■魂銃タスラム■
藤森イズノ |
【7182】【白樺・夏穂】【学生・スナイパー】 |
見た目がゴツいから、重いものかと思っていたけれど。
めちゃくちゃ軽い。持ってる感覚がないくらいに軽い。
メンバーの証として受け取った、魂銃タスラム。
まさか、入手できるとは思いもしなかった。
そもそも、組織に加入できたのが、まず凄い。
しかも、来て早々にだし……。
別に、組織に加入することを目的として来たわけじゃないけれど、
この世界の中枢に触れることが出来るのは、色んな意味で美味しい。
そんなことを考えていると、事前とニヤけてしまう。
あぁ、いやいや。笑ってる場合じゃないや。
フルフルと軽く頭を振って、気持ちを切り替える。
目の前には "いつでもどうぞ" と構える仲間。
試し撃ちを兼ねて、擬似バトル。
提案されたから応じてみたけれど……。
どうせなら、勝ちたいなぁ。
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魂銃タスラム
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見た目がゴツいから、重いものかと思っていたけれど。
めちゃくちゃ軽い。持ってる感覚がないくらいに軽い。
メンバーの証として受け取った、魂銃タスラム。
まさか、入手できるとは思いもしなかった。
そもそも、組織に加入できたのが、まず凄い。
しかも、来て早々にだし……。
別に、組織に加入することを目的として来たわけじゃないけれど、
この世界の中枢に触れることが出来るのは、色んな意味で美味しい。
そんなことを考えていると、自然とニヤけて……。
あぁ、いやいや。笑ってる場合じゃないや。
フルフルと軽く頭を振って、気持ちを切り替える。
目の前には "いつでもどうぞ" と構える仲間。
試し撃ちを兼ねて、擬似バトル。
提案されたから応じてみたけれど……。
どうせなら、勝ちたいなぁ。
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溜息を落としながら魂銃を構える夏穂。
対戦相手は、海斗だ。向かいで、楽しそうに装填している。
応じたものの、実際、こういうのはどうなんだろう。
まぁ、試用ってことだし、あまり深く考える必要はないのだろうけど。
銃を受け取った際、一通りの説明も聞いた。魔力の装填方法だとか。
装填物が "魔力" であること以外は、他の一般的な銃と同じ。
狙いを定めて引き金を引けば "ドーン" と出る。
飛び出すのは銃弾ではなく魔法だけど。
「ふっふっふ。返り討ちにしてやるぜ」
不敵な笑みを浮かべて言った海斗。お前は何様だ。
自分から誘ったくせに、その発言はどうだ。
まぁ、楽しそうで何よりだけれども。
もともと、勝負事を好む性格だからか、かなりノリ気のようだ。
海斗が扱う魔法は、主に "炎" だ。
普通に魔法として放つならば、他の属性も適度に使える。
けれど、魂銃に装填して使うのは、炎だけ。
おそらく、自分には、炎が一番向いていると思っているのだろう。
まぁ……猪突猛進で無鉄砲な性格は、確かに炎っぽい……かな?
装填を終えて、銃をクルリと回す海斗。
イイ感じの装填具合だ。
持った時の感覚で理解る。
とはいえ、相手は初心者。適度に力を抜いてやらねば。
俺が全力で相手しよーもんなら、あいつなんて、ソッコーで……。
「……うぉっ!?」
突如、大声を上げて目を丸くした海斗。
その理由は、夏穂の手元にある魂銃。
そこに装填されている "属性" の数だ。
(こんな感じかしら……)
説明されたとおり、装填を済ませる夏穂。
夏穂の魂銃には、驚くべきことに3つの属性が装填されている。
キラキラと美しい "氷" 優しく柔らかな "風" 眩く輝く "光"
本来、魂銃に装填できる魔法・属性は一種類だけだ。
複数の属性を宿すことは出来ない。
海斗も、何度か試したことはある。
そりゃあ、そうだ。
複数の属性を装填できれば、あらゆる状況で臨機応変に使い分けることができる。
けれど、無理だった。海斗だけじゃない。他の既存メンバーにも出来ない。
何度も失敗を繰り返すうち、いつしか彼等は "不可能" なのだと結論付けた。
悔しくはあったけれど、そうして納得させるしかなかったのだ。
それなのに。いったい、どういうことだ。
「それじゃ、いきますね」
ニッコリと微笑み、夏穂は言った。
手元の魂銃の銃口では、3つの属性が踊っている。
「……おもしれー。よっしゃ、かかってこいやー!」
どうしてなのか、そんなことはどうでもいい。
夏穂の魂銃には3つの属性が装填されている。
それは、紛れもなき事実だ。
ニッと笑った海斗の心を占めていたのは、好奇心。それだけ。
夏穂の肩書は "スナイパー" である。
要するに、普段から銃を武器として使っている。
