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【巻き込まれ少女・未亜〜これはこれでノープロブレム?〜温泉露天風呂編】
■切磋巧実■

<早春の雛菊 未亜/聖獣界ソーン(1055)>
<ヒト族の忍者・楓/武神幻想サムライキングダム(NPC)>
<シノビ族の忍者・紅葉/武神幻想サムライキングダム(NPC)>
<サバラン/聖獣界ソーン(NPC)>
<兼続の伴侶・未亜/武神幻想サムライキングダム(w2a114)>

 ――湯気の発ち込める中、微かに浮かび上がる白い肢体が水面に音をたてた。
 静寂に流れるは小波の音色。夜空には満月が浮かび、大海に妖しく映り込んでいる。常夏の大磯海岸近隣ホテルの温泉露天風呂から望む夜明け前の海は、神秘的でもあり、妖艶で怖い感じすら覚えた。
「はぁ〜☆」
 それでも温泉が気持ち良いのは、少女の洩らした声の色で察しが付くだろう。湯気に霞む合間から、しっとりと濡れた艶やかな緑色の短髪が覗き、なだらかな肩は紅潮しており、若い柔肌に珠のような汗が浮かび上がっていた。未亜は愛らしい風貌の頬を桜色に染め、華奢な背中を岩に預けると、円らな赤い瞳を閉じて再び安堵感にも似た吐息を洩らす。
「久し振りに仕事を忘れて違う温泉に入るのもいいなぁ♪ あれ?」
 入り口のドアが開く音が聞こえ、少女は赤い瞳を向ける。霞む視界で汲み湯を掛け流す音が数回続くと、水面を揺らして温泉に入って来た。
(こんな時間に入るの未亜だけかと思ったけど‥‥まさか幽霊とか?)
 想像したら寒気を感じ、少女は瞳を戦慄かせながら細い肩を両手で抱く。ゆらりゆらりと黒っぽい人影らしきものが水面を掻き分けて近付いているようだ。未亜は思わず短い悲鳴を洩らす。
「‥‥ひッ」
 ピタリと人影が止まった。暫く互いに硬直する中、黒っぽい人影が口を開く。
「‥‥未亜ちゃん?」
「え?」
 刹那、バシャバシャと水面に飛沫をあげて、黒っぽい人影が一気に傍へ寄って来た。少女は恐怖に端整な風貌を崩し、湯から腰をあげて対となる方向へ駆け出すと、背後で湯を弾く音が一層激しさを増す。
「待って! 未亜ちゃんでしょ?」
「ひいいぃぃぃッ」
 しかし、所詮は温泉の中、逃げ回るにも限界がある。湯から半身を曝け出したまま、少女は赤い瞳に涙を浮かべ、膝を小刻みに戦慄かせた。恐怖に染まる赤い瞳に黒っぽい人影が一気に迫る。
「みーつけた♪」
「ひゃああぁぁッ!!」「きゃあああぁッ!」
 ――甲高い悲鳴が響き渡った。
 水面に飛沫をあげて少女はガクンと腰を落とす。驚愕に見開かれた赤い瞳に映ったのは、驚きの余り豊かな胸元に手を運んで佇む褐色の少女だ。やがてサバランは腰を屈めて未亜を覗き込む。
「もお、脅かさないで頂戴。見失った未亜ちゃん探したんだから」
「え? 未亜を探してたのぉ?」
「そうよ、こんな深夜に温泉に入ろうってせがむから一緒に行ってあげたのに、走ってゆく未亜ちゃんを見失っちゃって‥‥え? 覚えてないの?」
 サバランは黒いショートヘアを揺らして小首を傾げて見せた。未亜はコクンと上目遣いのまま頷く。
「う、うん‥‥だって未亜、一人で温泉に入りたかったから、夜中にしたんだもん‥‥」
 二人の少女が硬直したまま、暫しの沈黙が流れた――――。
「えっと、未亜ちゃん? どっか頭とか打ったかしら?」
「ううん、未亜、どこも打ってないよ。でも、キミの事は知らないよぉ?」
 サバランの青い瞳が驚愕に見開かれる。褐色の少女は未亜の肩を掴み、湯から引っぱり立ち上がらせた。小刻みに戦慄くなだらかな肢体を雫が流れてゆく。円らな赤い瞳は今にも泣きそうだ。
「い、痛いよぉ」
「未亜ちゃん! のぼせちゃったの? 私よ、サバランよ!」
「そんな事いわれても‥‥未亜は知らないってばぁ」
