――或る町の門前で壁に背中を預け、フローラ・エリクセンは佇んでいた。
陽光に照り返す艶やかな銀髪が微風に揺れる中、黒系統のローブに身を包む少女は、とても物静かな雰囲気を漂わす。門を潜る旅人ですら、声を掛ける事を躊躇してしまう程に静寂が似合っていた。
「‥‥!?」
ピクンと銀糸から覗く長い耳が跳ねると、フローラは円らな赤い瞳をあげる。額を飾るティアラも相俟って、愛らしい風貌は何処か神秘的だ。少女は赤い眼差しに人影を捉える。
後頭部で結った銀髪を風に靡かせ、白い衣装に漆黒の軽装鎧を輝かせる神聖騎士だ。ミステリアスなマスクを額にあげており、端整な美貌の中で凛とした碧色の瞳が研ぎ澄まされていた。ふと門前の壁に佇む人影を捉えると、クレア・クリストファは表情を和らげる。
「随分と早いわね、フローラ」
「‥‥最後のパーティに‥遅れる訳にも‥参りませんから‥」
赤い瞳で見上げながら、抑揚のない冷静な響きでフローラが答えると、クレアがクスリと微笑む。
「まだ集合時間まで余裕は残っているけど、あとの二人はどうかしらね?」
「‥‥! クレア様‥‥予想外ですが、間に合ったよう‥です」
フローラが驚愕の色を浮かべる中、赤い瞳は競うように駆けて来る二つの人影を映した。少女の眼差しを追い、クレアが振り返る。碧色の瞳も意外なものを見たかの如く、僅かに見開いた。
長い金髪と暖色のスカートを靡かせ、元気いっぱいに走る少女と、水色系統のローブに身を包み、結った金髪と衣服の胸元を激しく弾ませる娘だ。シーン・オーサカが碧の瞳に仲間を捉え、微笑みと共に手を振り上げる。
「おーい! クレアー! フローラー!」
「クレアお姉ちゃーん! フローラお姉ちゃ〜ん! 魔法少女まじかる‥‥うきゃっ!?」
短い悲鳴と共に長い金糸が宙を舞った刹那、暖色の衣装に身を包むチカ・ニシムラは、何かに躓いて豪快にスっ転んだ。
「‥‥あれは思いっきり地面とキスしたわね」
「‥‥怪我は困りますが‥‥汚れる位は‥何とかなると思い‥ます」
砂埃を舞いあげる様を捉えた二人の頬に汗が浮かぶ中、何事も無かったように素通りするシーンが門前に辿り着く。
「ゴール!! ハァハァ、久し振りやな♪」
「‥‥っていうか、チカを助けなさいよ」
「あっ‥‥起き上がり‥‥ました」
トボトボとチカが歩き出す。赤くなったハナっ面を押さえ、涙目で歩を進める愛らしい少女はとても悲愴感が漂う。ようやく仲間との距離が近付いた刹那、涙の散らし、たたたっ☆ と駆け出した。
「ふえぇぇんっ! フローラお姉ちゃーんっ!」
躊躇う事なく銀髪の少女の腰へ飛び込むチカ。クレアを選択しなかったのは正しい判断かもしれない。転んだ痛みだけではなく、甲冑を額に喰らう痛みを浴びる可能性もあるからだ。
嗚咽を洩らして小刻みに震える少女の金髪をフローラが優しく撫でる。外見的にはチカより幼さを感じるが、エルフとして生きた年輪が窺わせる雰囲気は、労わる余裕に満ち溢れているようだ。
「‥‥よしよし」
「チカったら、慌てて走らなくてもいいじゃないの?」
クレアが呆れた色で微笑むと、チカはフローラの腰に腕を回したまま涙に濡れた青い瞳をあげる。
「だって‥‥シーンお姉ちゃんが‥‥競争に負けたら何でも言う事を聞くなんて言うんだもんっ」
どうやら先を歩いて待ち合わせ場所に向かっていたチカの背後から駆けて来たシーンが、擦れ抜け様に提案したらしい。突然そんな条件を出された少女は、戸惑いつつも慌てて追い掛けた訳である。
「シーン?」
