■ＬＯＳＴ■ 水貴透子 【1252】【海原・みなも】【女学生】 『ログイン・キーを入手せよ』 それがＬＯＳＴを始めて、ギルドから与えられるクエストだった。 そのクエストをクリアして『ログイン・キー』を入手しないと他のクエストを受ける事が出来ないと言うものだった。 クエストにカーソルを合わせてクリックすると、案内役の女性キャラクターが『このクエストを受けますか？』と念押しのように問いかけてくる。 「ＹＥＳ‥‥っと」 その途端に画面がぐにゃりと歪んでいき、周りには海に囲まれた社がぽつんとあった。 「あの社には大切な宝があるんだ、だけどモンスターがいて‥‥お願いだから宝が奪われる前にモンスターを退治しておくれよ」 社に渡る桟橋の所に少年キャラが立っていて、桟橋に近寄ると強制的に話しかけてくるようになっているようだ。 「ふぅん、まずはモンスターを退治するだけの簡単なクエストか」 小さく呟き、少年キャラが指差す社へと渡っていく。 そこで目にしたのは、緑色の気持ち悪いモンスターと社の中の中できらきらと輝く鍵のようなアイテムだった。 ――ＬＯＳＴ・失世界―― 『ログイン・キーを入手せよ』 それがＬＯＳＴを始めて、ギルドから与えられるクエストだった。 そのクエストをクリアして『ログイン・キー』を入手しないと他のクエストを受ける事が出来ないというものだった。 クエストにカーソルを合わせてクリックすると、案内役の女性キャラクターが『このクエストを受けますか？』と念押しのように問いかけてくる。 「ＹＥＳ‥‥っと」 　その途端に画面がぐにゃりと歪んでいき、周りには海に囲まれた社がぽつんとあった。 「あの社には大切な宝物があるんだ、だけどモンスターがいて‥‥お願いだから宝が奪われる前にモンスターを退治しておくれよ」 　社に渡る桟橋の所に少年キャラが立っていて、桟橋に近寄ると強制的に話しかけてくるようになっているようだ。 「ふぅん、まずはモンスターを退治するだけの簡単なクエストか」 　小さく呟き、少年キャラが指差す社へと渡っていく。 　そこで目にしたのは、緑色の気持ち悪いモンスターと社の中できらきらと輝く鍵のようなアイテムだった。 ――　海原・みなもの場合　―― 「最近、異常を見せているＬＯＳＴを調べて欲しい」 　これは海原・みなもがアルバイトなどで世話になっている色々な人物から頼まれた事から始まった。 「ＬＯＳＴ‥‥ですか？　確か最近流行りのネットゲームですよね」 　ＬＯＳＴのソフトを渡され、海原はそれと頼んできた人物とを交互に見比べながら呟く。このゲームは人気を誇ると同時に『謎のクエストをクリアすると何かが起こる』という闇の噂をも広めるソフトだった。 「‥‥いつもお世話になってますし、どこまで出来るかわかりませんけど、調べてみますね」 　海原は学生鞄にソフトを入れて「結果は後ほどお伝えします」と言葉を付け足しながら自宅へと向かった。 　キャラクター登録の際にプレイヤーはキャラクターの職業を選ばなければならず、いつもの海原ならば『僧侶』を選ぶ所だが、今回は『武闘術師』でキャラクター登録を行った。 「えぇと、まずはステータスポイントの配分っと‥‥」 　キャラクターの初期パラメーターを決める為にポイント配分を行った後、専用スキルの『気孔術』を獣スタイルで習得する。獣スタイルとは獣の尻尾や爪での攻撃、獣毛での防御力強化、獣四肢での移動力上昇など獣を模したエフェクトと獣の名を冠したスキル名で分かりやすいという利点があった。 『これより先はＬＯＳＴの領域です。貴方は後悔しませんか？』 　キャラクター作成をした途端、画面が真っ暗になってカタカタとキーボードを打つ音が響きながら白い文字が表示されていく。 「後悔、しない――と」 　する、しない、で表示された２つの選択のうち『しない』にカーソルを合わせてクリックする。 