■100人に1人の逸材■
藤森イズノ |
【7182】【白樺・夏穂】【学生・スナイパー】 |
しつこい。いい加減にして、と張っ倒したくなる位、しつこい。
今日が初めてというわけでもないから、余計にイライラ。
登校して早々に、今日もまた、金魚のフンの如く付きまとって来る人物。
その人物は、執拗に繰り返す。
「キミこそまさに、100人に1人の逸材!」
胡散臭い口説き文句。嬉しくないといえば嘘になるけれど。
でも、どうも気乗りしないのだ。有難いとは思うけれど。
他の、例えば趣味とか、そっちに時間を投じたいと思っているから。
何度言われても、応じる気はない。応じる気は……ないんだけれど。
一度だけ。そう言われると、仕方ないなぁと思ってしまうではないか。
あぁ、ハメられた。見事にハメられたね。
すぐに気付いた。気付いたからこそ、悔しいです。
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100人に1人の逸材
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その人物は、執拗に繰り返す。
「キミこそまさに、100人に1人の逸材!」
胡散臭い口説き文句。嬉しくないといえば嘘になるけれど。
でも、どうも気乗りしないのだ。有難いとは思うけれど。
他の、例えば趣味とか、そっちに時間を投じたいと思っているから。
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中庭でのんびりと、動物に囲まれ幸せそうに昼寝していた夏穂。
どんな夢を見ているのだろう。嬉しそうに微笑んでいる。
いつ見ても可愛い寝顔だなぁ……と微笑みながら見やるのは、梨乃。
手に書類を抱えたまま、梨乃はしゃがんで夏穂の寝顔を見つめていた。
その視線に気付き、ふっと目を覚ます夏穂。
ぼんやりと、次第にはっきりと見えてくる梨乃の姿。
「えっと……。何か、ご用?」
ポヤンとした柔らかな笑みを浮かべて首を傾げた夏穂。
梨乃は少し申し訳なさそうに苦笑しながら言った。
起こしちゃって、ごめんね。
ちょっと御願いがあって。
っていうか、夏穂ちゃんを連れてきてって頼まれてるの。
遠回しに説明したところで何にもならないから、単刀直入に言うね。
あなたを連れてきてって言ったのは、尚くん。Cクラスの生徒ね。
彼は私と同じ、生徒会執行部に所属してるの。担当は書記。
あまりお話したことなかったと思うけど、私はね、生徒会長を務めているの。
それでね……。ついこの間、書記がひとり辞めちゃって。
新しく書記に就いてくれる子を探しているの。
でもね、生徒会って何だか堅苦しいイメージがあるみたいで。
そんなことないんだけどね、誘ってもみんな嫌そうな顔するのよ。
で、どうしようかなぁって思ってたときにね。
尚くんが言ったの。夏穂ちゃんを誘ってみたら? って。
同じクラスなんだし、適任かどうかは理解ってるだろ? って。
確かにって思ったわ。でもね……夏穂ちゃんって、こういうのどうかなって思って。
自分の時間っていうのを大切にしてる子だし、嫌かなぁって。
でも、とりあえず……ちょっとだけ、どういうことしてるのか見てみてくれないかな。
それで、嫌だったら断ってくれて構わないから。ね?
梨乃の説明に、夏穂はキョトンとしていた。
生徒会。梨乃が、そこで会長を務めていることは知っている。
けれど、どんなことをしているのかは知らない。
そもそも、学校というものに縁がなかった彼女にとっては、
生徒会と言われても何のことやらサッパリだ。
必要とされているらしきことは理解るけれど、役に立てるだろうか。
不安に思うところはあるものの、頼まれては断れない。
何だかんだで、梨乃も策士である。
夏穂の性格を把握した上で、上手く言葉を並べた。
結局、夏穂は梨乃に手を引かれて、生徒会室へ向かうことになる。
近々、入学試験がまた実施されるとのことで。
生徒会執行部は、その準備に追われていた。
試験問題(筆記用)や解答用紙の準備から、
各地に設置する案内ボード、校内マップの作成などなど……。
バタバタと走り回る生徒を目にして、夏穂はちょっと驚いた。
こんなに大変なのか。というか、入学試験の準備は生徒会が担当していたのか。
自分も体験しただけに、舞台裏が見えたようで不思議な気持ちになる。
ビックリしている様子の夏穂に笑いながら、
梨乃は書類を机の上にバサリと置いて言った。
「いつもこんなにバタバタしてるわけではないのよ」
今は特別忙しい感じなだけなの。普段は、もうちょっとマッタリしてるわ。
お話しながら紅茶飲んだりするの。お茶会のようなものね。
「そうなの……」
キョロキョロと辺りを見回しながら返した夏穂。
慌しい雰囲気の中、何やらソワソワと落ち着かない夏穂。
世話焼きな彼女には、どうにも落ち着かない状況だ。
結局、夏穂は手を差し伸べてしまう。
物凄い勢いで電卓を叩き、何かを計算している斉賀へ一言。
「あの……。何か、手伝いましょうか?」
その言葉に顔を上げた斉賀。
双子の片割れと勘違いしてしまいそうになったが、すぐに気付く。
口調や雰囲気で、すぐに夏穂であることに気付く。
斉賀は眼鏡をクィッと上げ、淡々と言った。
「じゃあ、その書類を纏めてくれるか」
「はい、わかりました」
「ちょっと、尚くん……」
ぶしつけに手伝わせるなんて酷いじゃないかと苦笑する梨乃。
けれど、斉賀は肩を竦めて苦笑しながら夏穂を示した。
慣れない手つきではあるものの、一生懸命に手伝う夏穂。
既に雰囲気に馴染んでおり、何の違和感もない。
表情も表情で真剣そのものだ。
基本的に頼られるのが好きな夏穂。苦痛でも何でもない。
お手伝いして役に立てるのであれば、進んで手伝う。
性格的にも合っているのだ。まさに適任なのだ。
「梨乃さん。これは……どうすれば良いですか?」
「あっ、えっと。それはね、こっちの棚に……」
結局、梨乃も夏穂に頼って、あれこれと御願いするようになる。
すっかり馴染んでしまった夏穂。もはや、生徒会メンバーの一員だ。
キビキビ動く夏穂。いてくれるだけで雰囲気が和むのも利点のひとつ。
バタバタと走り回り、忙しそうにしている生徒会メンバー。
こっそりと、その様子を窺っていた海斗。
(……。遅かったか〜)
残念そうに苦笑した海斗。
どうやら、夏穂をサッカー部のマネージャーにしようと目論んでいたようだ。
もう遅い。今更声をかけるなんてことは出来ない。
だって、馴染みすぎているから。最初からメンバーだったかのように、そこにいるから。
ま、いーんじゃね? 向き不向きってあるしなー。
めっちゃ楽しそうだし。嬉しそうっつーか何つーか。充実してるっつーか?
あれこれコキ使われるんじゃねーかって心配はなきにしもあらずだけどな。
本人が楽しそうにしてるから、問題ねーだろ。多分。
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7182 / 白樺・夏穂 / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / 海斗 / 19歳 / HAL:生徒
NPC / 梨乃 / 19歳 / HAL:生徒
NPC / 斉賀・尚 / 16歳 / HAL:生徒
シナリオ参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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