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■クロノラビッツ - カリック・アロウ -■

藤森イズノ
【8372】【王林・大雅】【学生】
 時狭間の東西南北、各所にある四つの巨大クレーター "カリック・アロウ"
 底の見えぬそのクレーターに落ちたら最後。二度と戻ってくることは叶わない。
 カリック・アロウは、ずっと昔から時狭間に存在しているものなのだが、未だに詳細は不明。
 気が遠くなるほど永い時間、時の監視塔にて、カリック・アロウの調査を続けているマスターにも、
 なぜ、このような巨大なクレーターが生成され、消えることなく延々とそこに存在しているのかわからないそうだ。
 わからないからこそ、マスターは、時狭間で暮らす愛しき子ら、契約者たちに警告を飛ばし続ける。
 "あれ" は、あらゆる世界の時間が交錯するこの空間だからこそ生じ、決して消えぬ "害" だ。
 迂闊に近寄るな。許可なく勝手に調査するだなんて、もってのほかだ、と。

「どう? 梨乃」
「もう …… ちょっと …… 」
 時狭間、東にあるカリック・アロウにて、何やらおかしなことをしている梨乃と千華。
 近付いてはいけないと、言い聞かされていることは承知の上。
 二人は、とある "花" を採取するため、ここに来た。
 マオリというその花は、チューリップによく似た形をしている黒い花。
 この花は、特定の "魔具" を作る際、調整剤として用いられる貴重な代物として知られており、
 カリック・アロウ近辺にしか咲かず、決して余所で採取することは出来ない。
 ※ ちなみに、魔具というのは、その名のとおり、魔法で構成された物質を示す
 梨乃と千華は、資料室の文献に記されていた "マオリの指輪" という魔具に惹かれ、制作することを決意。
 マオリの指輪は、素晴らしい縁に恵まれるだとか、好きな人に想いが届くだとか、恋まじないのような効果を持つらしい。
 本当なのか否かは不明だが、やはり、梨乃も千華も女の子。恋のおまじないや占いを好むのだろう。
「うぅ〜 …… あとちょっとなのに …… 」
 泣きそうな表情を浮かべつつ、ぐぐっと腕を伸ばす梨乃。
 赴いて早々にマオリを発見したものの、際どいところに咲いているものだから、届かない。
 もっと採取しやすいところに咲いていれば良いのだが、残念ながら、確認できるマオリは、これだけ。
 梨乃の身体を支えながら、千華も一緒に腕を伸ばして採取を試みるが、やはり届かない。
 二人がその身に宿している魔力を用い、魔法で採取すれば何のことはないが、
 参ったことに、カリック・アロウ付近は、一切の魔法が使えない。
 どうやら、クレーターの奥から生じている煙が関与しているようなのだが、やはり、詳細は不明である。
 一緒に腕を伸ばしてみたり、居住区から持ってきた棒やら網やらの道具を用いてみたりと、マオリの採取に躍起になる二人。
 本人らも、何故、自分たちがここまで必死になっているのか、わかっていないだろう。
 目の前にあるのに …… 届かない。そのもどかしさが、二人をムキにさせる仕様。
 それはもはや、意地でしかない。だからこそ、二人は忘れてしまっていた。
 マスターの言いつけを守らず、ここへ来てしまったことに対する罪悪感。
「り、梨乃 …… 上 …… 」
「えっ …… ?」
 何が何でも採取してやると躍起になるがあまり、いつの間にか薄れていた、その罪悪感。
 梨乃と千華は、上空でバサバサと翼を揺らし、こちらを睨みつける不気味な生物を目にすることで、
 ようやく、自分たちの犯した過ち、言いつけを守らなかった "罪" の重さを実感した。
 カラスと人間が同化したかのような、異様な生物。その姿は、さながら悪魔。
 昔、まだ、生まれて間もない頃。マスターが明け方まで何度も読み聞かせてくれた絵本に、
 コレによく似た悪魔が登場していたような気もするが、そんなことを考えている暇なんぞありはしない。
 突如、その場に現れたその不気味な生物は、しばらく二人を舐めるように見やり、
 ケッケケケと、これまたおかしな笑い声をあげ、襲いかかるのだから。
「きゃああああああああっ!」
「り、梨乃っ!」
 クロノラビッツ - カリック・アロウ -