クレアの瞳が、首の後ろで手を組んで素知らぬ色を浮かべるウィザードを捉えた。次いでフローラが赤い瞳をジトリと細め追い討ちを掛ける。
「大人げない‥‥です」
「ち、一寸した余興やないかっ。こ、転ぶ方が悪いんやさかい‥‥! か、堪忍な」
クレアの眼光に圧倒されたのか、シーンは戦慄を感じて咄嗟にギコチナイ微笑みを浮かべた。甲冑姿の美女は軽く溜息を吐き、改めて先を促す。
「ま、こうして時間までに集合できたから、この話はお終いにするわ。町に入りましょ☆」
そう、ここに集まった事には理由があった。
この物語は、クレア達がアトランティスに渡る前の、イギリスにいた頃の記録である――――。
●感傷を鉄槌に変えて
夜の帳が周囲を闇に彩ると、月明かりは幾つもの岩肌を照らし出す。
発ち込める湯気が視界を煙らせる中、水面を掻き分ける音色や飛沫が弾ける旋律が響き渡っていた。同時に乙女達のはしゃぐ楽声や気持ち良さそうな悦声が聞こえて来る。
「ふぅ〜☆ やっぱり温泉はいいもんだねー♪」
パシャン☆ と水面に波紋を描きながら、頬を上気させたクレアが微笑みながら両腕をグンと伸ばした。湯の中で解いた銀髪が彼女の魅惑的な肢体を覆い隠すように泳いでいる。同様に銀髪を水面に漂わせ、恍惚な色をほんのりと浮かべながら、瞳を閉じて吐息を洩らすフローラも気持ち良さそうだ。
「訪ねて‥‥正解‥です」
『それそれー♪』
『にゃあぁ〜ん、お湯が目に入っちゃったよぉー』
シーンとチカは心地良さそうな二人と対照的に、飛沫を撒き散らせて湯を掛け合っていた。傍から見れば、まるで仲の良い姉妹のように窺える。長い金糸を貼り付かせた豊満な胸元を舞い躍らせ、両手で掬った湯を豪快にぶっ掛けるシーンは楽しそうだが、防戦一方のチカはビショ濡れの長い金髪から滴る雫を肢体に煌かせるものの涙目だ。
「いにゃあ〜っ、フローラお姉ちゃーんっ」
助けを求めに少女が水面を掻き分けると、波状攻撃の洗礼がフローラを濡らす。一瞬の沈黙後、迷惑そうな赤い瞳がシーンを睨んだ。戦域が拡大する中、苦笑しながらクレアが口を開く。
「ほらほら、特別に入れて貰っているんだから、そろそろ静かにしなさいよね」
ジャパンなら兎も角、イギリスには入浴の習慣は殆ど無い。冒険者の助言等で幾つか温泉は構築されたが、そもそも夜に入浴するなど民の理解を遥かに凌駕した所業である。
――何もする必要はないの☆ 眠っていても構わないわ。温泉に浸かれるだけでいいの♪
少し多めに硬貨を払い、訝しげな管理人を承諾させた上で入浴に到っているのだ。
「ここでも色々な冒険をしたわねぇ」
三人が一頻り騒いだ後、静かに湯船に浸かりながら、クレアは瞳を閉じて微笑みを浮かべた。フローラも懐かしそうに口を開く。
「‥‥そう‥ですね。‥‥瞼を伏せれば‥懐かしい思い出が‥甦り‥ます」
「うん‥‥辛い事もあったけど、楽しい思い出になって浮かんで来るにゃ☆」
「喉もと過ぎれば何とかっちゅーもんやさかいな♪」
四人の乙女達は今までの出来事を語り合い、思い出に華を咲かせた。愉快な笑い声が暫く月夜に響き渡ったが、何時の間にか口数は減り、静寂の度合いが占めてゆく。
「わたし達‥‥ここを離れるのね」
「うん‥‥そうだね、クレアお姉ちゃん‥‥」
「‥‥寂しい‥もの‥です‥‥」
「な、なんや、しんみりしてもうたなあ‥‥」
あはは☆ と笑ってみせるシーンだが、感傷に浸る空気は容易に掻き消えたりしない。彼女とて別れの刻が近付いていると思えば、陽気な笑顔も寂しさの色に変容する。
そんな雰囲気を土足で踏み躙る如く、ランタンの明かりが乙女達を照らし出した――――。
――女がいる!?