「‥‥忠告はしたのに、後悔しても知らないよ」 　甲高い女の子の声が耳元で響いたような気がして海原はハッと後ろを振り向くけれど彼女の後ろには誰もいない。 「‥‥確かに耳元で聞こえたような気がしたのに‥‥気のせい？」 　首を傾げながら海原は視線をパソコンへと向ける。視線を逸らしていた間にパソコンの画面は真っ暗なものから遠くに海が見え、中央にはぽつんと小さな社がある町へと変化していた。 「ここが最初の町‥‥」 　海原はキャラクターを操作しながら町の中を歩いていく。少し先には大勢の人で賑わっているマーケットがあり、さまざまな商人達が海原に話しかけてきて「いらっしゃい！」という会話ウインドウが次々に表示されていく。 「今日は薬草が沢山取れたからいつもの半額でいいよ！」 「先ずは武器を揃えるべきだろう、戦いは良い武器を持ってこそ敵を退治出来るってもんんだ」 「何を言っているんだい、強い敵の攻撃に耐えられる防具を揃えてこそだろう」 　道具屋、武器屋、防具屋が海原に商品を買わせようと話しかけてくる。 「先ずは回復アイテムを揃えないと、ですね」 　海原は話しかけてくる商人のうち、道具屋のおばさんに声をかけて「薬草はいくつ買えますか？」と問いかけた。 「所持金はこれだけか‥‥このお金だと薬草が１０個だね。１０個買うかい？」 「でも、武器と防具も買わなくちゃいけないし‥‥半分の５個でお願いします」 　海原が言葉を返すと「まいどあり！」とおばさんは薬草を渡してきた。 　それから残ったお金で最低限の装備をそろえ、海原は町の中を散策する。 　その時、ピコンという音が響き『♪』のマークが出現した。説明書を見ると『♪』マークは近くに受けられるクエストがある場合のみ出現すると書かれていた。 「えぇと、どこにいるのかな‥‥」 　海原は画面を見ると、桟橋の近くにいる少年の頭上に『♪』マークが出現している事に気づき、少年に話しかける。 「お姉ちゃん、武器を持ってるから戦えるんだろう？　あの中には町の宝があるんだ！　モンスターに取られちゃうよ！」 　少年の言葉を聞き終わると同時に『ログイン・キーを入手せよ』というタイトルとクエスト内容が画面に映し出される。クエスト内容を見ると、桟橋を渡った先にある社からログイン・キーというアイテムを入手すればクエスト成功と書いてあった。 　おそらくゲームを始めたばかりの初心者に対しての簡単なクエストなのだろうという事が伺える。 「モンスターの事は誰かに聞けば分かるのかな‥‥」 　最初のクエストで失敗するのも嫌なので、海原はすぐに社には向かわず、町の中でモンスターに関する情報などを集める事にした。 「この辺にはゴブリンがよく現れるんだ。あの社にも現れるから近づいちゃいけないよ」 「普通のゴブリンは棍棒で攻撃してくるんだけど、大きなゴブリンは斧を持ってるから気をつけて！」 「回復アイテムは持ったか？　金をケチって回復アイテムを買わずに全滅してしまえば金は半額になる。ケチらずにちゃんと持っていく物は持っていきなされよ」 　少年のクエストを受けた後、住人の話す事がわずかに変わっており、海原はゴブリンに関する情報を入手する事が出来た。 「さて、とりあえずクエストクリアを目指していきましょうか」 　海原は小さく呟き、社の中へと入る。すると空間がぐにゃりと混ざるような画像がパソコン上に映し出され、小さな社のはずなのに中に入ると同時に迷宮へと姿を変えていた。 「あ、宝箱‥‥」 　迷宮を進むと宝箱があり、その中に入っていた薬草を入手する。そして来た道を戻ろうとした時に棍棒を持ったゴブリンが２匹、海原の前へと現れた。 　海原は気孔術を駆使しながらゴブリンへと攻撃を仕掛ける。一番最初のクエストに現れるという事もあって、技を繰り出せば１撃で倒す事が出来た。 　