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 時狭間の東西南北、各所にある四つの巨大クレーター "カリック・アロウ"
 底の見えぬそのクレーターに落ちたら最後。二度と戻ってくることは叶わない。
 カリック・アロウは、ずっと昔から時狭間に存在しているものなのだが、未だに詳細は不明。
 気が遠くなるほど永い時間、時の監視塔にて、カリック・アロウの調査を続けているマスターにも、
 なぜ、このような巨大なクレーターが生成され、消えることなく延々とそこに存在しているのかわからないそうだ。
 わからないからこそ、マスターは、時狭間で暮らす愛しき子ら、契約者たちに警告を飛ばし続ける。
 "あれ" は、あらゆる世界の時間が交錯するこの空間だからこそ生じ、決して消えぬ "害" だ。
 迂闊に近寄るな。許可なく勝手に調査するだなんて、もってのほかだ、と。

「どう? 梨乃」
「もう …… ちょっと …… 」
 時狭間、東にあるカリック・アロウにて、何やらおかしなことをしている梨乃と千華。
 近付いてはいけないと、言い聞かされていることは承知の上。
 二人は、とある "花" を採取するため、ここに来た。
 マオリというその花は、チューリップによく似た形をしている黒い花。
 この花は、特定の "魔具" を作る際、調整剤として用いられる貴重な代物として知られており、
 カリック・アロウ近辺にしか咲かず、決して余所で採取することは出来ない。
 ※ ちなみに、魔具というのは、その名のとおり、魔法で構成された物質を示す
 梨乃と千華は、資料室の文献に記されていた "マオリの指輪" という魔具に惹かれ、制作することを決意。
 マオリの指輪は、素晴らしい縁に恵まれるだとか、好きな人に想いが届くだとか、恋まじないのような効果を持つらしい。
 本当なのか否かは不明だが、やはり、梨乃も千華も女の子。恋のおまじないや占いを好むのだろう。
「うぅ〜 …… あとちょっとなのに …… 」
 泣きそうな表情を浮かべつつ、ぐぐっと腕を伸ばす梨乃。
 赴いて早々にマオリを発見したものの、際どいところに咲いているものだから、届かない。
 もっと採取しやすいところに咲いていれば良いのだが、残念ながら、確認できるマオリは、これだけ。
 梨乃の身体を支えながら、千華も一緒に腕を伸ばして採取を試みるが、やはり届かない。
 二人がその身に宿している魔力を用い、魔法で採取すれば何のことはないが、
 参ったことに、カリック・アロウ付近は、一切の魔法が使えない。
 どうやら、クレーターの奥から生じている煙が関与しているようなのだが、やはり、詳細は不明である。
 一緒に腕を伸ばしてみたり、居住区から持ってきた棒やら網やらの道具を用いてみたりと、マオリの採取に躍起になる二人。
 本人らも、何故、自分たちがここまで必死になっているのか、わかっていないだろう。
 目の前にあるのに …… 届かない。そのもどかしさが、二人をムキにさせる仕様。
 それはもはや、意地でしかない。だからこそ、二人は忘れてしまっていた。
 マスターの言いつけを守らず、ここへ来てしまったことに対する罪悪感。
「り、梨乃 …… 上 …… 」
「えっ …… ?」
 何が何でも採取してやると躍起になるがあまり、いつの間にか薄れていた、その罪悪感。
 梨乃と千華は、上空でバサバサと翼を揺らし、こちらを睨みつける不気味な生物を目にすることで、
 ようやく、自分たちの犯した過ち、言いつけを守らなかった "罪" の重さを実感した。
 カラスと人間が同化したかのような、異様な生物。その姿は、さながら悪魔。
 昔、まだ、生まれて間もない頃。マスターが明け方まで何度も読み聞かせてくれた絵本に、
 コレによく似た悪魔が登場していたような気もするが、そんなことを考えている暇なんぞありはしない。
 突如、その場に現れたその不気味な生物は、しばらく二人を舐めるように見やり、
 ケッケケケと、これまたおかしな笑い声をあげ、襲いかかるのだから。
「きゃああああああああっ!」
「り、梨乃っ!」