酔った男達は目を擦って呆然と立ち尽くす。幻を見ているのかとも思った。もしかすると、自分は酔ったまま眠っており、夢の出来事なのかもしれない。
「誰っ!?」
切迫した響きで女達が飛沫をあげて立ち上がる。夢にしては生々しい光景だ。
男は最も背の高いクレアに視線を注ぐ。腰ほどに届く長い銀髪を肢体に纏わせて、端整な風貌から覗く凛とした碧色の瞳を研ぎ澄ませていた。程よい肉付きの腕で隠す胸の膨らみは、大きな二つの野菜を抱えている様相だ。水滴が伝う鍛え抜かれた裸体は、大人のラインを描いている。
「聞こえないのかしら? 何の用なの!」
「刺激せん方がええで‥‥」
視線が注意を促すシーンを捉えた。彼女も濡れた長い金髪で白い肢体を所々覆い隠しており、円らな碧の瞳に警戒の色を浮かべて身構えている。愛らしい風貌と裏腹に金糸から覗く二つの白い膨らみは、むっちりとして肉感的だ。
「‥‥観察されている‥気が‥します」
フローラの落ち着いた声に男が反応する。銀髪から長い耳を覗かせた少女は口元に手を運び、クレアとシーン同様に頬を羞恥に染めながら円らな赤い瞳で訝しげに見つめ返している。白い肢体は均整のとれた曲線を浮かべており、歳相応の色香を漂わせつつも何処か大人っぽく神秘的とさえ感じた。
「フローラお姉ちゃん‥‥っ」
チカが水分を含んだ金髪を靡かせ、エルフの少女に横から抱きつく。乙女達の中で最も小柄であり、割とスレンダーな肢体は愛らしい風貌と相俟って幼い印象を際立たせる。小さな胸の膨らみをフローラの肢体に押し付け、円らな青い瞳に怯えた色を浮かべていた。
――湯気で見え難いってのに、どいつもこいつも長い髪で隠しやがって‥‥肝心な部分が見えねえ。
――否、この際どさがリビドーを滾らせるってもんだ。
――これが夢なら‥‥こうなれば淫魔の罠でも構わないっ!
「‥‥もう十分でしょ! そろそろ帰ってくれるかしら? さもないと‥‥!? ちょッ‥‥っ」
言い放ったクレアが途端に戸惑いの響きを洩らす。男共は荒い息を弾ませながら下卑た声で真意を匂わせる。
『俺達も水浴びに混ぜてくれよ』
男達が取り囲むように足を運び、湯に波紋を描きながら水面を掻き分け迫ってゆく。
一人は視界にフローラを捉えた。少女は赤い眼差しを穏やかに和らげ、薄く微笑みながら頭の後ろに左腕を回すと、腰を反らして「んんーっ☆」と艶かしく右腕を伸ばす。神秘的な魅惑に誘われるように男が飛沫をあげて駆け込む中、エルフはニッコリと微笑んだ。
「お馬鹿さん‥‥ですね☆」
刹那、男は電気の洗礼を放たれ、壮絶な悲鳴を響かせた。フローラは口元に手を運びながら、『ライトニングトラップ』の呪文を詠唱していたのである。突如発動した魔法に男共が狼狽する中、隙を突いたクレアが間合いを詰めて飛び込む。視界に映った美女は、腰を捻って振り被る挙動と共に豊満な膨らみを“たぷんっ”と弾ませ、タメを作った鉄拳を次々に叩き込んだ。
「感謝するんだねッ、最後の思い出を血塗れにしたくないから、粗末な代物も斬らないでおくわ☆」
水面に沈んだ男の髪をひん掴み、冷たい美貌を寄せて微笑む様は畏怖すら感じる光景である。
――この女たちは冒険者だ!
