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■碇麗香の百合な夜■

よしずみ
【8001】【エミリア・ジェンドリン】【アウトサイダー】
 日曜、夜。都内の洒落たバー店内。月刊アトラス編集長碇・麗香(いかり・れいか)はかなり飲んでいた。と言うかほとんど「泥酔」に近い状態だった。
「だからぁ、私だって人恋しい夜もあるのよ! 私もう28よ!?」
 バーテンダーの男性はなんとか笑顔を保ってグラスを拭いていた。麗香の「私だって人恋しい夜もあるのよ!」は、もう3度目だ。
「もうお酒は止めといたほうが良いんじゃないですか?」
 バーテンダーは遠慮がちに言った。
 しかし――
「まぁだ私ぜんぜん酔ってなぁいの!」
 ダダをこねる子供のように言った。大抵の酔っ払いが言うセリフである。
「ふー、なんか暑くなってきちゃった」
 麗香はそう言って胸元のボタンをひとつ、ふたつと外していった。豊満な胸が左右に揺れ、胸の谷間が大きく露出し、バーテンダーは目のやり場に困った。
「次、ジン・ライムね」
「あの、本当にもうお酒は……」
「ジン・ライム!」
 バーテンダーは説得を諦めた。夜遅く、他に客もいない。麗香が気分が悪くなったら自分が介抱すれば良いと思っていた。
「ジン・ライムです」
 コトリ、と置かれたグラス。麗香はそれを一気に飲み干した。
「ふー……暑いわ。上脱いじゃっていいかしら?」
「それは勘弁して下さい、お客様」
 バーテンダーは何とか麗香を止めた。
「つまーんない。私もう帰る! お金置いとくわよ」
 麗香はフラフラと立ち上がった。
「タクシーは呼ばなくていいわよ。歩いて帰るから」
 麗香はよろけながら帰途についた。
 徒歩で自宅に向かう碇麗香。その道中で麗香と遭遇する人々のちょっとエッチな体験とは――。

※1〜5人。女性PCの参加を前提としています。男性PCの参加も一応可能ですが、出番が極端に少なくなる恐れがあります。
碇麗香の百合な夜

○泥酔・麗香さん
 日曜、夜。都内の洒落たバー店内。月刊アトラス編集長碇・麗香(いかり・れいか)は「泥酔」に近い状態だった。
「だからぁ、私だって人恋しい夜もあるのよ! 私もう28よ!?」
 バーテンダーの男性はなんとか笑顔を保ってグラスを拭いていた。麗香の「私だって人恋しい夜もあるのよ!」は、もう3度目だ。
「次、ジン・ライムね」
「あの、もうお酒は……」
「ジン・ライム!」
 バーテンダーは説得を諦めた。
「ジン・ライムです」
 コトリ、と置かれたグラス。麗香はそれを一気に飲み干した。
「タクシーは呼ばなくていいわよ。歩いて帰るから」
「待ってください。そんなに酔った女性が一人で帰宅……危険ですよ」
 謎の女性の声に麗香が振り返る。

