■クロノラビッツ - クロノ・ハッカー -■
藤森イズノ |
【8372】【王林・大雅】【学生】 |
いやいやいやいやいや、ちょっと待ってよ。
何これ、どうなってんの? どういうこと?
「カージュは北、リオネは南。チェルシーは俺と待機」
「りょーかいっ」
「了解です」
「焦っちゃだめよ、カージュ」
「わかってるって」
何、それ。要するに挟みうちですか。
まぁね、狭い路地っていう地の利を活かすには的確だと思うけど。
って、そんなこと言ってる場合じゃないって。どうすりゃいいの、これ。
「 …… うっ」
間もなくして、見動きがとれない状況へと追いやられてしまった。
前から一人、後ろから一人。完全に挟まれた。上 …… も駄目だ。既に、他の二人が張っている。
買い物を終えて帰る途中、その最中の出来事。近道しようと入り込んだ路地裏で大ピンチ。
本当に、突如って表現がぴったりな感じで、いきなり、男女四人に追いかけられた。
そりゃあ、逃げるでしょ。そんな状況で逃げないとか、無理でしょ。
でも結局 …… このとおり、追いつめられてしまったわけで。
(う〜ん …… どうしたもんかな、これ)
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クロノラビッツ - クロノ・ハッカー -
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いやいやいやいやいや、ちょっと待ってよ。
何これ、どうなってんの? どういうこと?
「カージュは北、リオネは南。チェルシーは俺と待機」
「りょーかいっ」
「了解です」
「焦っちゃだめよ、カージュ」
「わかってるって」
何、それ。要するに挟みうちですか。
まぁね、狭い路地っていう地の利を活かすには的確だと思うけど。
って、そんなこと言ってる場合じゃないって。どうすりゃいいの、これ。
「 …… むぅ」
間もなくして、見動きがとれない状況へと追いやられてしまった。
前から一人、後ろから一人。完全に挟まれた。上 …… も駄目だ。既に、他の二人が張っている。
よその世界で買い物を終えて帰る途中、その最中の出来事。近道しようと入り込んだ路地裏で大ピンチ。
本当に、突如って表現がぴったりな感じで、いきなり、男女四人に追いかけられた。
そりゃあ、逃げるでしょう。この状況で逃げないとか、無理でしょう。
でも結局 …… このとおり、追いつめられてしまったわけで。
(う〜ん …… )
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機嫌を損ねる要因は、奇襲の他に、もうひとつ。
今宵は、朔夜。淡く輝く新月が、美しくも妖しい、そんな夜。
いつもは吸いこまれそうな魅力を持つ大雅の空色の瞳も、今夜ばかりは生気喪失。
負なる感情のみを宿すかのようなその瞳は、愛でられることなく、そこらに投げ捨てられた人形のそれを思わせる。
突如、こぞって襲いかかってきた連中のうち、一名は面識がある。一昨日、妙なカードを送り付けた上、
人の部屋に勝手に入ってきた男。海斗にそっくりな外見を持つ男。カージュ。
何となく、海斗のほか、梨乃や藤二にそっくりな人物もいるんだろうなと、
それが、カージュの仲間なんだろうなと、そんな予測はあった。
だから、大雅は特に驚いていない。
屋根の上、不敵に笑む男が藤二に瓜二つであることにも、
その隣でクスクス笑う女が千華に瓜二つであることにも、
前方から、鞭を揺らしながら迫ってくる女の子が梨乃に瓜二つであることにも、驚かない。
「こんな日に来ないで欲しかったな。動くの怠いし …… 」
ハァと大きな溜息を吐き落としながら、白く巨大な鉈を出現させる大雅。
身の丈ほどもあるその巨大な鉈をズズズと引きずり、地面に十字を描いて大雅は言う。
「馬魔。 …… 一人、頼むね」
ダルそうに、首をコキコキ鳴らしながら大雅が命じれば、白い鉈から、馬の頭を持つ不気味な鬼が現れる。
逃げることをやめ、応戦する構え。大雅の準備が整ったことを確認するや否や、
前方から鞭を持った梨乃にそっくりな女の子が、後方からカージュが襲いかかる。
馬の頭を持つ鬼は、鞭使いの女の子に応じ、大雅は、カージュに応じる。
とはいえ、適当にあしらうばかり。
ムキになってかかっていったり、全力を投じるような真似はしない。
ダルいから、というのが、その一番の理由。急襲は確かに不快だけど、ムッとすることすら煩わしい。
朔夜の晩に限り、大雅は、無気力そのものと化してしまうのだ。※普段からそんな感じじゃない?とか言わないの
だから、あくまでも、あしらうだけに留まる。カージュと鞭使いの女の子は、そんな大雅の態度にカチンときたようで、
