■東京怪談本番直前（仮）■
深海残月 |
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【2778】【黒・冥月】【元暗殺者・現アルバイト探偵＆用心棒】 |
ある日の草間興信所。
「…で、何だって？」
何故かエビフライを箸で抓んだまま、憮然とした顔で訊き返す興信所の主。
「どうやら今回は…ノベルの趣向が違うそうなんですよ」
こちらも何故かエビフライを一本片付けた後、辛めのジンジャーエールを平然と飲みつつ、御言。
「…どういう事だ？」
「ここにたむろっている事に、いつもにも増して理由が無いって事になるわね」
言い聞かせるように、こちらも何故かエビフライにタルタルソースを付けながら、エル。
「…怪奇事件をわざわざ持ってくる訳じゃなけりゃ何でも良いさ…」
箸でエビフライを抓んだそのままで、思わず遠い目になる興信所の主。
「そう仰られましても、今回は…『皆さんから事件をわざわざ持って来て頂く』、事が前提にされているようなんですけれど…」
ざらざらざら、と新たなエビフライを皿の上に大量に足しながら、瑪瑙。
「…」
「…」
「…まだあるのか」
エビフライ。
「誰がこんな事したんでしょうかねぇ…」
じーっとエビフライ山盛りの皿を見つつ、空五倍子。
「美味しいから俺は良いけどねー☆」
嬉々としてエビフライをぱくつく湖藍灰。
「…いっそお前さんが全部食うか？」
嬉しそうな湖藍灰を横目に、呆れたように、誠名。
「…嫌がらせにしても程がある…くうっ」
嘆きつつも漸く、抓んでいたエビフライを頬張る興信所の主。
「あの、まだ軽くその倍はあるんですけど…」
恐る恐る口を挟んで来る興信所の主の妹、零。
それを聞き興信所の主は非常ーに嫌そうな顔をした。
「…誰がこんなに食うんだ誰が」
「誰かの悪戯だ、って話だったか？」
タルタルソースの入った小皿と箸を片手に、立ったままビールを飲みつつ、凋叶棕。
「そうだ。しかも出前先の店曰くキャンセル不可で、だがそういう事情があるならと…折衷案として食べ切れたなら御代は無料で良いと来た…何がどうしてそんな折衷案になるのか果てしなく謎なんだが」
そして草間興信所には金が無い。
客人もなるべくならば払いたくは無い。
故に、そこに居る皆総掛かりで…何となく食べて片付けている。
客人も合わせるなら、別に金銭的には何も切羽詰まっている訳では無いが…。
「ところで『事件を持って来て頂く事が前提』ってのはなんだ？」
誰にとも無く問う興信所の主。
「誰かから御指名があったら、ボクたちここから出て行かなきゃならないんだよね」
答えるように丁香紫。
「…逃げる訳か」
「そんなつもりは無いが…。そうやって『我々の中の誰か』を指名した誰かの希望に沿う形にノベルを作るのが今回のシナリオと言う事らしい…まぁ、制約緩めなPCシチュエーションノベルのようなものだと言う話だが…それが今回の背後の指定だ…」
頭が痛そうに、エビフライの載った小皿を持ったまま、キリエ。
その話を聞いて、更に憮然とする興信所の主。
「………………だったらせめてそれまでは意地でも付き合わせるぞ」
「わかってますって。でもこれ…ひとつひとつを言うなら結構美味しいじゃないですか。たくさんあるとさすがにひとりでは勘弁ですけど、幸運な事に今は人もたくさん居ますし。きっとその内片付きますよ」
興信所の主を宥めるように、水原。
「ところでいったい誰がこんな悪戯したんでしょーね…」
エビの尻尾を小皿に置きつつ、ぽつりと呟くイオ。
「それさえわかればお前ら引き摺り込まずともそいつに押し付けられるがな…」
この大量のエビフライとその御勘定の両方が。
興信所の主は再び嘆息する。
「まぁ、どちらにしろ…誰か来るまでは誰も逃がさんぞ…」
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→蝙蝠娘の付き纏いを以下略の話、延長戦。