『サバランさーん? 入ってるー? 未亜だよー♪』
 ドアが開くと共に聞き慣れた声が二人の耳に届く。再び少女達は硬直した。次にサバランは一気に未亜から身を退き、小刻みに震える指を差す。
「あ、あなたは誰なの!?」
「だから未亜だってばぁ」
「嘘ッ! 未亜ちゃんが私を知らない訳ないじゃない! だったら今、私を呼んでいる声は誰!?」
「わかんないよぉ‥‥」
 もはや二人はパニック寸前だ。そんな中、湯気の合間から更に事態をややこしくさせる小柄な人影が姿を見せる。霞む視界でも鮮明な彩りを放つ緑色の髪、美しく繊細な顔立ちに浮かぶ赤い瞳は純真無垢な色を湛えており、幼さを醸し出す白い柔肌は穢れを知らない程に瑞々しい。
「なーんだ、サバランさんいるんなら返事くらい‥‥え?」
 湯煙から姿を見せた少女も確かに未亜だった。二人の未亜は赤い瞳を交錯させ、間に佇むサバランは左右の未亜へ忙しく首を振り続けて戸惑っている。このままでは混乱の中、気絶して湯に沈みそうだ。
「キミは? 未亜なの?」
「う、うん。早春の雛菊 未亜だよ」
「早春の雛菊‥‥。ボクは、兼続の伴侶・未亜だよ」
 自己紹介を交わす二人の未亜に、やはりサバランはパニックに陥っていた。しかし、改めてよく見れば、兼続の伴侶・未亜の方が風貌も体付きも少し大人びており、胸の膨らみも若干大きい――――なんて思っていると、まるで引かれ合うように二人の未亜は互いに身を寄せた。赤い瞳は互いの肢体を見比べて、頬を紅潮させてゆく。未亜達は互いに指を絡めて赤い瞳をしっとりと濡らした。
「まるで、鏡を見ているみたいだよ」
「うん、未亜もそう感じていたんだ」
 見つめ合いながらゆっくりと顔を近づけてゆく二人の少女。赤い瞳は静かに細められ、ぴったりと身を合わせると、唇を重ねた。唐突に愛を絡め合う未亜に、サバランは頬を紅潮させて戸惑う。
「ち、ちょっと未亜ちゃん、達? なにを‥‥」
 ――とくん☆
 褐色の少女は不意に胸の高鳴りを覚えた。
 静寂に包まれた深夜の露天風呂でキスを交わす愛らしい少女。ゆらゆらと舞う湯気でさえ、妖艶に未亜を演出しているようで、月明かりに浮かぶしっとりと濡れた繊細な白い肢体は神秘的で儚げだ。
 サバランは熱い吐息を洩らし、コクンと喉を鳴らした。まるでサキュバスの魔力に誘われるかの如く、二人の柔肌に手を伸ばしてゆく――――その時だ。
『ほーら、やっぱり誰もいないじゃない♪』
『流石に夜明けも近いからな‥‥まぁ、静かな温泉は嫌いではないが‥‥』
 聞き覚えのある声が聞こえた。サバランは尚も愛しげに唇を重ね合う未亜達に声を掛ける。
「もお、いつまで自分達の世界に浸っているの? 人が入って来たわ」
 互いに肩と腰を抱き合っていた未亜が身を引き、褐色の少女へ赤い瞳を流す。
「誰か来たのぉ?」「こんな夜中にぃ?」
 同じ事を考える者が既に三人もいるのに、驚く事でもなかろう。それより夜更けの露天風呂で愛らしい少女達が抱き合い、キスを交わしているのが見られるのは何かと厄介だ。
 刹那、湯気を切り裂くような威圧感のある声が飛び込む。
『何奴ッ! 誰かいるのか!』
『覗き!? 隠れてないで出てらっしゃい!』
 放たれたのは声だけではない。文字通り湯気を切り裂き、飛び込んだのは手裏剣と飛苦無の刃だ。せめて素性を確かめてから放れと言いたいが、彼女達には無理な注文だろう。
 二人の未亜が同じような短い声をあげて身を寄せる中、サバランが慌てて叫ぶ。
「楓さんと紅葉さん! 私です! サバランです! 未亜ちゃんもいるんですから、何も考えないで武器を放たないで下さい!」
 ――楓さんと紅葉さん‥‥。
『なによ、なら早く声を掛けなさいよね!』
『全くだ‥‥危うく次の手段に出る所だったぞ』
