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【深夜TVドラマ「Kerberos−地獄の番犬達−」出演者募集】
■有天■

<尾鷲由香/Beast's Night Online(fa1449)>

「イーグルさん、入りまーす!」
「おはようございます。よろしくおねがいします!」
 スタジオ入りをした尾鷲由香(fa1449)がスタッフ達に声を掛ける。
 イーグルの愛称を持つ由香は、本日TOMI-TVでCS放送が決まったアクション娯楽ドラマ「Kerberos−地獄の番犬達−」に出演する為にスタジオにやって来たのだった。
 このドラマの前身である「潜入捜査官−ザ・DOG−」は深夜地上波で放送されていたドラマである。
「ザ・DOG」が現代日本に蔓延る隠れた悪を狩り、白昼に晒す「犬」と呼ばれる潜入捜査官を描くヒューマンドラマであった。だが、2ndシーズンは視聴者の要望に答え、「ザ・DOG」の設定をそのまま受け継ぐ「ザ・DOG−2007−」と娯楽性を強めた「Kerberos」と2系統に別れる事になった。
「Kerberos」は近未来の荒廃した日本を舞台に「暴力には暴力で悪事を叩きのめし解決する」痛快アクションドラマである。

 今回のあらすじは、『競馬や競輪と同様に合法となり、観光の名所となったカジノ場を隠れ蓑にしたジャパンマフィアが麻薬と武器売買をしている。と言う情報を得た潜入捜査官「ケルベロス(犬)」達。裏興行としている賭試合に選手や客として潜入し、それを叩く』というものである。
 イーグルはその捜査官の1人 ヴァルク・ラルグス、通称『疾風のヴァル』を演じる。
 ヴァルは、元は名の知れた格闘家であったが病気の妹の入院費を稼ぐ為八百長試合に手を出した為、今は身を落し、ストリートファイトで金を稼いでいる表の顔と悪人を地獄へと叩き落す「潜入捜査官」と言う裏の顔を持つ女性の役である。
 イーグルはアクションスターであるが、同時に格闘家として数多くのリングに立つっていたので役作りは完璧であった。

 ***

 四角いリングを有刺鉄線で囲んでいる。中央にレフェリーが立つ。
 選手の紹介である。
「青コーナー『疾風のヴァル』!」
 ボサボサの髪をバンダナで止め、タンクトップから覗く腕は傷だらけのヴァルに向かって、ブーイングとヤジ、罵声が観客席から投げ付けられる。
 チャンピオンが紹介されるとワッと歓声が上がる。
「オッズは、どうなっている?」
 セコンドに訪ねるヴァル。
「『1:20』チャンピオンの圧勝さ」
「ふーん‥‥じゃあ、あたしが勝ったら丸儲けだな」
 参加料として取られた金は馬鹿にならないが、勝てば配当の10%相当額がヴァルに入る事になっている。
 ヴァルが日常行っている賭試合の相場が1口千円だとするとマフィアが行っているこの試合の賭は一口10万、最低10口からの申込である。巨額が動く賭試合である。
 その分、ストリートでは暗黙で相手の命迄を奪う行為はなかったが、ここでは相手が完全に動かなくなる迄徹底的に行われる。時には試合の勝ち負けで死者が出るという賭試合である。
「お嬢ちゃん、来る場所を間違えたんじゃ無いか?」
 頭一つ高い髭面のチャンピオンが下卑た笑いを浮かべてヴァルを挑発する。
「息が臭いんだよ、タコ。汚い面をあたしに寄せるんじゃないよ」
「なんだと?」
「大した実力も無い癖に長々とチャンピオンだなんて笑わせるね。引導渡してやるから覚悟しな」
 男の禿げた額に浮かんだ血管がピクピクと引きつる。
「小娘が‥‥俺を怒らせた事を後悔するぜ」
 ゴングが鳴り、試合開始である。

 チャンピオンの隠し持っていた武器に苦戦し、流血し乍ら辛くも勝利したヴァル。
「勝者、ヴァル!!」
 レフェリーがヴァルの右手をあげると観客席から割れるような歓声と拍手が上がる。
「畜生‥‥これが本当の、本当のヴァルの姿なんだよ」
 格闘家として一線で活躍して来た時からセコンドを勤める男が、男泣きをしている。
 それをリングを御見下ろすゴンドラから冷ややかに見つめる男。
 その鋭い視線を感じたヴァルがゴンドラを見上げる。
「新しいチャンピオン誕生か‥‥あの女をここに連れて来い」
「あの女、殺(バラ)しますか?」
「話しをしてからだな。損をした分はきっちり稼いで貰えれば、丁度良い時期じゃ無いか。あの下品な男(チャンピオン)に観客も飽き始めていたようだしな‥‥‥」
 男は、蛇のような笑いを浮かべた。

 マフィアの誘いに乗り、新しいチャンピオンとなったヴァル。
 賭試合を続け乍ら、内偵を勧めて行く。
 そしてついに武器と麻薬の取り引きの情報を手に入れたヴァルは、ケルベロスの仲間達と共に現場へと乗り込んで行くのであった。

 ***

「イーグルさん、上がりです」
「お疲れ様でした!」
 ヴァルを逆恨みしたチャンピオンとの死闘シーンの撮影でイーグルの撮り分はお終いである。
 元チャンピオン役の役者から大きな花束が手渡される。
 スタッフからパチパチと拍手が上がり、TV局のカメラマンがその風景を撮影している。
 この後、ストーリィとしてはマフィアの乗った車から流れ出たガソリンに火が着き、火薬に引火して倉庫が爆発炎上する事になっている。
 だが、本放送をイーグルが見る事は無いだろう。
 新しいドラマの海外ロケと放送日が丁度重なるのだ。
 残念ですね。というスタッフに「しょうがない。帰って来てからのお楽しみだね」
 そうイーグルは笑った。




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この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

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