「と、言う訳でだ」
まずは今の状況に説明が必要だろう、と黒冥月は判断する。真咲誠名の店こと画廊『clef』を出、草間武彦と別れて後の事。実はその時、密かにこちらを嗅ぎ回っていたと思しき鬱陶しい蝙蝠娘――誠名の方から蝙蝠がどうのと匂わされていたのでそれに倣っての言い回しになるが――とにかくその蝙蝠娘こと、速水凛に尾けられていて、あの後に一悶着あった件を話しておく。
…まぁ、一悶着と言うより、私が一人になったところでこちらが――私が草間と『何の仕事』をしているかのカマを掛けに来た、と言った方が正しいような状況だったのだが。ともあれ、肝心の『仕事』については白を切り通し、とっとと帰れと丁重に説得したのだが――…。
「帰らなかった訳か」
「そうだ」
「…じゃなくてだな。何か個人的な用でもあったから別れたのかと思えば、何をやっているんだお前は！」
頭痛を堪えてでもいるようにこめかみを押さえ、草間武彦が呆れたように怒鳴ってくる。…何をやっていると言われてもな。…見た通りだが。その時の用件と言うのも「この」凛への対処そのものだった訳だし。
その旨告げたら、白を切って帰れと説得した結果が何故「こう」なる！ とまた更に怒鳴られた。
「仕方無いだろう、説得は無理だった。殺さずにあしらうのが鬱陶しくてつい、な」
言いつつ、がつんと殴る真似をして見せる。要するに凛には腕尽くで少々痛い目にあって貰った訳で、そもそもそれで今現在のこの臨時招集に繋がっている。今居るこの場所は私の能力である影の内。そしてあの一悶着の後、連絡をしてここに招じ入れた相手は先程からうるさい草間武彦に、若干の「不測の事態」になってしまった以上、事情を話しておいた方がいいだろう湖藍灰の二人になる。…ついでに言うなら凛の所属からして虚無絡みの懸念もあるので、多少変則的ながらも同じ虚無に所属している――と言える湖藍灰に意見を聞きたいと思った、と言うのもある。
………………ああそれと、影で五感と口に動き、こちらで把握出来る限りの使役妖精を封じてある凛もここには居る訳だから、影内に招き入れてあるのは厳密には三人か。
「…それでお前はどうするつもりなんだ」
つまりは凛を、と言う事である。…改めて促されずともお前たち二人を呼んだ理由がそもそも「それ」だ。
「そこを相談したくてな。…妖精かこいつか、誰が今の会話を、どんな手段で聞いているかも分からない。例の仕事の内容に触れずに、その上でこの小娘をどう扱えばいいか、意見を聞きたい」
「どうもこうも…意見ったってな。虚無の構成員を誘拐してどうする」
「…黒いおねーさんも随分思い切ったねぇ。うわー、これ凛ちゃん影の下ひょっとして裸？」
「ああ。一悶着の最中、妖精でレインパーカーを構成してもいたのでな…念の為、服も剥いでおいた」
「おい！？」
また草間が大声を上げる。…だからうるさい。
「能力の応用範囲が未知数だったんだ。着ている服自体が妖精――言わば武器の可能性があるとなれば、このくらい安全策として当たり前だろう。そもそも今捕らえている「これ」が本体かどうかすら実のところ言い切れない――妖精で構成されたレインパーカーどころかまるっきり当人にしか見えない分身まで出されたからな。まぁ、経緯からして捕らえてあるこいつがまず本体だとは思うんだが。…他に何かいい案があるなら喜んで任す」
「…。…ああもう、何処から突っ込めばいいんだ」
「ふむ。お前にしては過激な意見だな。手籠めにして黙らせるか」
「…おい。言っていい冗談と悪い冗談があるぞ。言うに事欠いて人を勝手に犯罪者にするな。本気で怒るぞ」
「まーまー、その辺は黒社会ジョークって事で。でも出て来たのが凛ちゃんなら、ここまで厳重に警戒する事もないかもって気はするけどねぇ？」
「そんなものか？」