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 言いつけを守らなかったからだ。
 マスターの言いつけは絶対なのに。守らなかったから。だからこれは、当然の報いなのだ。
 梨乃と千華は、そう強く思い、そして、強く恥じ、強く悔みながらギュッと固く目を閉じた。
 突如現れた不気味な魔物。得体の知れぬその生物に、命を獲られることを覚悟した上で。
「 ………… ?」
「 …… あ、ら?」
 だが、その覚悟と裏腹に、静寂。
 二人は、おそるおそる、ゆっくりと目を開いてみた。
 すると、悪魔の不気味な顔がドドーンと視界を埋めつくす。
 数十センチというその至近距離に、梨乃と千華は、再び悲鳴をあげた。
「きゃあああああああ!」
「いやああああああー!」
 だが、どんなに大きな声で叫んでも、カリック・アロウが全てを吸いこんでしまうため、二人の悲鳴が時狭間に響き渡ることはない。
 千華に抱きつき、胸に顔を埋めて震える梨乃。おそらく、梨乃の震えは、恐怖よりも後悔に対するところが大きいだろう。
 梨乃は、責任感が強い。マスターの言いつけを守らず勝手な行動をとったことなんて、今まで一度もなかった。
 今回、こうして、カリック・アロウに赴き、マオリを採取しようと話を持ちかけたのは、千華のほう。
 いけないことだと知りつつ、その誘いに乗ってしまった梨乃にも非はあるが、
 そもそも、あんな話をしなければ、持ち掛けなければ、こんなことにはならなかった。
 つまり、悪いのは私。無責任だとマスターに叱られるのは、私だけで良い。
 そう思った千華は、梨乃をギュッと抱きしめつつ、ブツブツと呪文を唱えて、辺りに無数の光の玉を出現させた。
 光の魔法は、本来、治癒に用いるべきもの。攻撃に使えないこともないが、炎や雷の魔法の威力には遠く及ばない。
 でも、やるしかない。せめて、数秒、悪魔の目を眩ますことさえできれば、その間に梨乃だけでも逃がしてやることが可能なはず。
 光玉の詠唱を続ける千華。梨乃は、相変わらず千華に抱きついたまま、恐怖と後悔に身体を震わせている。
 うまくいくかどうか。わからないけれど、やってみないことには始まらない。
 相手は悪魔。定説どおりならば、闇に生きる悪魔にとって、眩い光は克服しようのない弱点でもある。
「 …… いくわよ」
 数え切れぬほどの光玉を出現させ、悪魔をキッと睨みつけた千華。
 パチンと指を弾けば、無数の光玉が一斉に弾けて、悪魔の視力を奪う ―― はずだった。