だけど現れたのは２匹、最初の１匹目を退治する時に１撃、そして２ターン目の攻撃を海原がミスってしまい、もう１撃の攻撃を受け、ゴブリン２匹を退治する時には半分近くのヒットポイントを削られてしまっており、海原は先ほど入手した薬草を使ってヒットポイントを回復した。 　それから迷宮を突き進んでいくとやがて大きな扉の前へと出て、扉の横には青い色のパネルが存在した。 「コレ　デ　タイリョク　ト　マホウリョク　ヲ　カイフク　シテクダサイ」 　機械的な声が響いたあと、海原の体力と魔法力が完全回復した。 「この後はボス、でしょうか」 　海原が呟きながら、扉を開けて中に入ると‥‥扉の向こうは玉座の間のように広く、少し歩いた先には大きな椅子があって、そこには先ほどまで現れていたゴブリンを数倍大きくしたような魔物が下品にな笑い声を響かせている。 「おのれ、これは誰にも渡さんぞ！　全てを統率出来ると言われる『ログイン・キー』をお前なんぞに渡してなるものか！」 　ボスゴブリンはご丁寧にログイン・キーの説明までしてくれ、持っていた斧を振りかざして海原へと襲い掛かる。 「あれは‥‥」 　ボスゴブリンの後ろには青い光に包まれた鍵のようなものが浮かんでおり、あれを入手する事でクエストを成功させる事が出来そうだ。 　海原は走りだし、ボスゴブリンへと攻撃を仕掛ける。だがボスゴブリンの持つ斧によってそれは防がれ、海原は後ろへと退いた。 「其の程度の力で俺様に勝とうなんざ片腹痛いわ！」 　どすん、と言う音が響きボスゴブリンの斧が地面へとめり込み、きれいな大理石の地面にひびが入る。 「はぁっ！」 　めりこんだ斧を抜こうとするけれど、勢いよく振り下ろされた斧はすぐに抜けるほど浅い場所にめり込んでおらず、其の隙を突いて海原は攻撃を仕掛ける。 　結局、その攻撃が戦いの流れを買えて、海原はボスゴブリンを退治する事が出来たのだった。 「これを持って帰ればクエスト完了ですね」 　海原がぷかぷかと浮かぶ鍵に手を伸ばした時、バチンと弾かれる。その弾かれた痛みはキーボードを叩く海原の手にも伝わってきて「え？」と海原は自分の手を見ながら目を瞬かせた。 「貴方は失う覚悟がありますか？」 　ふわりと鍵の上に１人の少女が降り立つ。赤いフリルと黒いフリルがふんだんに使われたドレスを身に纏い、緑の髪を持つ何処となく不気味な少女。 「貴方は失う覚悟がありますか？」 　伏せていた瞳を開きながらもう一度、確認を取るように海原へと問いかけてくる。海原は画面から１度視線をはずし、自分の手を見る。先ほど弾かれた痛みは既に治まっており、何処も怪我はしていない。 「覚悟は、あります」 　現れたメッセージウインドウに海原は打ち込む。 「‥‥分かりました。それではこれを‥‥これは貴方を至福へと導くと同時に‥‥貴方を破滅へと導くものでもあります」 　少女は光の中から鍵を取り、海原へと渡す。 「貴方に神のご加護があらん事を‥‥海原みなもさん」 　少女は画面越しに海原を見ながら少し嫌な笑みを浮かべて呟いた。 「え‥‥こっちを、見た？」 　海原は首を傾げながら少年へとクエスト完了した報告を行い、ログアウトする。 　彼女がバッグの中で明滅する『ログイン・キー』に気がつくのはもう少し後の事。 ――　登場人物　―― 1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生 ―――――――――― 海原・みなも様＞ お久しぶりです、今回執筆させていただきました水貴透子です。 以前は瀬皇緋澄のＰＮのときにお世話になっていました。 今回はＬＯＳＴにご発注いただき、ありがとうございました！ 話の内容はいかがだったでしょうか？ 少しでも気に入っていただけるものに仕上がっていれば良いのですが‥‥。 それでは、今回は書かせていただきありがとうございました！ 2010/4/18