まだ無事な男達は『喧嘩を売ってはならない輩に手を出した』事を察すると、慌てて逃げ出した。
「まじかるチカが逃がさないにゃ☆」
愛らしい少女の声さえもモンスターの咆哮に匹敵する。男が戦慄の色で背後を振り返ると、どこから取り出したのか、岩陰に隠しておいたのか定かでないが、何やら装飾の施された50m程の杖を振るチカが映った。陽気な微笑みを浮かべながら楽しげに舞い踊る様は、とっても危うい色香を水滴と共に散らして儚くも艶かしい。
「えぇーいっ☆」
ふわりと金髪が弾む中、杖が差し向けられた。刹那、男は一瞬だけ挙動を遮られる。続いて不敵な微笑みを浮かべるシーンの裸体が青白く輝くと、金髪が下からの風圧を浴びるように舞い漂う中、詠唱と共に魔法を解き放つ。
「にいさん達、慌てて帰らんと、うちともっと遊んでいきーや♪ アイスコフィン☆」
ぴきん☆ とでも擬音が鳴った如く、忽ち氷付けにされた男が傾き、ゴトンと石畳の床に倒れた。次いでクレアの洗礼でボッコボコにされた男が吹っ飛び、ピクピクと電気の罠に痙攣する男が積み重なる。最後に残るはボロボロになってプカプカと水面に浮かぶ野郎だ。
「おい、溺死したんじゃないだろうねぇ」
床に転がしピシピシと頬を叩くクレア。男が苦悶の呻きと共に瞳を開いてゆく。発ち込める湯気が漂う虚ろ気な視界に浮かび上がったのは、両手を腰に当て不敵に微笑む四人の乙女だ。
クレア、フローラ、チカ、シーンと順に腰を屈めると、とびっきりセクシーな色を浮かべて男の顔を覗き込む。
「やっと目覚めたのねぇ♪」
「ご満足‥‥頂けました‥か?」
「お仕置き未だ足りないかにゃん?」
「サービスしたるで☆」
――ひいっ!
既に散々な目に合った男にとって、艶やかで魅惑的な乙女の肢体も凶暴なモンスターに匹敵する。ジタバタと足掻いた挙句ようやく立ち上がり、凍り付いた仲間の塊を背負うと、他の二名を引き摺って、情けない悲鳴をあげながら脱兎の如く逃げ去った。
暫く悲愴感漂う悲鳴が闇に棚引き、クレア達は唖然としながら視線を交錯させる。やがて互いにピクンと肩を跳ね上げると、愉快そうに笑い声を響かせた。
「今の聞いた? ひいぃぃー、だって☆」
「‥‥数刻前の‥表情を‥思い返すと‥‥差が‥‥あり過ぎ‥です♪」
「チカの、魔法で、動かなくなった人の顔も、面白かったよ☆」
「チカ、笑いすぎやで♪ あかん、腹が苦しいわぁ」
涙を浮かべながら乙女達は暫し笑い合った。さぞ町の民は真夜中に響く笑い声を聞きながら、悪魔が舞い降りたと思い怯えた事だろう。
「やっぱり私達にはしんみりするよりコッチの方が自分達らしいわね♪」
「‥‥そう‥ですね、クレア様☆」
「うん☆ チカもそう思うにゃ♪」
「感傷的になるより、愉快に騒いだ方が性に合ってるさかい☆」
よし、それじゃ宴会やり直すわよ――――。
●最後の夜は百合色に染めて
床の周囲に予めクレアの用意した酒樽が転がり、湯船の中での宴会は終始盛り上がりを見せた。
どんな思い出話も酒が入れば愉快な笑い話に変わる。最後のパーティを楽しむ乙女達の笑顔が掻き消える事は無かった。同時に誰もが白い肌を桜色に火照らせており、呑んだ酒の量も相当なものと窺える。
「こんな気持ちいい宴会を民は知らないなんて勿体無い話だよね」
大きな岩に背中を預けつつ肘を掛け、クレアが木製のコップを煽って微笑んだ。凛とした眼差しは面影も無く蕩けており、艶かしさを際立たせていた。
「‥‥だからこそ‥‥こうして‥‥皆様と‥‥楽しめるの‥‥です」
チビチビと両手で抱えたコップを口に運んで頬を染めているフローラが、ふわりと微笑。何時もよりも言葉の間が空いているのは酔いの所為だろうか。
そんな中、突如飛沫をあげてシーンが水面を弾かせると、酒樽に向かって掻き分けてゆく。
「フローラの言う通りや〜☆ 温泉が定着しとったら、貸切状態で楽しめへんさかいなぁ♪」
フラフラと覚束ない足取りは今にも倒れそうな様相を呈しており、体勢を立ち直そうとする挙動の度に、二つの豊満な膨らみが激しく揺れ暴れる有様だ。堪らず飛沫をあげて腰をあげたチカは、彼女に近付こうとしながら注意を促す。否、正確には近付きたかったのだが、何度も躓いては水面に突っ伏し、起き上がりを繰り返していた訳である。
