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■LOST■

水貴透子
【8504】【松本・太一】【会社員/魔女】

『ログイン・キーを入手せよ』

それがLOSTを始めて、ギルドから与えられるクエストだった。

そのクエストをクリアして『ログイン・キー』を入手しないと他のクエストを受ける事が出来ないと言うものだった。

クエストにカーソルを合わせてクリックすると、案内役の女性キャラクターが『このクエストを受けますか?』と念押しのように問いかけてくる。

「YES‥‥っと」

その途端に画面がぐにゃりと歪んでいき、周りには海に囲まれた社がぽつんとあった。

「あの社には大切な宝があるんだ、だけどモンスターがいて‥‥お願いだから宝が奪われる前にモンスターを退治しておくれよ」

社に渡る桟橋の所に少年キャラが立っていて、桟橋に近寄ると強制的に話しかけてくるようになっているようだ。

「ふぅん、まずはモンスターを退治するだけの簡単なクエストか」

小さく呟き、少年キャラが指差す社へと渡っていく。

そこで目にしたのは、緑色の気持ち悪いモンスターと社の中の中できらきらと輝く鍵のようなアイテムだった。



―― LOST ――

『ログイン・キーを入手せよ』
それがLOSTを始めて、ギルドから与えられるクエストだった。
そのクエストをクリアして『ログイン・キー』を入手しないと他のクエストを受ける事が出来ないと言うものだった。
クエストにカーソルを合わせてクリックすると、案内役の女性キャラクターが『このクエストを受けますか?』と念押しのように問いかけてくる。
「YES‥‥っと」
その途端に画面がぐにゃりと歪んでいき、周りには海に囲まれた社がぽつんとあった。
「あの社には大切な宝があるんだ、だけどモンスターがいて‥‥お願いだから宝が奪われる前にモンスターを退治しておくれよ」
社に渡る桟橋の所に少年キャラが立っていて、桟橋に近寄ると強制的に話しかけてくるようになっているようだ。
「ふぅん、まずはモンスターを退治するだけの簡単なクエストか」
小さく呟き、少年キャラが指差す社へと渡っていく。
そこで目にしたのは、緑色の気持ち悪いモンスターと社の中の中できらきらと輝く鍵のようなアイテムだった。

視点→松本・太一

 先日、松本・太一は初めて『LOST』をプレイしてみた。
 その時にゲーム内で『ログイン・キー』という重要アイテムを入手していたのだが、不思議な事にそれは現実世界の松本自身にも届いていたのだ。
「最近のゲームってのは、キャラクターが持ってる記念品を実際にくれるのか。スゴイねぇ‥‥何かのキャンペーン中だったのかね」
 いつのまにか持っていた『ログイン・キー』を見ながら松本が呟く。
(それに振動機能、立体音響‥‥同じゲームでも今と昔で随分と変わったもんだなぁ)
 しみじみと心の中で呟く松本だったが、実際はLOST内でそんなキャンペーンもなければ、いつ届いたのか分からないアイテムを持つ事もない。
「まぁ、いつ受け取ったとか思い出せないし疑問は残るんだけど‥‥暇つぶしにはなるかな」
 松本は小さな声で呟き、出張で来ていたホテルの部屋で再びLOSTにログインをする。最初のクエストをクリアしてログイン・キーを入手した後も暇をみつけてはプレイしていたので、ある程度の装備を揃えるくらいのお金は溜まっていた。
「えっと、武器防具屋は何処かな‥‥」
 マップを見ながら、松本がキャラを操作して店まで連れて行く。
 すると、最初に見た時より装備品が増えている事に気づく。
(クエストクリア前とクリア後じゃ装備の種類も変わってくるのかね)
 松本は様々な職業の武器防具を眺めながら心の中で呟き、自身のキャラである『僧侶』が装備できるものだけをピックアップして見ていく。
「やっぱり僧侶は攻撃力と防御力が低いなぁ‥‥」
 戦士タイプと魔術師タイプでは同じ金額の装備でも上昇ステータスが全く異なってくるのを見て、松本は苦笑した。
(ある程度を僧侶で遊んだら、魔界剣士に転職してみるのもいいかもな。結構爽快感がありそうな職業だし‥‥)
 色々と悩みながら松本が選んだ装備は『巫女シリーズ』だった。その名の通り、神社にいるような巫女さんの格好をした装備であり、赤い袴がとても可愛らしかった。
(防御力はこっちの黒神シリーズの方が高いんだが、肝心の賢さとか魔法の威力が弱くなってしまうんだよな‥‥)
 ちょっとゴスロリ系の装備である『黒神』は僧侶の装備にしては防御力なども高いのだが、僧侶に必要な魔法の威力効果などが激減してしまうのだ。
 だから完全にクエスト向きの装備ではなく、どちらかといえば『見て楽しむ為』だけの装備にしか見えなかった。
「とりあえず、まだそんなに難しいクエストは出てこないだろうし‥‥こんなもんで大丈夫かな?」
 装備を巫女シリーズで揃え、武器は錫杖を買って装備させる。LOSTをプレイし始めた時に比べると若干強くなっているようにも見えて、松本は満足げに「うん」と首を縦に振った。
「あとは魔法、術――だな」
 最初から覚えているものだけでは、いくらなんでもこれから先のクエストをクリアする事は難しいだろう。
 だから松本は術を売っている店へと赴く。
(‥‥やっぱり、大した術は売ってないなぁ‥‥と言ってもどれが良い術なのか、役にたたない術なのかイマイチわかんないんだけど)
 ずらりと並ぶ術やスキルを見て、松本は苦笑しながら心の中で呟いた。
「そういえば、僧侶の上級職ってあるのかな。最初に僧侶を選んだ人でも、話をかなり進めてる人もいるだろうし‥‥上級職っていうくらいだから、簡単になれるものでもないだろうし、特殊条件でもあるのかな」
 上級職があるなら魔界剣士をやめて、そっちを目指した方がいいのかな――などと、松本はこれからの事を考え始める。
(うーん、悩むな‥‥さっき魔界剣士でプレイしてるキャラを見たけど、装備も格好良かったし、でも僧侶の上級職も捨てがたいなー‥‥)
 小さくため息を吐きながら(でも、どっちにしてもまだ転職出来る段階でもないし‥‥これからの事はこれから考えていけばいいかな)と心の中で言葉を付け足した。
 それから、松本は状態以上を治す術、中程度のHPを回復する術、そして本職ほどの効果は見込めないけれど風、炎、土属性の攻撃魔法を購入して本日のプレイを終えたのだった。
「さて、これで今日は終わり――と」
 一人呟いて「‥‥あれ?」と言葉を止める。
(何か、声が少し変‥‥な感じだけど風邪かな?)
 ごほん、と咳払いをしてみるけれど身体そのものに異常は感じられない。
(念のために風邪薬を飲んで寝た方がいいかもしれないな。最近寒くなってきたから風邪を拗らせると厄介だし、仕事にも影響が出るし‥‥)
 松本は風邪薬を飲んで、そのままベッドに横になる。
 だけど、彼の異常が風邪などではなく――LOSTが原因だという事を彼を含め、誰も知る者はいなかった。

「‥‥ふふ」
 彼の異常に関わる者以外は。





―― 登場人物 ――

8504/松本・太一/48歳/男性/会社員・魔女

――――――――――

松本・太一様>

こんにちは、先日に続き今回もご発注いただきありがとうございます!
今回の話の内容、いかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容に仕上がっていると良いのですが‥‥!

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2011/12/12