「基本的に何考えてるかわからないし何するかもわからない子だけど、話を聞く限り…取り敢えず今「こう」なってるって事は凛ちゃんの方から黒いおねーさんに吹っ掛けた、って事だよね」
「ああ…まぁな」
厳密に言えば、吹っ掛けさせた…ような形ではあったが。私の何が凛にそう感じさせたかまではいまいち不明だが、私の言動が挑発と受け取られた結果、不可逆的にそうなった…ような気はする。
肯んじた私の返事に、そうなるとね、と湖藍灰が続けて来る。
「凛ちゃん的に『お仕事』は多分二の次になってる状態だと思うよ。例のアトラスの依頼…の時の事思い出して貰えればわかると思うけど、『お仕事』――って言うか、誰かに頼まれてどうこう、って話が第一に頭にある時って、凛ちゃん意外と理性的だから。他にやる事あったならエヴァちゃんと互角に戦り合ってたおねーさんに吹っ掛けるなんてまず有り得ないんじゃないかな。…まぁ、今のこの状態――黒いおねーさんに捕まるのが目的の『お仕事』って線でも無い限りは、だけど」
「…。…その場合、私が相手の思惑に嵌った可能性もあると言う事か」
「いやー、さすがに今の時点で『今回の件』にそこまでやって何かを狙うような価値を見出してる第三者は誰も居ないと思うけどね？」
「そうか？」
エヴァに零、そして量産型ながらも彼女らに一目置かれた霊鬼兵――元だが――の絡む話となれば、警戒してし過ぎと言う事も無いと思うが。…事実、今も私は影を通じて密かに周囲への警戒を続けている。
「その可能性を考えるなら、殺しておいた方が無難、と言う事になりそうだが…」
「待て待て待て、何一つ無難じゃないだろうが！」
「なら草間も何か対案を出せ。殺さずに済むならそれに越した事は無い」
エヴァには秘密にした上で、凛も殺さずにとなると自分が取れる手段は限られる。『仕事』が終わるまで監禁するか、暴力で屈服させるか半殺し――そして結局、最終手段は仕方なく殺すと言う事になってしまうが。
今回の場合、どうもどの手段を選んでも上手くない。
「…うんまぁ確かに殺しちゃうのは止めた方がいいと思うけど。凛ちゃんて殺しちゃったら却って目立つタイプだしね。顔広いし見た目派手だし殺しても死ななそうに思われてるし…不意に消されちゃったら却って「何かあったのか」って余計なところから勘繰られる可能性上がるよ。それこそ虚無の本筋の方が興味持っちゃう事になるかも」
「そうか。そうなると却って面倒な事になりそうだな…ならやはり殺すのはなし、か」
まぁ、その方がいい。
「…湖藍灰の言う通りだとすると、殺す、だけじゃなく『仕事』が終わるまで監禁、と言うのも避けた方がいい手段になりそうだな」
「…あのな冥月。お前は犯罪行為しか思い付かないのか」
「この状況で真っ当な手段が思い付くなら言ってくれ」
「…。…まずは俺と話をさせろ」
「んー、それも止めた方がいいと思うよ。凛ちゃん口の方も結構達者だから丸め込まれちゃうかも」
「話してみなければわからないだろう。…説得と言ったって冥月じゃあ何を言ったかは高が知れてる。こいつが何の目的で俺たちを尾行していたかがはっきりさせられれば対処の方法も自然と見付かる筈だ」
「それなら聞いた。私がエヴァと会ってから『仕事』に動いている事と、私とお前がclefに行った事、clefで私が買った絵まで繋げて考えて、何かあるのかと訝しんでいたな。嘘か本当かまでは知らないが」
「…。…それでこの現状ってのは「どうぞ怪しんで下さい」とこっちからわざわざ申し出てるようなものにならないか？」
「心外だな。…ああ、そういえば凛当人も似たような事を言っていたか」
「…」
私の返しを受け、何やらがっくりと額を押さえ項垂れつつ盛大に溜息を吐いている草間武彦。とんだ藪蛇じゃないかとぼやいている――今更言っても遅い話だが。もうこうなっては仕方無かろうに。
「何か対応出来そうな能力者の心当たりは無いか」
「こいつの記憶を消すとかそういう話か？ だったら…」
