■誘惑せよ■
藤森イズノ |
【7192】【白樺・雪穂】【学生・専門魔術師】 |
同じ男として、心配なわけだ。
揃いも揃って女っ気がなさすぎるだろう。
ここまでくるとな、逆に不安になってくるんだよ。
もしかして、女じゃなくて男が好きなんじゃねぇかとか。
このまま、ずっと "欲情" とは無縁の生活をしていくのかとか。
駄目だろ、それは。男として、駄目だろ。勿体ないだろ。
「でもまぁ、そういう病気もあるからな。実際」
煙草をふかしながら、ちょっと偉そうに言った藤二。
隣に座っている千華は、前髪を弄りながら溜息を落とした。
藤二が案じていること。それは、海斗と浩太の恋愛遍歴。
組織成立当初から一緒にいるけれど、
彼等に女の影が見えたことは一度もない。
男として、これはおかしい。それが、藤二の言い分だ。
「あんたって……」
「優しいだろ?」
「……ううん。基本、お節介よね」
「まぁな。暇だし」
「でしょうね。でも、浩太は大丈夫じゃない?」
「何で? あぁ、例の年上のお姉さんか」
「都のあちこちで見られてるみたいだし」
確かに、浩太にはそういうアリバイ(?)がある。
ただ、実際のところ噂でしかない。
「一度も本部へ連れて来たことがないってのもあるしな」
「あんたみたいなのがいるから連れて来たくないんじゃないかしら……」
「まぁ、仮にその噂が事実だったとしても、確認にはなるだろ」
「疑いすぎよ。放っておいてあげなさいってば」
「いや。実行する。調査だ、調査」
「まったくもう……。何するつもり?」
「誘惑」
クスクス笑いながら言った藤二。
千華は少し呆けた後、ハッと我に返る。
まさか、私が? 無理よ。そんなの。
少し慌てる千華の姿に、藤二は肩を竦めて笑う。
「お前じゃないよ。やるのは」
今さら、お前が誘惑したところで何の効果もないだろうし。
こういうとき、重要になってくるのは "新鮮さ" これだ。
もう、理解ったろ? 要するに、誘惑を実行するのは……。
「あ。ちょうど来たな」
笑いながら、階段を見上げた藤二。
見やる、その先にいたのは―
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誘惑せよ
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同じ男として、心配なわけだ。
揃いも揃って女っ気がなさすぎるだろう。
ここまでくるとな、逆に不安になってくるんだよ。
もしかして、女じゃなくて男が好きなんじゃねぇかとか。
このまま、ずっと "欲情" とは無縁の生活をしていくのかとか。
駄目だろ、それは。男として、駄目だろ。勿体ないだろ。
「でもまぁ、そういう病気もあるからな。実際」
煙草をふかしながら、ちょっと偉そうに言った藤二。
隣に座っている千華は、前髪を弄りながら溜息を落とした。
藤二が案じていること。それは、海斗と浩太の恋愛遍歴。
組織成立当初から一緒にいるけれど、
彼等に女の影が見えたことは一度もない。
男として、これはおかしい。それが、藤二の言い分だ。
「あんたって……」
「優しいだろ?」
「……ううん。基本、お節介よね」
「まぁな。暇だし」
「でしょうね。でも、浩太は大丈夫じゃない?」
「何で? あぁ、例の年上のお姉さんか」
「都のあちこちで見られてるみたいだし」
確かに、浩太にはそういうアリバイ(?)がある。
ただ、実際のところ噂でしかない。
「一度も本部へ連れて来たことがないってのもあるしな」
「あんたみたいなのがいるから連れて来たくないんじゃないかしら……」
「まぁ、仮にその噂が事実だったとしても、確認にはなるだろ」
「疑いすぎよ。放っておいてあげなさいってば」
「いや。実行する。調査だ、調査」
「まったくもう……。何するつもり?」
「誘惑」
クスクス笑いながら言った藤二。
千華は少し呆けた後、ハッと我に返る。
まさか、私が? 無理よ。そんなの。
少し慌てる千華の姿に、藤二は肩を竦めて笑う。
「お前じゃないよ。やるのは」
今さら、お前が誘惑したところで何の効果もないだろうし。
こういうとき、重要になってくるのは "新鮮さ" これだ。
もう、理解ったろ? 要するに、誘惑を実行するのは……。
「あ。ちょうど来たな」
笑いながら、階段を見上げた藤二。
見やる、その先にいたのは―
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ヒラヒラと、藤二が手を振っている。
その笑顔を見た瞬間、夏穂と雪穂は感じ取った。嫌な予感にも似た、それを。
何となく理解ってきたぞ。藤二が、ああいう顔してる時っていうのは……。
紅茶を乗せたトレイを持ち、少し首を傾げて笑う二人。
15時の御茶に、と淹れてきたのだけれど。失敗したかな?