○美乳女子会勃発
 金髪ショートカットの健康美溢れる女性がグラスを傾けていた。麗香の視線がその金髪の女性の胸元で止まる。
(お、大きい……)
 麗香も豊満な肉体をもっている。が、「女性の乳房は人を魅了して引き寄せるための器官だ」といっても過言ではない。男も女も皆、乳房が大好きなのだ。
 ただ世間体があるので、そんなことを堂々と言って回ったりはしないだけのこと。
「じゃ、じゃあ、少し休んでから帰ろうかしら」
 麗香はフラフラとその金髪の女性の横、カウンター席に腰掛ける。麗香にそんな気(け)は無いハズなのに顔の火照りが止まらない。
「い、碇麗香です。出版社で編集長勤めてます、よろしく」
 クールビューティーの女王――の「ハズの」麗香が顔を赤らめて頭を下げていた。
「私、隠岐明日菜です。明日菜って呼んでください。26歳です」
「あ、私より年下なんですね……」
「何をかしこまってるんですか。あははっ、面白い方ですねっ!」
 明日菜はスクリュードライバーを飲みつつ軽快に笑い、さりげなく麗香にジンライムを追加。心の中で(落とせる!)とガッツポーズした。
「あたしも一緒に飲んでもいいかしら?」
 第三者の声。麗香の左に明日菜、麗香の右席に腰掛けた銀髪の少女に、麗香と明日菜は目を瞠った。
「あ、そんなにじろじろ見ないでね♪ バスト108センチのKカップです。エミリア・ジェンドリン、エミリアでよろしく」
麗香「…………」
明日菜「…………け、Kカップ?」
 先に正気に返ったのは明日菜だった。
「いえ、Kカップは見れば分かるとして、お酒は二十歳からよ?」
 遠回しにエミリアと名乗る少女≠フ年齢を尋ねる明日菜。
「いくつに見えますかねぇ? マスター、オレンジジュースもう一杯」
 エミリアはあまり敬語を遣わず、オレンジジュース(?)をオーダーしつつ左手を麗香の太腿の上に置く。
「あっ……」
 アルコールで火照る麗香の身体にエミリアの接触。酔っているとき、人間の身体は警戒心が薄れ他者を受け入れやすくなっている。エミリアはそのまま麗香の美脚を撫で回す。堪えきれなくなった麗香が「はぁ、はぁ」と熱い息を吐き始めた。
 カウンター下の接触に明日菜も気付いた。
「ちょっとあなた! 何をやっているんですか!」
「足を撫でてるだけよ。麗香のことは知ってるけどさ、狙われてるみたいだからあたしが助けに入ったつもりなんだけど?」
 明日菜がたじろぐ。
「ね、狙われてるってのは……麗香さんが私に?」
「うん」
「…………」
 三人の沈黙。ただ一人麗香は完全に酔いつぶれ、ぱたりとカウンターに上半身を倒して寝入ってしまった。

○麗香、幼児退行
 麗香が熟睡して女子会から脱落。カウンターで寝息を立て始めたのでマスターがそっと毛布を掛けた。
 しばし黙々と飲む明日菜とエミリア。
 ――スクリュードライバー:ウォッカとオレンジジュースのカクテル。
 麗香を挟んでオレンジ色の飲み物を飲む、オレンジ繋がりの明日菜とエミリア。この偶然は何なのだろう。
「「ふふっ……」」
 二人が同時に吹き出し、思わず顔を見合わせる。
「エミリアさん?」
 エミリアは自嘲気味に笑って答える。
「いや、あたしらオレンジ繋がり≠セとかそんなことをちょっと、ね……」
「私と同じことを考えていましたか……」
「――――」
 エミリアはグラスを置き、前を見たまま口を開く。銀髪が店内の間接照明に照らされて幻想的に輝いている。
「ねぇ明日菜――って、あたし敬語遣わないキャラなんだけどさ、誰かの好きな人の名前を告白させる方法、教えてあげましょうか」
「誰の好きな人ですか?」
「例えばここの、眠れる森の美女≠フ好きな人よ。『人恋しい夜もある』って散々喚いてたんだし、誰のことだか訊いてもバチはあたらないでしょ」
「なるほど……私はここで見てますね」
 そう言われてエミリアはニヤと笑う。
「自分は手を汚さないつもり? ま、いいけどね。イイ思い≠キるのはあたしだけで」
 エミリアは麗香の身体を起こし、麗香の顔を自らのKカップの胸に抱え込む。
 麗香の頭は柔らかい乳房に包まれ、エミリアの心臓の鼓動が「トクン、トクン……」と直接響く。寝込んでいた麗香の顔が安心と快楽の表情に変わる。
「今、麗香はあたしに包まれて幼児退行してるの。母親の子宮の中にいるときと同様の安心と弛緩。あたしが質問すれば麗香の性癖でも好きな人の名前でもなんでも答えさせられるわよ」
 そう言って麗香のサラサラの髪を撫でるエミリア。
 麗香は柔らかい乳房の感触に包まれ頭も優しく撫でられ、「ママぁ……」と寝言を言った。完全にエミリアの術中に陥っている。
 固唾を呑んで見守る明日菜。このままこの美女の――麗香の過去や好きな人の名前を聞き出せるのか。
 エミリアは「よしとし」と麗香をあやしながら言う。
「可愛い麗香、ママに教えて。あなたは何故ヤケ酒を飲んでいたの? 誰かに振られたの? 相手は男? 女?」
 麗香が口を開く。
「わ……私は……今日……」
「ちょっと待って!」
 明日菜の大声が店内にビリリと響き渡った。
 麗香が目覚めて周囲を見渡す。何故かエミリアに抱かれていた――身体を預けていたと気付き、「すみません!」と居ずまいを正す。
 明日菜は毅然と告げる。
「それ≠ヘ間違っていると思います。訊くなら訊くで信頼関係を築いて、お互いに踏み込める段階までコミュニケーションをとってから尋ねるべきです。怪しい方法で無理矢理訊くのは――多分、違います」
 エミリアは口を尖らせる。
「あなたも麗香を狙ってたくせにー。合理的なののどこがいけないのよ」
 明日菜は黙って首を振る。
 傍観していたバーテンダーが告げる。
「お客様方、看板でございます」