「大丈夫 …… ?」
 弾く、一歩手前。千華は、弾き損ねた指と、剥き出しにした敵意のやり場を失ってしまう。
 バッサバサと豪快に紫色の翼を揺らす巨大な魔鳥。その背に乗り、梨乃と千華、二人の身を案ずる …… 大雅の姿。
 白馬に乗った王子様 …… ならぬ、魔鳥に乗った大雅様。この状況下での登場は、正義のヒーローそのもの。
 だが、千華は、ホッとした安堵の表情を浮かべるわけでもなく、喜ぶわけでもなく、ただただ、茫然としていた。
 それまで、護るようにして梨乃をギュッと抱きしめていた腕も、力なくヘニャリと緩む。
 その脱力感に異変を覚えた梨乃は、おそるおそる顔を上げ、千華を見やる。
 空を見上げて呆ける千華の表情から、異変の理由が上空にあると察した梨乃。
 千華の見やる方向、目線を追うようにして、上空を確認することで、梨乃もまた、ポカンと呆けることになる。
「え …… ?」
 二人の見やる先、魔鳥の背に乗る大雅が、淡く笑みながら悪魔を手招いてたのだ。
 だが、梨乃と千華がポカンと呆けた一番の理由は、手招きという行為ではなく、その先。
 大雅の手招きに、悪魔が、すんなりと応じたこと。
 更に、大雅の傍へ移動する最中、悪魔がその姿形を変えたという点にある。
 先程までは、あきらかに悪魔! って感じの恐ろしい外見をしていたというのに、
 今現在、大雅の向かいにチョコンと座る悪魔は、怖いという印象なんぞまるで与えない姿をしている。
 ややクセっ毛で、毛先がクリンと外ハネしている金色の髪、褐色とはいえ、つくりもののようにキメ細かく美しい肌、
 その褐色の肌に映える純白のローブは民族衣装を思わせ、首飾りには、小さな鏡がジャラジャラとたくさん吊り下がっている。
 大雅の向かいで両手を膝に置き、ぴしっと姿勢を正して正座する、何とも可愛らしい少年悪魔。
「こんなところにいたんだね。探したよ」
 ニコリと優しく微笑み、そう言って少年悪魔の頭を撫でた大雅。
 何が何やら、さっぱりわからない梨乃と千華は、地上から上空の大雅に向けて説明を求める。
 どういうことなの〜!? と、梨乃と千華は地上から大きな声で叫んでいるが、
 カリック・アロウに飲まれて、その声は殆ど届いていない。
 だがまぁ、二人の様子を見れば、説明を求めていることくらい、どんなお馬鹿さんでもわかる。
 言葉(声)で説明したところで、カリック・アロウに飲まれてしまい、二人の耳には届かないということで、
 大雅は、直接、梨乃と千華の "心" に語りかける手段で、二人が求む説明を届けた。
「え〜っと …… 」
 この子は、魔界に君臨する王(悪魔王)の身の回りの世話をする下級悪魔種族 "キーヤ" の一人。
 生まれる前から、王に奉仕することが決定づけられている種族だけど、彼等はそれを喜びとしていて、苦痛の類は一切感じない。
 まぁ、彼等に限らず、王への奉仕を使命とする下級悪魔の種族は、みんなそれ(奉仕)に対して喜びを覚えているみたいだけど。
 えぇとね …… それで、このキーヤっていう種族は、変身を得意としている種族でもあって。
 戦闘能力が高くない分、強い悪魔とかに変身して、相手を臆させたりするんだ。
 だからね、さっきの姿も一時的に変身していただけであって、今のこの姿こそが、この子の本来の姿なんだよ。
 まぁ、二人ともビックリしただろうけど …… 悪気はないんだ。この子は、意味もなく、誰でも彼でも驚かせたりしないから。
 ちゃんと、理由があるんだ。この子が、二人を驚かせた理由。
 見て。そこんところに、チューリップみたいな形をした黒い花があるでしょ?
 その花ね、マオリっていう名前の花で。魔界にもたくさん咲いてて、悪魔王が好む花でもあるんだ。
 この子は、その花を採りに来たんだと思う。で、多分、花の採取の邪魔をされてる気がして、驚かせたんだと思うよ。
「 …… ね?」
 ニコリと微笑む大雅。
 キーヤの少年悪魔は、少し申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、コクリと頷いた。
 そういうことだったのか、と納得こそするものの、どうぞどうぞと、花を少年悪魔に譲るわけにはいかない。
 一輪しかないマオリの花。魔界にたくさん咲いていようとも、時狭間でこの花を見つけるのは至難の業。
 魔界とやらにたくさん咲いているのなら、少し分けてもらえば済むような気もするが、
 マオリの花は "カリック・アロウの近辺" にしか咲かず、余所では採取できない代物だ。
 ゆえに、時狭間以外に存在するとなれば、それは結果的に偽物であり、本来の効能は間違いなく消失している。
 偽物では意味がない。梨乃と千華は、自分達が "時狭間に咲く" マオリの花を必要としていて、採取に来ていたことを大雅に伝えた。
「あれ …… ? なんだ、そうだったの?」
 魔界に咲くマオリの花(レプリカ)は、すべて、キーヤが管理している。
 キーヤという種族は、花粉からあらゆる花を咲かすことができるという特異な能力も持ち合わせているのだ。
 つまり、この少年悪魔にとって必要なのは、源花(※本物のという意味合い)マオリの花粉のみであり、更にその量もごく僅かで構わない。
 梨乃と千華が、マオリの花を欲していることを伝え、花粉だけ少し貰ったら、あとは二人は譲ってあげてと伝えた大雅。
 キーヤの少年悪魔は、コクリと頷き了承すると、際どいところに咲いていたマオリの花を長い尻尾で容易く採取し、
 花粉だけを少し拝借したあと、梨乃と千華に、マオリの花をスッと差し出した。
「あ、ありがとう」
 梨乃が花を受け取ると、すぐに、尻尾をシュルシュルと元の長さに戻したキーヤの少年悪魔。
 遣り取りを見ていた大雅は、ニコリと淡く微笑んで、キーヤの少年悪魔の頭を撫でながら言った。
「じゃあ、帰ろうか。あいつ、すっごい心配してるからさ」
 大雅の言う "あいつ" とは、妹のこと。
 幼いながらも悪魔嬢として魔界を統べる大雅の妹は、
 散歩に行くと言ったまま、なかなか戻ってこないキーヤの少年悪魔の身を案じていた。
 迷子になったのかもしれない、どうしよう、と目を潤ませながらすがりついてきた可愛い妹。
 大雅は、兄として、愛しい妹の不安を払ってやろうと、魔鳥に乗って各所を探しまわっていたのだ。
 まぁ …… 契約者でも関係者でもないキーヤの少年悪魔が、どうやって時狭間に来たのか、という疑問は残るが、
 こうして無事に見つけられたことだし、そのあたりのことは、妹のところに連れていってから色々と聞かせてもらえば良いだろう。
「大雅くん、ありがとう」
「助かったわ。妹さんによろしくね」
 地上から、見上げて感謝を述べる梨乃と千華。
 どういたしまして、っていうか、こちらこそ。今日は色々と忙しくて、すぐに戻らなきゃならないから、また明日。
 明日は、妹と一緒に来るよ。多分、あいつ、直接、二人にお礼言いたいとか何とか言うと思うから。
 二人にその気はなくても、結果的に二人のおかげでこうして、この子を見つけられたんだしね。 
 あと …… そうだ。その花、必要って言ってたけど、何に使うの?
 まぁ、真面目な二人が必要とするくらいだから、よっぽどの目的があるんだとは思うけど。
 今日は時間なくて聞けないから、明日、聞かせてね。何に使うのか。それを使って何か作るつもりなら、完成品も見たいな。
 俺も、その花、マオリの花って代物、興味あるんだ。源花は、特にね。色んなことに使えそうだなぁ、って。
「じゃあ、また明日」
 バッサバサと翼を揺らして飛行する魔鳥。
 魔鳥の背中から、ヒラヒラと手を振る大雅とキーヤの少年悪魔。
 ゆっくり遠のいていくその姿を見送った後、梨乃と千華は顔を見合わせクスクス笑った。
 だが、そんな和やかな雰囲気も束の間。めでたしめでたし、とはいかない。
 梨乃と千華、二人の犯した罪が消えたわけではないのだから。