 水面を揺らして二つの人影が近付いて来る。湯気から浮かび上がるは、ポニーテールに結っている腰ほどある紫色の長髪を解いた勝ち気そうな風貌のシノビ族の忍者・紅葉と、短めの茶髪をしっとりと濡らし、惜しげもなく豊かな膨らみを湯気に覗かせるヒト族の忍者・楓だ。二人の少女は身を寄せ合う未亜達を捉え、予想通りに驚愕の色を浮かべて立ち尽くす。
「ちょっと‥‥なによ? 未亜ちゃんが二人?」
「‥‥分身の術ではなさそうだな」
 ――かくして、未亜達とサバランから話を聞いて楓は腕を組みコクコクと頷いた。
「なるほど‥‥未亜は未亜でも別次元の未亜か‥‥ややこしいな」
「世の中に三人は同じ人物がいるって聞くしね☆ 驚く事じゃないわ♪」
 流石は紅葉だ。ちょっと前まで驚いた事を完全に無かった事にしている。勝ち気そうなややツリ目の瞳を妖しく細め、少女が妖艶な唇に微笑みを浮かべた。水面が派手な飛沫を疾らせた刹那――――。
「ひゃッ!?」
「でも、これはこれで楽しいじゃない♪」
 瞬く間に紫の長髪を靡かせ、兼続の伴侶・未亜の背後に回り込んだ。赤い瞳に戸惑いの色を浮かべる少女の白い背中に柔らかい二つの感触を押し伝えると、スルリと脇の下から手を滑り込ませた。未亜はピクンっと柔肌を跳ね上げ、頬を染めながらも戦慄く瞳を背後の紅葉へ流す。
「あ、あの‥‥なにを‥‥んッ」
「なにって、せっかくだから、ね♪」
 何が折角なのか、答えになっていない気もするが、円らな深紫の瞳に映る未亜が切なげに赤い瞳を潤ませると、蕾のような唇から熱の篭った吐息が洩れ出した。
「んんッ‥‥だ、だめだよぉ‥‥未亜には大切な男(ひと)が‥‥」
『ひゃあんッ、か、楓さん?』
 同じ響きの声が飛沫と共に飛び込み、未亜は紅葉から視線を放す。赤い瞳に映ったのは、同様に背中から抱きすくめられている同じ顔の少女だ。早春の雛菊 未亜は、動揺しながら楓に瞳を流す。直ぐにアテられてしまうのが彼女の悪い癖だ。背中で押し潰される弾力ある柔肉を感じ、紅潮しながら抵抗を見せる。
「やんッ‥‥どうしちゃったんだよぉ?」
「‥‥せっかくだからな。二人になって好都合というものだ」
「わ、訳わかんないよぉ‥‥っ!?」
 未亜は戸惑いに瞳を泳がせると、同じ赤い瞳と合った。同様に紅葉から可愛がられて悩ましげな色を浮かべる自分の姿がそこにある。それは不思議な光景だった。赤い瞳を蕩けさせる兼続の伴侶・未亜が吐息と共に言葉を紡ぐ。
「やぁん‥‥み、未亜を見ちゃダメぇ‥‥」
 ――じゅんッと躯の芯が熱くなるのを早春の雛菊 未亜は感じた。
 空かさず楓が未亜を愛でながら耳元で囁く。
「どうだ? 自分が愛されている姿を傍から見る気分は‥‥。こんな機会は滅多にないぞ☆」
「ど、どうって‥‥」
 鏡に映る自分とも違う。目の前で熱い吐息を洩らして羞恥に染まる少女は、未亜であって未亜ではない。双子とか感覚が通じ合うと聞いた事もあるが、紅葉に責められている感覚は伝わらなかった。それでも、自分の分身の如き少女が白い柔肌を紅潮させ、切なげな色を端整な風貌に浮かべて悩ましげな吐息を洩らす様は、躯を熱く火照らせてゆく。
「‥‥へんな気分、だよ‥‥ひゃああんッ」
 答えた後に未亜は素っ頓狂な声を響かせた。楓は未亜を抱え上げ、兼続の伴侶・未亜と対面になるように水面を掻き分け移動したのである。改めて見れば確かに鏡のようだ。カッと二人の未亜が真っ赤に染まる。
「こ、こんなの恥ずかしいよぉ」
「だめぇ‥‥未亜。変になっちゃうよぉ」
 何とか足掻くものの、背後の少女達は解放する気がないようだ。紅葉と楓は瞳を交錯させ、互いに未亜を可愛がりながら恍惚とした色で微笑み合う。
「ほら☆ 未亜ちゃんが楓にあんなことされてるわよ♪」
「未亜、たっぷり見た分はおまえも見せてやらないとな」
 四人の戯れは暫く続いてゆく――――。

 ――私、何をしているのかしら?