ソファに座り、前髪を弄り出す雪穂。
夏穂は、淡い笑みを浮かべながら4人分の紅茶を用意し始めた。
煙草をふかしながら、藤二は言う。
「まぁ、ちょっとした暇潰しさ」
キミ達からすれば、知ったことか! って感じだろうけど。
茶化すつもりはなくてね。ただ、心配なんだ。本当だよ、うん。
だってさ、考えてもみてごらん? あいつら、17歳だよ?
17歳といえば、多感な時期だ。特に、女の子に対するアレとかね。
それが、普通なんだよ。ちっとも恥ずかしいことじゃない。
まぁ、女の子にも同じようなことが言えるわけだけれども。
男のほうがね、そういうのは重度っていうか……旺盛だから。
別に、もっと盛れや! って言いたいわけじゃない。
ただ、お前ら大丈夫なのか? ってね。
純粋に心配なんだ。俺は。
心配性な、お兄さんの頼みってことでさ。よろしく頼むよ、二人とも。
ニコニコと微笑みながら言った藤二。うーむ。イイ顔してる。
要するに "誘惑してこい" と。
藤二は、夏穂と雪穂に、そう命じている。
「何が、お兄さんよ……。オジさんの間違いでしょ」
パシンと、藤二の膝を叩いて苦笑する千華。
藤二は、煙草を灰皿に押しやって消し、二人に返答を求めた。
「どうかな? やってくれるか?」
「……どうする? 雪ちゃん」
雪穂に紅茶を差し出しながら言った夏穂。
ティーカップを受け取り、雪穂はクスクス笑った。
「ん〜〜〜〜……」
困っている。あからさまに困っている。
いやはや、まったく。それも当然である。
この二人に "誘惑" させるなんて、間違ってる。
出来る出来ないの前に、間違っているのだ。
「ん〜。まぁ、ヒマだし、いいかな〜」
コクコクと紅茶を飲みながら言った雪穂。
夏穂は、チラッと藤二を見やった。
そういうことみたいです、そんな眼差しで。
引き受けてくれたことに藤二は大喜び。
誰よりもノリノリで、二人に情報を伝える。
海斗と浩太。二人の好みなど。
まぁ、直接本人から聞いたわけではなく、全て藤二の予想なのだけれど。
的外れな情報ではないと思う。……多分、きっと。
*
「……とりあえず、頑張ってみましょうか」
「そんじゃ〜僕が浩太兄ね。夏ちゃんは、海斗〜。がんばろ〜ねっ」
パチンと手を合わせて、二人はテクテク歩き出した。
確認というか視察というか。藤二と千華は、物陰に隠れて様子見。
何だかんだで千華も巻き込まれているあたりが、何とも。
さて。舞台は、本部リビング。
標的(海斗と浩太)は、ソファに向かい合うように座っている。
二人の手には、携帯ゲーム機。黒いコードで繋がっている。対戦でもしているのだろう。
雪穂は浩太の隣に、夏穂は海斗の隣に、ちょこんと腰を下ろした。
「ん?」
「あれ? どうしたんですか?」
隣に座った雪穂と夏穂に、キョトンとしている海斗と浩太。
一瞬、こちらを見やったものの。すぐにまたゲームに夢中。
「あ! ちょい待て! 浩太、いまのは反則だろ!」
「何のことかなぁ」
「つか、何、その武器。どこでゲットできんの、それ」
「転職クエストが終わったら貰えるやつだよ。但し、ナイト専用だけどね」
「マジで! いーなー。俺もナイトにすればよかったー」
……楽しそうだけれども。さっぱり理解らない。何を言ってるのやら。
というか、まったく気に留めていない。
隣に、真横に、こんなに可愛い子がいるのに。
鈍いだとかそういうレベルじゃない。
これは、あれだ。無関心。まさしく、それである。
さぁて。困ったぞ。どうやって誘惑を仕掛けるか……。
というか、それ以前に大きな問題が、ひとつ。
そういえば、誘惑って何だろう。
雪穂と夏穂は、同じ疑問を抱いている。
ジーッと海斗の横顔を見つめながら考えるのは、夏穂。
藤二から聞かされた説明だとか、その言葉のニュアンスだとか、
そういうのを踏まえて考えてみれば、何となくは理解る。
でも、具体的にどんなことをすれば "誘惑" になるのか。そこまでは理解らない。
夏穂は、海斗の横顔を見つめたまま、一生懸命考えた。
(誘惑って……どんな感じなのかしら)
何となくは理解できるんだけど。曖昧なのよね。
ぼんやりとイメージは浮かぶんだけど。
どうすれば、このイメージに辿り着くことが出来るかしら。
いろいろ考えてはみるけど……どれも、しっくりこないの。
しばらくして、夏穂は、考えることを止めた。
難しい。結局、どうすればいいのか理解らない。
下手に繕うのは逆効果な気がする。
それなら何も考えず、いつもどおりで良いんじゃない?
