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■ラクリマテリアル -RED-■

藤森イズノ
【7888】【桂・千早】【何でも屋】
 // ラクリマテリアル -RED-
 // 製作難易度:A(難 S・A・B・C・D 易)
 // 作り方と概要:
 // 配布された透明の魔石を握って目を伏せる。
 // 脳内で指示されたイメージを描く。
 // 赤:憤怒・キレる。その条件、或いは過去。

 念の為、もう一回だけ言っておくけどな。
 イメージは絶対に脳内で行うこと。
 間違っても、外には出さないように。
 成功して、赤のラクリマテリアルが完成した生徒は、
 そのまま自分の席で待機。全員が終わるまで動かないこと。
 当然、私語は厳禁だぞ。 ……んじゃ、始め。
ラクリマテリアル -RED-

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 // ラクリマテリアル -RED-
 // 製作難易度:A(難 S・A・B・C・D 易)
 // 作り方と概要:
 // 配布された透明の魔石を握って目を伏せる。
 // 脳内で指示されたイメージを描く。
 // 赤:憤怒・キレる。その条件、或いは過去。

 念の為、もう一回だけ言っておくけどな。
 イメージは絶対に脳内で行うこと。
 間違っても、外には出さないように。
 成功して、赤のラクリマテリアルが完成した生徒は、
 そのまま自分の席で待機。全員が終わるまで動かないこと。
 当然、私語は厳禁だぞ。 ……んじゃ、始め。

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 配られた無色透明の魔石。
 これを真っ赤に染めねばならない。
 ラクリマテリアルの生成。魔道具学、藤二の授業。
 赤く染めるために必要になるのは、怒りの感情或いは記憶。
 ちょっと腹が立った程度では染まらない。
 震えてしまうくらいの憤怒が必要になる。
 既に何度か、この授業を受けている生徒はコツを心得ている為、
 難なく魔石を真っ赤に染め上げることができる。
 重要なのは、どれだけ怒ったか。
 他人への怒りでも自分への怒りでも構わない。
 目を閉じて集中し、怒りのイメージを思い描く。
 傍から見ると、この授業は滑稽だ。
 ガァー! だとか、キィー! だとか。
 あれこれ思い返しイメージして、生徒達は奇声を発する。
 まぁ、そうして我を忘れた生徒が成功しているのだけれど。
 しばらく観察し、やり方の参考にした千早。
 上手くできるかどうかわからないけど、やってみよう。
 千早は目を閉じ、魔石をギュッと握った。

 千早が思い描いた怒りのイメージは、ひとつだけ。
 彼が怒る、その条件はひとつだけ。
 片割れの存在に危害を加える者への怒り。
 最も理解りやすい説明となるのが、過去だ。
 過去、大切な人の命が狙われた。
 それは一方的で、理不尽極まりないものだった。
 けれど、その時、千早が実際に何か行動を起こしたのかというと、それはない。
 気持ち的には、すぐにでも駆け寄って助けたかったけれど。
 大切な人の目が、それを望んでいなかったのだ。
 命を狙われてもなお、褪せなかった感謝の気持ち。
 千早から見れば、血も涙もない加害者だったのだけれど。
 望んでいなかった。平伏す大切な人の目は、望んでいなかった。
 その目を見た瞬間、千早は納得する。いや、納得しようと必死に堪えた。
 すぐにでも駆け出し、加害者を消し去ってしまいたかったけれど。
 大切な人が、被害者である彼が、それを望まないのであれば。
 出来るはずがない。抑えるほか、なかった。
 辛かった。ただ、黙ってみていることしか出来ない自分が憎かった。
 何度殴られようと蹴られようと、大切な人は笑っていた。
 その痛みを受け入れていた。抵抗なんて一切せずに。
(僕は……どうして、こんなにも)
 見ていることしか許されぬ中、千早は震えた。
 自分に対する怒りだった。無力な自分への怒り。
 その日を境に、千早は変わる。
 何事にも興味を示さずにいた性格から、貪欲な性格へと変わる。
 何に対しても貪欲になったわけじゃない。
 千早が飢えたのは、強さ。
 大切な人を護ることのできる強さを求めた。
 強くなれだなんて、大切な人は一言も言っていないけれど。
 どんなに強くなったところで、彼が求めぬのであれば無意味だけれど。
 でも、もしも。彼が、いつか、助けを乞うときがきたら。
 その時は、迷うことなく彼の前に立ち、彼の盾にならねば。
 ああいう性格だから、助けてくれなんて言わないかもしれない。
 本当に辛くても、窮地に追い込まれたとしても、意地を張るかもしれない。
 そうなったときは、自分から前に出よう。
 呼んでない、助けてくれなんて言ってないと文句を言われても、
 僕はお節介なんだと笑って、彼の前に立ち、勝手に盾になろう。
 無力な自分に対する怒り。
 嫉妬以外の何物でもない理不尽な暴力への怒り。
 思い出したくない過去だけれど、その過去は成長に繋がる必要な経験だった。

 *

 ふっと目を開けば、魔石は赤く発光していた。
 じんわりと熱い。完成したラクリマクロスは、熱をも放っていた。
 そのまま掌の上に置いておけば、火傷を負ってしまう。
 事前の説明で、それは聞いていたけれど。
 千早は、そのまま動かなかった。
 掌から全身を巡る熱の痛みが、妙に心地良かったのだ。
 戒められるかのような、思い出させてくれるような。
 ジッとラクリマクロスを見つめる千早の瞳を確認して、藤二は笑う。
 強い意志が宿った瞳に映る、赤いラクリマクロス。
 それは、まるで炎のように。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7888 / 桂・千早 / 11歳 / 何でも屋
 NPC / 藤二 / 28歳 / HAL:教師

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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