「もう‥‥うにゃっ★ シーンお姉ちゃん‥‥はにゃっ★ 呑み過ぎだよぉ〜」
素潜りは楽しかった? と訊ねたくなる程ズブ濡れで注意されても説得力は皆無だ。シーンはコップに注いだ酒を一気に流し込むと、頬を紅潮させながら、どんよりとした眼差しをチカに向ける。
「‥‥つっこまれに来たんか? 呑み過ぎなんわ‥‥」
「‥‥ふあッ!?」
スルリと少女の腰に腕を回した刹那、動揺を浮かべるチカの身体をグルリと振り回した。濡れた金髪が扇のように広がり雫を舞い散らす中、シーンはそのまま体重を乗せて細い半身を床に打ち倒す。
「イタッ! シーン‥‥お姉ちゃん?」
余韻を残した金髪が降り注ぎ床を泳ぐと、チカは湯から半身を曝け出す仰向け状態と化していた。潤む青い瞳に映るシーンが愉悦の微笑みを浮かべる。
「こんな簡単に押し倒されはって‥‥ほんま呑み過ぎはどっちやねん?」
「あたし‥‥そんなに呑んでないよぉ‥‥シーンお姉ちゃんの方が呑み過ぎにゃ」
「しゃーないなぁ♪ うちがこれ以上呑まないよーするには、必要なもんがあるんや」
「必要なもの?」
スとチカの愛らしい風貌にシーンは顔を寄せると、軽く唇を重ねた。余韻も無く開放された少女がモノ欲しそうに青い瞳を濡らす中、碧の眼差しが妖艶な色を浮かべる。
「ツマミや☆」
「‥‥うん、いいよ☆」
どちらともなく互いの唇が近付き、求め合うように重なった――――。
――哀切な音色と艶かしい旋律が湯気に漂う中、クレアの耳に飛沫の弾ける音が飛び込んだ。
視線を流すと、水面から半身を曝け出し、肢体に雫を滴らせるフローラが映る。二人に当てられたのか或いはのぼせたのか定かでないが、少女は朦朧とした色で佇む。
「‥‥クレア‥様」
「フローラ‥‥」
名前を呟かれた美女はたおやかな肢体を起こし立ち上がると、水面を掻き分けてフローラの傍に向かった。同時に少女も歩み出し、二人の距離が詰まってゆく。
「‥‥お元気‥でっ」
「‥‥フローラも、ね」
蕩けた赤い眼差しをあげる少女が爪先を伸ばす中、呼応するように腰を浅く屈めた美女が潤んだ碧の瞳をフローラに寄せる。月明かりが照らし出すのは、肢体を重ねるシルエットだった。
――夜が明ければ別れの刻が迫る。
今は何もかも忘れるように、乙女達は最後の夜を熱く刻んでゆく――――。
●マスター通信
この度はイベント発注誠に有り難うございました♪
お久し振り&はじめまして☆ 切磋巧実です。
熱い一夜はAFOミュージアム範囲内としてキスまで。その後は脳内補完でご了承ください。その分、キスまでの演出はさせて頂いたつもりです。
いかがでしたでしょうか? 先ずは一度撃沈されています。遅くなり申し訳ありません。
クレアさんの装備やフローラさんの額の飾り等、意図して前回とは表現を変えている部分があります。フローラさんは前回同様「様」、チカちゃんも同様に「お姉ちゃん」で統一させて頂きました。シーンさんの口調がダイレクト大阪弁で良いのか‥‥この辺は他のノベルも同様なのですが(汗)、表示されている口調がしっくり会話にマッチせず、戸惑ったのはヒミツです。
住処から察してアトランティスに旅立ったのはチカちゃんとクレアさんと判断しているのですが、まさか四人一緒じゃないですよね? 相違なければ幸いです。例え四人だとしても四六時中一緒にいる訳ではありませんので、そんな風に解釈して頂けると助かります(苦笑)。
今回のシチュエーションは温泉との事ですが、記録を確認できない為、濁して表現しております。また、NPCというかヤラレ役の野郎共もモブ程度に抑える為に極力描写を避けています。
それにしても、皆さん髪が長くて金と銀に揃えられており、ミュージアムでは『どっちがどっち?』と姉妹を見るかの如く(笑)。うん、微笑ましい限りです。
楽しんで頂けたら幸いです。最後となるかもですのでよかったら感想お聞かせ下さいね☆
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