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■とある日常風景■

三咲 都李
【2778】【黒・冥月】【元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
「おう、どうした?」
 いつものように草間興信所のドアを叩いて入ると、所長の草間武彦(くさま・たけひこ)は所長の机にどっかりと座っていた。
 新聞片手にタバコをくわえて、いつものように横柄な態度だ。
「いらっしゃいませ。今日は何かご用でしたか?」
 奥のキッチンからひょいと顔を出した妹の草間零(くさま・れい)はにっこりと笑う。

 さて、今日という日はいったいどういう日になるのか?
とある日常風景
− パーティー☆ナイト −

1.
「じゃあね。気をつけて帰るんだよ?」
 すっかり用意してあったお菓子はなくなった。
 ハロウィンの夜、子供たちにボコボコにされた神父…もとい探偵・草間武彦(くさま・たけひこ)は多少ふてくされていたものの、隣で優しく子供たちを見送る黒冥月(ヘイ・ミンユェ)の顔を見てまぁ、こんな夜もありか…と思った。
「さて、次はお祭りの警備ね。着替えてから行きましょう」
「えー。そのままでいいじゃないか」
「…それは嫌」
 ブーイングする草間を後にとっと着替え、冥月は草間を強制的に着替えさせた。
「さっきの衣装がよかったのになぁ…」
「…か、帰って2人きりになったら…」
 あまりにブーブー文句を垂れる草間に、冥月は思わず小さな声でそう言った。
「ん? 何か言ったか?」
「な、なんでもない!」
 慌てて言葉を打ち消して、祭りの警備をしていた青年団と合流した。
「あ、草間さん。よかった〜! そろそろ呼びに行こうかと思ってたところだよ」
「すまんすまん」
 片手を挙げて、タッチ交代。
 青年団はそのまま祭り屋台めがけて突進し、消えていった。
「んじゃ、俺らも見回りに…」
 草間が歩き出そうとしたその時、目の前にちょっと小太りの男が立ちはだかった。

「!?」

 いきなりトラブル発生か!?
 そう思ってよくみたら、それは困ったように怒った顔した町内会長の姿だった。
「草間さん…困るよぉ。子供たちの親から苦情が来ましたよ?」
「え?」
 一瞬何のことかと思ったら、どうやらお菓子を配る前の子供にはちょっと刺激の強いハプニングの話が子供たちから親の耳に入ったらしい。
「そりゃね、そんな美人さんが目の前にいたら、浮れる気持ちも分かるが教育上…」
「ちょ、町内会長さん…?」
 くどくどくどくど…周りにいた察しのいい者は、声を押し殺して笑っている。
 は…ずかし…い…。
 この年になってお説教を受けるなどとは思ってもみなくて、思わず俯いてしまった冥月。
 草間も同じなのか頭をぽりぽりと掻きながら、遠くへ視線をやっている。