 のぼせたようにとろんとした眼差しで、サバランは吐息を洩らしながら四人の宴を眺めていた。褐色の肌は珠のような汗を浮かべており、黒髪はしっとりと濡れて水面に雫を滴り弾かせる。どれ程の時間を湯に浸かっているのだろう? それでも湯煙に浮かぶ未亜の向き合う姿から目を放せなかった。
「はふッ」
 意識が遠退きそうになり、サバランは慌てて姿勢を戻す。そろそろ湯からあがった方が良いのかもしれない。褐色の少女が腰をあげようとした時だ。水面を掻き分けて小柄なシルエットが近付いて来た。霞む視界に映るは愉悦の微笑みを浮かべる二人の未亜だ。蕩けた赤い瞳はサバランを捉えており、迫って来る少女達に戸惑いの色を浮かべながらも、努めて優しく声を掛ける。
「な、なにかしら? み、未亜ちゃん? どうかしたの?」
 二人の未亜はサバランの両脇に肢体を沈めると、恍惚とした赤い瞳で見つめた。褐色の少女は何事かと戸惑う。泳ぐ視線を前方に流せば、楽しそうに様子を窺う紅葉と楓の姿が映った。キッと青い瞳が研ぎ澄まされる。
「も、紅葉さん、楓さん、未亜ちゃん達に何か吹き込みましたね!? きゃっ」
 怒りの色を滲ませて腰をあげようとした刹那、両脇の未亜が一斉に抱きついて来た。サバランは短い悲鳴をあげた後、動揺のあまり何をすべきか戸惑う中、甘美な響きが左右の耳に飛び込む。
『サバランさぁん☆』『どっちの未亜が可愛い?』
 瞳を瞬かせて唖然とする褐色の少女に、再び未亜が哀願する。
『ねぇ、こっち向いてよぉ♪』
「‥‥な、なに? ‥‥んッ!?」
 右から声を掛けられ、微笑みを保ちながら顔を向けると、未亜は軽く唇を重ねた。不意打ちにサバランは青い瞳を見開き、濡れた眼差しで微笑む少女に掛ける言葉が見つからない。
『サバランさぁんってばぁ☆ こっちもぉ♪』
 これ以上、見つめ合っていると危険な気がして、褐色の少女は呼ばれた声に応えるべく黒髪を揺らす。
「み、未亜ちゃ‥‥んんッ!?」
 視界に赤い瞳を閉じて愛らしい顔を寄せる未亜が飛び込み、サバランは再び唇を奪われた。褐色の頬を両手で包み、恍惚とした微笑みを浮かべてみせる未亜。すると、もう一人の未亜が未亜に声を荒げて頬を膨らます。
「あー、未亜より長いよぉ」
「そんなことないよぉーっ! あー、ずるいってばぁ」
 まるで競い合うかのように次々と褐色の肌にキスの洗礼を浴びせてゆく未亜達。
「ちょッ、やんッ、未亜ちゃッ、んんッ、きゃうッ」
 熱く柔らかな洗礼の猛攻に、堪らず慌てたサバランは戸惑いながら体勢を崩す。水滴を煌かせて仰け反った瞬間、たわわな褐色の膨らみが揺れると、未亜の赤い瞳が愉悦に染まった――――。

 ぱしゃぱしゃと飛沫の響きと共に少女の甘味な声が流れる中、紅葉と楓で腰に手を当てて満足げに微笑む。
「これでサバランも楽しんでくれるわね☆」
「そうだな、一人だけ仲間外れでは酷というものだ」
 二人は頷き合うと、湯煙に霞む少女達の戯れに加わるべく水面を掛け分けてゆく。
 朝日が昇ろうとするのも気にせずに――――。


●ライターより
 この度はイベント発注ありがとうございました☆ お久し振り♪ 切磋巧実です。
 いかがでしたでしょうか? 今回も楓と紅葉にサバランの参加ありがとうございます。しかも二人の未亜ちゃん。なるほど、今回のイベントなら可能な訳ですね。今回の変化球に度肝を抜かれたのはヒミツです(笑)。
 それにしても‥‥毎度危うい少女達です(苦笑)。今回は戦闘もなく、舞台が露天風呂1点集中なので何気に苦労しました。いえ、詳細に描写すればする程に危ういものに‥‥。如何に濁して演出したものかと(笑)。しかし、現状、サバランのみ辛うじて禁断の花園に染まっていないのですね。
 未亜ちゃんが次にどんな巻き込まれ方をするのか楽しみにしています(笑)。
 リーディングボイス拝聴させて頂きました☆ 発注ありがとうございました。これが未亜ちゃんの声なんだぁと新たな彩りに感動したものです。切磋の文章がこっ恥ずかしかったのは内緒です(苦笑)。まだまだ精進せねばですね。
 楽しんで頂けたら幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆



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