■生きる意味■
藤森イズノ |
【7849】【エリー・ナイトメア】【何でも屋、情報屋「幻龍」】 |
訊いても良い?
どうして、あなたは生きてるの?
どうして、あなたは生きたいと思えるの?
何が楽しいの? 何がそう思わせるの?
教えてよ。説明できるのなら、教えてよ。
納得させることが出来たなら、考え直してあげても良いよ。
出来ないっていうのなら、止めないから。
このまま、時の彼方へ。僕は消える。
どうする? ねぇ、どうするの?
説明してくれる? 納得させてくれる?
出来るの? そんな大層なこと。
あなたに、出来るの?
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生きる意味
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訊いても良い?
どうして、あなたは生きてるの?
どうして、あなたは生きたいと思えるの?
何が楽しいの? 何がそう思わせるの?
教えてよ。説明できるのなら、教えてよ。
納得させることが出来たなら、考え直してあげても良いよ。
出来ないっていうのなら、止めないから。
このまま、時の彼方へ。僕は消える。
どうする? ねぇ、どうするの?
説明してくれる? 納得させてくれる?
出来るの? そんな大層なこと。
あなたに、出来るの?
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「…………」
少年の問い掛けに、エリーは彷彿しかけた。
過去、自分も少年と同じように死を望んだことがある。
その頃の記憶は、いつしか奥底に。思い出さぬように閉じ込めた。
思い出したくないと思うのは、辛かったから。
出来うることならば、なかったことに。忘れてしまいたい。
エリーは溜息を落としながら、少年との距離はそのままに声をかける。
「何故、死にたいのです? 僕に理解るように説明して下さい」
エリーの言葉に、少年は眉を顰めた。
「俺の質問には答えないのかよ」
不愉快そうに言った少年。
エリーは目を伏せ、肩を竦めて小さな声で返す。
「えぇ。答えられませんから。僕には、そんな大層なこと出来ませんから」
挑発にも乗らず、飄々とした態度で接するエリー。
腕を掴んで、やめなさいだなんて止めることはしない。
心のどこかで、死にたいのならどうぞ勝手に。
止めも怒りもしませんから、勝手に死んで下さい。とも思っている。
残酷なわけじゃない。本気でそう思っているわけじゃない。
ただ、理解っているだけ。少年には、扉を開けることなんて出来やしない。
手が震えているのが何よりの証拠。
生きる意味を問うのも、証拠のひとつ。
納得したいと思うのは、生きたいと思っている証。
その意味を見出せずに迷っているから、人に助けを乞うだけ。
要するに、少年は「助けて」と言っているようなもの。
でも、優しい言葉をかけることはしない。
淡々と、飄々と声を掛けるだけ。
微笑んではいるものの、目の奥は笑っていない。
少年の名はリック。
外界から、自ら望んで、この空間に迷い込んできた。
目的は死す為。生きる意味を見出せず、生きることに疲れたがゆえ。
自分よりも幼い、本当に子供。そんなリックを、ここまで追い詰めた理由。
何の理由もなしに死にたいだなんて、まず思わない。
特に意味もなく、つまらないからってイノチを絶つ人はいるけれど。
それは嘘。意味はある。理由もある。絶対にある。
例えば……何か、心に深い傷を負っただとか。
環境の変化についていけなくなって、心が悲鳴をあげたとか。
弱く脆い生き物だ。人間なんて。感情があるからこそ、脆くなる。
消えてしまおう、死んでしまおうと思う、その気持ちも感情そのもの。
時の回廊にて、膝を抱えて並んで座るエリーとリック。
何のことはない。身分が成す贅沢な悩みなのだ。
リックは、とある世界にあるお城で暮らしている。
王族である彼の生活には、何かと規制がかかる。
あれは駄目、これも駄目。何をするにも規制がかかる。
そんな生活に、リックは疲れた。子供ながらに心労を重ねていた。
いや、逆か。子供だからこそストレスが溜まっていったのか。
10歳ならば、遊びたいさかりだ。
色んな物事がキラキラと輝いていて魅力的に映る。
好奇心の塊のような年齢。そこで規制がかかれば、そりゃあイライラもする。
不満を打ち明けた後、リックは、すぐにハッとした。
何で喋ってしまったんだろう。ペラペラと……愚痴るかのように。
目を逸らして、面白くなさそうな顔をしているリック。
そんなリックに苦笑し、エリーは説く。
生きる意味なんて、誰も理解りませんよ。
自らの意思で生まれてくるわけでもないですしね。
でも、それでも。生まれてきたら、そこに責任が生じるのです。
意味、生きがい。そういうものを自分で見つけていかねばならないのです。
そうやってあちこち歩き回っているうち、人は出会います。
他人という存在に。嫌でも関わってくるものです。
黙っていても、向こうから寄ってきます。
どうして近付いてくるんだって思うことだってあります。
でも、それはお互い様。向こうだって同じことを思ってる。
面倒だなとかうっとおしいなと思うことだってあります。
でも、いつかは頼ってしまうのです。出会った他人に。
あなたにもいるはずですよ。出会った人。
考えてみたことはありませんか?
自分が死んだら、悲しむ人がいるのではないかと。
確かに、あなたが死んでも何も変わりません。
世界は、何事もなかったかのように廻り続けます。
ただ、あなたがいなくなることで悲しむ人もいるんです。
多かれ少なかれ、誰にもいるのです。家族だったり恋人だったり友人だったり。
彼等からすれば、大事件ですよ。
あなたが消えてしまうんですから。
もう二度と話すことも触れることも出来なくなってしまうんですから。
エリーの言葉に、俯きながら聞き入るリック。
何だかんだで子供だ。諭されれば、寂しくなる。
何て馬鹿な真似をしたんだろう。
取り返しのつかないことをするところだった。
なんて、そこまで悔やむことはないけれど。
それでも、自分がどんなに浅はかだったかくらいは納得できる。
それまでとは違うリックの目つきに安心したエリー。
エリーはクスクス笑いながら、炎の竜『朱炎』を出現させてリックをからかう。
「まだ死にたいと言うのなら、協力しますよ」
冗談なのだが、冗談に聞こえない。
リックは、ちょっとビクつきながらお断りした。
そんなリックの頭を撫でながら、エリーは目を伏せる。
素敵なことじゃないですか。
死して悲しむ人がいるだなんて。
これ以上に幸せなことなんてありませんよ。
素敵なことじゃないですか。
少し、羨ましく思いますよ。
そういう人がいる、あなたを。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7849 / エリー・ナイトメア / 15歳 / 何でも屋、情報屋「幻龍」
NPC / リック / 10歳 / 時の迷い子
シナリオ参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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