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■クロノラビッツ - スキル・モーション -■

藤森イズノ
【8372】【王林・大雅】【学生】
 それを語るには …… 。
 結構な時間を要してしまうけれど。
 それでも良い? 構わないっていうなら、うん、話すよ。

「いーよ。どーせヒマだし」

 海斗は、即答した。
 いや、まぁ、そういう返事が返ってくるだろうなとは思っていたけれど。
 そっか。うん、じゃあ、話すよ。上手く纏められるかどうか、わかんないけれど。
 難しく説明したら、海斗はきっと文句を言うだろうから、なるべくわかりやすく伝えないとね。
 でも、う〜ん …… どうしようかな。どこから、何から話せばいいだろう。
 えっと …… じゃあ、とりあえず、この能力を得た "きっかけ" から話そうか?
 クロノラビッツ - スキル・モーション -

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 それを語るには …… 。
 結構な時間を要してしまうけれど。
 それでも良い? 構わないっていうなら、うん、話すよ。
「いーよ。どーせヒマだし」
 海斗は、即答した。
 いや、まぁ、そういう返事が返ってくるだろうなとは思っていたけれど。
 そっか。うん、じゃあ、話すよ。上手く纏められるかどうか、わかんないけれど。
 難しく説明したら、海斗はきっと文句を言うだろうから、なるべくわかりやすく伝えないとね。
 でも、う〜ん …… どうしようかな。どこから、何から話せばいいだろう。

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「でもさ、聞いても対して面白くないと思うよ?」
「いーよ、別に。ヒマ潰しになればそれでいーよ」
 時狭間の居住区、リビングにあるソファにダラしなく座り、これまたダルそうに返した海斗。
 よっぽど暇なんだな。そんでもって、暇に耐えかねるタイプなんだな、なんてことを思いながら、大雅は淡く口元だけで笑んでみせた。
 大雅が持ち合わせている能力。生まれながらにしてその身に宿している能力に、海斗はずっと疑問を抱いていた。
 海斗や梨乃、ほかの契約者たちもまた、炎やら水やらの魔法を扱えるが、生まれ持った才ではない。
 彼等の能力は、そのどれもが、マスターによって与えられたものだからである。
 だからこそ、海斗は不思議で仕方がない。時狭間の生まれというわけでもない、普通の人間が、どうして特異な能力を持ち合わせているのか。
「どう説明すれば良いのかわかんないんだけど …… まぁ、仕組みは至って簡単だよ」
 狐の面を少しばかりズラし、視野を広げながら言う大雅。
 大雅が持ち合わせている能力は、その殆どが "操作" に該当する。
 核たるふたつの材料は "印" と "素"
 印とは、いつも大雅が指先で描く不思議な模様のことを示し、
 素とは、いわゆる属性。炎や水など、元素となる属性そのものを示す。
 指先で空中に小さな印を描き、出現させた闇の糸をスルリと海斗の手首に巻きつけ、実践しながら説明する大雅。
 海斗は、ケラケラ笑いながら手首に巻き付いた闇の糸を解いて言う。
「なぁるほどなー。便利だよな、それ」
「うーん …… まぁ、便利と言えば便利だけどね」
「オレは、炎しか使えないけどさ。お前は、色んなの使えるだろ。ちょっと羨ましかったりする」
「いや。一部は、人任せだよ。俺の純素は闇・風・水の三つだけだからね」
「純素? って、アレか。オレが持ってる炎の能力みたいなもん? メイン的な?」
「うん、そう。だから、俺が炎とか …… 純素として持ち合わせていない力を使うときは、負担が大きいんだ」
 炎など、大雅が純素として持ち合わせていない能力を使うことは極めて稀なことだが、
 状況によっては、それらを用いねばならないときもある。
 例えば、雷を弱点とする水の魔物と対峙してしまったとき。
 持ち合わせている純素である、闇でも風でも応戦するには不十分。ましてや水なんて、相殺されてしまうだけ。
 そんなときは、雷の力を用いて迅速にその場を乗り切ることしかできない。例え、心身に多大な負荷がかかるとしても。
 些か神妙な面持ちで説明する大雅を見やり、ボリボリと頭をかきながら納得する海斗。
「ふーん。そーなのか。でもさ、その〜 …… 純素じゃない属性は、どっから捻り出してんだ?」
「影虎だよ」
「ん。あぁ、あの陽気で面白いニーチャンか」
「うん。影虎は、俺とは真逆の純素を持ってるからね。闇だけは一緒なんだけど、他は逆素」
「ほうほう。っつーことは、影虎は〜 …… 炎とか雷とかが得意なわけだ?」
「うん。まぁ、ほかの妖に力を借りるときもあるけどね」
 そう言いながら、いつも持ち歩いている扇子を懐から取り出して揺らす大雅。
 大雅を護る使命を担う数多の妖たちもまた、それぞれが得意とする素を持っている。
 強烈な風の素を持ち合わせ、扇子の中に身を潜めている妖 "魔鎌" が、その代表格だ。
 本来、大雅が純素として持ち合わせている "風" なだけに、魔鎌の力を乗算すれば、その威力は更に上がる。
 このようにして、大雅は、状況に併せて自分の能力をうまく使いこなしているのである。
 だがまぁ、仕組みこそわかったものの、肝心なところは不明確なままだ。
 そういう仕組みで、そういう能力なんだということは理解った。
 でも、じゃあ、何で? 何で、そんな能力を持ってる?
 海斗は、納得いかない様子で、そう尋ねてみたのだが …… 。
「 …… さぁ。俺にもよくわかんない」
 大雅が、困った様子でそう返すものだから、疑問は解消されないまま、お蔵入り。
 本人がわからないと言っている以上、ああだこうだと尋ねるのは野暮ってものだ。
 藤二とか浩太なら、どういうことなんだろうって、熱心に調べようとしたりするだろうけれど、海斗はしない。
 大雅は、便利な能力を持ってる。それだけで十分。それ以上のことを根掘り葉掘り聞く必要なんてないと、海斗はそう思っている。
 まぁ、ただ単に深く追求したり考えたりすることが苦手というか嫌いなだけ、というのも否めなくはあるが。
「つかさー。そのまんまダイレクトに出したほうが早くね?」
 ポツリと、小さな声で言った海斗。
 それは詮索でも追及でもない。純粋な疑問だった。
 闇にしろ風にしろ水にしろ、そのままダイレクトに放出したほうが、確かに早い。
 印を描く必要性はあるのか? そういう属性を持っているなら、印なんて描かなくても使えるんじゃないのか?
 炎の力をその身に宿し、印なんぞ描かずともダイレクトにその力を自在に操る海斗が抱く疑問としては真っ当なものだ。
 大雅が説明した原理で言えば、海斗もまた、炎の素をその身に宿しているということになるのだから。
 海斗は、印なんぞ一度も描いたことがない。そもそも、印なんてものがあることすら知らなかった。
 大雅が指先で空中に不思議な模様を描く動作を初めて見た時なんて、さっぱり意味がわからなかった。
 まぁ、海斗の魔法と大雅の能力では、根本的な仕組みが違うということもあるが、
 結論から言えば、属性魔法の使い手という点は一緒。
 ひとつの属性しか持ち合わせていない海斗たちと、多数の属性を持ち合わせる大雅という相違はあるが、基盤は一緒だ。
 ならば、印なんて必要ないのではないか。その所作を取っ払えば、もっとスピーディに能力を使えるのではないか。
 海斗が口にした疑問には、そんな考え・提案が込められている。
「 …… そうだね。そう言われると、そのとおりなんだけど」
 淡く微笑みながら、先程、空中に描いた印を手先で払って掻き消す大雅。
 大雅は、海斗の疑問に答える想いを持ちながら、指先にフワリと風を灯した。
 見てのとおり、実際は、印なんぞ描かずとも、純素さえあれば、能力を使うことは可能だ。
 海斗が指摘したとおり、こうして能力を発動したほうが、圧倒的に早い。
 だが、大雅は、こうして能力を発動することを極端に嫌う。その理由は ――
 ブワッ ――
「へぶぁっ!?」
 ガシャァンッ――
 …… こういうことだ。
 要するに、印を描くという工程は、大雅にとって必要不可欠なものだということ。
 その工程を省いて能力を発動してしまうと、ご覧のとおり、どんなに使い慣れた素であっても暴発する。
 確かに素早く発動することはできるが、伴うリスクが大きすぎる。速度よりも正確性。大雅は、それを重視しているのだ。
「普段から制御修行はしてるんだけど …… やっぱり、印がないと安定しないんだよね」
 指先で揺れる風にフゥッと息を吹きかけて消し、苦笑しながら言った大雅。
 暴発した風、突風によって吹き飛ばされ、ソファごとひっくり返った海斗は、情けない体勢のまま激しく納得した。
「なるほどね。よ〜くわかった …… 」