だから、容易い。すぐに扱いに慣れる。
魂銃というものが、いかに扱いにくい代物であっても。
夏穂にとっては、普通の銃と何ら変わりない。
……にしても、これはどうだ。
「っうお!」
かなり珍しい光景である。
海斗が、防戦一方だなんて。
でも、それも仕方ない。反撃する暇がないのだ。
次から次へと、夏穂は休みなく発砲してくる。
しかも、単発ではなく連続で。更に、3種類の属性を巧いこと混ぜてくる。
氷と光を融合させて、鋭く冷たい鋭利な光を。
風と氷を融合させて、石つぶてならぬ、氷つぶての嵐を。
光と風を融合させて、眩く輝き視力を奪う突風を。
今さっき初めて手にしたとは思えない、見事な扱いっぷり。
もともと、魔法に精通していたこともあってか、
この世界では、その力が更に倍増しているようだ。
「っくそ!」
逃げてばかりの自分を認めたくなくて、舌打ちした海斗。
何度か、ほんの僅かな合間に反撃することは出来たけれど、当たらなければ意味がない。
夏穂は、ただ発砲するだけじゃなく、ちょこまかと動き回るのだ。
小柄な身体も相まって、決死の反撃もスカってしまう。
こうなってしまっては、手加減なんぞしていられるものか。
ムキになった海斗。目つきが変わった。
躊躇うことなく、一気にガバッと。
体捌きに影響が出ない、ギリギリのところまで魔力を銃に注ぐ。
「っしゃ。覚悟しやがれっ」
急ブレーキをかけ、逃げることを止めてバッと振り返った海斗。
だが、振り返った先に夏穂の姿はない。
次の瞬間、海斗の動きがビタリと止まった。
後頭部に、コツンと当たる。それは、銃口の感触。
「チェックメイトです。すいません」
「マジかよ。くそぅ……」
海斗がボヤくと同時に、夏穂はキュッと引き金を引いた。
ゴッー
パァンッ―
*
「ごめんなさい。大丈夫?」
「おーいぇー……」
うつ伏せ状態のまま、ボソッと返した海斗。
銃口から放たれたのは、光と風の融合魔法。
眩い光を煌めかせながら弾けた風は、とても美しかった。
髪の毛ボッサボサ状態で伏せている海斗は、とても滑稽。
負けを認めたくないのか、海斗は悔しそうに頬を膨らませる。
まるっきり子供だ。年上だなんて思えない。
夏穂はクスクス笑いながら、海斗に治癒魔法をかける。
みるみる消えていく疲労に、海斗は沈黙したまま。
悔しいけれど、認めざるを得ないじゃないか。だって……。
「お前、すっげーな。量が」
夏穂の手に触れ、苦笑しながら言った海斗。
夏穂は、キョトンとした顔で首を傾げた。
「? 何が……?」
「魔力。まだまだ、ちょー余裕じゃん」
「そんなこと、わかるの?」
「わかるよ。5分の1くらいだな。使ったの」
「……そうなの? よくわからないけど」
「まー。そーだろな。こんだけありゃー、計算なんてしねーもん。普通」
常軌を逸した魔力。これじゃあ、勝てなくて当然だ。
並みの魔力なら、あれだけ連発すれば、すぐに底を尽いてしまう。
何で動きが鈍くならないのか、そればかりか、精度が上がっていくのか。
その疑問は、夏穂に触れたことで、いとも簡単に解消された。
初めて負けた。でも、負けて当然。
海斗はムクリと起き上がり、ヘラッと笑って。
「これ、やる」
そう言って、夏穂の膝上に何かを投げやると、ダッシュで去って行った。
けれど、入り口付近で急ブレーキをかけて停止。
うん? と首を傾げる夏穂。
海斗は、クルリと振り返って。
「忘れてた。回復さんきゅー」
そう言うと、またダッシュした。
遠ざかって行く海斗の背中を見やり、夏穂は笑った。
(元気な人ね。本当に、赤々と燃える炎みたい)
ふと視線を落として見やれば、そこには大きなソーダキャンディがひとつ。
水玉の包み紙が妙に可愛くて、夏穂は手に取りクスクス笑う。
(戦利品……?)
何でまたキャンディなのか。それは理解らない。
けれど、それは確かに "負けを認めた証" だった。
同時に "お友達の証" の意味も成す。
何故なら、ソーダキャンディは、海斗の大好物だから。
誰かにあげるだなんて、普段は絶対にしないから。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7182 / 白樺・夏穂 / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / 海斗 / 17歳 / ハンター(アイベルスケルス所属)
こんにちは、いらっしゃいませ。
シナリオ『 魂銃タスラム 』への御参加、ありがとうございます。
所有アイテム、ふたつ増えてます。
銃と飴。飴イラネとか言わないで下さい(笑)
意味を成すものだと思います。後々。たぶん、きっと。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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