な悩みだった。
 リックは、とある世界にあるお城で暮らしている。
 王族である彼の生活には、何かと規制がかかる。
 あれは駄目、これも駄目。何をするにも規制がかかる。
 そんな生活に、リックは疲れた。子供ながらに心労を重ねていた。
 いや、逆か。子供だからこそストレスが溜まっていったのか。
 10歳ならば、遊びたいさかりだ。
 色んな物事がキラキラと輝いていて魅力的に映る。
 好奇心の塊のような年齢。そこで規制がかかれば、そりゃあイライラもする。
 不満を打ち明けた後、リックは、すぐにハッとした。
 何で喋ってしまったんだろう。ペラペラと……愚痴るかのように。
 目を逸らして、面白くなさそうな顔をしているリック。
 そんなリックの頭を撫でて、クレタは言った。
「リック。鬼ごっこしようか」
「……何それ」
「あれ。知らない?」
「知らないよ。そんなの……」
「教えてあげる。簡単だよ。はい、立って」
 ニコリと微笑んで手を差し伸べたクレタ。
 聞かせてくれて有難う、だなんて言わない。
 そんなこと言ったら、きみはまた拗ねてしまうだろうから。
 誘導尋問なんて卑怯だって、ふてくされてしまうだろうから。
 きみを救う方法ね、すごく簡単なんだ。
 一緒に遊ぼう。せっかく来たんだし。
 おもいっきり楽しんでいってよ。
 鬼ごっこに飽きたら、僕の部屋に招待するから。
 一緒に本を読んだり、絵を描いたりして遊ぼう。
 ここには誰もいないよ。怒られることも急かされることもない。
 気兼ねなく、自分のしたいことを好きなだけやっていいんだ。
 きみの願いは、死ぬことなんかじゃないでしょ?
 束縛されることなく、おもいっきり遊びたかっただけでしょ?
 きみは、死にたいだなんて思ってない。
 あのまま、僕が何も言わずにいたとしても、きみは扉を開けなかったよ。
 ううん、開けられなかったはずだよ。だって、怖いと思ってるから。
 怖いと思ってるから、あそこで待ってたんでしょう。
 引き止めてもらうために。誰か、早く来てよって。
 そんな気がしたんだ。似ている気がしたからかな。
 きみの声が、聞こえたような気がしたんだよ。
「待って……。ちょ、速いよ!」
「ほらほら、捕まえないと。ずっと、リックが鬼だよ〜?」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7707 / 宵待・クレタ / 16歳 / 無職
 NPC / リック / 10歳 / 時の迷い子

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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