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■ラクリマテリアル -RED-■

藤森イズノ
【6408】【月代・慎】【退魔師・タレント】
 // ラクリマテリアル -RED-
 // 製作難易度:A(難 S・A・B・C・D 易)
 // 作り方と概要:
 // 配布された透明の魔石を握って目を伏せる。
 // 脳内で指示されたイメージを描く。
 // 赤:憤怒・キレる。その条件、或いは過去。

 念の為、もう一回だけ言っておくけどな。
 イメージは絶対に脳内で行うこと。
 間違っても、外には出さないように。
 成功して、赤のラクリマテリアルが完成した生徒は、
 そのまま自分の席で待機。全員が終わるまで動かないこと。
 当然、私語は厳禁だぞ。 ……んじゃ、始め。
ラクリマテリアル -RED-

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 // ラクリマテリアル -RED-
 // 製作難易度:A(難 S・A・B・C・D 易)
 // 作り方と概要:
 // 配布された透明の魔石を握って目を伏せる。
 // 脳内で指示されたイメージを描く。
 // 赤:憤怒・キレる。その条件、或いは過去。

 念の為、もう一回だけ言っておくけどな。
 イメージは絶対に脳内で行うこと。
 間違っても、外には出さないように。
 成功して、赤のラクリマテリアルが完成した生徒は、
 そのまま自分の席で待機。全員が終わるまで動かないこと。
 当然、私語は厳禁だぞ。 ……んじゃ、始め。

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 配られた無色透明の魔石。
 これを真っ赤に染めねばならない。
 ラクリマテリアルの生成。魔道具学、藤二の授業。
 赤く染めるために必要になるのは、怒りの感情或いは記憶。
 ちょっと腹が立った程度では染まらない。
 震えてしまうくらいの憤怒が必要になる。
 既に何度か、この授業を受けている生徒はコツを心得ている為、
 難なく魔石を真っ赤に染め上げることができる。
 重要なのは、どれだけ怒ったか。
 他人への怒りでも自分への怒りでも構わない。
 目を閉じて集中し、怒りのイメージを思い描く。
 傍から見ると、この授業は滑稽だ。
 ガァー! だとか、キィー! だとか。
 あれこれ思い返しイメージして、生徒達は奇声を発する。
 まぁ、そうして我を忘れた生徒が成功しているのだけれど。
 しばらく観察し、やり方の参考にした慎。
 上手くできるかどうかわからないけど、やってみよう。
 慎は目を閉じ、魔石をギュッと握った。

 慎は、怒りという感情に疎い。
 今までに何度か、デートの邪魔をされてムッとし、
 邪魔するなら殺すよと言ったことはあるけれど、本気ではなかった。
 笑顔も浮かべていたし、ムッとするのもほんの一瞬だけ。
 大らかだというよりは、怒るまでもないことばかりなのだ。
 それだけ落ち着いていて、何事にも冷静に対処できるということなのだけれど。
 怒り、怒り……。強いてイメージするならば、やはり大切な人が関与するだろうか。
 例えば、時期当主に何かあった時。何か、被害を被った時。
 自分は、家を飛び出した分際だし、公になることもない存在だけれど。
 不満に思ったりしたことはない。一度もない。
 今の生活に満足していて楽しいと思えているからこそ言えることなのかもしれないけれど。
 何事もないように、宗家がいつまでも安泰であるようにと心から願っている。
 だからこそ、時期当主には頑張ってもらいたいし、応援もしている。
 それを邪魔したり阻むような輩がいるならば容赦しない。
 公にならぬ立場であることを利点として、悪根を絶やしてくれよう。
 同様の思いは、片割れなる存在にもある。
 意思を持ち、姿形も違えど、彼もまた大切な人。
 どこか似ているようなところがあるような気がして放っておけない。
 しっかりしているように見えて、抜けているところもあるから放っておけない。
 偉そうなことは言えないけれど、何となく責任のようなものを感じている。
 彼を護り、傍にいることは、自分の使命なのではないかと。
 そんなに大層なものではないのかもしれないけれど。
 証拠も何もなく、ただ漠然とそう思うだけなんだけれど。
 でも、根拠がないからこそ夢中になれるのではないか。
 いや、もしかすると、欲しかったのかもしれない。
 生きる意味というか、生き甲斐というか……そういうものが。
 楽しい生活のほかに、もうひとつ。
 そういう使命のようなものを求めているのかもしれない。
 失ったものだからこそなのか。そこまでは理解らないけれど。

 *

「ふむ。なるほど。こういう染め方もアリだな」
「成功?」
「うん。問題なし」
「わーい。良かった!」
 嬉しそうに飛び跳ねながら自分の席へと戻っていく慎。
 慎が生成したラクリマクロスを手に、藤二は苦笑を浮かべた。
 初めてみる現象だった。赤というよりは桃色だったのに。
 時間が経過する度に、みるみる赤くなっていく。
 赤ではなく桃色に染めてしまった時点で、
 本来ならば失敗となり、もう一度やり直しを言い渡すところなのだけれど。
 じわりじわりと赤くなっていくラクリマテリアルは、生き物のようだった。
 正直なところ、気味が悪いとも思ってしまった。
 その変化過程が、あまりにも美しかったから。
 席に戻り、楽しそうにクラスメートと談笑する慎。
 そんな慎とラクリマクロスを、藤二は交互に見やる。
 護りたい、護らねば、そう思わせる理由までも納得できるようになったら、
 彼は、どうなってしまうのだろう。その小さな身体で、どんな悪足掻きを試みるのだろう。
 期待よりも不安が、苦笑を浮かべる藤二の心を占めていた。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 6408 / 月代・慎 / 11歳 / 退魔師・タレント
 NPC / 藤二 / 28歳 / HAL:教師

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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