 この後5分ほど、町内会長のお説教は続くのであった…。


2.
「…さて、出鼻をくじかれたが、今度こそ行くか」
 町長にたっぷり絞られた後で、草間はため息混じりに歩き出した。冥月もその隣を歩き出す。
 煌びやかなハロウィンの通りは、少しだけファンタジックに見える。
「きゃーーーー!!泥棒よ!!」
 進行方向から突如、大きな悲鳴が聞こえた。
 そして、こちらに突進してくる小汚い男。手には婦人者の財布を持っている。
「ひったくりか…!?」
 草間がそう言うが早いか、冥月の体は素手に動いていた。
 泥棒とはいえ一般人相手に能力など使う必要もない。
「はっ!」
「えっ!?」
 まさか真正面から来るとは思ってなかったらしい男は、足を止めるべきか、そのまま進むべきか迷った。
 そう考えること自体が男の判断ミスだった。
 どこをどう捕まえられたのかもわからないまま、男は冥月に地面に組み伏せられていた。
「財布、取り返したよ」
 走ってきた悲鳴の主はフワフワとしたお姫様の衣装に身を包み、冥月から財布を受け取った。
「あ、あの…ありがとうございます! その…お礼に…お食事でも…」
「別にそういうつもりで捕まえたわけじゃないから」
 盗人を縛り上げながら、冥月は悲鳴の主を見ずにそう言った。
「でも、お姉さまがいなかったら私…!」
「…お姉さま!?」
 思わず顔を上げて悲鳴の主の顔をみた。
 可愛らしく愛らしい少女そのものだが、なぜかとっても顔が赤い。
「お姉さまとわたくし…これって運命の出会いだと思うんです!」
「いや、それは違う。絶対に違う。断じて違う」
 首を振りながら後ずさる。と、後ろで草間が無言で肩を揺らして笑っている。
「ちょ、武彦からも何とか言って!」
「お姉さま! 男なんて汚らわしいですわ! はやくこちらに避難なさってください!」
 どうやら深窓の令嬢か何かのようだ。手ごわいぞ。
「武彦、なんとかして…」
 冥月が草間の後ろに身を隠すと、草間はゴホンとひとつ咳をした。
「そこのお嬢さん、彼女に心奪われてしまったようだが…すまないな。彼女は実は…」
 そこで草間は言葉を切って、ボソッと悲鳴の主だけに聞こえるように囁いた。

「元・男だ」

「!?」
 一瞬にして真っ青な顔になる悲鳴の主に対し、なおも草間は言葉を続ける。
「彼女の勇敢さはもともとの男の気質からきているものだ。だから、男らしいと思うのは無理もない。だって元々男なのだからな」
 ぷるぷると震え始めた悲鳴の主は、キッと冥月を見た。
「?」
 冥月のキョトンとした顔に、悲鳴の主は捨て台詞をはいて逃走した!

「こーのー男女ーーーーーーー!!!! 男なんてぇぇえぇぇぇぇぇぇえええ!!!!」

「何言ったの?」
 冥月がそう聞くと、草間はニヤリと笑った。
「自分の目を信じられないヤツに、世間の嘘を吹き込んだだけさ」
「…あなたって人は…」
 軽い頭痛がしたが、この件に関してはこれ以上考えないことにした。


3. 
 再び、パトロールに戻る。
 にぎやかな屋台を横に、怪しい気配がないかと探る。
「おぅおぅ! おめえら誰に喧嘩売ってやがる!」
「てやんでぇ! こっちとら代々江戸っ子だ! そっちが喧嘩売るんなら、買ってやるのが筋ってもんだ!」
 大声をはりあげて、男同士の怒気をはらんだ気配がする。
 草間と冥月はその方向へと急行した。

 ついてみれば先ほど交代した青年団の若者たちが、これまた一見してヤのつく職業だとわかる若い衆と対峙していた。
 …どちらも酒臭く、一触即発状態だ。
 と、冥月は前触れもなくヤのつく若い衆の1人にクリーンヒットのストレートをぶちかました!
「おいおい、勘弁してくれよ」
 草間が唖然とする青年団の説得に入る。
 一方、若い衆1人を昏倒させた冥月は鋭い瞳を若い衆に向けると冷たい声で訊いた。
「お前達、どこの組の者だ」
「…ど、どこって…エゾマツ組をしらねぇのか!?」
「エゾマツ組か。ちょっと待ってろ」
 冥月はおもむろに携帯を取り出すと、とある人物に電話をかけた。
「…黒だ。お前の組の若い者が、近所迷惑をかけていてな…名前?」
 冥月は携帯を耳から話すと「おい」と若い衆の1人に声をかけた。
「おまえ、名前は何だ?」
「臼井だが…」
 冥月はその名を電話相手に告げると最後にこう言って切った。
「悪いがそちらから電話をかけてやってくれ。話し合いにならないんでな」
 そう言って電話を切って1分もしないうちに、若い衆の臼井の携帯が鳴る。
「え!? 組長から!?」
 蒼白になる顔。電話を持って敬礼する臼井。電話越しの声が丸々聞こえる。