と、草間は湖藍灰を見る。が、見られた湖藍灰の方は、そこまでおおごとにする必要無くない？ とあっさり言って来た。…つまり新たに他者を巻き込む前に湖藍灰なら手っ取り早く可能なだけの能力があると言う事か？――だが湖藍灰としてはそこまでする必要が無い、との判断な訳か。
「何か妙案があるのか？」
「妙案って言うか。別に無視して放っといて大丈夫だと思うけど。…ただ既にここまでしちゃってる以上は黒いおねーさんには確実に暫く付き纏うと思うけどね」
「…他に何か無いか」
それで肝心の『仕事』が出来なくなるとは言わないが、今後も付き纏われるのはさすがに鬱陶しい。
「んー…じゃあ『他の餌』投げとくとか」
「『他の餌』？」
「うん。他に凛ちゃんが興味持ちそうな事をチラつかせたらそっちに行かないかなぁと」
「チラつかせられそうな『餌』の心当たりはあるのか」
「そうだねぇ…手近なところで真咲御言かなぁ」
と。
湖藍灰が言った時点で、は？ と草間がやたらと間の抜けた声を出した。
「…なんでそこであいつの名前が出る」
「…誰だそれは。画廊の店主と同姓だが」
「ああ、お前には言ってなかったか。ノインが『死んだ』時の顛末時、ノインの情報を入れて来た司書が連絡を取った当の相手が真咲御言だ。結果的に誠名さんの方が偶然そこに居合わせていて、より多く情報を持っていたからそっちと話した体になっているだけでな」
「…ふむ、そんな成り行きだったのか」
私としては当時は草間を介して情報を伝え聞いただけなので、情報元になる相手の状況についてはあまり気にしていなかった。
受けて、今度は湖藍灰が口を開く。
「こっちはそこの顛末については知らないけど。…まぁ簡単に説明すると御言君ってその画廊の店主さんの義弟で同じく元ＩＯ２捜査官、今は草間興信所の御近所でバーテンダーやってる人。探偵さんとはお友達で草間興信所にも良く来る御身内だったよね確か？」
「ああ…まぁ間違っちゃいない。それで、あいつが何なんだ」
「ぶっちゃけると彼って凛ちゃんのオリジナルなんだよね」
「は？」
何？
「…済まん、話が見えないんだが」
「ああ、凛ちゃんて虚無構成員だった狂科学者の『お父さん』――速水博士が昔ＩＯ２捜査官から密かに採取した遺伝子弄って作ったクローンなんだよね。で、その遺伝子採られた当のＩＯ２捜査官が当時の真咲御言。別に秘密って訳じゃなくその筋じゃ結構知られてる話だから、当の真咲兄弟も知ってる」
「…なに？」
「…。…よくわからんが。つまり要約するともう一人この小娘が居ると言う事か？」
それは鬱陶しさが二倍になるような気しかしないのだが。
「いやいや。御言君は草間探偵ととんとんなお年頃の分別ある兄ちゃんだよ」
「…。…今、クローンと言わなかったか」
となれば、年の頃はさておき基本的にはあの凛そっくりであって妥当な気がするのだが。…誠名があの身体でありながら男と扱われている以上、義弟とやらの方も何らかの事情で弟と呼ばれてはいても実際は女…だったりする事もあるのかと思い、特に確かめてはいなかったのだが違うのか。
「ああ、クローンって言っても凛ちゃんの場合遺伝子そーとー弄られてるから結構別人。クローニングの目的は発火能力だったらしいから、それ安定させる為に染色体まで弄って凛ちゃんは女性体にしたとか何とか聞いた事あるけど…ってあ、そもそも今回の『お仕事』自体に凛ちゃんパパ巻き込んじゃうって手もあるんじゃない？」
「…待て待て。話が飛躍し過ぎて付いていけない。…速水博士と言うと俺の方でも何処かで聞いた気がするんだが」
「あ、草間興信所にも聞こえてる名前なんだ。速水博士って結構前にアメリカで虚無からもＩＯ２からも死亡が確認されてる筈の人だけど、その後もあちこちで暗躍してるって噂があるんだよね？ ひょっとして探偵さんの方でも何かあった？」
「…。…何にしてもつまりは虚無構成員なんだろう？ わざわざ巻き込んでどうする」
