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■ラクリマテリアル -RED-■

藤森イズノ
【7348】【石神・アリス】【学生(裏社会の商人)】
 // ラクリマテリアル -RED-
 // 製作難易度:A(難 S・A・B・C・D 易)
 // 作り方と概要:
 // 配布された透明の魔石を握って目を伏せる。
 // 脳内で指示されたイメージを描く。
 // 赤:憤怒・キレる。その条件、或いは過去。

 念の為、もう一回だけ言っておくけどな。
 イメージは絶対に脳内で行うこと。
 間違っても、外には出さないように。
 成功して、赤のラクリマテリアルが完成した生徒は、
 そのまま自分の席で待機。全員が終わるまで動かないこと。
 当然、私語は厳禁だぞ。 ……んじゃ、始め。
ラクリマテリアル -RED-

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 // ラクリマテリアル -RED-
 // 製作難易度:A(難 S・A・B・C・D 易)
 // 作り方と概要:
 // 配布された透明の魔石を握って目を伏せる。
 // 脳内で指示されたイメージを描く。
 // 赤:憤怒・キレる。その条件、或いは過去。

 念の為、もう一回だけ言っておくけどな。
 イメージは絶対に脳内で行うこと。
 間違っても、外には出さないように。
 成功して、赤のラクリマテリアルが完成した生徒は、
 そのまま自分の席で待機。全員が終わるまで動かないこと。
 当然、私語は厳禁だぞ。 ……んじゃ、始め。

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 配られた無色透明の魔石。
 これを真っ赤に染めねばならない。
 ラクリマテリアルの生成。魔道具学、藤二の授業。
 赤く染めるために必要になるのは、怒りの感情或いは記憶。
 ちょっと腹が立った程度では染まらない。
 震えてしまうくらいの憤怒が必要になる。
 既に何度か、この授業を受けている生徒はコツを心得ている為、
 難なく魔石を真っ赤に染め上げることができる。
 重要なのは、どれだけ怒ったか。
 他人への怒りでも自分への怒りでも構わない。
 目を閉じて集中し、怒りのイメージを思い描く。
 傍から見ると、この授業は滑稽だ。
 ガァー! だとか、キィー! だとか。
 あれこれ思い返しイメージして、生徒達は奇声を発する。
 まぁ、そうして我を忘れた生徒が成功しているのだけれど。
 しばらく観察し、やり方の参考にしたアリス。
 上手くできるかどうかわからないけど、やってみよう。
 アリスは目を閉じ、魔石をギュッと握った。

 アリスが思い描いた怒りのイメージは、ふたつ。
 ひとつは、芸術への憤怒。美術家、美術商としての憤怒。
 それは、1年前の出来事。アリスは、とある作品を見に外国へと赴いた。
 あちこちで噂を耳にする、パータ・ハリの自画像。
 その美しさ、完成度、どこをとっても最高ランク。
 それゆえに欲しがる者も多く、入手は困難を極める。
 当時、その作品を所有していたのは、とある貴婦人だった。
 アリスは、この貴婦人ごと入手してしまおうと目論む。
 飛行機の中、ワクワクしてどうしようもなかった。
 出発前夜、一睡もしていないというのに。
 それだけ期待していたということなのだが、
 現地に到着し、作品を目にしたアリスは愕然とした。
 美しさのカケラもなかったのだ。
 確かに、一般の人から見れば美しい作品ではある。
 けれど、目の肥えたアリスからしてみれば、ただのラクガキ。
 こんなものの為に、私は、わざわざ赴いてしまったのか。
 更に、所有者である貴婦人の姿もアリスを愕然とさせた。
 これまた、美しさのカケラもなかったのだ。
 確かに、一般の人から見れば美しくはあるだろう。
 けれど、目の肥えたアリスからしてみれば、ただの老婆。
 気品もクソもない。ただの、ちょっとした金持ちでしかなかった。
 愕然としたアリスは、そのまま帰国した。
 貴婦人が用意した紅茶も菓子も無視して帰国した。
 この時の怒りは、自分に対する怒り。
 知らずに興奮してしまった愚かな自分への怒り。
 この時の怒りは、後の仕事っぷりに大きく関与したのだが。
 今でも、思い出すと、いてもたってもいられなくなる。
 後に控える成長の為の経験であり、怒りだったのは確かだけれど。
 もうひとつは、人物への苛立ち。その人物は、ヒヨリだ。
 憤怒とまではいかないけれど、沸々と怒りは込み上げる。
 結局、どうにもこうにも適当にあしらわれてばかり。
 誘惑してみせても笑って避わされるばかり。
 無反応ではないけれど、手ごたえはない。
 だからこそ、よけいにムッとする。
 要するに、子供扱いなのだ。
 女としてではなく、女の子としてしか見てもらえない。
 自分でイメージしておいて何だけど、不思議にも思う。
 どうして、こんなにもムキになっているのか。
 当初の余裕や自信は、どこへいってしまったのか。
 気がつけば、目で追ってしまっている。
 まるで、想いを伝えることが出来ずにいる乙女のように。
 バカバカしい。映画や漫画じゃあるまいし。
 そうは思うけれど、追ってしまうことを止められずにいるのも事実。
 自分らしくないと焦ってしまうからこそ、余計に戸惑う。
 授業中でも、家に一人でいる時にも、あれこれ考えてしまう。
 どうすれば、振り向かせることが出来るのだろうかと。
 つまるところ、この怒りも自分に対する怒り。
 らしくない言動が目に余る、滑稽な自分への怒り。
 あぁ、イライラする……。

 *

「罪な男だねぇ、お前も」
 クックッと笑いながら真っ赤な魔石をヒヨリに渡した藤二。
 ヒヨリは、魔石を受け取って光に宛がって微笑む。
「綺麗に染まってるね」
 ヒヨリが手にしている魔石は、アリスが作ったもの。
 どの生徒よりも真っ赤に美しく染まっていた。
 あまりの美しさに鳥肌が立ってしまうくらい。
 アリスが生成したラクリマテリアル。
 その半分は、美術商としてのプライド。
 もう半分は、女としてのプライド。
 誇示するかのようにキラキラと輝くラクリマテリアルを指先で弄びながら、
 ヒヨリは机に頬杖をついてクスクス笑った。
 どんな手段であれ、赤く染め上げれば成功。
 アリスが生成したラクリマクロスは、実に美しい。
 その美しさの半分に、自分も関与しているかと思うと何だか嬉しい。
 満足そうに笑うヒヨリの横顔に藤二は肩を竦めた。
 また、同じ過ちだけは犯してくれるなよと願いながら。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7348 / 石神・アリス / 15歳 / 学生(裏社会の商人)
 NPC / 藤二 / 28歳 / HAL:教師
 NPC / ヒヨリ / 26歳 / HAL:教師

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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