更に激しく攻めたてていくが、どれほど凶暴に牙をむいても無駄。今夜ばかりは、すべてが肩透かしを食らう。
(そろそろかな)
カージュの攻撃をあしらいながら、明後日の方向を見やっている大雅。
余所見すんなよ、と苦笑するカージュだが、大雅は、肩を竦めるばかり。
応戦こそしているものの、何かがおかしい。妙だ。守りに徹するばかりで反撃しない。
隙を窺っているのか? いや、そんな感じもしない。何だ、この嫌な感じ。背筋を伝う、寒気は。
屋根の上から、襲われる大雅を観察していた男、藤二にそっくりな男が、奇妙な雰囲気に眉をひそめる。
男に寄り添うようにして、一緒に観察していた女、千華にそっくりな女もまた、妙な気配を覚えたようだ。
見落としていやしないか。忘れていやしないか。大事なことを。
俺達は、以前にも、この感覚に襲われたことがあるだろう。そうだ、この感覚は ――
「カージュ! リオネ! 退け!」
思い出すと同時に、大声で叫んだ男。
その迫力に気圧され、反射的に、男の言うとおり動きを止めてザッと退いたカージュと鞭使いの女の子。
幻妖の扉が出現したのは、そのすぐ後のことだった。
黒い霧の中、ぼんやりと浮かぶ不気味な扉。それこそが、幻妖の扉。
扉が出現したことを確認し、それまで鞭使いの女の子の相手をしていた馬鬼が、猛スピードで駆け出す。
馬鬼は、そのとてつもないスピードを僅かにも落とすことなく、途中で大雅を拾い、幻妖の扉へと一目散。
馬鬼に首根っこを掴まれた状態で移動する大雅。その姿は、さながら、親猫に安全な場所へと運搬される子猫だ。
「んじゃ、またいつか。次は、新月じゃない夜にしてね」
ヒラヒラと手を振り、無気力にそう言い残して、馬鬼と共に幻妖の扉へ突っ込む大雅。
大雅と馬鬼が抜飛び込めば、幻妖の扉は、すぐさま音もなく消える。
逃げられた。
そうだ。大雅には、あの能力があったじゃないか。
どうして、忘れていたんだ。ちゃんと覚えていれば、対策も打てただろうに。
だが、いつの間に扉を召喚したのか、未だにそれを把握できていないことから、
覚えていたとしても、対処できなかったような気もする。何にせよ、失敗。いや、失態だ。
満足なデータを得られぬばかりか、あっさりと逃亡されるだなんて …… 惨めで報告できない。
「何やってんだよ、トライ!」
「うるさい。黙れ」
幻妖の扉、大雅が持ち合わせているその能力を忘却していた時点で、全員に非があるのに、
悪いのはお前だ! と言わんばかりにギャーギャーと責め立てるカージュ。
藤二にそっくりな男は、チッと舌打ち、悔しそうに睨みつけた。
だが、どんなにキツく睨みをきかせようとも、もう、そこに大雅はいない。
*
終日、桃色の桜が咲き誇る世界。
大雅の自宅があり、大雅が暮らしている本来の世界。
幻妖の扉から、妖舞の路を経て、自分の世界へ戻ってきた大雅は、
対をなす二本の桜の樹を結ぶかのように掛けられたハンモックに横たわっていた。
大雅を見上げるようにして、馬鬼の馬魔もすぐ傍に座っている。
「良かった。間に合って」
空を見上げ、ホッとした表情で呟いた大雅。
あやうく、手遅れになるところだった。影虎は、カージュを嫌ってるからね。
誰にでも気さくに、笑顔で話すからわからないかもしれないけど、俺にはわかるんだ。
何で嫌ってるのかまでは、さすがにわかんないけどさ。
カージュが嫌いってことは、もちろん、その仲間も嫌うだろうし。
ああやって牙を剥かれたら、躊躇うことなく始末しちゃうと思うんだよね。
まぁ、別に良いんだけど。あの人達がどうなろうと、興味はないから。
でも、気分的にね。俺本人じゃないにしろ、殺るのは事実なわけだし。夢見が悪そうだから。
呟き終え、ふっと、大人びた笑みを浮かべて、狐の面で顔を覆い隠した大雅。
視界が暗くなると同時に、ストンと眠りにおちる。
それと同時に、入れ換わり、表に出てくる影虎。
影虎は、今しがた顔に乗せたばかりの狐の面をゆっくり外し、クスクス笑う。
「惜しいわ。ギリギリセーフ、やね」
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The cast of this story
8372 / 王林・大雅 / 18歳 / 学生
NPC / カージュ / ??歳 / クロノハッカー
NPC / リオネ / ??歳 / クロノハッカー
NPC / トライ / ??歳 / クロノハッカー
NPC / チェルシー / ??歳 / クロノハッカー
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Thank you for playing.
オーダー、ありがとうございました。
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