『おまえら、組を潰す気か! 勝機なんてどこにもないんだ! とっとと帰ってこい!!』

 電話が切れると同時に、若い衆は一斉に青年団の方を向くと「失礼しました!」と頭を下げて、走ってその場を後にした。
「…をぉ〜…」
 ぱちぱちとどこからともなく湧き出る拍手の音。
「お見事」
 草間がそう言って、青年団の肩を叩くと冥月の元に戻ってきた。
「褒められるほどのことはしてないわ」
「平和に解決できれば、そんないいことはないさ」
 優しい目をした草間に、冥月は少し赤くなって顔を伏せた。

 辺りは少し照明が落とされ、やがて派手な音楽が聞こえ始めた。
 ハロウィンパーティーの締め、パレードが始まるのだ。


4.
「パレードに行くか」
 草間がそう言って冥月の手を引く。
「でも、まだ警備が…」
「青年団がお詫びに代わってくれるとさ」
 草間はそう言うと、足早に草間興信所に戻った。
「…なんか嫌な予感が…」
 女の予感は当たるものです。

「じゃじゃーん! 踊り子の衣装だ! …是非着てくれ」

 ビキニと同じ形の上下セット。顔半分を覆い隠す羽衣のように薄い布。足を覆い隠すのも半透明のその薄い布で、お尻は丸見えだし大胆なスリットで足もほとんど露出しているような状態だ。
 アラビアの踊り子を連想させるその衣装に、冥月は思わずのけぞった。
「…さっきのより露出が高くなってるんですけど!?」
「パレードって言ったら踊らなきゃダメだろ? このチョイスは俺的にベストだね」
 草間に一切悪びれた様子はない。
「…さっきは武彦の前だから、恥しいけど着替えたのに…」
 少しだけ涙を浮かべて過剰に演出、上目遣いで草間を見つめる。
 これで…許してくれないだろうか?
「…冥月のために一生懸命選んだのになぁ…」
 シュンと肩を落とした草間に、冥月は心の葛藤を5秒ほどしたのち「き、着るわ」と答えていた。
「ただし、武彦以外にできれば見せたくないの。だから…」

 草間と冥月は衣装に着替え、パレードへと繰り出した。
 おばけや魔女、獣やロボット。人間ではない姿の人々が楽しげに集い踊っている。
「俺たちも行こう」
 シンドバットの衣装に身を包んだ草間の後ろに隠れたままの冥月をお姫様抱っこして、草間は輪の中に入っていく。
「は、恥ずかしい…」
 草間にしがみつくように首に手を回して冥月は顔を隠す。
「俺は嬉しい。冥月の綺麗な姿がいっぱい見れた。それに、その冥月を見せびらかせて俺はすごく嬉しいね」
 ご機嫌の草間はくるくると音楽にのって踊る。
「…バカ…」
 軽く頬に唇でキスをする。しがみついた手が離せないから、手で叩く代わりだ。

「仲いいねー」
「俺もあんな美人な彼女だったら連れまわしたいわ」
 遠くからそんな草間と冥月を見ていた青年団はため息をついた。
「あ、でもさっきあの彼女が実は元・男って噂を耳にしたんだが?」
「いやいや、男でもあの綺麗さなら有りだろ」

 なんか変な噂が混じっていたが、とにかくこのハロウィンパーティーの注目度が高かった2人であった…。


■□   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  □■

【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 2778 / 黒・冥月(ヘイ・ミンユェ) / 女性 / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒


 NPC / 草間・武彦(くさま・たけひこ)/ 男性 / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
 

■□         ライター通信          □■
 黒・冥月様

 こんにちは、三咲都李です。
 ご依頼いただきましてありがとうございます。
 ハロウィンの補足的お話、楽しく書かせていただきました!
 ラブラブですね、甘々ですね。コスプレは楽しいですね!
 少しでもお楽しみいただければ幸いです。