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夏と純愛
■櫻正宗■

<マユラセラス・エンカウンター/エターナルヴォイス Legend(1685)>
<ハートライド・バードラグ/エターナルヴォイス Legend(NPC)>

 貸切のバスに揺られてやってきたのは海。
 海に降り立ったマユセラス・エンカウンターと、ハートライド・バードラグ。
 海の大きさに、そうして青さに勘当したマユは胸の前で手を組み、うっとりとした視線で海を眺める。
そのすこし背後ではーティが海ではなく、マユの背中を眺めていた。
 日焼けの痕がまだ残る肌の色が、マユの着ている白いワンピースを際立たせる。
 ふわりとワンピースの裾が翻る。
 しっかりと鍛えられたふとともがチラリと覗く。
 その様子にハーティは後ろから抱きしめたくなるのを堪える。
 今はまだ早い。そんな気がしたから。
「素敵ですね」
 振り返ったマユは笑顔でハーティにそう言った。
 それにハーティも笑って頷いた。
「そうだ折角の海だし、泳がないか?」
 マユの笑顔から視線をその向こうの、蒼い海へと移しながら提案をする。
 ハーティの提案にマユもまた海のほうに向き直った。
「えぇ、そうですね。折角ですし……」
「それじゃぁ、コレ」
 ハーティの提案にマユは依存はなかったし、笑顔のままハーティを見て頷く。
 それを確認したハーティは、ごそりと何かを取り出すとマユの手に押し付けた。
 マユは何だろうと、手の中に収められたものを見つめてから取り出す。
 それま真っ白なビキニの水着だった。
 ビキニは隠す面積が極端に少なく、ブラの部分もパンツの部分も全てヒモで結びつけるといった形のもの。
 一瞬それがなんなのかイマイチよくわかっていな表情だったマユ、だが次第にその頬が赤くなってくる。
「こ、これは」
 必死になってハーティに訴える。
 可愛らしい顔とアンバランスに、鍛えられた逞しい身体を捩じらせて。
 その様子にハーティは口端を少し吊り上げて笑って応える。
「これはって、見て分かるだろ?」
 その口調はちょっと意地悪で卑猥だった。
 もちろんマユだって見て分からないわけじゃない、それが何かはわかる。
 まるでその先を待っているかのように、ハーティ笑顔のまま黙ってマユの表情の変化を楽しむだけ。それにマユも恥ずかしくなるばかりで、困ったようにちらちらとハーティを盗み見る。
「着てくれないのか?」
「……―――――え。だって、恥ずかしいです」
「マユに良く似合うと、思って選んでもってきたんだけれども?」
 白い水着を持ったまま、水着を見たりハーティを見たりもじもじとどうしたらいいものか、迷っているマユの顔を覗きこむようにハーティは尋ねる。
 その言葉にようやくマユは頬を赤くしたまま答える。そんな答えの内容など既に分かっていたかのように、ハーティはマユの言葉が終わるか終わらないかで次の言葉を発する。
 その言葉は何故か疑問文のように語尾が上り、更に赤くなったままのマユの顔に自分の顔を近づける。
 鼻先と鼻先が触れ合うほどの距離。
 その至近距離にマユは目を伏せてしまいながら、身体を捩らせる。
 逞しい身体を恥ずかしそうにくねらす姿が余計に、ハーティの嗜虐心をそそられる。
 彼女が自分のお願いを断れないこともなんとなく分かっているから、また少し口端を吊り上げると顔を更に近づけて彼女の耳元で囁いた。
「お願いを聞いてくれないかな?」
 優しい声色で少し甘さを含み、細い目を更に細める。
 マユは耳まで赤くして、手に持った水着を握り締めて黙って頷いた。