そう結論付けた夏穂は、普段と何ら変わらぬ行動をとった。
海斗が夢中になっているゲームを、一緒に覗き込んでみたり。
楽しそうにプレイしている海斗に、質問してみたり。
「凄いわね。これ……銃よね?」
「そだよ。ガンナーなの。かっこいーだろー」
「うん。あっ、ねぇ、今の綺麗。何したの?」
「必殺技!」
ジーッと浩太の横顔を見つめながらニコニコ微笑んでいるのは、雪穂。
彼女は、夏穂と違って "何となく" さえも把握できていない。
藤二の説明、その意図の捉え方もズレていた。
ただ単に、一緒に遊んでこいと。その程度にしか捉えることができない。
雪穂は、浩太の横顔を見やったまま、ふと考えた。
(ゆ〜わくって、何だろ〜)
藤二兄の口から、何回も出てきた単語なんだよね〜。ゆ〜わく。
一緒に遊べってことじゃないのかなぁ。何か違うような気がするな〜。
でも、僕には、わかんないなぁ。ゆ〜わくって何だろ〜。
どういう漢字で書くのかなぁ。聞いておけば良かったかも。
そしたら、ちょっとはイメージできたかもしんない〜。
藤二兄も無茶言うよね〜。こういうのね〜、無茶振りって言うんだよ〜。
しばらくして、雪穂は、考えることを止めた。
わかんない。結局、どうすればいいのか理解らない。
それなら何も考えず、いつもどおりで良いんじゃない?
そう結論付けた雪穂は、普段と何ら変わらぬ行動をとった。
浩太が夢中になっているゲームを、一緒に覗き込んでみたり。
楽しそうにプレイしている浩太に、つられてみたり。
「面白そうだね〜。このゲーム」
「うん? うん、楽しいよ。やってみる?」
「いいの? やるやる〜♪」
「えぇとね、このペンを使ってキャラクターを動かして……」
「…………」
物陰から、4人の様子を窺う藤二は苦笑した。
何で? 何故に、楽しそうにゲームで遊んでるの?
雪穂と夏穂も、すっかりゲームに夢中になってしまっている。
必殺技の出し方を海斗と浩太に教えてもらっては挑戦してみたり。
けれど、なかなか難しいらしく、綺麗にキメることができない。
だから余計にムキになってしまって。
雪穂と夏穂の目線は、ゲーム一直線。
あまりにも夢中になっているもんだから、
途中から、海斗と浩太のアドバイスすら耳に入らない始末。
肩を揺らして笑いながら、藤二は小さな声で呟いた。
「俺、誘惑してこいって言わなかったっけ」
その言葉に、千華はクスクス笑った。
「無理難題よ。あの子たちには」
確かに、言われてみれば、そうだ。
気の向くまま、自由にホヨヨ〜ンと生きている二人に "誘惑" なんぞ。
ちょっと考えてみれば理解ることなのに。
もしも、彼女たちが誘惑することに成功していたら、
それはそれで面白いかもしれないけれど……これはこれでアリな気もする。
雪穂と浩太、夏穂と海斗。本人たちは気付いていないのだろうけれど、至近距離。
だから何だって気もするけれど。何気にイイ雰囲気。
まぁ、キャッキャとはしゃぎながら、通信対戦に燃えているわけだけれども。
「色っぽい展開は、まだまだ先だな。こりゃあ」
「そうねぇ。でも良いんじゃない? 見てて和むわ……」
「まぁな。懐かしい気分にはなるな」
「胸がキュンってする感じ?」
「そうそう、それそれ。……いや、それはない。さすがに」
「荒んでるわねぇ」
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7192 / 白樺・雪穂 / 12歳 / 学生・専門魔術師
7182 / 白樺・夏穂 / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / 海斗 / 17歳 / ハンター(アイベルスケルス所属)
NPC / 浩太 / 17歳 / ハンター(アイベルスケルス所属)
NPC / 藤二 / 25歳 / ハンター(アイベルスケルス所属)
NPC / 千華 / 24歳 / ハンター(アイベルスケルス所属)
こんにちは、いらっしゃいませ。
シナリオ『 誘惑せよ 』への御参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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