「そりゃさ。もし速水博士が今も生きてるとしたら虚無を裏切ってるって事になるし、凛ちゃんの忠誠の対象って実は完全に速水博士個人だからそっち抱き込めたなら凛ちゃんが『今回の仕事』を虚無に御注進に及ぶ可能性は消えるよ？ 『お父さん』から言って貰えたならエヴァちゃんにも秘密にしてくれると思うし。…考えてみれば能力的にも速水博士ってちょうど良さそうな人材の気もするんだよね…ってああ、速水博士だとそもそも倫理面がアウトか」
今の話忘れて。と湖藍灰。…やけに唐突な話がいきなり出たかと思えば今度は忘れろか。忙しい。
…いや。
ちょっと待った。
「…なぁ。むしろその速水博士とやらはさっき言ってた『他の餌』候補にはならないか？」
「あ、なるね」
これまた軽く肯定された。…やっぱり忙しい。
「でも話の持って行き方が難しいかも。結局、生きてるか死んでるかも不明な人だし…捜すのがまた一仕事になっちゃうんじゃないかな？」
「…。…さっきその「生きてるか死んでるかも不明で捜すのが一仕事になる相手」を巻き込むとか何とか提案し掛けてなかったか」
あんまり適当な事を言われても困るのだが。
「いや、これも「難しい」けど「出来ない」って訳じゃない、ってクチの話だから」
「…無駄に仕事の難易度を上げられてもな」
「まぁ難易度は跳ね上がるけど。でも凛ちゃんが興味持つかどうかって意味では覿面に効くと思うよ？」
「そうか。…だがもう少し実現可能性の高い手段も検討したい」
「となるとやっぱり御言君…って言うか真咲兄弟に頼むのが手っ取り早いんじゃないかなぁ。…黒いおねーさんはちょうどclefから出たところで凛ちゃんに絡まれたんでしょ？ 誠名君には事情も話してるみたいだし、流れからしても頼んだら上手くそれっぽい思わせ振りな話作って『餌』になってくれそうな気がするんだけどね。元ＩＯ２捜査官だから結構地味な作業とか情報工作とかも慣れてるだろうし」
「…ふむ」
確かに、clefの誠名と探偵の草間、そこにエヴァと話をした私が合流したから何かあるかと怪しんだ、と当の凛から話を聞いている訳で。誠名が既にこちら側に付いている以上、これならその流れに上手く組み込み易い『餌』――と言うかこちらの『仕事』の囮になって貰えるかもしれないのは想像が付く。
取り敢えず、纏めよう。
…まず出たのは、今から草間に説得を任せる、と言う案。…確かに怪奇探偵草間武彦が交渉に出るなら私が対処するのとはまた違った事にはなるだろうが、湖藍灰はどちらかと言うとこの案には不賛成。私の方でも、どう説得したとしてもこれもまた結局「振り出しに戻る」と言う事になりそうな気がしてならない。
…次に出たのは、そのまま放置、の案。…湖藍灰曰くまずそれで問題は無いだろうとの事だが、万が一を考えると少々の不安は残る。…そして何よりこれは私の方で今後暫くの間、凛に付き纏われるのを覚悟しなければならない、と言う大きなデメリットがある。まぁ、実務的にはそれで今回の『仕事』をこなすのは不可能では無いが…同時に、鬱陶しさと面倒臭さが跳ね上がるのも確か。
…凛が興味を持ちそうな『他の餌』を撒く、と言う案も出た。…具体的には凛と出自の因縁があるらしい真咲御言――それと既にこちらの話を承知な真咲誠名の二人に囮を頼むと言う手段と、凛の『父親』――速水博士とやらを捜して巻き込むと言う二案になる。
ただ、後者の速水博士の方は…実行出来れば効果覿面ではあるだろうが、著しく実現可能性が低そうであるのも確か。更に言うなら、もし捜し当てられたとしても…倫理面でアウトだと言われるような相手をどうこちらの思惑に合うよう懐柔するかと言う難題も付いてくる。そもそも懐柔が可能な相手かどうかすら謎だ。
こうして並べてみると、どれも一長一短。…とまぁそう簡単に一言で言っても、それぞれの案で長短の配分が極端に違う事にもなるのだが…。
さて、どれを選んで実行したものか。
【蝙蝠娘の付き纏いを以下略の話、延長戦。