 海辺でハーティがマユを待っていた。
 服を着ていたときには細身で少し華奢な印象を与えていたハーティだが、水着で上半身を露とする格好ではその身体は引き締まってスポーツ万能そうだった。
 しばらくすればマユが恥ずかしそうに胸元を両手で隠しながら、ハーティの方へとやってくる。
 存在感のある彼女の雰囲気と彼女の身体はすぐに見つかる。が、ハーティは迎えに行くことなく歩く姿の彼女を楽しむ為に、ここまで彼女がやってくるのを待つ。
「あ。あ、あの………」
 ハーティの側まで来て何か言おうとするのだけれども、恥ずかしさで言葉にならない。
 そんなマユの片腕を取るハーティ。
「行こうか」
 そのまま有無を言わさずに、海のほうへと歩いていく。
 白い水着は良く彼女に似合っていたが、あまりにも過激だった。
 胸を覆うビキニは胸の中心の部分だけしか隠さず、パンツの部分も物凄くローライズで両横を紐で結んでいるだけで、カナリ危うい。
 急いで歩くのについていけば、その紐がいつか解けそうな気がしてマユはひやひやする。
―――――バシャリ。
 と、足にはもう波が打ち付けている。
 そのままハーティは手を掴んだまま、もっと奥の方へと歩いていく。
 丁度、水位が胸下あたりまでくれば立ち止まり。
 ハーティはマユを見つめる。
「マユ、とてもかわいいよ。良く似合ってる」
「え、え、え。でも、恥ずかしいです」
 ハーティの言葉はマユにとって嬉しいものだが、あまりに恥ずかしい格好でまたもじもじと身体をくねらせる。
 バシャン。
 波が絶えずやってくる。
 胸下までだった水位が、大きな波がくれば肩にまで水がかかった。
「……―――あっ」
 マユが声を上げて慌てて胸を隠そうとする。
 白い水着は水に浸かれば少し肌の色が透けていたのだ。
「どうしたの?」
 マユが再び胸元を隠すのを分かってか、その片手を取るハーティ。
 腕をとられれば、そこから動けずに困ったようにハーティを見る。
 その刹那、一段と大きな波が沖からやってきた。
「きゃっ」
 小さな悲鳴と共にマユは波に足を掬われて、海の中へと一瞬もぐってしまった。
 すぐに顔を出すと何か身体に違和感を覚えた。
 視線を下にやると、胸からビキニ部分がなくなっていた。紐で結ぶだけだったために波に攫われたときの反動でほどけてしまったらしい。
「きゃあ」
 波に攫われたときよりも大きな声を上げて、ハーティの腕を払いどけ両手で胸を隠す。
「大丈夫。ビキニはここにあるから」
 ハーティが持ち上げた片手には身体を覆う面積が小さいビキニがもたれていた。
「か、返してくださいっ」
「んー……どうしようかなぁ」
「それがないと、上れませんし………それにこのままでいるのはちょっと……」
「チョット何?」
「………………――――――恥ずかしいです」
 ちらりとハーティを見てはすぐに視線を外し、消え入るような声で答えた言葉は少し震えていた。
 その姿がまたいじらしくて、ハーティはまた意地悪をしていまう。
「そのままでも十分可愛いんだけれども?」
 その言葉にマユの顔は更に赤くなり、ハーティに背を向けた。
 背を向けられたハーティはマユの身体を背後から抱きしめる。