 海斗が、そうして納得したのと、ほぼ同時のことだ。
 異国へ買い物に出かけていた千華と梨乃が、箱やら袋やらをたくさん抱えた状態で戻ってくる。
 居住区のリビング、足を踏み入れた千華と梨乃の目が、真っ先に捉えたのは、ひっくり返っているソファと海斗。
 千華は肩を竦めてフフフと笑いながら、
「やぁねぇ。海斗、あんた、何やらかしたの?」
 梨乃は少し心配そうな表情を浮かべながら、言った。
「 …… あ、あの、大雅くん。海斗が何か失礼なこと、したみたいで。ごめんなさい」
「ごるぁ、お前ら! カンチガイぶっかましてんじゃねーぞ! オレは被害者だぞ、いちおう!」
 ガバッと起き上がり、何が起きたのか、どういう状況なのかを必死に説明する海斗。
 だが、千華も梨乃も、海斗の言うことを信じようとはせず、どうせ、アンタが大雅くんを怒らせるようなことしたんでしょ、と肩を竦めるばかり。
 だから、そうじゃなくて。大雅の能力について、いろいろと話を聞かせてもらってて。ひっくり返されたのは、印と素の関係性についての ――
 信じてもらえないことがよっぽど悔しいのか、ムキになって説明する海斗。
 吹っ飛んだ拍子に帽子もどこかへと飛んでいってしまい、海斗の髪はボッサボサになっている。
 ギャーギャー騒ぎながら説明する海斗の姿を見やる大雅は、堪え切れなくなって、クスクス笑ってしまった。
 だって、まるで、寝坊したことを咎められて、必死に言い訳している子供みたいなんだもの。
「だからぁ! おいこら、千華! 人の話聞けって!」
「はいはい。わかったから、ちょっと静かにしなさい。近所迷惑よ」
「近所もクソもあるか! ここにはオレたちしかいねーだろーがよー!」
「大雅くーん。そろそろ夕飯の時間だけど。どうする? 食べてく? 食べていくならマスターに言っておくわよ?」
「 …… あっ、えぇと。じゃあ、ご馳走になろうかな」

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 The cast of this story
 8372 / 王林・大雅 / 18歳 / 学生
 NPC / 海斗 / 17歳 / クロノラビッツ(時の契約者)
 NPC / 梨乃 / 17歳 / クロノラビッツ(時の契約者)
 NPC / 千華 / 24歳 / クロノラビッツ(時の契約者)
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 Thank you for playing.
 オーダー、ありがとうございました。