…取り敢えず以上の選択肢が出されたようですが、如何でしょう】
××××××××
登場人物紹介
××××××××
■PC
■2778／黒・冥月（ヘイ・ミンユェ）
女／20歳／元暗殺者・現アルバイト探偵＆用心棒
■NPC
□草間・武彦
■鬼・湖藍灰
（転がってるだけ）
■速水・凛
（名前のみ）
□エヴァ・ペルマネント
□草間・零
■ノイン
■真咲・誠名
■真咲・御言
■速水博士（未登録）
××××××××××××××
ライター通信改めNPCより
××××××××××××××
…出された名が複数だったので座談会方式で。
草間「と言う訳でだ。今回もまた続きの発注を感謝する。…まずはライターからの伝言だが…『手紙を頂いていたのに音沙汰無いまま窓開け自体が遅れて申し訳無い』との事だ」
湖藍灰「諸事情あって反応が遅れちゃったらしくてね。ってその上にやっぱりお渡し自体が毎度の如く遅かったりもするんだけどさ」
凛「つーかその手の伝言でずっとこの枠埋めてると俺たちがここで顔出してる意味無くね？ まぁ取り敢えず『少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いです』って件だけは伝言残しとく事にするけどよ。後はとっとと内容行こうぜ」
草間「まぁ、それもそうだな。…。…ってお前がそれを促すか」
凛「？ …んだよ。何か問題あるか？」
草間「…幾らメタな座談会とは言えお前は今ノベル本筋で拘束されてる状態だろう。どうしてそんなに平然としていられる」
凛「いや、それはそれこれはこれだろ。気にすんな。ハゲるぞ」
草間「…ってあのな」
凛「なんだ、気にしてたのか。それとも既に心当たりでもあったりしてな？（笑）」
草間「…内容の話に行くんじゃなかったのか」
凛「ああ、そうだったな。…内容内容…取り敢えず今の流れからしてあんたが俺説得って無理じゃね？」
草間「…。…この前の座談会ではそういうのは反則だとお前自身が言ってなかったか？」
凛「そうだっけか？ まぁ、俺が今ここで思っただけの話に過ぎねぇから問題ねぇだろ。ノベル本筋で俺が同じように思うとも限らねぇし。な？」
誠名「…。…そーゆー辺りがどーもお前って御言と似てるんだよな。…ああ、前の座談会ン時に俺がぽろっと言ってた『やっぱあいつに似てんのな』って実はこの件な。…と。それ言う為だけに本文に名前しか出てねぇけど今回顔出させて貰った訳だが（笑）」
凛「座談会で初登場ってのもどうか、って白梟（御言）の方は今ここに出る気ねぇらしいけどな（笑）」
閑話休題。
草間「…取り直して内容に行くぞ」
湖藍灰「俺と草間さんに凛ちゃんの対処を相談…と言われて、一任されたのをいい事に何だか妙な方向に話が転がりまくっちゃったね。でもプレイングでも出された「放置も一つの手段？」って以外は、凛ちゃんの興味を他に逸らすくらいしかやりようが思い付かなくてさぁ」
凛「ま、俺みてぇな厄介なのが絡むとなるとなー。色々手間が掛かりそうだって事だろ（笑）」
草間「自分で言うか。にしてもお前と真咲（御言）の件については寝耳に水だった。正直、全然繋がらなかったからな」
凛「つかノベル本筋だとまだ俺とあんたって絡んでないに等しくね？ この座談会だと相当話してるけどよ」
草間「顔を合わせての話じゃない。人伝に話に聞いている印象で繋がらなかった、って事だ」
凛「ふーん」
湖藍灰「取り敢えず、黒いおねーさんの次の選択次第ではまた何だかんだと遠回りして貰う事になっちゃうかもしれないねー？ 何度もごめんね？（てへ）」
草間「…まぁそれもそれで、肝心の受けている『仕事』が着実に進む事になるならいいんだろうがな…と、そろそろ文字数の余裕も無くなって来たな。締めさせて貰うぞ」
…と言う訳で無理矢理幕。
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