 *

「まったく …… 困ったものじゃな」
 ハァ〜と大きな溜息を吐き落とすマスター。
 当然のことながら、居住区に戻った梨乃と千華は、マスターに叱られた。
 二人が、カリック・アロウに無断で赴いたことを知り、マスターは、居住区で二人を待っていたのだ。
 とはいえ、今後無断でカリック・アロウに近付かないことを約束に、今回は厳重注意のみで済んだ。
 契約の解除、時狭間からの追放もありうると覚悟していただけに、梨乃も千華もホッとした表情を浮かべている。
 居住区のリビング、梨乃と千華がマスターにお説教された現場には、仕事を終えて戻ってきたばかりの海斗と藤二の姿もある。
 浩太は、まだ仕事から戻っていないようで、この場にはいない。
「ツメが甘いなー。オレならバレないよーに、もっとウマくやるっつーの。そだなー、例えばー …… 」
「こりゃ! 海斗! お前さん、ま〜た何かよからぬことを考えておるじゃろ」
 ソファにダラしなく座り、お菓子を頬張りながら言う海斗に眉をひそめ、杖で海斗の腹をグリグリするマスター。
「いだだだだ! マスター、痛い! ジョーダンだってば、ジョーダン!」
 ケラケラ笑いながら、身を捩ってマスターのグリグリから逃れる海斗だが、
 海斗のこういう発言は、冗談に聞こえないため、マスターは、しつこくグリグリを繰り返してお灸をすえる。
 海斗とマスターの、いつもの遣り取り。藤二は、その遣り取りに苦笑を浮かべつつ煙草に火をつけ、尋ねた。
「で、お前ら、その花、何に使うつもりだァ?」
 藤二の問いかけに、梨乃と千華は、また顔を見合わせてクスクス笑う。
 恋のおまじないに使うの。なんて、そんなこと言えない。とっておきの恋まじないだもの。男の子には内緒だよ。

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 The cast of this story
 8372 / 王林・大雅 / 18歳 / 学生
 NPC / 海斗 / 17歳 / クロノラビッツ(時の契約者)
 NPC / 梨乃 / 17歳 / クロノラビッツ(時の契約者)
 NPC / 藤二 / 24歳 / クロノラビッツ(時の契約者)
 NPC / 千華 / 24歳 / クロノラビッツ(時の契約者)
 NPC / マスター / ??歳 / クロノ・グランデ(時の神)
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 Thank you for playing.
 オーダー、ありがとうございました。