○明日菜のマンションで一夜
 リビングだけで百帖はあろうかという広いマンション。バー近くの明日菜の根城である。
 再び寝入った麗香をお姫様だっこした明日菜。……の背後にエミリア。
「麗香さんは介抱しますが何故あなたまでいるのかしら、エミリアさん?」
「いや、なんか二人にしたらヤバイ気がしたから」
「エミリアさん、せめてタクシー代を払おうという気はないのかしら?」
「三人仲良く寝ようぜー。ベッドの布団、床に広げれば三人で雑魚寝出来るでしょ」
 噛み合わない二人だった。
 数分後、シャワーを浴びて歯を磨いた三人(麗香は寝ていたのでエミリアが磨いた)。三人はフローリングに広げた布団に雑魚寝した。もう桜の咲く季節。布団も立派なもので風邪を引く心配はなかった。
 眠りに入る三人。真っ先に明日菜が寝息を立て始め、エミリアの意識も朦朧としてくる。
 不意に麗香の寝言が聞こえてきた。
「私……さみしくて……」
 エミリアの目の前に麗香の顔があり――その両目からぽろりと涙がこぼれた。
(――麗香……)
 何と声をかければいいのか分からない。それに麗香は寝ているのだ。そっとしておこう――。そう思い目を閉じようとすると麗香に抱き寄せられた。
(えっ、ちょっ!?)
 ちゅっ……
 麗香の唇は涙に濡れていたけど、温かかった。エミリアは麗香の頬を撫で、
「お休み、麗香」
 そう告げて、長い一日が終わった。

○そんな出会いの話
 明け方、目覚めてコーヒーを飲む三人。
「一緒にモーニングコーヒーを飲む人たちは特別な関係だって言いますね」
 そう言う明日菜。麗香が疑問を口にする。
「あの……私、昨日のことあんまり覚えてないんだけど、おっぱいを枕にしたりキスしたりとか……してないわよね? 初対面のあなた方に」
「おっぱい枕とかキスとか、それほど大したことじゃないでしょう」
 とエミリア。
「昨夜覚えてます? 酔っぱらった麗香さん、私に見とれて真っ赤になってたんですよ?」
 と明日菜。
「えっ、二人とも、冗談でしょ!?」
うろたえる麗香。
 二人は意味深に笑い、麗香も何故か笑えてくる。
 昨夜はお酒に飲まれてしまった。でもそのお陰でこんな魅力的な二人の女性と出会えたのだ。

 ――こんな出会いも、悪くない――


<おわり>

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
2922/隠岐・明日菜/女性/26歳/何でも屋
8001/エミリア・ジェンドリン/女性/19歳/アウトサイダー
NPC 碇・麗香(いかり・れいか)

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■         ライター通信          ■
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 麗香さんがこんなことに(笑
 明日菜ストーリーでは麗香は明日菜に唇を許し、エミリアストーリーではエミリアに。それは発注PCの特権。
 作中で名前は、苗字・名前のうち呼びやすい(と思われる)方で呼ばれるようにしています。
 近々再び窓開け予定です(恐らく東京怪談ウェブゲーム(未定))。
 またのご参加をお待ちしておりますm(_ _)m。