 なんだかんだあったものの、水着をなんとか返してもらったマユ。
 お腹も空いて来たことだし、ここはバーベキューで昼食をいうことになり、シーサイドにあるバーベーキュー場所に二人はいた。
 シーサイドということで二人はそのまま水着の格好のままだった。
「美味しそうですね」
「そうだな。……けれどもコレを着てくれて、食べさせてくれたら、もっとおしくなるんだけれどもな」
 用意された食材にマユは嬉しそうな声を上げる。 
 それに答えたハーティはマユに何か差し出す。
 マユはなんの躊躇いもなしに、差し出されたものを受け取り、目の前で広げた。
 それは真っ白なフリルが沢山ついたエプロンだった。
「えっと。エプロンですね」
 それならとマユは水着の上から、つけようと身体に宛がった。
「あぁ、違うんだ」
 ハーティの言葉に、マユはきょとんとしてハーティを見る。
 きょとんとしたマユの表情を見ながら、ハーティは言葉の続きを口にした。
「今、着ている水着を脱いで、裸で着て食べさせて?」
 先ほどお願いした時と同じように、ハーティは語尾を若干あげながらマユの顔を覗きこむ。
 その言葉の内容にマユの顔は一気に赤くなり、ハーティを見た。
「私のお願い聞いてくれるよね?」
「…………―――――――」
「ねぇ、マユ?」
「……あんまりです。……酷すぎます」
 更にお願いをしてくるハーティ。
 ついにマユは俯いてしまう。
 周りには同じようにバーベーキューを楽しんでいる人が沢山いる。
 そんな中で裸にエプロンだけを見につけて、食べさせてくれという。いくらハーティの願いだとは言え恥ずかしさが先にきてしまう。
 俯いてた顔を上げてハーティを見るマユ。
 ハーティを見つめる、その瞳は涙で濡れている。
 震える声で拒絶を示しながら、マユは持ったいるエプロンをハーティに突きつけて走り去ってしまった。
 残されたハーティは去り行く彼女の背中を見つめるしかなかった。

 その日の夜。
 ハーティはひとり自分のテントで横になっていた。
 あんな鳴きながら訴えるマユを見たのは初めてのような気がする。
 なんでも自分の言うことを聞いてくれると少し勘違いしていたのかもしれない。
 そんなことを考えると寝付けずに、何度も何度も寝返りを打っていた。
「………あの、まだ起きていらっしゃいます?」
 弱々しい声がした。
 それがマユのものだと一瞬分からなかった。
 昼間あんな出来事があったから、もう彼女は自分のところになんて来るはずはないと思い込んでいたのだ。
「マユ?」
「………はい」
「今、あけ……る……」
 弱々しく聞える返事。
 慌ててハーティは飛び起き、テントの入り口を開けた。
 目の前のマユの姿に声が小さくなった。
「マユッ!」
 思わずハーティはその場でマユを抱きしめてしまった。
「さっきは皆の手前断ったけど私ハーティさんがどうしてもというのなら……」
 ハーティの腕の中、恥ずかしそうにハーティを見つめるマユの姿は素肌の上にエプロンをつけたままの格好だった。
 自分のわがままをイヤだといって跳ね除けたのに、それでもこうやってしかもその格好のままここまで着てくれたということ。
 多分図りきれないほどの勇気が言っただろう。
 ハーティは知らずのうちに強くマユの身体を抱きしめて、こちらを見つめる彼女の額に唇を落とす。
 その柔らかい口付けにマユは目を伏せ、頬を赤らめた。
「こんな素敵な姿を他の誰にもみられたくないんだ。……だから、私のテントにきてくれないか?」
 ハーティの申し出にマユは黙って頷いた。
 マユが頷けばハーティはそっと彼女をエスコートして、テントの中に招き入れる。
 そのまま抱き合ったまま、夜は更けていく。

 マユのどこまでも健気なその態度にいじらしさに愛を感じ。
 マユもどこまでも自分のことを想ってくれることに愛を感じ。
 二人の夜は深くとけていった。






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        ライター通信          
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この度は【大磯臨海ノベル】の発注ありがとうございました。
シチュエーション文章を読んだときに、本当に自分なのか実は間違っていないだろうか、
チョット不安になりました。が、とても仲の良いお二人を書かせて頂けたのは本当に愉しかったです。
が、こちらの不手際で大分と待たせる結果になってしまい、本当に申し訳ありませんでした。
またどこかでお会いできることがあればよろしくおねがいします。

櫻正宗 拝




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この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

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